Kobold Vol.2

虫と蛙の囀る田園の夜更け。緑野を蛇行する大川の畔に建つ旧い城館、悪名高き辺境伯の住まいでは、未だ盛んに動き回るもの幾多の気配に満ちていた。

三層を重ねた石作りの郭(くるわ)の最上階は、窓から煌々と光を投げ掛けている。とりわけ、毎晩奇怪な実験に明け暮れ、眠りを知らぬと噂ある砦主の私室あたりは、毒々しい明るさに満ちていた。固く閉じた扉の両脇に、赤と青、夜光茸の灯が二つ点って、不可思議な色合いにあたりを染めている。

戸口には、薄紗の下着と白銀の輪飾りをまとったエルフの侍女二人、いずれも繊細な指使いで、時ならぬ来客、逞しく成熟したコボルドを撫で回している。豊かな黄金の毛並みのどこにも武器を隠し持っていないのを入念に確かめているようだった。

今春で二十四巡を迎える若後家のガラウは、されるがまま立ち尽くし、山吹色のたわわな乳房の下で腕を組んでは、尖った鼻をうごめかし、長い尾を箒の如く一掃きすると、あくびを噛み殺した。

だが通ってよいという合図とともに、眼前にある彫刻を施した樫の厚板が左右に開くや、コボルド女はすぐ顎を閉ざし、きついほど牙を噛み締める。仄暗い部屋の中から、何やら燻薬の煙が漂ってくるのを嗅ぎ取れた。ガラウは太い眉を顰めたが、あえて大股に踏み込むと、持ち前のがらがら声で怒鳴る。

「邪魔するよ伯爵様」

すると応えて、部屋を仕切る緞子ごしに華奢な影がひとつ動き、帳の縁から滑るように歩み出てくる。癖のある赤毛、翡翠の眼、そばかすを金粉のように散らした皓(しろ)い膚、尖った耳と春の若鮎を思わせる瑞々しい肢体を持つ少年だった。

「ようこそ。牙の村のガラウ。お早いお成りだ。葬儀以来かな。とても会いたかったよ」

松明からこぼれ落ちた焔のような、紅い鬢に手櫛を入れ、ざっくばらんに挨拶をする。未熟なうわべに反してやけに老成した話しぶりだ。常盤の双眸は、齢を重ねた智恵を宿して楽しげに煌いている。

やがてほっそりした指が打ち合わさって音高く鳴ると、立ちすくむ獣人の背後で扉が静かに閉じた。

童形の伯爵はよしと頷いてから、猫を思わせる足取りで部屋の片隅にある棚に歩み寄った。若木の枝のような腕を伸ばすと、いかなる技によるのか、氷の如くに冷え、びっしり水滴の浮かんだ銀の酒瓶と、水晶の杯を二つとり、それぞれ透明な葡萄酒を注いで、一つを差し出す。

ガラウはごつい腕を打ち振って固辞し、早々に話を切り出した。

「うちの独り息子が迷惑をかけたそうじゃないか。ここに厄介になっているとか」

「ベルンのことか。ちょっとした行き違いだよ」

幼げな容姿をしたエルフの貴顕は、にっこりして飲み物を乾すと、空になった杯を抛った。石英でできていたかに見えた器は、回転しながら落下し、豪奢な刺繍入りの絨毯に触れた刹那、霞ととなったかのように跡形もなく消える。

「知っての通り、ベルン君の亡き父親は得難い雄だった。出征の折は度々斥候として、近衛として素晴らしい働きをしてくれたね。ベルン君は親に比べると華奢だが、血は受け継いでる。美しい白銀の毛並は瓜二つだ。父親と同じく僕に飼われないないかと幾度も誘ったのだが、中々うんと言ってくれなくてね」

ボーイソプラノが囀る鷹揚な説明に、黄金の毛並みを持つ寡婦は牙を隠そうともせず唸った。

「そうかい。息子が怪我をして帰ってきたのはコボルドの子供同士の喧嘩じゃなかったんだね。無駄さ。あの仔は、エルフの無茶な戦が父親を死なせたのを許しちゃいない」

伯爵はいささかも悪びれず、もう片方の杯も啜ってから、同じように床へ投げ捨て、のんびり台詞を紡いだ。

「僕の配下は、軽い躾のつもりだったようだが、向こうの強情さのあまり頭に血が昇ったかもしれない。でも力ずくには従わないところも父親似だね。だからちょっとした提案をしたんだ。雄のベルンがうんと言わないなら、残念だけど、代わりに同じくらい優秀な雌を飼おう。牙の村に名高い金毛のガラウを、とね」

