Terrorist VS Sluts Vol.1

 奴隷少年が家に帰ってまずしなければいけないのは、ランドセルを下ろして服を全部脱ぎ、畳んで靴箱の上に載せる事。その時リボンで縛ったものに触ってはいけないし、お尻に挿れた機械を抜いてもいけない。

 裸になったら、置いてある首輪を取って、項に回す。胸元に揺れる名札には"FUYUTO"とローマ字で刻んである。名前を忘れないように。

 内扉を開けて居間に入ると、ソファに腰掛けた少女が軽く目配せして、おかえり、と言う。少年と同じく靴下以外何もつけておらず、両足を開いたままテレビを観戦している。股間には、体格の大きな別の少女が四つん這いになり、薄い茂みへ鼻を埋めていた。

「ほら、夏樹お兄ちゃん、冬人帰って来たよ」

 ソファの少女に声を掛けられて、四つん這いの少女が顔を上げる。気の強そうな釣り目と、通った鼻梁、狐を髣髴とさせるような鋭い美貌は、仄かに紅潮している。艶めいた唇には半透明の液体がこびり付き、胸元ではスレンダーな体格に不似合いな巨乳が、荒く息ずいていた。

「遅かったじゃねぇか、バカ冬人!」

 彼女はハスキーなアルトで詰るように呟くと、いきなり少年めがけて飛び掛る。勢いでたわわな胸の果実が揺れ、紅の尖端に銀の太輪を煌かせながら、白い母乳を零した。

「夏樹さまぁ、だめっ…」

「いいからっ、さっさと、脚開けよっ!俺、今日いっぱい我慢したんだからなっ!」

 少年の両脚を割り広げると、少女は自分の鼠蹊部をもどかしげに弄った。指が握るのは、紛れも無い男性器、しかも巨根といっていい大きさだった。間断無く先走りを滴らせる鈴口を、乳首と同じ銀の輪が貫いている。彼女、いや彼は、三つの尖端から体液を零しながら屈み込み、力無く抵抗する弟の後孔を舌で寛げた。

「あはは、奴隷同士の癖に、冬人にだけは態度大きいんだから」

「うるせぇなぁっ、秋音だって俺に遠慮しねぇじゃんか」

 秘部から口を離して拗ねたように答えると、代りに肉杭を捻じ込む。乳房を持った少年は、柔らかく襞の絡み付く感覚に陶然としながら、悍馬の激しさで幼い身体を犯し始めた。

 嬌声とも悲鳴ともつかぬ叫びが上がり、あどけない顔付きは早くも涎と涙を溢れさせながら宙を仰ぐ。異形の兄は構わず弟を抱え起し、せっかちな早さで腰を使い始めた。ソファの少女はごくんと喉を鳴らすと、すっと立ち上がって二人に近付く。

「せめてローター抜いてからすればいいのに」

「んなっ…ひま…ねぇよっ…!」

 少年は歯をがちがち鳴らしながら、歓喜と恐怖に泣きじゃくる相手を、一層激しく責める。少女はその背後に回って、二人の間に両手を差し入れ、薄く脂肪のついた弟の胸へ指を食い込ませた。

「ひぎゃぅうっ!ふぐぅっ!!あき、秋音様ぁあっ」

「冬人はちゃんと敬語使えるから偉いね。あ、胸、もう少し膨らんで来たみたい。夏樹お兄ちゃんより早くミルク出るようになるかなぁ…ふふっ」

「ぃぎぃっ!!揉まっ…ない…でぇ…」

 途切れ途切れに懇願されると、少女はにっこりして、逆に激しく指を動かした。末弟の顔が苦痛に強張るのを見て、兄は面白くなさそうに抽送の速度を上げる。

「バカ冬人っ……俺だけ見てろよぉっ…秋音、ずるいぞ…今は俺がしてんだからっ…」

「駄目ー、あたしの方が立場が上なんだから…それに夏樹お兄ちゃんだって知ってるでしょ?膨らみはじめって一番敏感になるんだよねぇっ…お兄ちゃん小さい頃良く泣かされてたし」

「んなの…忘れた…」

 頬を染めながら、夏樹は妹から目を逸らす。秋音は手を止めないまま、口を尖らせると、半開きになった冬人の唇から唾液を啜り取った。

「美味美味♪まぁ、おっぱい大きくする薬、冬人には夏樹お兄ちゃんのニ倍位打ってるから、発育も感度も違うんだろうけど…ほら冬人、あーんしててね?」

 姉は片手を胸元から抜いて細い顎を掴むと、横に捻じ向け様、唇を奪った。弟はすぐ従順に受け入れると、共に艶めいた薄桃色の唇の間から、舌と舌とが絡む粘った音が漏れる。

 のけものにされたような悔しさに、長兄はいきなり身を乗り出すと、己が乳房を弟の胸に押し付け、双つの唇の間に割って入った。すぐに三つ巴の舌戯が繰り広げられる。兄と姉は冬人の舌を取り合って啄むように接吻を繰り返す。まだ未熟な末弟は、幾度も流し込まれる涎に噎せながら、貪欲な雛に給餌する親鳥のように、忍耐強く舌を動かしていた。

