Kobold Vol.3

辺境伯の領内、西の端にある丘陵地帯には、遠い昔に廃坑となった鉱山があったが、百年ほど前に君命により湯治場が拓かれていた。幾つもの旅籠が立ち並び、温泉と歓楽を目当てに、砂ミスリル漁りのドワーフや、戦場帰りのコボルド、行商のうまく行った人間などで賑わう小さな町が成り立っている。

伯爵の行きつけは、かつてミスリル長者が建てた豪壮な邸宅を改装したもので、ほとんど実体としては別荘に近かったが、富貴の客が望めば、都一の楼にも並ぶ高い宿料で、特別の計らいがあれば無料で泊まれはした。

領主の近衛隊長とその新妻は、無論、後者の扱いだった。黄金の毛並みを持つ、逞しい半陰陽のコボルドが、白銀の毛並みを持つ、小さく豊満な雌の同族を片腕に抱いて現れると、迎えに出た仲居等はうやうやしく応対して中へ通した。

かしこまる接待係に、辺境の牙と仇名のあるガラウは破顔してから、連れ合いを床に下ろした。すると幼なげな雌は息を荒らげながら、ミスリルのピアスの嵌まった舌を突き出し、耳を伏せ、腹を上にして手足を折り曲げ、身を少し横に屈めて降参の姿勢をとる。尾はぱたぱたと左右に振れている。

華奢な胴に載った不釣合いに巨大な胸鞠の、母乳で滲む先端も煌く飾りが貫いている。異様なほどぼってりと膨らんでうごめく腹の下、肉置き豊かな両腿のあいだでは、まるで“できたて”のように真新しい淫裂や紅蕾が花開き、びっしりとミスリルの輪が鈴なりになって震えていた。臍穴、陰唇、尿道、菊座にはそれぞれ、宝石のような素材でできた太さの異なる棒が嵌まっている。いずれも魔法の力で、滑らかな表面から疣を出し入れしながら回転し蠕動し、あふれる小水や淫汁、腸液はすべて吸収して成長しているらしかった。

双成(ふたなり)のコボルドは磊落に説き聞かせる。

「この子、ベルンはあたしの花嫁だけど、ご覧の通り雄を喜ばせて子を孕むしか能のない、頭からっぽの穴っぽこだからね。礼儀正しくなんてしなくていいよ。あたしが見てないときは適当に遊んでやっておくれ」

たちまち幾たりかの仲居が寄り集まり、しゃがみこんで、白銀の毛皮をなで、掻き、身をくねらせる雌のの仔の可愛らしさに笑いを上げる。まとめ役らしき一人が頭をもたげて尋ねた。

「まあまあ。こんな格好でずっといらしたんですか」

「伯爵様のご命令でね。新しい実験もうまくいって、ようやく隅から隅まで本物の雌に作り変えられたから、まず心と体をなじませるんだと。ついでに孕み易くするための呪いだとさ。とにかくすぐ水が足りなくなるから、途中で何べんも飲ませてやらなくちゃならなくて。おまけに道半ばで独りじゃ歩けないとぐずるから抱っこしてね。大変だったね。昔は軽かったけど、今はでっかいおっぱいがついちゃったしね」

「難しいことはよく分からないけど、おとなしくていい仔ですねえ。まあまあ初めての人にもすぐなついて、でもこんな小さいのに、すぐお母さんになっちゃうんですねえ」

「ああ。しばらく世話になるよ。嫁が孕むまできっちり仕込むからね」

「承知いたしました。町にはよい産婆も薬師おりますから…あら、コボルドを扱う方がいたかしら」

「んなもんいらないね。ほかの種族とは違って勝手に産むんだ。あたしの時もそうだった」

気遣いを笑い飛ばすと、山吹に波打つ毛皮の雄々しい花婿は、淡い月光のように輝くたおやかな花嫁を抱き上げると、獣人の戦士らしいしなやかな足取りで、愛の巣となるべき部屋へと歩いて行った。