獣人は尾をブラシのように逆立て、両手両足の鉤爪を剥いたが、辛うじて抑え付け、あえて嗤いを作ると、からかうように尋ねる。

「あたしの名前を出したって?それじゃあんた、うちの息子に痛い目を見たろうね、伯爵様」

妖精の少年は苦笑を返すと、華奢な手で、そばかすの散る薄い胸を撫でてみせた。たちまち肋と斜めに交差するように赤い筋が五本、浮かび上がる。だがもう一度なぞると、まるで上等な陶磁のように滑らかさを取り戻す。

「まあたいしたことじゃない。下民が貴族に傷を負わせた。せいぜい悪くて死罪だ」

宣告を聞いたとたん、ガラウはとうとう余裕をかなぐり捨てて叫んだ。

「あの仔をどうしたんだい!」

辺境伯はくすくす笑って、ほっそりした裸身に伸びをさせる。

「別に?まだ何もしていないよ。配下の折檻が利きすぎたので、館の地下で休ませて薬を与え、餌やりと糞の始末をしてやっている」

歯軋りしながら、コボルドの女は一歩前へ踏み出した。

「今すぐ解放しな!さもないと」

「さもないと?」

答えの代わりに鉤爪が唸り、むせるような香りで満ちた室内の空気を引き裂いた。ほとんど瞬きする間もない動きだった。

だが妖精の貴顕は笑みを絶やさぬまま、吹き付ける死の旋風をかわすどころか、逆に懐に踏み込み、腰を落とした姿勢で肩からぶつかっていく。軽捷な動きには意外なほど重みのある一撃が、丁度、コボルドの女戦士の六つに割れた腹のやや上、鳩尾を叩いた。

「げぅっ…!」

ガラウは膝から崩れ落ちた。山吹の双眸をかっと見開き、咆哮を放とうとしてから、体内を蝕むような臓腑の痛みにえづくと、床の上で芋虫のように丸まり、筋肉で盛り上がった肩をみじめに震わせる。

「うぐぅぁあぁ…!!!?」

「惜しかったね。君に雄の瞬発力があったら、危なかったよ」

エルフがやれやれと呟く足元で、コボルドの雌は嘔吐し、失禁していた。さらにはぶざまな破裂音とともに、湯気を昇らせる黒ずんだ塊が腰布を盛り上げ、香ばしい匂いをさせる。

「おやおや、やはり雌はだらしないね。これから直してやらないと」

うずくまり、わななく若後家の穢れた下帯を、少年は器用に外してやると、一児の母らしく量感のある巨尻が、黄金の毛皮を汚して脱糞するさまを興味深げに眺め入った。


下半身に得体の知れない疼きを感じ、ガラウは目を覚ました。仰向けの格好で、天蓋つきの寝台の、柔らかな羽根布団と枕に埋もれているのを悟る。だが四肢は左右に伸びた格好で、鎖に繋いであった。銀糸を縒ったような輪の連なりは、装身具とも紛う精緻だが、戦慣れした目にはミスリル製と知れる。増して淡く輝く呪文らしきものまで小さく彫り込んであるのでは、間違いようがなかった。

喉の奥で怒りを響かせてから、もっと詳しく眺め回そうとしたところで、股間から甘い痺れが伝わり、思わず喘いでしまう。

「な…」

首を曲げて見下ろすと、異様な光景が目に飛び込んできた。先程己を打ち負かしたエルフの領主が、あどけない容貌を上気させ、潤んだ瞳で、魁偉な雄の印にむしゃぶりついている。子供の手首ほどもありそうに太い幹はしかし、ガラウの両脚のあいだから屹立しているのだ。

「伯爵。あたしに何をした!!?」

「ちゅぷ…ぷは。おはようガラウ。ちょっとした実験だよ」

女の体にはあるはずのない剛直の、えらの張った雁首あたりを、稚なげな姿態の貴顕が美味でたまらぬと言わんばかりに舐り上げ、先走りの露をすすり飲んで、舌鼓を打っては囁きかける。

「半分だけ成功かな。まるごと雄にしてやりたかったけど、これが生やせただけで用は足りる。ふふ、でも嬉しいな。匂いも、大きさも、硬さも。ガラウの死んだ連れ合いよりずっとすごい」