「ぷはぁっ…はっ…上達したねっ…二人とも」

「あふっ…んっ…偉そう、に…はっ、くそ、冬人の中、温かくて溶けちまいそっ…」

「あぐっ…ひぎぃっ…夏樹さ…ひぅ…もっと…ゆっく…」

「指図すんなぁっ、バカ冬人!…こんな、やーらかいのに、締め付けるな…奥でピアスとか、棒の横…とか…ぎっしり詰った…ローター…ごつごつ…」

 夏樹は惚けたように呟きながら、肩を奮わせると、まだ蒙古斑の色も濃い臀部に一際強く腰を打ち付け、熱い迸りを注ぎ込む。性感の過敏になった少年には灼熱の溶岩で臓腑を焼かれるような心地だったのだろう。信じられない角度まで反り返った背を、今度は姉が抱きとめ、胸飾りを抓り上げ、白い喉に噛み付くようにキスをする。

 冬人は、どこにも逃げ場のないままもう声すら失い、与えられる刺激に痙攣するだけだった。

「前みたいに気絶すんな…まだ、後十回はするからな…気失ったお前犯ってもつまんねー」

「ねえ、そろそろ冬人の前貸してよ。夏樹お兄ちゃんばっかりするのずるい」

「ん…ほら…」

 軽く握っただけでも折れてしまいそうな踝を掴んで脚を上げさせ、繋がったままの身体を反転させる。野太い兇器に直腸を掻き回され、少年は舌足らずの喃語を零す。汗で前髪のへばりついた額に、夏樹の掌が伸びて、後頭部からぐいと豊かな胸の谷間に埋め込んでしまう。兄は胡座を組み直すと、弟の尻を揺すって位置を落ち着け、丁度赤ん坊に用を足させるような姿勢を強いてから、じれったそうに待つ妹へと手招きをした。

「いいぞ。冬人も準備オッケーだって…」

「言ってないでしょ…でも、小さいの、しっかり元気になってるね」

 まだ皮を被ったままの幼茎を、秋音は爪で軽く弾いた。

「きぅっ!」

 細い悲鳴を漏らして、冬人が跳ねる。頭が動いて、枕にしている巨乳にぶつかると、ピアスをした尖端から、母乳が溢れ出て、頬を濡らした。夏樹は眉を八の字にしつつも、愛しげな表情で弟を見下ろした。

「ビキビキじゃん、バカ冬人。早く出せるようになれよ」

「出せないからいいんじゃない。幾らでも遊べるから」

 秋音は内股から蜜を滴らせながら、指で茂みを分けて、秘裂を開いた。淫液が珠となって弟の屹立に当り、千々に弾け散る。

「秋音、大洪水じゃん」

「夏樹お兄ちゃんのご奉仕のお陰だね♪ねぇ冬人、起きてる?これから秋音お姉ちゃんは何をするでしょう」

「…んっ、…あぅ…」

「答えは…何でも冬人のお願い通りにしてあげる、だよ。だからおねだりして?」

「はぁぅ…止め…お尻の…ブル、ブル…」

 秋音は耳に手を宛ててわざとらしく首を傾げた。

「えぇ?聞こえない。ちゃんと言って?冬人は何して欲しいの?」

「お…尻…の…」

「違うでしょ?」

 夏樹は妹の猿芝居に苦笑しつつ、耳の内側を舐り、何事かを囁く。冬人はべそをかきながら怯えて首を振ったが、すぐ乳頭を摘み潰され、腰を揺すられて、きちんと復唱するよう促された。

「きんしっ…そーか…させ…くだ…さ…」

「したいの?」

「秋…音様としたい、です…させっ、ぎぅっ、あぐぅっ!」

「冬人は変態だね。お姉ちゃんとしたいんだ。そんなにあたしが好き?」

 冷静さを装いながら、秋音の目の色は変わっていた。兄と弟を眺めながら、指は無意識の内に蜜壷の中へ滑り込み、蠢いている。意外にも惑乱の極みにある筈の冬人は、照れたように睫を伏せ、涙の粒を振り落とした。

