朝起きて、カーテンを開けると・・・
「うわぁ、すごい雨だな・・・。」
梅雨に入ってしばらく経つけど、こんなに雨の日らしい雨は久しぶりだ。
せっかくの週末なのに雲が厚くて、薄暗い、まさに梅雨時の雨。
お昼前までに止むかな・・・。
台所に行くと、すでにともねえが朝食の支度をしていた。
「おはよう。ともねえ。」
「あ、おはよう。」
「今日はジョギング行ったの?」
「いや、私が目を覚ましたときには、も、もうすでに降ってたから。今日は止めにしておいたよ。」
・・・

朝食が終わって、雛乃姉さんはバイトへ、姉様は仕事に、姉気はエステに出て行った。
ねぇねぇは
「昨日は夜中にバイトだったから、まだ寝たりないにゃ・・・zzz」
と言ってそのまま居間で寝てしまったし、海お姉ちゃんはやる事があると言って、
部屋に閉じこもってしまった。
暇だから廊下の掃除でもするか。
ごしごし・・・ぎゅっぎゅ・・・
台所近くの廊下まで掃除をしていると、台所から
「あぅ・・・あぅ・・・」
ともねえが困っていた。
「どうしたのともねえ?」
「あっ、空也。きょっ、今日は雛乃姉さんにお弁当頼まれていたんだ。で、作っておいたんだけど・・・」
「雛乃姉さん、持って行くの忘れちゃったんだ。」
うんうんと、ともねえがうなずく。


「わ、私、雛乃姉さんのところまで、お弁当届けてこようと思うんだけど・・・」
「うん、行ってらっしゃい。」
「あぅ・・・。そっ、その、空也も・・・一緒にどう・・かな?」
最後のほうはよく聞こえなかったが、これは誘われてるのか?
それに俯き加減で聞いてくるともねえが妙にかわいい。
「わかった。いいよ。」
「えっ!?い、いいのか?」
「もちろん。でもその前に、ねぇねぇとお姉ちゃんの為に、お昼つくり置きして行こうか。」
「うんっ!」
その後、俺とともねえは居間で寝てるねぇねぇにそれとなく出かけることを伝えて、家を出た。

バイクで行くのかと思ったけど、ともねえは
「雨の日に二人乗りは、あっ、危ないだろう?」
雨は朝と変わらず、未だに強く降ってる。
残念なことに傘は二本あったから、俺とともねえで一本ずつ。
「そっ、それにしても、梅雨らしくていい雨だな。」
「え?ともねえ、雨好きなの?」
「うん。私は好きだな。空也は、あ、雨の日嫌いなのか?」
「雨の日はじとじとしてるしさ、気分が落ち込むじゃん。晴れてるほうがよっぽどいいよ。
ともねえは雨の日のどこが好きなの?」
「私は・・・あ、雨の日があるから、晴れの日が素敵に思えるし、雨の日は雨の日で、
せっ、洗濯物は干せないけど、素敵なところがあると・・・思う。」
「ふーん。俺にはよく分からないや。」
そんな事を話しているうちに、雛乃姉さんのバイト先の神社に着いた。