「ふ、ふざけるんじゃない!!」

獣人の若後家は喚きながら必死にもがいたが、毛皮の下で鋼索のようによじれ膨らむ筋肉も、鈍く輝く拘束具を外せはしなかった。妖精の少年は、白魚のような指でたおやに化物じみた亀頭の周りをくすぐり、しごいて、温かく湿った息を吹きかけ、瘧(おこり)にかかったような虜囚のおののきを愉しみながら、寝物語でもするように謳った。

「ふざけてなんかいない。あいつ、ベルンの父親はね。戦場で何度も僕を抱いてくれたんだ。血と糞の匂いのする陣地で、こっちを四つん這いにさせて、お腹ががぼがぼになるまで子種を注いで。うなじの、ここのところを噛んでさ。あれは妻にするって意味だよね。そうさ。僕はあいつの妻だったよ」

「うそだ!嘘だ嘘だ!あの人がそんなことするはずな、ひぃいい!!?」

懸命に遮ろうとした寡婦の、引き締まった肢体が羽毛布団の上で勢い良く跳ねる。

股間に鼻を埋めた伯爵が、細い頤(おとがい)をいっぱいに開いて、易々と異形の逸物を咥え込んだのだ。子供らしいふっくらした頬を滑稽なほど凹ませ、激しい勢いで鈴口から先走りを吸うと、桜色の唇を蠕動させつつ前後させ、生まれたばかりの肉竿の根元から先端まで、細やかな刺激を送っていく。

「あがぁぁっ!!?」

未だかつて経験のない快感に耐えかねたコボルドの女は、両腕両脚を精一杯縮めると、尾をばたつかせ、ミスリルの鎖を軋ませ、狂ったように啼き吠えた。

溶岩が炸裂するような勢いで射精が訪れると、エルフの少年は白い喉をわざとらしいほど鳴らして、粘りけも量も並ならぬ子種を嚥下する。次いで硬さを失った陽根から濡れた音をさせて唇を外すと、弾むような口調でまた告げた。

「ふふ、おいし。どう?あいつが仕込んだんだ。上手に飲めないと、僕を膝に乗せて真赤になるまでお尻を叩いてさ。翌朝馬に乗れなくて苦労したよ。ひどいよね。実年齢も身分もずっと上のはずの相手にまるで敬わないんだから」

脳裏を灼きつかせ、鍛え抜いた四肢を弛緩させながら、寡婦は幼い娘のように嫌々をして、うわごとめいた否定を繰り返す。

「…ぁ…嘘だ…あの人が…」

だが幼形の伯爵は容赦なく、蠍の尾のような舌を振るい続ける。

「ガラウもお尻を叩くといい声で鳴くんだってね?あいつ十八巡のとき、六つ下だった幼馴染のガラウと言い交して、だけど怖がってめおとの仲を許してくれないから無理矢理犯したって。二人で遊ぶために作った森の隠れ処に食べ物を溜めてから、誘い込んで、三日三晩も番って、妻になると言わせたって」

「ぁ…ぁっ…」

狂乱にも似た絶頂の余韻の中で、死んだ伴侶とのあいだの秘密を次々に暴かれ、若後家の双眸は次第に曇り、尖った耳は力なく伏せ、尾はしなだれた。

「でもガラウは身重になる頃には、毎晩自分から誘うようになって大変だったって?華奢な体に満月みたいになったお腹を抱えて、一生懸命お尻を振って可愛かったって。だけどね。胎(はら)が熟しきる前から無理をさせたせいで、子供を沢山産めなくなったんじゃないかって、あいつは後悔もしていたよ」

優しく話すエルフの少年がそっと脇腹の毛をなぜると、コボルドの若後家はびくりと痙攣した。

「あの人…が…?」

柔らかく相好を崩した妖精の貴顕は、また半ば萎れた獣人の陰茎を玩具にし始めながら、ほっそりした頸を縦に振って語句を継いだ。

「ほかにもあいつは言っていたね。小さくて甘えん坊だったガラウが、育ってからすごい戦士になったって。ガラウが雄だったら、とても叶わないだろうって。どんどん強く美しくなってくから、出征中に村の誰かに言い寄られて浮気しないか心配だって。ねえ、ほかの雄に抱かれた?」

無邪気そうな問いかけに、いささかゆるみかけていたガラウの表情が強張る。

「ぎっ…そんな訳な…ぅああ?またぁ!?」

だが枷に繋がれたまま毛を逆立てる虚勢も長くは続かなかった。伯爵の巧みな手淫が、女の腰にあるありうべからざる男のしるしに再び勢いを取り戻させつつあった。

「僕もガラウも、毎晩あいつに鳴かされてたから、大人のコボルドの雄がどのくらい凄いか分かるよね?」

「ひっ…や…」

「だめだよ。これからが本番じゃない」

言いながら、エルフの少年はコボルドの女に跨るや、隆々と天を突くような剛直の上で、小振りだが肉の詰まった双臀を割り裂く。指が掻き拡げた窄まりの奥で、腸液に滑り、薄桃に色づいた粘膜がものほしげにひくつき、捲れ蠢いていた。

