御鬼道
















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火を囲んで、カカシがあぐらをかきながら、なにか、草をすりつぶし器ですりつぶしている。
俺は、足を抱えて、黙って火にあたりながらそれを見ていた。
今、何時だろう。もう、午の刻は越えているころだろうか…
結局、帰る、と言って、帰らなかった…

「静かなガキだね…お前、口がきけないのか」

カカシが作業をしながら、声だけで問うた。

「…―――お前は、鬼なのか?」

はじかれたように答えた。

その質問が癇に障ったのか、カカシは顔をあげてきつい眼差しで見つめてきた。

「お前達がそう呼んでいる者が、人肉を食らうというのならば、そうだと言える」

鬼は人肉を食らう。

ぞっとした。

「…言い伝えは本当だったんだ」

声が震えた。

「"南の森には福神がすむ。秋の田畑に米粒を実らせる。
東の森には鬼が住む。悪いことをする子供をとって食らう"…俺の村の歌であるんだ」

「ふぅん…うまい歌を作るもんだな。子供を食らう、か。その通りだよ」

くっくっくと笑いながら俺を見下ろしてくる。
俺は尻で後づさるときっと睨み返した。

カカシはそう言うと、すりつぶし器からすりつぶした粉になった草を、床に何枚も広げた白い薬紙に移した。

「これは、ここらへんでしか生えていない薬草で村から月一やってくる商人に渡している。 オレはそれで生計を立ててる」

「生計…?人間を食らって生きているんじゃないのか?」

まさか、目の前にいる男がいまさら人間だといわれたらどうしようかと思った。
人にあらざらぬ声を聞かせたり、幻を見せて森に誘ったり、普通ではない証拠をいくつも見せられている。

「…人間の肉を口にしたのはもう何年前になるかねぇ…そうそう人を殺して食らえるわけがない。目だってしまえば逆に狩られる側だ。 この数十年は大人しくしているもんさ」

「…何歳なの?」

「そんなことばかり聞いてどうする?」

「…里のみんなに…」

「いいふらす、か?それで、みんなで大挙してこの洞窟に来る…って話か」

「そんな…!」

「いいか、オレは見世物じゃないよ。そんなことしてみようものなら」

お前を取って食うぞ

そう言って、ニィッと笑うカカシに、イルカはまたぶるり、と震えた。



(2007/9/22書)続く




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