「おおっ!巴!それに空也も!」
境内には雨のせいか全く人影がなく、雛乃姉さんはおみくじ売り場の中に暇そうに座っていた。
「はい、雛乃姉さん。お弁当。」
「わざわざ面倒をかけてすまぬ。よし、飴をやろう。にしても巴、お前だけ来れば事は足りたろうに。」
「・・・」
ともねえは答えずに俯いて、顔を赤くしている。
「ふむぅ。なるほど、な。」
にやりと雛乃姉さんが笑って横目で俺を見る。
「あ、あはははは。」
笑うしかないでしょ?
「姉弟で仲がいいのは良い事よな。と言うことは、時々二人で夜になって飛び出すのも、こんな理由か?」
「・・・・!」
ともねえの表情が固まった。
雛乃姉さんの言っているのは、ともねえと俺がクロウの存在を感じたときのことで、
もちろんそれを言うわけにはいかない。
ともねえは嘘が嫌いだから、ともねえに返事させるのは酷だ。
「あれはね、俺g「私が空也を誘うんだ。ツッ、ツーリングに・・・。」
ともねえが俺の言葉を遮って来た。
「ほぅ!我は巴は酒でも飲まぬと大胆になれぬと思っていたが、これは飛んだ思い過ごしよな。
まぁ、ともあれ、中に入れ。お茶ぐらいは出せようぞ。」
「ありがとうございます。雛乃姉さん。」
「あは、私、じ、実はおにぎりを作ってきたんだ。一緒にたっ、食べようと思って。」
・・・
「ふー。おかげで我は満腹だぞ。ご馳走様でした。」
「「ご馳走様でした。」」
「二人とも、折角だから帰りは境内裏の紫陽花でも見ていくと良い。雨に濡れて綺麗であろう。」
「うんっ!」
「それと巴、傘を一本貸せ。」
「え?なっ、何で?雛乃姉さんには人力車が・・・」


そこまで言うと、雛乃姉さんがともねえに耳打ちをして
「(言うとおりにせんか!わざわざ気を使ってやっておるのだ!)」
いや、すっかり聞こえてるし。
ともねえもまた赤くなって俯いてる。
・・・
結局、ともねえと俺は相合傘で境内裏手の紫陽花を見に来た。
雨に濡れる青や紫の花をしばらく眺めていると、
「きっ、綺麗だな。」
「うん。綺麗だね。」
「・・・私、嘘、ついちゃったな。」
「うん。」
「嘘は・・・きっ、嫌いなのに。」
「あれはしょうがないよ。雛乃姉さんを巻き込むわけにはいかないし・・・。」
「でっ、でも、本当は一瞬迷ったんだ。嘘をつくのはい、嫌だから、本当のこと、
話しちゃおうかなって。で、でも・・・」
「いいんじゃないかな。たまには嘘つくともねえも。たまの嘘があってこそ、
普段のともねえが、その・・・よりありがたく思えるんだよ。
それに、ともねえのついた嘘は、やさしい、必要な嘘だよ。」
ザアァァァァァ・・・
「・・・ありがとう。空也は優しいな。」
雨でぼやける背景の紫陽花が、柔らかなともねえの笑顔を際立たせた。
俺の耳が先まで真っ赤になるのが分かる。
これだけ近いと、ドクドクと鳴る心臓の音も聞かれちゃうかも?
と思うと、いよいよ動悸が激しくなってきた。
「かっ、帰ろうか。ともねえ。」
「うん。」
ともねえは静かに、しかし力強く答えた。
・・・


帰りはほとんど何も話さなかった。
ずっと雨がアスファルトを叩く音と俺とともねえの足音だけが響いた。
家の前に着くと・・・
「思ったより、遅くなっちゃったな。」
「あのさ、ともねえ。」
「ん?」
「考えを改めるよ。たまには、雨の日もいいなって。」
「そうか。空也がそう言ってくれると、わ、私もなんだかうれしいな。」
ともねえがそう言いながら、玄関の戸を開ける。
ガラガラガラ・・・
「「ただいま〜!」」
ドタドタドタ・・・
ねぇねぇが廊下の奥からこっちに向かって走ってくる。
「空也!モエ!お帰りー!」
「うわっ、ねぇねぇ、どうしたの?」
「わたし、二人が帰ってくるの待ってたんだよー!ほらっ、二人ともモエの部屋に早くっ!」
「あぅ・・・。」
ねぇねぇがこういう風に言う時は大抵何か頼み事がある時だ。
いったいどんな無理難題を言われるのやら・・・。
でも、これも悪くない・・・かな?


(作者・SSD氏[2005/06/21])


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