「ここ、味あわせてあげる。あいつが言うには、ガラウの口も、尻も、産みの孔も本当に気持ちいいけど、僕のには及ばないって」

「だめだ、だめ…そんなの…そんなの認め…っ!!!?」

まったく躊躇なく、伯爵は腰を打ち落とす。一気に結腸近くまで、若後家の股間に生えた鉾槍を易々と飲み込むや、急に引き千切らんばかりの強さで締め付ける。

「おごぉおおおおお!!!!」

雄とも雌ともつかない叫びを放って、獣人はのけぞる。妖精は歯を食い縛って凶器が臓腑を貫くのを堪えると、媚びた笑みを作って柳腰をひねり、円かな尻を跳ねさせる。

黄金の毛皮の上で、そばかすの浮いた白い肢体がくねり踊り、焔と見紛う癖のある赤毛が弾むと、真珠の如き汗の滴と、銀の鈴を鳴らすような嬌声を撒き散らす。葡萄酒の瓶ほどもありそうな陽根を、折れそうに痩せた胴の内に収め、わずかに肚を膨らませつつ、少年は自らの幼茎を可憐に勃ち返らせている。

「ぁっ♪…しゅごぃ♪あいつの言った通りぃ、雄になったガラウのが一番しゅごぃっ♪」

爛れた愛慕を告げながら、剛直を搾り上げるエルフの少年に、半陰陽と化したコボルドの女は牙を剥き、泡を噴きながら、無我夢中で腰を突き上げる。逞しい四肢の先端では鉤爪が純白のシーツを破り、布団から羽を撒き散らして宙に舞わせた。

「ぐぅうぁ!!ぁああ!!!!!」

だが若後家が再び欲望を放とうとする寸前で、童形の領主は、毛皮に覆われた腹筋に手をついて、腰を高くもたげ、接合を解いてしまう。粘膜の鞘から抜けた太竿が、先走りと腸液の尾を引きながら虚空に躍り、暴れる。

「ぁっ…がっ……?!」

当然のように待ち受けていた絶頂を止められ、ガラウは一度差し出された餌を目の前で取り上げられた猟犬よろしく、牙を打ち鳴らす。脈打つ屹立の上で、しかし伯爵は目を細め、そばかすで飾った白い双臀に円を描かせつつ、恍惚と述べた。

「あいつがねぇ。言ってた。ガラウはお預けに弱いって。森の隠れ処で、妻になると言わせたときも、さんざん焦らしてやったって」

「はぅ…ぅ…何…を…」

舌を突き出して喘ぎながら、牙の村一番の戦士だった女は、答えの分かりきった問いを口にする。

「だからね。今度もね。ガラウがあいつを忘れて、母親もやめて、僕の雄になるって誓うまで、達させてあげないことにしたんだ。ね?どうする?」

尋ねながら、妖精の領主は誘うように腰を沈め、蕩けきった菊座で、ひくつく亀頭に羽で触れるようなキスをして、また離れる。

獣人の寡婦は唸り、四肢にからむ鎖を波打たせ、望まぬうちに得たはずの太幹を淫らな汁で滲ませ、尻尾を浅ましい期待に打ち振りながら、尚強さを残す声音で反駁した。

「あたしはぁ!こんなぁ…!エルフのちゃちな魔法で作った、ちんこなんかにぃ!絶対ぃ!負けなぃっ!!」

「ふふ。いいよ。ガラウは強い雄になれそう」

そばかすの散るあどけない容貌に、嫣然たる色を浮かべたエルフの少年は、紅髪を片手で掻き上げると、ほっそりした胴を下ろし、絹のように柔らかくしなやかな粘膜で、相手の秘具を包み込んでいく。

コボルドの最後の力を振り絞った咆哮が啼泣に変わるまで、そう時間はかからなかった。


「はーいベルンちゃん。今日も元気な赤ちゃんを産みましょうねー」

「がんばってー」

双子のように良く似た妖精の侍女がそろって楽しげな作り声で促す。

獣人の少年は悔し涙を浮かべながらも、地下牢の石壁に背をもたせて大股開きになり、精一杯いきんで括約筋を広げると、丸々とした透明な塊、スライムを吐き出していく。

一日に一度だけ許された排泄の時間。飲み水代わりに与えられるエルフ娘の小水や、餌として与えられる精液まじりの薬粥は、ひとたび腹に収めると、猛烈な勢いでスライムが消化し、分裂を繰り返しながら腸を膨らませる。調教する側が嘲りを込めて言う通り、まるで妊婦のように。