「ねぇ、ねぇ好き?だからしたい?ね?お姉ちゃんとしたい?」

 決まった答えを要求しているのだから、質問ではない。だが少年はこくんと頷くと、焦点の定まらない双眸で姉を仰ぐ。

「好き…でも…」

「冬人は俺のほうが好きだろ」

 むすっとした夏樹が、注意を引き戻そうと耳朶に歯を立てる。冬人は華奢な鎖骨を見せて反り返ると、潤んだ眼差しで兄を非難する。

「夏樹さま、も好き…で…でも…でもぉ…」

 横槍に苛立った秋音は、舌を鳴らすと、両の爪先を絨毯に滑らせ、バレリーナが体操をするようにするすると腰を沈め始めた。冬人は、恐懼に頬を引きつらせて叫ぶ。

「だめぇ、秋音さま、やっぱりだめぇ…」

 聞き飽きた抗議には耳を貸さず、姉は弟を受け入れようとする。兄は根元を掴んで、二人が繋がり易いように手助けしてやる。少女は指で広げた中心を固く反り返った秘具へ押し当て、ゆっくりと飲み込むと、喜悦の吐息をついた。

「…皮ごと入ちゃったね…繋がるの…嫌なんて…ちゃんと妊娠…させられるように…なってから言いなさい…」

「…ふぁっ…っ…んっ…」

「冬人、秋音ぇ…俺、動くぞっ…もっいいだろっ…?」

 夏樹が、自身半泣きになって尋ねる。冬人の肛腔に収めた陰茎が、己の放った精液に浸かりながら、"最強"で蠢動する無数のローターと、脈打つ腸壁に押し付けられているのだ。これ以上大人ぶっていられない。

「待って、もうちょっとこのまま…」

「動く!動くからな!」

 胡座を掻いたまま、揺籃のように身体を前後に振って、腰に載せた弟妹を揺さぶる。ボーイソプラノとガールソプラノが可憐な二重奏を唄い、ひしと抱き合う。だが辛うじて意識が飛ぶのを免れた秋音は、兄よりは随分慎ましやかな胸を上下させ、負けじと腰を振り始めた。真丸な尻肉が雌鹿のように跳ね、開きかけた口元が再び挑戦的に歪む。意地を張って絶頂を迎えまいとする二人。互いを先に果てさせようと競い合って調子を上げる。間に挟まれ、既に息も絶え絶えな末弟にとっては酷な責苦だった。五分、十分と時の砂を噛むように、狂宴は長引いていく。

「はっ!夏樹お兄ちゃん、冬人の中でまた達っちゃうの?早過ぎない?」

「秋音だって、んっ!涎…垂れてるっ、ぞ…ふぁっ!…もうす…」

「冬人はもぅ…ずっと達き放し♪…っぁあっ!?うんっ、達くね、お兄ちゃん、いっしょ達こ?」

 妹の手が、弟の小さな掌を取り、兄の細い指と絡める。少女のすらりとした脚が少年達の腰を纏めて締め付ける。

 喘ぎを殺そうと、兄は弟の右肩を思い切り噛んだ。得たりとばかり姉は弟の左肩に噛み付く。瑞々しい三つの肉は一つに塊って、脳を焦がすような真白な爆発に耐えた。

 嵐が通り抜けていくのを、彼等はそのままやり過ごす。呼吸すら漏れてこない。

 やがて、夏樹が、秋音が、最期に冬人が順々に息を吹き返す。まだ恍惚としている少年達に対して、少女は幾分回復が早いようで、ゆっくりと弟との繋がりを解くと、いきなり兄の乳房にむしゃぶりついた。

「なぁっ!?止め…吸うな、齧るなぁっ!」

 秋音は、白い歯の間に銀の輪を咥え、勢い良く引っ張って母乳を分泌させる。消耗しきった兄は抵抗も出来ず、西瓜のような胸を滅茶苦茶に揉まれ、裏返った哭き声を出した。

「ほほ、ははひはっはほ」

"喉、渇いちゃったの"

