御鬼道
















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「明るくなったら帰れ。ここはお前のように興味本位な奴が来られるような場所じゃない」

カカシはそう言うと、眠気をもよおした俺に粥を振舞って姿を消した。
夜も遅いというのに、鬼はどこへいくというのか。
行き先が気になったが、俺は眠気がひどくて、毒見もしていない粥を口にしてしまうとすぐに横になってしまった。



翌朝目覚めても、側には誰もおらず、空になった粥の器と焚き火の跡だけが空しく残っていた。


村に帰った俺を待ち受けていたのは、村人の嘲笑の声と、少年達のいじめだった。


「あの森へ行ったな」

村で、こうしろといわれたらうなずかぬ者のいない重鎮の老婆が厳しい口調で言った。

これは罰だよ。

そう言って背中を強い鞭で叩かれた。

一回だけではない。二回も、三回も、繰り返し、背中を鞭で叩かれた。

血の滲んだ背中のままふらりと帰路につくと、その背中めがけてボールが投げつけられた。

―――痛い!

叫んでも、少年達の行為はとまらない。

痛い!痛い!やめて――――

叫びながら、俺は村を逃げ出した。
それで、どこへ向かうかなんて考えられなかった。


気がつけば、また、東の森へ向かっていた。


「また来たのか」、と言われれば、もう戻るつもりもない、と答えるつもりだった。
こんな村!と、もうなにもかもどうでもいい気分だった。

洞窟は静かだった。まだ、空は青い。

「どうした、その傷」

「また来たのか」とは言われなかった。

その白く細い指で傷口に薬を塗られると、不覚にも、ぼろり、と涙がこぼれてきた。

「あんな村、もう嫌だ。どこかにいってやる!」

流れるまま涙をこぼしながら、カカシに訴えた。洋服を脱がせて白い包帯を巻かれるころ、ようやく涙は引っ込んで目元が 痛く腫れ上がっている感じがした。あんな大声で、泣き喚いて恥ずかしかった。

「なに、お前。恥ずかしがってるの?」

カカシはくすりと笑うと俺の目じりの涙の残りを拭った。

「カカシ、俺に仕事をくれよ!なんだってやる!あの村には帰りたくないんだ」

自分で何を言っているのか分かっているのかと自答自問する。
相手は鬼なんだぞ、人を食らう、恐ろしい鬼だぞ。

「仕事なんて…ないよ。ここにはオレ独りで十分事足りている」

「だって、寂しくないのか!?一人ぼっちなんだろう?」

俺も。俺も独りなんだ。

ひとりぼっちなんだよ。

相手は鬼でも、同じ境遇なんだからなんとかなると思った。
そう言うと、神妙な表情をしたカカシと目が合った。

「どうしても、っていうならひとつだけあるけど…する?」

「うん!なんでも」

「じゃあ、オレと、寝れる?」

「?…なんだ、それ」

言葉のままなんだけどな、そう言うと、カカシはくすりと笑って首を横に振った。

「――冗談。お前のような子供に、オレの相手は無理だ。大人しく村に帰れ。
その傷…ひどい折檻を食らったんだろう?ここに来たから…
いいか、お前の村ではここに来ることは、俺と会うことは、罪なんだよ。
どんな訳があろうと、ここに来ては駄目なんだ。分かったか」

「寝るって、一緒に寝るだけなんだろう!?それくらいなら俺にだってできる―――」

言い終わらないうちに唇を塞がれた。
冷たい唇だった。

「…こういうこと」

ごちそうさま、と言い告げられ、そのまま冷たい床に横にされる。
カカシが上にのしかかってくる。胸が苦しい。

「やめ…!やめろっ!」

叫んで、はっとしてカカシを見た。
ひどく…ひどく傷ついたような表情をしたカカシと目が合った。
どうしてだろう。どうしてそんな顔をしているんだろう。

「…食らうぞ」

「食らう…?」

「オレに食べられたいか?そんなに」

首を強くつかまれた。伸びた爪が首に食い込む。痛い。
俺は声も出せず、すぐにぶんぶんと首を横に振った。

「じゃあ、帰れ」

見逃してやるから。

今なら。

ぽつり、と、鬼は、そう言って、俺の上からどいた。



(2007/9/22書)続く




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