色々カカイルに素敵なイメージを持っている人はこの話は ひかえてください。 やりたい放題ですので。 ―――――すごい人。 噂には聞いていた。 皆が憧れていた。 そんな人に付き合って欲しいと言われて、二つ返事で承諾した。 逆に心のなかで密かに大喜びしたのは自分の方だった。 …想像通り、カカシは皆が憧れる想いを胸に秘めた人だった。 なにか疑問があると、想像を越える思慮深い返事をくれる。 物事の本質を見抜き、先の先を見越した言葉でごまかさない正しい答えをいつもくれる。 猫背に落ち着いた気配を纏わせて、寡黙で。 年齢よりもずっと大人びて見えるのはその性格のためだ。 立派な人だ。 横に立つのが恥ずかしい気さえ、する。 …だから、いつも気後れて半分後ろを歩いてしまう。 顔を合わすと赤くなってしまうから、いつも俯き加減でみっともないけれど、カカシは別に気にする様子もないから良かった。 ぼんやりしているようで、その眠たげは目は透き通っていて、まなざしは遥か彼方を見つめている。 その横顔を、いつまでも見ていたいと思う。 貴方についていけば、どこか遠くまで連れて行ってくれる、そんな気がして。 ●●● 18禁小説です。 生ぬるいですがH描写がわりと濃いので(自分的に)注意してください。 そして割と悲劇(ラストは微妙なハッピーエンドになりますが)なんで悲しいのが嫌いな人は引き返してください。 色々露骨な上に自分という人の性格が窺い知れるようでかなりアレです…恥です 「記憶喪失」 記憶喪失。 その言葉の意味を一瞬理解できず、心の中で反芻する。 「ああ、そうみたいだぜ。 …なんでも今回は泥沼の闘いだったみたいで、 はたけ上忍、任務先でトラップにひっかかって、記憶を失ったって話だ」 …ばさっ 手にしていた資料を落とす。 数十枚ある原稿は床に散って集めるのにさぞ苦労するだろう。 「ああ!おい大丈夫かよイルカ」 「え――――…ああ」 大丈夫なわけがなかった。 カカシが今いるであろう病院へ今すぐ飛んでいって無事を確認したかった。 だが、ここで仕事を放り出すわけにはいかない。 なにもかも放り投げて駆けつけたとしたら、カカシに逆に呆れられて、やんわりと叱られてしまうだろう。 ――――我慢だ。 カカシなら、大丈夫だ。 柔な人じゃない。 あんな強い人なんだから、と自分に言い聞かせ、イルカは思考をムリヤリ仕事に戻した。 見られている。 仕事もそろそろ終わり、という頃、 机の向こう、受付の人の波の中で、遠くから、冷めた目でじっと自分を見つめるカカシの視線を感じた。 病院はもういいのだろうか? 記憶喪失は大丈夫なのだろうか? なにか言いたいなら、言いに来てください―――。 心の中でそう念じるように言ってみたが、カカシはしばらくイルカを見つめて、どこかに消えてしまった。 仕事が終わり、荷物を抱えて家路につく。 今日は週末で仕事時間も半ドンだ。 いつもの風景を眺め、道端に咲く花や木々の色合いに季節を感じながら、暖かい日差しの中、家につく。 中忍荘はオンボロアパートで、入り口付近にあじさいの花が植えられている。 これが、梅雨になるとまた、すごくいい具合に綺麗な紫と、緑色の花をつけるのだ。 それに「ただいま」と独り言のように声をかけ、葉っぱをぽんぽんと撫で掠めながらその横を通り抜ける。 がらんとした部屋に戻ると、荷物をおいて、ひとまず顔を洗う。 そして一日の仕事を反芻する。 今日おかした自分の失敗や嬉しかったことを思い出して、明日も頑張ろうと自分にはっぱをかける。 そういえば、今日はカカシが受付に来た… 気になる目をしたまま去ってしまったが。 前の任務以来だから、もう一ヶ月ぶりの再会だったのに、そっけなかった。 記憶喪失だと聞いて、さあ一体どんな感じかと息巻いていたが、見てみると別段、いつもと変わりない。 そう身構える必要もなかったか。 会いたいな… 会って、話がしたい。 貴方が任務に行ってから、色々なことがありました。 俺の教え子が任務にでたまま戻りませんでした。 …貴方のご友人が結婚しましたよ。 奥さんのお腹にはもう赤ちゃんがいるそうですよ―――― その時、チャイムが鳴った。 玄関を開けると、案の定、カカシがいた。 「カカシ先生、今、お帰りで…」 「…」 イルカと一度、かちりと視線を交わすと、なんの了承もなく部屋にあがってくる。 しかし、それはいつものことだったので、イルカの方もなんの警戒もしない。 部屋にあがったっきり、黙り込んで、家具や部屋の風景を確かめるようにきょろきょろと眺めるカカシ。 その仕草は、まるで、以前ここに来たかどうか思い出そうとしているようで、 そういえば、この人は記憶喪失なんだっけ、と、イルカはどこかためらいがちに近づいた。 「カカシ先生、その、話はいろいろ聞いています。 俺にできることがあればなんでも…」 「ここ、俺よく来てたんだよね…? 全然記憶にないな…」 「…そ、そうですか。 毎週っていうか、毎日のようにいらしてましたよ。覚えていませんか?」 「なにしてたんですか、俺たち、ここで。というか、あなたの家で俺は…」 「なにって、色々話しながら、お酒飲んだり、食事したり、 カカシ先生は上忍なのに、いつも俺みたいなのによくしてくださって…」 その言葉に、カカシは眉を顰めた。 「俺たち、本当につきあってたんでしょうね」 「ええ、そうですよ」 「信じられない」 その言葉に、イルカは慌てた。 「…そんな風におっしゃられても、本当に付き合っていたんですから、しょうがないですよ。 本当に覚えていませんか? 以前よくこの部屋で泊まって行ったりしてたんですよ、貴方。 あ、あと、受付に今日いらしてましたよね。 なにかあったんですか」 「ん〜…なんていうかね」 カカシは無表情になってがりがりと後頭部を掻いてから、上目遣いでじっとイルカを見つめつつ、言った。 「俺…アンタみたいな人、大嫌い」 「え」 「いつもへらへらしてて、人の機嫌ばっかりうかがうようなことばっかり口にして、馬鹿みたいでしょ。 だから、信じられないんですよ、あんたと俺が恋人同士だったなんて」 いま、なんて言った…? 「以前の俺はどんなヤツだったんでしょうねぇ…。 あなたみたいな人とお付き合いがあるようだから、きっとさぞ素敵な性格の男だったんでしょうね。 想像もつきませんよ。まるで、ね…。 …フッ…」 カカシはおかしくておかしくてたまらない、こらえ切れないというように何度か鼻で笑った。 なにか、見てはいけないものを見てしまった気がする。これが、カカシ先生……? 背後から、突如、違和感が襲ってきた。 「本当、冗談じゃない。記憶喪失なんて……」 ゆらり…と、カカシの背後に怒りの感情を纏ったチャクラが立つ。 その影が壁に映り、黒く揺れて、煙のように舞い上がってゆく。 ゆっくりと、スローモーションのように、カカシの影がイルカに覆い被さってくる。 イルカはごくり、と唾を飲んで、すっと足を引いた。 ぎしり…床が鳴り、腰骨にテーブルの角が当たった。 長い腕がすっと伸びる。 細い指先が、イルカに近づく。 「か、カカシせん――――」 言葉は最後まで続けられなかった。 影はゆっくりと重なり、 …離れてゆく唇に、声がでない。 「…恋人同士だったら、こういうこともしてたんでしょ? 今更恥ずかしがるとか、なしでしょ」 恋人同士…たしかにそうだった。 けれど、今、カカシの言っている恋人同士とは、以前の自分とカカシの関係には当てはまらなない。 二人は、お互い、寄り添って、未来や希望、忍びとしてのあり方を語り合い、 同じ想いを共有しあうことでお互いの心が満たされる…そんなことを大切にする、恥ずかしいくらいにスピリチュアルな関係なのだ。 触れ合うと言っても、せいぜい肩を抱き合って寄り添うくらいが最大の接近で、キスとか、それ以上のことなんて、想像もしていない、というか、ありえなかった。イルカは、恋人同士なんだからキスをして当然だと、そんな雰囲気で言われて、戸惑いを隠せない。 