 と言ったつもりだろうか、口一杯に果肉を頬張った悪戯娘は、こくのある飲み物に舌鼓を打ちながら、両の乳房を纏めて絞り、更に多くを嚥下していく。

 気の強そうな吊り目をだらしなく下げて、浅く呼吸する夏樹。僅かに少年らしさを残した相貌は被虐の悦びに染まって、曲線的な肢体と奇妙な対照を見せる。

「勘弁しろよ…秋音ぇ…俺、むねは…」

 滋養のある液体で口腔を満たした少女は、ピアスのついた乳首を口を離すと、兄の乳房を枕にしている弟の唇へそれを口移しにした。

「んっ…んっ、んっんっ…けほっ」

 咳込む彼の頬を両手で包んで、尚も接吻による授乳を行なう。やがてとろんとした瞳のまま、少年は全てを飲み下した。

「美味しかった?」

 優しい囁きに、微かな頷きが応える。秋音は微笑んで兄を見上げた。

「冬人、美味しかったって」

「…ぁ…そっう…か…うん…」

「そろそろ、抜いてあげたら?」

「んっ…」

 小さな腰を掴んで、ゆっくり持ち上げると、腸液の糸を引きながら、菊座の秘肉が裏返っていく。肉の栓が抜けると、黒々と広がった穴からプラスチックの玩具が幾つも零れ、絨毯の上に跳返っては蚤のように飛廻る。一つが秋音の形の良い鼻にぶつかり、彼女を痛みに呻かせた。

「ふひっ、ちょっ、これ止めて夏樹お兄ちゃん!」

「コントローラ、どこだ?コントローラ、痛っ、暴れんな、機械の癖に…」

 気が付いた妹はソファに掛け戻って、テレビのリモコンのようなものを掴み、ボタンを押す。やっと玩具達は生命を失って床に落ちる。

「もぉ…ちゃんと、冬人の中に戻しといてね、後で春香お姉ちゃんに怒られるの私なんだから」

「解ってるよ、その辺に飛んでねぇ?」

 夏樹は弛緩しきった冬人を仰向けに横たえると、四つん這いになり、乳房を重たげに揺らしながら球体を拾い集めた。妹は溜息をつくや、同じように絨毯の間を探り始める。

「はい、七個」

「えーと、こっちは十一個、後二個どこだ」

「あー、多分ね」

 秋音は冬人の側に屈み込み、いきなり排泄口に指を入れて、ずぶずぶと手首まで押し込んだ。そのまま捻りをい利かせて、白濁液に塗れたローターを二つ引き摺り出す。少年は舌を突き出して激しく痙攣したが、手が抜けるとまた大人しくなった。

 少女は自分のこめかみを指で突付いて見せる。頭を使え、という意味だ。

「ね、これで二十個ぴったりでしょ。はい、挿れといて」

「シャワー使ってからな」

 兄は弟を抱き抱えると頬擦りして、歩き出した。妹は伸びをしてから後についていく。

「あーあ、春香姉さま早く帰って来ないかな。お家にご主人様がいないとやっぱり続かないもん。明日は土曜日だから一晩中遊べるのにね…」

「そんな事言って、秋音だって最後はいつも許して下さいって泣き入れるだろ」

「でも、後から思い出すと凄く幸せじゃない。心臓がドキドキして、苦しくなって、生きてるのが嬉しくなるでしょ」

「…恥かしい奴…」

 シャワー室の硝子戸が閉じる頃には、絨毯の上で混じり合った体液は、もう異臭を立ち昇らせてた。












「だから、因数分解なんて公式だけなの!もう、普通に式に当てはめて解きなさいよ」

 秋音が冬人にシャープンを押し付ける。絨毯を片付けた、剥き出しになったフローリングの上で、裸の少女と少年はクッションに正座したまま、アクリル製の角卓に勉強道具を広げている。

「だって…この公式、まだ良く飲み込めなくて…」

「もう、さっき説明したのに。二次関数の基本式があるでしょ」

「はい」

「それでね、まず等号の両側をaで割ると…」

 冬人は真剣な顔で姉が走らせるシャーペンの先を覗き込んでいる。うずうずしてくる秋音は、説明も段々上の空になり、とうとう俯き加減な額に接吻して、押し倒してしまう。

「勉強なんて明日か明後日にしよ?ね?」

「だ、だめです。秋音様が飽きたのなら、僕、独りで頑張りますから…」

「勉強は独りでできるけど、遊ぶのは独りじゃ楽しくないんだよ?ねぇねぇいいでしょ冬人」

「ふぇ…さっき一杯遊びましたよ」

「夏樹お兄ちゃんが居たじゃない。二人っきりだったら、もっと凄いこと出来たんだよ…」

「んだとこら」

 牛乳パックを片手に、バスタオルで頭を拭きながら夏樹が戻ってくる。相変らず大きな真中で尖った乳首がつんと天を向いている。ゆらゆらと揺れる銀の輪は蒸気で曇っているが、錆を気にした様子は無い。失言とばかり口に手を宛てる秋音の下から、冬人が恐る恐る這い出す。