遡ること一月ばかり前。

領外で偵察の任を終えて戻ったガラウは、飼い主である辺境伯爵の召し出しを受け、すっかり馴染んだ城館の地下に降った。

実験室には小さな影が二つ待ち構えていた。急激に変化した体を扱いかね、すんすん鼻を鳴らて怖がるコボルドの仔を、同年代に見えるエルフの貴顕が宥めるように撫でつつ、微笑んで出迎えると、鷹揚に話し出した。

「性別の反転は難しいね。ベルンはほぼうまく行ったんだけどね。ちょっとだけ問題が起きてしまったよ」

正面に控えるガラウは、飼い主の説明を聴きながらも、気もそぞろになり、常になく濃厚な異性の香気に剛直を膨らませ、かつて息子だった雌を凝視していた。

味も匂い知り尽くした、幼げなようでいて熟れた体が目の前にある。甘い乳で喉を潤してくれるだけでなく、肉棒を挟んでんでしごくと気持ちの良い特大の乳房や、度重なる改造で剛直を易々と受け入れるようになった臍穴、排泄口の役割をほとんど放棄し、雄を楽しませるために蕩けるような柔らかさと真綿のようなしなやかな締まりを備えた肛門に加え、つつましやかな一筋の秘所が生まれている。お気に入りの玩具だった幼茎がなくなったのは残念だが、引き換えに得たものを想像するだけで涎が出てくる。すべて望ましい形に思えた。

「うちの仔に何か」

劣情を抑えてどうにか平静に尋ねる。伯爵は見透かしたように淫靡に含み笑いすると、燃える茨草のような鬣を指で梳り、もう一方の手で足元の獣人の三角をした耳のあいだを軽く叩く。

「ここだよ。エルフでもコボルドでも、頭の中には、いつも薬のようなものが出て、心や体の働きを決めているんだ。ところがベルンは雄から雌に変わる途中で、おかしくなってしまったみたい」

ガラウは、ベルンをいま一度見やった。確かにいつのも増して弱々しく頼りなげな風情だ。しかし長いあいだ観察していると、植え付けられた雄の印を堪え切れなくなり、飛び掛って犯してしまいそうで、また視線を逸らす。

「どうなったんです」

「ひとつには少し、馬鹿になってしまったよ。記憶が混濁しているし、退行もしてる。もう一つ、多分だけど、筋骨の成長を促す薬のようなものが、あまり出なくなっている。もう背丈は伸びないし、膂力も強くならないね」

「ぁあ…」

エルフの少年が淡々と報告するのを、半陰陽のコボルドはひどく遠くに聴いていた。

もう何十巡も前に感じられる過去。牙の村の女戦士、母として生きていた頃、独り息子のずば抜けた聡明さが誇らしく、将来父親に似た長躯に育って、知勇を備えた男になるのを心待ちにしていたのを思い出す。

「でも安心していい。幼くして熟す、というかな。肝心の受胎は十分にできる」

受胎、という飼い主の台詞が届いた瞬間、追憶にひたっていたガラウの背筋を不意に寒けにも似た欲望が駆け抜ける。す昂りに応え、股間で魁偉な逸物が何度も跳ね、六つに割れた腹を打つ。

「ガラウもベルンも寿命をエルフ並に引き伸ばしたのに、コボルドの旺盛な繁殖力は保っているのはすごいよ。先細るエルフ族を再興するには重要な手がかりになるかもね」

妖精の講釈を、獣人は半ばも聴いていなかった。

「伯爵様!いつ!いつベルンと番っていいんだい」

永久を生きてきたエルフの少年は、己の手で半陰陽にしたコボルドをあきれたように眺めやる。

「そんなに息子を孕ませたいんだ。ひどいお母さんだねガラウは」

とうの昔に捨てさせた立場をわざとらしく揶揄しているというのに、双成の奴隷はしかし、いささかもためらわず肯定した。

「孕ませたい!!孕ませたい!!」

「いやしんぼだな。今夜から始めていいよ。でもガラウは僕の雄なんだから、まず、こちらを満足させてね」

不貞腐れたような口調で呟いた伯爵が、実験室の机に小さな尻を載せ、獣人の性器によって開発され尽くした後孔を広げる。その少し上で、可憐な雛菊が期待の印にしっかりと勃ち返っていた。

