●眠る貴方の隣で




心地よいまどろみから目を覚ますと、ベッドの端に腰をかけて髪を梳かしている貴方がいた。

ベッドの隣には大きな姿見があって、そこに貴方のすべてが映っている。

今はすっかり平穏さをとりもどした裸体を見つつ、枕もとのタバコを手にとる。
そして、以前、起きぬけに真横に寝ている貴方に「その大きな姿見は誰のものか」と尋ねたことを思い出した。

イルカ先生は少し困ったような顔をして「母の遺品です」と答えた。
慌てて謝るオレに、イルカ先生は苦笑する。
こうなることを予想していたからだろう。

艶やかな黒髪を頭上に持ち上げるとうなじが露になる。
日に当たっていた部分と、洋服に隠れていた部分とでわずかに色が違う。
少し日焼けしたんだなあと思いながら、せっせと髪を結うイルカ先生の後姿に見とれた。

ベッドの中でまた少しうつらうつらしながら、灰皿でタバコの火を消す。

貴方の後ろ姿を見ながら、またもうひとねむりしよう。

日が高くなって、再び目を覚ます頃には、貴方が起こしにきてくれるはずだから。








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絵日記から抜粋

(2007/8/25書)




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