 夏樹はどかっとソファに腰を降ろすと、牛乳を一口飲んで唇を舐めた。

「冬人、勉強なんて良いからこっち来いよ?」

 末弟はげっそりとした面持ちで頭を振った。兄も姉も余り変わらない。この二人は勉強しなくても成績が良く、週末に学校の授業内容の予復習をする必要など認めないのだった。

 困って逃げ道を探す少年を、再び少女が玩具にしてやろうとした時、ドアホンが鳴った。続けて二度、間を空けてもう一度。

 夏樹がぱっと席を離れ、秋音ももう弟に興味など無くして顔を上げ、冬人は目を輝かせて跳ね起きた。三人が一斉に玄関へ駆けて行くと、並んで押し合いへし合い、膝立ちのまま来訪者を待った。

 把手が周り、寒風と共に黒いエナメルのロングコートが入ってくる。来訪者は後手に扉を閉めると、帽子をとって兄妹達に微笑みかけた。

「ただいま、私の奴隷達」

「「「お帰りなさいご主人様!!」」」

 活きの良い返事に目を細め、来訪者はコートのジッパーを降ろす。左右の合わせ目から、血管の透けるような青白い肌が、ぼぅっと蛍光灯の光に淡く映えた。釣鐘型の乳房、砂時計のような胴、鍛錬によって上方に筋肉のついた腰が、余す処なく露になっていく。

 若々しく張の在る姿形には、しかし病と死を暗示するような不吉さも漂っていた。夏樹と同じく乳首の先には太輪を嵌めているが、材質は黄金で、細い鎖と連なって大粒の紫水晶が揺れている。耳飾や、臍にも同じ石が嵌めこまれているのみならず、綺麗に剃り上げられた股間の、大き目の陰核にも竜胆の色が煌めいていた。さらに秘裂の襞には、左右に四個づつ、金の輪が通してある。

 青磁の肌膚に、山吹色と紫紺という奇抜な組み合わせだが、美しい装いだった。はっきりと、跪く奴隷達との格の違いが伝わってくる。真っ先に我に返った秋音は、コートを脱がせて片付けに走ろうとした。女性は少女を片手で抱き上げると、両頬に接吻して、絹糸のような髪から匂いを嗅いだ。

「暫くこうさせていて、外はとても冷えたのよ…雪になるかもしれないわ…」

「はい、春香姉さま」

 うっとりとする妹の体温に、姉の緊張が和らいでいく。そっと相手の背筋を撫ぜながら、ややあって深みのある声で話し掛ける。

「留守中、二匹をしっかり調教できて?」

「冬人は素直でしたけど、夏樹お兄ちゃんは意地悪でした。先週だって浣腸の途中で粗相をして、喧しく泣きながら駄々を捏ねたんです」

「そう。大変だったわね。秋音の年では年上の奴隷を調教するのは苦労するわね」

「うんうん、最後はお兄ちゃんも協力してくれて、ちゃんとしてくれました」

「まぁ、お兄さん想いだこと…さ、行きなさい。コートを私の部屋に掛けたら居間にいて」

 女奴隷は名残惜しげに主人から離れると、コートを抱えて走っていった。次に、春香は、夏樹を手招きする。告げ口された兄は多少びくつきながら、母乳を零さないよう慎重に姉に抱きついた。学校ではそんなに背の低い方ではない彼だが、姉には頭一つ分足りない。