「ぁ…ぁっ…はくしゃく…さまぁ…♪」

ガラウは最前までの執着が嘘のように同族の雌を忘れ、最愛の飼い主に圧し掛かる。

咆哮と嬌声の交錯する異種の交尾を、かたわらに尻餅を就いたベルンは、嫉妬と羨望に燃えた鋼の瞳で眺めながら、自らの体に与えられた見覚えのない割れ目に指を這わせ、かそけく啼くのだった。


「ベルンはもう壊れても死んでもいい使い捨ての雌だから試したけど、ガラウは僕の大事な雄だから、残念だけど失うものの多い完全な性別反転はしないでおくよ」

かつての息子、今の伴侶、いずれにせよ大切には違いない存在を塵屑のように扱う飼い主の言葉は辛かったが、同時に己が特別の贔屓と寵愛を受けているという認識は、ガラウのたわわな胸の奥に苦く甘く滲んだ。

半陰陽の獣人は、ともかく伯爵の望みに従い、怯えるベルンの処女を奪い、亡き前夫としたように、昼夜を問わず抱き続け、妻として仔を産む誓わせようとした。

だが物覚えがよかったはずの仔はすっかり躾を失い、体は雌とし仕上がっているというのに、心は少年だった頃に戻ってしまったようだった。

「おかあさん。へんだよぉ、ぼくおとこなのにぃ、あかちゃんうめないぉ」

「こら、お母さんじゃない。それとあんたは雌になったんだよ。雄になったあたしの花嫁さんなの」

金のコボルドは困り果てたようすで、小柄な銀の新妻に言い聞かせる。対面座位で抱き合い、互いに量感ある乳房を押し潰し合い、白い滋液で毛並みを濡らし合いながら、娚の証につながった雄幹と雌孔を揺すらせる。

子供の腕ほどもある陽根は、短かいあいだに陰唇を開削し、もう貫くつど少し血が出るだけでちゃんと根元までで埋まるように仕込んでいた。狭い蜜壷をいっぱいに押し広げた熱い塊は、早く命を宿す準備を整えろというように新造の子宮を叩き、膣を抉って、華奢な背を震わせ、えずくように啼かせる。

実際、ベルンは最初のうち挿入のきつさに、前戯で飲まされた精液を嘔吐しながら、スライムを脱糞し、小水を漏らしていた。みじめに痙攣しながらも絶頂に達して潮を噴いていたのは、苦痛からも快楽を貪れるよう、すでに調教が隅々まで行き届いていたためだろう。

かつて男児だった花嫁はいやいやをしながら、覚えている世界にしがみつこうとする。

「ぅあ…ぅ…ちがうよぉ…おかあさんはおんなのひとで、それにおやこだから、けっこんできないよぉ」

「もう親子じゃないの。あたしは雄のガラウ、あんたは雌のベルン。お願いだから娚になっておくれよ…あたしの赤ん坊を産んでおくれ」

「だめ…おやこは……むらに…かえ…きゃふっ…ぅ…」

かつて母親だった花婿は苛立って、相手の肩口を噛むと、食いつくように喚き立てた。

「ベルン!よく聞きな。だいたいあたしはね、村にいた時分からあんたと番いたくてしょうがなかったんだ!あんたの父親は、あたしを男抜きじゃいられない体にしたくせに、勝手に先に死んじまって、おまけにいい匂いのする息子を残してさ。発情期が来るたび、よその男を誘いたいの堪えて、なのにあんたは、お母さんお母さんて遠慮もなく毛づくろいをしたり、按摩したりして」