これから、どうすればいいんだろうと逡巡していると、カカシは静かに、低い声で言葉を続ける。 俺の記憶―――― 「思い出させてよ」 体が知ってるかもしれないし。 そう言って、再び顎を掴まれると、今度は濃厚な口付けをされた。 「………うあっ!…あ…あ…」 「色気ない…もっと色っぽい声だせないの?」 上にのしかかっている男が、荒っぽく息巻きながら吐き捨てるように言った。 カカシがズボンに突っ込んだ手の動きを止めてどく気配がしたので、イルカは待っていたとばかりにすばやく体勢を変え、四つんばいになって逃げ出そうとした。 ――――だが、すぐ後ろから羽交い絞めにされ、四つんばいのままぴくりとも身動きが取れなくなる。 イルカは、この状態はなにかに似ていると思ってすぐにピンと来た。 動物だ。 野生の動物が発情期に入り、逃げ惑うメスが、オスに上から押さえ込まれた時とそっくりなのだ。 冷たい汗が頬を流れる。 この先の展開をテレビで見たことを思い出し、あれは動物だったからぼんやりと見ているままだったが、それがこれから自分の身に起こるかと思うと目の前が真っ暗になった。 カカシにはなんの躊躇もない。 背中から腰を掴んだ右手を離すことなくスッと頭が下がり、股の間をくぐってくる。 カカシはぐるりと上を向く。片足を投げ出しもう一方を膝立て、右手は股の間からイルカの左足の太ももを跨いでがっちりと腰を掴んだ姿勢。 自由な左手が器用に動き、「ジッ」っとチャックの降りる音がして、股の間からぬっとつきだした左手を尻に回すとズボンのふちをぐっと掴んだ。 「やめ!」 「るわけないでしょ」 抵抗の間もなくずるっと引き摺り下ろされる。 「――――っ…!」 信じられないところに人の体温を感じてイルカは息を飲んだ。 カカシが自分のモノを舐め回している。 それどころか、口に咥えて喉の奥まで迎えこんでいる。 全体を強く吸われて、背筋を走る性感帯に突き抜けるような快感が走った。 快感は、脳髄を通り抜け、つんと鼻の奥まで届いた。 「…は……」 唇がわななく。 と、同時に鳥肌が走る。 全身がぞわっと総毛立ち、舐められて、気持ちいいのと、唾液の感触が気持ち悪いのとごっちゃになって、頭がパニックになる。 「気持ちいい?」 すでに後穴に二本の指を迎え入れ、カカシに中をかき回され、イルカは息も絶え絶えになって、なにかを口にしようとしても、声は自然と言葉という言葉にならない。 「…ぅ…ん……っ……!」 「何か言ったらどうなの?」 「―――――やっ…」 「や、じゃないでしょ?イイんでしょ。 中かき回されて悶えて、ココも、こんなに赤く腫らせておいて言う台詞?」 「う…」 「もっと素直に感じたら?まるで処女を犯しているみたいで気分良くないんだけど」 ――――男相手じゃあ処女なんだよ! と、つっこめるわけもなく、イルカは言葉にならない小さい声で抗議しながら首をいやいやと振る。 もう我慢も我慢も限界で、がくがくと震える両足をなんとか立たせてカカシの顔の上に崩れ落ちないようにするのが精一杯だ。 自力ではもう支えきれない肩をカーペットにつけ、誰にも見られたくない顔を交差させた両腕で覆い、ぎゅっと目を閉じ、後は、ただひたすらこの嵐のような時間が過ぎ去るのを待つだけだ。 イルカが、ここまで言い辱められ、苛められても抵抗しないのは、 カカシが、自分のことを"肉体関係のある恋人"だと思っているのだったら、それに答えなくてはならないと義務的に感じたからだ。…本当の恋人として。そうだと信じてほしかったのかもしれない。 ―――だが、それは言い訳かもしれない。 所詮、信頼なんてものは、"嘘"では買えない。 イルカは、カカシに自分がヘテロだと言って断って、嫌われたくなかった。 「―――――あっ!」 ある一点を突かれて、イルカは弾かれたように高い声をあげた。 まるで女の声のようだ。そう思って、一気に顔に熱があつまった。 「…ここがいいんだ」 「…あっ…や、やっ!…あっ!!やめっ…」 イルカは喉をさらすように仰け反った。 肩を震わせ、身も瀬もなく喘ぐ。 