「夏樹、怖がらなくていいのよ?貴女が恥かしがり屋さんなのは、とても可愛らしい所だから」

「うん…俺、秋音に悪かった。あいつ、姉様の代りするのに慣れてないのに…」

「馬鹿ね。あの子に代って皆の世話しようとしたのね。でも無理に役割を変えると秋音が混乱するわ。一番経験の長い貴女には、解るでしょう」

「うん…」

「もっとぎゅっと抱いて、私今、汚れるような服を着けてないわ。それにまだ寒いの」

 乳房と乳房を寄せ合って、深い口付けを交わす。静かに刻は過ぎて、姉は白く濡れた胸を手で拭うと、舌先で味わって相好を崩した。

「味が良くなったわ」

「牛乳とか、姉さまに言われたもの、ちゃんと喰ってるんだ…」

「偉いわ。もう毎朝家族全員分のミルクが出せるかしら?」

「うん…頑張る」

「じゃ、秋音の処に行ってらっしゃい」

 少年奴隷はたわわな胸を弾ませて去る。美しい長女は、最後に残った冬人に向ってやけに冷たい視線を投げた。

「あら、何してるの?」

 たった一言が彼を惨めさでいっぱいにする。じわっと涙ぐんだ少年は、敬愛する姉に悟られまいと顔を伏せた。

「俯いて良いと言った覚えは無いわ」

 慌てて表を上げる。だが涙腺はどうしようもなく、頬を熱いものが濡らしてしまう。

「愚図で泣き虫では取り得がないこと。夏樹はお前の年にはもう一人前だったのに」

 恥かしさで消えてしまいたくなるが、しかし抑えようとしても目尻から熱が去らない。すると手入れの行き届いた片眉が上がって、不興を示した。

「何か喋ったら?そんなに私が怖い?」

「ぁ…すみま…せん…」

「気の良い夏樹と秋音に甘やかされて王子様気取り?お前の立場は解っているでしょうに」

 少年は靴脱ぎ場に降りて、編上げ靴の上に蹲ると、歯を使って器用に紐を解いて行く。突き刺すような視線を裸の背に受けて、時折小さな肩がびくりと震える。何とか紐が解けると、穢れた靴先を噛んで、姉の脚から引き抜く。春香は、自由になった脚でふっくらした弟の尻を踏み台にし、悠々とストッキングを脱ぐと、今度は指の股を広げて命じた。

「お舐めなさいな」

 答えの代りに、冬人の舌が伸びて、ぎこちなく奉仕する。姉は親指と人差し指で、口腔を描き回すように動かし、依然冷徹な面持ちを保っていた。

「仕事を貰えるだけ有難いと思いなさい」

「ふ…ぐぅっ…んっ…」

「少しも嬉しそうな顔をしないのね。いつもそう。何をされても僕は仕方なく耐えています、と言わんばかり。誰も頼んでいないわ。嫌ならこの家から出て行きなさい」

 涙の量が増す。しかし舌は止まらない。彼は懸命だった。自分が陰気で、姉にどれほど嫌われているとしても、捨てられるのが恐ろしかった。

 徐々に春香の怒気が増してくる。

「此の世に、お前より不幸な子なんて掃いて捨てる程います。見ているこっちが恥かしくなるような嘆き方はお止め。夏樹や秋音は騙せても私には通じなくてよ」

「ふっ…ん…ねろ…んちゅっ…」

「泣くほど嫌なら、しなくて良いと言ってるの。どうしてお前には解らないのかしら」

 氷のような声音は幽かに上擦り、震えてさえいた。だが、全身全霊で奉仕を続ける少年にはとても聞き取れない。

「解らないふりをしてるの?それがどれほど男や女を誘うのか」

 髪を掴んで無理矢理引き摺り上げ、頭から貪り喰ってやろうかという勢いで、唇を奪う。片手は前に、もう片手は後ろに回して、性の技巧の限りを尽して弄ってやる。

 この長女に掛かると、感じ易い末弟は数秒と持たず嬌声を迸らせてしまう。その声だけで、平静だった筈の肢体は内側からじっとりと湿ってしまう。擦れる肌が高圧電流のような衝撃を齎した。奴隷と主人の関係には最悪の相性。互いが側にいるだけで頭がおかしくなるほど快い。

「私は、お前が大嫌いよ冬人。全部が嫌いなの。お前の顔を見る位なら他の二人を置いて家を捨ててしまいたくなるわ…どうして出て行かないの。淋しいのならいっそ自殺しなさいな」

 言葉と行動は裏腹だった。何処にもやるまい、決して死なせまいとするように、しっかりと抱き締め、能う限り多くの面積で触れようとする。

「でも私はお前の主人。不本意ながらね。私を呼びなさい」

「ご…主人さ…んむっ…ぅぐ…」

 狂ったように接吻を重ねて、酸素を肺に満たす余裕すら与えない。前立腺を押し、陰茎の皮を剥きながら、両肩の噛み跡をさらに深く抉る。

「うぁあっ!あっぐぅ…」

「けなげだこと…お前はきっと影では嘲ってるでしょうね。玄関を開けて、出迎えたを受けた時、私が真っ先にお前の顔を見て、緩んだ表情をしたからって…」

 いっぱしの男なら、心外だと遮った処だろう。あるいは自意識過剰だ、と反駁したかもしれない。だが少年にとっては、家族の誰よりも成熟し、思慮深く、落着いた姉が、子供じみた八当たりをするとなど、想像するのすら迂遠だった。

 春香は冬人の胸に舌を這わせ、所有の証でもあるようにキスマークを刻んでいく。

「お前に会いたくて帰って来たとでも?さぞや、容姿や心根に自信があるんでしょう…笑って御覧なさいな。もう一度、夏樹や秋音が一緒に居た時のように…私を誑かそうとして御覧なさい」

 涙で濡れた顔が、苦労して歪な笑顔を作る。先ほど見せた心からの歓喜とはまるで違う。だが、それすら彼女の癇に障った。

「馬鹿にして」

 頬を張る。掌に残る痺が快い。

「どうして、私が取り乱さなくてはいけないの」

 弟を床に投捨て、額に手を当てる。違う、彼女は独りごちた。今夜は皆に大切な話があるのに、帰宅早々戸口に突っ立て冬人を嬲っていてはいけない。唇を噛み、痛みで我を取り戻す。この子と二人だけになったのが間違いだった。久し振りでガードが下がっていた。