「?…?…おかぁさ…ごめんなさ…」

「血がつながってたってねえ。たぎるんだよ!!あんたが遊びつかれて眠ってるあいだに、なんべん犯してやろうと思ったか。あんたをさらって戦場を横切って、迷宮に逃げようかと。あそこじゃコボルドは魔王に仕えてた頃と違わぬ暮らしをしてんだ。強ければ何したっていい。父親が娘を、祖母が孫を飼ってる土地だよ」

「そんな…の…」

「このあたりのコボルドが落ち着いたのはエルフがやってきてからさ。だけどエルフだって戦場に行って帰ってくる度どんどん変わったよ。伯爵様も昔は書物と草木ばかり愛でてるおとなしい方だったってさ。とにかく」

ガラウは牙を剥き出し、ほとんど憎々しげに幼げな伴侶を睨み付ける。

「今はもう、あたしは絶対にあんたを嫁にして、子供を産ませるから。ずっと離しゃしないんだ」

ベルンは耳を伏せ、鼻を鳴らして、大柄な連れ合いに抱きつく力を強めた。むっちりした二人の胸がさらに押し合い、母乳が滂沱の涙のように触れ合った毛皮のあいだを滴っていく。

「…わかった…ぼく…おかぁさんの…あかちゃん…うみたい」

「いっぱい、いっぱいだよベルン?」

喉の奥で唸りながら、獣人の夫は鍛え抜かれた筋肉を駆使し、妻の矮躯の芯まで征服の印を打ち込む。

「キャゥウっ…ひゃぃ♪だんなさまぁ♥なんびきでもっなんじゅっぴきでも、なんびゃっぴきでも!!だんなさまのぉ、おかぁさんのぉ、つよくてたくましいおたねではらみましゅぅ♥♥♥」

新夫は黄金の双眸を血走らせ、抱き合ったまま腹も破れよとばかり抽送の勢いを増す。

「ベルンっ、ベルンっ、あんたはあたしだけの女房で、雌だからね!おら、逝きなぁっ!!」

「ふにゃぁ!?ひゃぃい♥いぎましゅぅ♥べるんいぎまじゅぅ!!?」

尖った鼻にかかる甘ったるい声で、新婦は恍惚と謳いながら、母乳と愛液をしぶいて、官能の極みに達した。だが炉の焔を燃え立たせようと攪拌する火掻き棒にも似た剛直の動きは、なお留まるところを知らない。

できたての情け容赦なく子宮を連打された元少年は、天国から一瞬にしてとめどもない快楽の煉獄に引き戻され、惑乱しながら訴える。

「ふぎぃ!?ぉがぁざぁっ…もぉいっだぁ!!もぉいっだがらぁ!!いっでるがらぁ!!?」

不意に怒濤の突き上げが止まる。ガラウは母に戻ったかのような笑みを浮かべて、かつての我が児の涙を舐め取ると、弾む息を抑えて穏やかに教える。

「あたしはまだだよ。それに今夜はあんたを妻にするだけじゃだめなんだ。逝って、逝って逝きまくらせて、ぶっ壊れて、もう二度と余計な考えを抱かない肉便器になるまで犯し続けろって、伯爵様の命令だから」

ちっぽけな毛皮の塊におののきが疾る。隷属と屈従への要求は、いくら応えても終わりがないようだった。

「ひっ…ゃら…こわれりゅの…ゃら…こわぃ…ぁかぁさ…ゆるひて…およめしゃんになりゅからぁ…ぉかぁしゃんのにくべんきになりゅかりゃぁ…こわれるの…は…ゃら…」

呂律の回らぬ舌で懇願する銀の花嫁を、金の花婿は悲しげに見つめた。

「だめだよ。伯爵様の命令なんだ。それにね、あたしも壊れてお馬鹿な穴っぽこになったベルンが欲しいよ。お願い?」

幼い娘が父親に誕生日の贈り物をねだるような口調で、母だった雄は、息子だった雌をゆっくり抱き揺すぶりながら求める。

魔法で心と体を作り変えられたコボルドの仔は、あどけない面差しを泣くように、笑うように歪めた。

小さな頭の奥で、さまざまな記憶が駆け巡っているようだった。両親と狩りに出た日の草原の匂い、村の子供と一緒に薪取りの途中で見つけた野苺の味、晴れた朝に風にはためく洗濯物の音、密かに抱いていた都で学問をしたいという夢。