もう、自分が今どんな格好をしているとか、どんな声をだしているのかとか考える余裕すらなかった。 すると臍の下あたりから「ん〜、ふふ」と含み笑いが聞こえてくる。 「やっといい声出すようになったじゃない。そうこなくっちゃ面白くない」 後穴から指を引き抜き、口での愛撫をやめると、カカシは股の間から頭を出してイルカが逃げ出す前にすばやくまた背中に圧し掛かる。 ようやく行き過ぎた快楽から開放されて、イルカは胸を大きく上下しながら背後の男に懇願した。 「カカシ先生、もう……やめてくださ…」 「これからでしょ、イルカ先生」 そう言ってかぷっと耳を噛んでくる。 それだけでは飽きたらず、舌で耳朶をなぞり中までねっとりと舐めてくる。 「あ…」 自分でもおかしい声がでたのが分かった。 耳を舐められただけで全身がぶるっと震えた。 「んふふ、やらし〜ねぇ、先生」 完璧、楽しんでいやがる。 こんなカカシははじめて見た。 いつもの、口布で顔を覆い、寡黙で落ち着いた雰囲気のカカシしか、知らなかった。 無理な体勢を承知で振り返ると、頬を赤くして、目じりをさげて完璧に緩んだ口元のカカシを見た。 こんな顔もするのか。 おせじにもカッコイイとは言えない、俗物めいた表情に、こんなことをされたというのに、不思議と怒りは湧いてこない。 けれど、ぼんやりと視界が滲み、目じりから一筋の涙がこぼれた。 挿入されて、突き上げられて、喘ぎ達し、男相手に乱れまくっておいて、涙は止まらなかった。 それどころか溢れて溢れてどうにも止まらない。 達する前も、達した後も、同じ量だけ垂れてカーペットに零れ落ちる。 涙はカーペットに染み込んで、黒い跡をつけて、まだ残っている。 カカシは終止楽しんでいて、自分も感じてしまった。 その現実が胸を刺すように辛かった。 裸のまま男二人で部屋に寝転がってい姿は、無様だった。 ベッドの上で事に及んでいれば、少々マシだったかもしれない。 …自分の傷だらけの身体をさらさずにすんだから。 そんな自分の体にくらべ、のしかかるカカシの白く綺麗な肌が対照的で羨ましく、物悲しい気分になる。 こんなはずじゃなかった。 この人との関係は、お互いを高めあう崇高なもので、行き着く先にはもっと精神的に満たされたものがあったはずだった。 それが、どうしてこんなところにさ迷い込んでしまったのだろうか。 気持ちだけ置いてけぼりで、体だけで快楽の限りを尽くし。 みじめで、無念だった。 記憶喪失のカカシ相手に感じて。 たとえ好きな人本人だったとしても、別人とセックスしたのと同じだ。 これを、本当のカカシが知ったらなんと思うかと考えが至って、ざあっと青ざめた。 そして自分がそれだけ愚かな行為をしたか思い知らされた。 しかも、これだけされても、再び時を戻して、もう一度記憶喪失のカカシに求められたとき、また同じ過ちを繰り返すことは容易に想像できた。…断る自信などなかった。 カカシになにかを求められて、答えないわけがなかった。 どんなことであれ。 どこまでも情けない自分に苛立ちを覚えるより、悲しい、悲しい、と心が悲鳴をあげる。 思考より先に、どの感情よりも先に、胸を突き抜けるような悲しみだけが溢れてきた。 嗚咽をこらえきれず、カーペットの端を掴んで「うっ…うっうっ」とくぐもった声を漏らした。 これでは、まるで、子供だ。 親に叱られるのを恐れ、声をあげずに、押し殺して泣く小さな子供が思い浮かんで、 今の自分とどれほど似ているだろうかと現実逃避する。 「先生…もう泣き止んだら…」 自分の裸を背後から抱きしめたまま、銀髪を乱したカカシが言った。 セックスをするときの恍惚とした表情は消え、鋭い目をして髪を乱したその顔は、さながら野生を取り戻した少年のようにも見える。薄暗い部屋にその目は鈍く光り、思考を乱されて、イルカは言葉を失ったまま目を閉じた。 NEXT ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― |