「ご主人…様」

「黙りなさい。黙って…其処に座ってなさい。居間には入らないで」

「はい…」

 そうだ、それでいい。一瞥も呉れずに内扉を潜る。床暖房で温まった部屋に、春香は却って不快を感じたようだった。何時の間にか象牙の膚はびっしょりと汗を掻いている。

 明るい部屋の真中、ソファには夏樹が座り、膝には秋音が乗って、兄の胸から飽かず母乳を楽しんでいた。

「飲んだ分のミルク全部出してね。足りなければまたお尻から挿れて上げる♪」

「もっと乳首吸って、噛んで、食い千切って!俺秋音の牝牛だから、秋音に壊して欲しい…」

「うん、あたしもお兄ちゃんの仔牛になりたいよ。お兄ちゃん印の母乳ずっと飲んでたいよ」

「秋音…秋音ぇっ…」

 どうやら忠告の甲斐があったらしい。元々意地を張り合わなければ息の合う兄妹なのだ。誇らしく感じながら、春香は隣へ座る。口の周りを白くした少女が蕩けた視線を向けて来る。

「あれぇ…ふゆとは?」

「あの子なら玄関に居るわ…二人とも、少し休憩して頂戴。大切なお話があるの。実は新しい撮影の仕事が入ったのよ」

「さつえー?」

「どんなの?」

 二人が同時に訊く。姉は微笑んで、毛髪の間から一本のメモリーカードを取り出した。ソファを見回して家電のリモコンを探し出し、ソケットに差し込むと、壁に貼ったディスプレイにデータを転送する。静電気が弾け、ゆっくりと画面が明るくなった。春香はリモコンで照明を落としながら、やっと微笑んで応えを述べた。

「面倒な仕事ですけどね…これが今回の男優さん」

 テレビ画面に飛行機のタラップが浮び、ターバンを巻いた人々が映る。二人が目を凝らすと、やがて二人のターバン男に付き添われて、朱儒のような矮躯の人物が姿を現した。顔は覆布に隠されている。メモリーに入っていたのは盗撮映像なのか、所々ノイズが走る。

「また外国人?あたし達この人とするの?」

「そうよ、でも今度はヨーロッパじゃなくてアジアの人。二人ともチェアラム教は知っている?」

「んー、世界史の時間に習ったかも。あ、夏樹お兄ちゃん、春香姉さまが隣に居るだけで大きくなっちゃったんだ…」

 秋音は性戯に夢中だったためか、姉が突然切り出した話に興味を持てない様子で、兄の淫具を掴んで扱きだした。夏樹は可憐な鳴き声を漏らしてから、ばつが悪そうに姉を見た。妹を叱りたいが、さっき腰の低い態度を取れと命ぜられたばかりで気が引けるらしい。

 言い付けを守る弟を好ましく感じながら、代りに悪戯娘へ眉を顰めてやる。

「秋音、きちんと話を聞いて」

「でも、冬人が来てないし…あたし、もうちょっとだけ夏樹お兄ちゃんと…」

「冬人なんてどうでもいいでしょう!私は貴女達に話してるのよ」

 注意が些かヒステリックに響いた事に気付いて、しまったと口を噤む。不安定になっているのを自覚して、長女は瞼を閉じ、深呼吸した。

「チェアラム教というのはね、原始的で粗暴な割に、とても沢山信者のいる宗派なの」

「テロリストを育ててる所だろ」

「怖ーい」

「そう、でも色んな国の圧力で、最近はどこのチェアラム教も表向きワルイコトは止めたの」

 テレビ画面に映る朱儒はターバンの男達に取り囲まれたまま、どこかへ歩き始める。車が目の前に止まるが、彼は手を突き出して謝絶のポーズをした。代りに運転手へ話し掛け、しきりに頷いた。

 春香リモコンを操作してテレビを静止モードした。拡大した上で弟と妹によく見るよう促す。

「でも中にはこの画面に映っている小さなお爺さんみたいに、宗教にのめり込み過ぎて頭がおかしくなった人も居るのよ」

「げー、お爺さんとえっちするのあたし嫌だー」

「こいつ、テロリストなの?」

「違うけど似たような者ね。お爺さんは臓器移植と無副作用麻薬の反対論者なの。国連が貧しい国に行なっている"臓器と食糧の交換計画"を憎んでいて、信者に臓器センターへの自爆テロを命じるのよ」