「ふぇ、ふぇ…しょぉが…ないにゃぁ…あひっ、べるんはぁ、あぐっ、おばかなあにゃっぽこになりましゅ、わふ、わふぅ、キャゥウウウウ、わぅうううっ♪」

すべてが崩れ落ち溶け流れ、ただ一匹の雄、男、夫、伴侶を喜ばせる媚肉の型へ注ぎ、鋳固まっていく。

半陰陽の獣人は、目の前で痴れ呆けてゆく連れ合いを見つめながら、十一巡のあいだ産み、育て、慈しんできたはずの幼い魂を、我が手で粉々にした実感におののき、漆黒の奈落に陥るような虚しさと、限りない征服の悦びに絶叫し、子産みの穴へとしたたかに射精した。


花嫁を存分に抱いた花婿は、領主の勧めに従って湯治場へ向かった。

コボルドのおとななら二日の旅程だったが、ベルンは元々歩くのに向かないほど乳房が肥大しているうえ、伯爵が仕込んだスライムが老廃物を吸収しながらどんどん成長するため、一日目で身動きがとれなくなり、ガラウが抱いて運んでやった。

水分がすぐ足りなくなると忠告を受けていたので、こまめに補給はした。ひたすら雄の小水を雌に飲ませるのだ。亡き前夫と森の隠れ処で初めて番った、荒々しい婚礼の踏襲だった。とはいえ迷宮に暮らす獣人が、伴侶を縛り付けるためにする呪(まじない)に近い儀式だったから、恐らく村育ちのほかの夫婦ならやらなかったに違いなかったが。

初めは恥ずかしそうに、やがてはごくごくとおいしそうに尿(いばり)を飲むようになった新妻を見る都度、新夫は秘具を硬くさせ、喉奥まで突きいれ、食道の粘膜でしごき、白濁を放って嚥下させた。

双成となり、雄の渇望を知って初めて、ガラウは最初の婚姻の際に亡夫がどのような目で己を見ていたのか、何故無茶な真似をしたのかと腑に落ち、あらためて記憶にある色々な戯れをひとつひとつ、男の側に立って試したくなった。

宵にさしかかると無理をせず人気のない場所を選んで野宿をし、西瓜のような張りのある胸鞠に屹立を挟みしごかせつつ、小振りながら安産型に育った尻朶を揉んでは、愛の言葉を吟じるよう促す。

「春告げる鶫(つぐみ)の声…よりもっ…夏にっ…んっ…採れる蜂蜜より…もっ…あ、秋に実る露薔薇(つゆばら)の実…よりも…ひぅっ…ひぅっ…冬の朝に…毛皮を温もらせる熾の火よりも、愛しています。旦那様♪」

あえかな朗唱とともに、白銀の毛におおわれた紡錘型の肉鞠が二つ、やわやわと蠢いた。深い谷間はべっとりと母乳に濡れて、猛々しい逸物すらすっぽりと包み込み、揉みしだく。

黄金の獣人は腰から昇ってくる快美に牙を鳴らし、地面に鉤爪を立てて草を掴み千切り、尾をばたつかせつつ、満天の星を仰いでは、喘ぎつつ呟く。

「あんたはっ、言葉を、たくさんっ、知ってるねぇっ…本が、好きだったもの…ね」

「えへぇ…おかぁさんが、まちいくと、かってくれたんだよ…たからものなの…」

「ふふ。そうだね。もっと絵が多いのがいいかって聞いたのに。あんたったら字がいっぱいある方がいいっていってね」

元息子に胸で奉仕をさせながら、元母は思い出話をする。信じられないほど昔の出来事のようだが、つい最近までの日常でもあった。

「あんたを都の学校にやろうとも思った。これからのコボルドは、牙だとか爪だとかだけじゃなくて、頭もなきゃって。でも…本音じゃあたしは、あんたを側から離したくなかったんだ」

「??…ぼくはぁ、ずっと…おかぁさんのぉ…だんなしゃまのおそばにおつかえしましゅ」

すらすらと雌奴隷としての口上を述べ立てるベルンを、ガラウは愛しげになでてやる。

「うん。だからこれでいいんだ。馬鹿になっちまったあんたは、いくら前は本が好きだったって、あたしを気持ち良くして、仔を孕んで産む以外に役に立たないんだからね」

「ひゃぃ、ベルンは、お馬鹿な穴っぽこですから♥」

「いい仔だ。しゃぶっていいよ」

嬉しげに好物にむしゃぶりつく新婦を、新郎は恍惚と見やる。

本当は奴隷になってから一度、伯爵に願い出たことがある。ベルンは賢く物覚えもよい。どうせなら祐筆や秘書として使ってもらえないだろうかと。だが返ってきたのはにべもない却下。逆に性交に漬け込み、読書で得た知識は捨て去らせ、雄に縋り頼り、仔を作るだけが生き甲斐の家畜に落とせとの命令だった。

飼い主の言葉は絶対だった。魔法によって植え付けられた陽根が脈打つ都度送ってくる情動も、主君が正しいと告げていた。確かにどんどん愚かで猥らになっていく小さな連れ合いを見ていると、限りない幸福感が押し寄せてくる。

「ベルンっ、幸せかい?」

「ぷはっ…ふぁい、旦那様♪」

口の周りに先走りの汁を付けながら、育ちかけの牙を剥いて屈託なく笑うようすは、素直で働きものの少年の頃と何も変わっていない。親の役割を捨てた双成は、同じようににっこりして、瞼を閉じる。

旅の疲れからか、いつもよりけだるい夜の営みのあと、二人はしっかりと抱き合って眠った。

結局、湯治場まではぴったり三日の行程になった。


露天風呂の脱衣所で、ガラウは埃まじりの装束を解くと、重い乳房と腹を抱えて苦しそうなベルンに近づいた。臍のあたりで活発に暴れる透明な杭を突ついて尋ねる。

「こいつは湯船に入る前に抜いても大丈夫だそうだ。いいかい?」

「ぁっ…ゃっ…ゃっ」

「いや?でも苦しいんだろ」

「こわ…こわぃ…おなか…こわれる」

「大丈夫だよ」

内心では、壊れても死んでもいい使い捨ての雌、という伯爵の説明を反芻しながら、おくびにも出さず、透明な棒を掴んでゆっくりと引っ張り出す。

「ぉぼぉおおっ!!!?」

花嫁は立ったまま白眼を剥いてえびぞりになり、でっぷりした腹を突き出す。臍にうずまっていたのは単純な円筒かと思いきや、いくつもの珠や枝がついていて、まるで腸内に根を張っていたかのようだ。細い枝は臍の入り口にしがみつき、居心地のいい苗床を離れるのを嫌うかのように抵抗したが、やがてすべて抜けた。

あとには腸液をこぼして伸縮する穴が残る。性器を捻じ込む穴として十分に機能し、快いのを何度も試して知っていたが、旅のあいだにスライムに馴らされてさらに熟したようだった。

すぐまた使いたくなったが、我慢して次の穴に移る。尿道、陰唇、肛門とそれぞれ太さの異なるスライムの杭が嵌まって暴れまわっている。一本ずつ抜く度、新妻は気も狂わんばかりの悲鳴を発して絶頂した。