「へー。でもそれなら警察とか軍隊の出番でしょ」

「それじゃ駄目なのよ。このお爺さんを殺すと、余計信者達を興奮させるだけなの」

「チェアラム教って気持悪い―」

 秋音はわざとらしくしなを作って春香の胸に飛び込んだ。夏樹は羨ましそうに指を咥える。緊張感の無さに微苦笑しながら長女は、妹の髪を手櫛で梳き、先を続ける。

「皆が皆そうじゃないのよ。チェアラム教徒にも、豊かで治安の良い国に暮らしている、教養の在る人達や、物の解る政治家や軍人はいるの。でも貧しい人たちは騙されやすい」

「どうして?」

「このお爺さんは国連の事務所も無いような僻地に病院を幾つも経営していて、チェアラム教徒の医者を使って無料で診療させるの。そうすると貧しい人は皆そちらへ行くでしょう」

「洗脳ってやつ?」

「そう、それに人的資源取引や職業的性行為を禁じてるのが、不思議と人気を集めるのね」

「でも俺が読んだ千夜一夜物語だと、奴隷商人と売春婦がいっぱい出てきたぜ」

「彼はあの本を読んだことも無いでしょうね」

 春香が映像を動かし始めると場面は荒野に切り替わり、画質はさらに悪化した。真上から撮影しているショットだ。無理矢理拡大した感じを否めない。

 だがあの朱儒は居て、紙切れを片手に滑稽な仕草で何かを叫んでいる。

「今度は何?」

「砂漠に運河を引いているの」

「なんでそんな無駄なこと」

「人気取り。でも余り深く考えない方が良くてよ。宗教家の行動はね。」

 優しく言って聞かせるとまた画面が切り替わる。今度は朱儒の傍らで、背の高い青年が自動小銃を手に何かを叫んでいるようだ。しかし聞き慣れない言葉なので良くは解らない。

「何て言ってるの?」

「油のために血を流す者は裁かれよ。地に草木すら生えぬ穢れを撒き散らす者は裁かれよ」

「どういう意味?」

「意味なんて無いわ。でも良く通る声。ああしてテロリスト達を興奮させるのよ」

「まだ喋ってるね」

「ええ、訳しましょうか。また、正義を叫びながら影で武器と麻薬を商う者、慈愛と平和を求めながらバビロンの不義に目を背ける者に禍あれ。而して、病人、老人、子供、貧者、虐げられた人の助けを耳にしながら、恰も聾の如く振舞う者よ。恥じよ」

「何だか偉そ…」

「そうよ。しかも本気で言っている…自分には一片の罪も無いと信じてるのね。人殺しの癖に」

 女主人はまた画面を一時停止した。奴隷達はすっかり醒めた様子で画面を見詰めている。

「で、このお爺さんが、ある日若くて可愛い奴隷達とセックスに明け暮れている映像が世界中に流れたらどうなるかしら?」

「皆目を覚ますね。色呆け爺さんの世迷い言に付き合わされて平和を乱したんだって」

「でもあたし、あんな汚い所行くの嫌ー。砂だらけになっちゃう」

「心配ご無用よ。あのお爺さんは今、訪日中だから。日本のメディアが特ダネ欲しさにこっそりと招いたらしくて。良い機会だからと、心有る人が、私のような女を呼んで仕事を頼んだのよ」

 秋音は相変らず気が乗らなそうに姉を見上げた。だが夏樹は久し振りの撮影に張り切っているようだ。春香がふと内扉の向うへ目を遣ると、冬人が正座してテレビを眺めている。末弟も数の内なので、追い払う訳にもいかない。

「急だけど、来週の金曜日に撮影のセッティングをしてあるの。勿論このお爺さんは何も知らないけどね。皆、頑張れる?」

「姉さまがやれっていうなら何でもするわ」

「俺も」

 女主人は期待と不安を押し隠して冬人を見る。この子は嫌だといえばいい、連れて行かずに済む、そう願っているようだ。

「僕も、ご主人様に従います。お供させて下さい」

 いつもは家族の中で一番臆病なのに、今の台詞は良く通る。あのテロリスト達と同じ、狂信に満ちた声だ。仕込んだのは彼女自身だったにも係らず、知らず戦慄が走る。滑った手がリモコンを取り落とすと、画面が再び動き出し、重々しい輪唱が鳴り響く。詩句はこんな風だった。

"憤怒も 憎悪もなく
 信仰ゆえに
 同胞の侮りや蔑みにも耐えよう
 主だけが 苦しむ子等に救いを下さる
 世を統べるのは現代のファラオでも
 バビロンの諸王達でもないのだから
 私達は主のみを信じる
 主に従えば
 真の平等と平安は必ず訪れるだろう
 御心のままに"

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