取り除いたスライムは一箇所に固まり、おとなしくしているようだった。ガラウは鼻を鳴らしてから、早くもぐったりしたベルンを一瞥する。

「おやおや。あんた、風呂に入る前にのぼせちまったね。さ、行くよ」

痙攣する牝肉を抱きかかえて、ようやく浴場へ移ると、まず備え付けの香り石鹸を毛皮にこすり付ける。コボルドはよく水浴びはするが、温かい湯気に包まれて石鹸の泡に塗れ、体をこすりつけ合う心地よさは城館で暮らすようになってから覚えた。

しがみつきあったまま、岩から滝のように落ちている湯に頭から突っ込み、歓声を上げて通り抜けると、二人して盛大に体を震わせて毛から飛沫を飛ばす。

「わふっ…」

徐々に意識がはっきりしてきた花嫁が、嬉しそうに鳴いた。

「さて。きれいになったね。どの穴を使って欲しいんだい」

花婿が尋ねると、温かい岩の上に寝そべって足を折り曲げたまま拡げ、口戯を誘うように舌を伸ばし、右手の指で臍穴を拡げ、左手でピアスまみれの秘裂を掻き分け、菊座を器用に捲らせる。

「どれでもぉ、旦那様のお望みのままにどぉぞ♥」

半陰陽のコボルドは、鋭い歯の並ぶ頤を開いて涎を垂らすと、おもむろに幼い同族へのし掛かった。

口で二度、臍の中で三度、菊座で二度。膣で一度。雄は途中、仲居が持ってきた冷たい水をたらふく飲んで、雌には小水だけを与える。もう一度石鹸で体を綺麗にすると、膣を剛直で貫いたまま抱え上げ、湯船に漬かる。

背面座位の格好になったガラウが、ゆるゆると臍や尿道に指を挿れて遊んでいると、ベルンは喘ぎながら力なく止めようとする。

「ぁぅ…おかぁさ…だんなさま。ちょっとだけ…やさしくし…」

「しないよ」

本来異物が入るはずのない穴をほじる指の数を増やすと、新妻は身をくの字に折って嬌声をこぼす。湯に丸々と浮かんだ乳房から白蜜が噴き、ゆっくりと周囲とまざっていく。

「ごめんなしゃ…おばかなあなっぽこのくせに、なまいきいって、ごめんなさ…」

「本当はひどくされるほうが好きだろ」

「ひゃぃっ…こわぃけど…しゅきぃ…だんなさまに…こわしてもらうのしゅきぃ…」

「どんどん壊してやるさ」

秘所を抉ったまま、尿道と臍穴にそれぞれ指三本をこじ入れ、軽く達させてから、満足して引き抜く。

「ぁ゛ー…ぁ゛ー」

何だか分からない啼き方をする新婦の耳を、新郎はふざけて噛みながら今度は乳房に手を伸ばし、捻じ切るばかりに揉みしだいてから、下に手を滑らせる。以前は肋が浮いていたあたりに、もう一組の乳房が育ってきている。さらに下にも一組。

「だいぶおっきくなってきたね。あたしがあんたを産む時もちょっとは張ったけど…これ。本当に一番上のと同じくらいになるのかねえ」

「ふぁ…おかあさんがもむからぁ…」

先祖返りのように、ベルンは性別が反転してから最初からある一組に加えて、二組、合計三組の複乳を膨らませ始めた。伯爵はすべて同じ大きさに育てると予告していた。そうなれば歩くのはほとんど不可能で、もはやコボルドの雌とすら言えない奇形になる。

「まあ、子供に乳をくれてやるには便利だろうよ」

「ぁぅ…あかちゃん…おかぁさんのあかちゃん…うむ…の…いっぱい…いっぱい…」

「そうだね。いっぱいいっぱい産もうね」

血の繋がった二人のあいだの仔を、飼い主はどのような実験に使うつもりなのか、考えるだけで切なさと、ぞくぞくするような期待が胸を高鳴らせる。子宝を恵むという温かい湯に毛皮を沈めながら、夫は妻に種を注ぎ込み、壊れ変わりゆく小さな体をきつくきつく抱き締めるのだった。

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