「ひっひっふー、ひっひっふー。うーん上手上手。暴れなくなったし、レディとしての自覚が出てきたかな」

「僕は…男だっ…!!」

ほとんど意地だけで吠えたとたん、ハイヒールの踵が、ぶざまな童児の孕み腹を蹴り付ける。

「キャゥウウ!!?」

衝撃でさらに何匹かのスライムを産み落としながら、ベルンは仰向けに倒れて痙攣した。

「違うでしょ?ベルンちゃんは“雌”なの。伯爵様は立派な“雄”を手に入れられたから。貧相な餓鬼なんて用済み。なのにあなたが飼ってもらえるのは、“雌”に作り変える実験のため。ちゃんとしないと私達が叱られるの」

靴を引きながら、侍女の一方がにこやかに告げると、もう一方がくすっと息を漏らし、手を伸ばして虜囚の柔らかな銀毛に包まれた胸、目立つほどはっきりと膨らんだ部分を揉みしだく。

「ひぁあ!!」

ベルンが痛みに喘ぐのと、肥大した乳首から幾筋か糸のような滋液が噴き上がるのは同時だった。

「おっぱいが出る男の子なんておかしいです」

いかにも不思議、といった調子で訊くエルフの娘に、コボルドの少年は、しかし鋼色の双眸を涙に滲ませつつねめつける。

「ぼ、僕は、男…ぉっごぉ?!」

いつの間にか相棒の妖精がしゃがみこみ、しなやかな腕を緩みきった獣人の仔の括約筋のあいだに捻じ込んでいた。

「あーあったかい。ぷよぷよ。やっぱベルンちゃんの中たまんない。あー私も男のもの欲しい。これ挿れたら絶対最高に気持ちいいよぉ」

五本の指が直腸にぎっしり詰まったスライムを押し分け、粘膜を気まぐれに突きながら、狭い胴の終点、結腸のあたりを叩く。

「ぁぉ…ぉっ…」

白目を剥いてのけぞるベルンの頭を、侍女のいっぽうが抱いて、形のよい乳房に押し付け、片手でよしよしとなでてやる。しかしもう片手は、男児にあるはずのない仄かな胸のふくらみを乱暴に揉みしだき、先端をひねって、また母乳を零させる。

「よいしょっと」

肛門の奥深くをまさぐっていた方の娘は、肘あたりまでを埋めてから、無造作に引き抜く。

「んぉおおお!!!?」

大量のスライムを掻きだして、ぽっかり開いた後孔をさらしながら、小さな虜囚は舌を突き出し、かつては凛々しかった容貌をぶざまに崩し、憎むべき二人の躾け役にさらしていた。

侍女は腸液で濡れた腕を、手触りのよい白銀の毛皮にこすりつけてぬぐいながら、延々と獲物の胸をいじっている連れと目交ぜをする。

「達したよね?」

「達しましたね」

芝居のかけあいのような速さで言葉のやり取りが続く。

「ほらね。ベルンちゃん精通もしてないのに、穴で達するの覚えちゃったらもう雌じゃん」

「そうです」

「早く認めちゃいなよ。そしたらさあ」

エルフの娘はにへらっと笑う。

「伯爵様はあの“雄”に夢中みたいだから、ベルンちゃんは私がお嫁さんにしたげるよぉ…ずっとずっと飼ってあげるからねえ。ふかふかのもふもふで、やーらかいおっきなおっぱいに育てて毎日抱いて寝るんだあ」

「あ、ずるいです。私もお嫁さんにしたいです」

「しょうがないなー。一緒に飼お?」

手と手を合わせて飛び跳ねて喜ぶ侍女二人の足元で、半ば意識を失った少年はなお水滴に似た生き物を排泄し続けていた。だが体内で分裂する速さが勝っているのか、張り詰めた腹は一向にしぼむようすがない。

「君達。ベルンにはちゃんと使い道があるんだから。勝手はだめだよ」

檻の向こう側から、困ったような笑いとともに、領主が姿をあらわした。ゆるやかな長衣をまとい、常には茨のようにもつれがちな赤髪をきちんと撫で付けているが、臈たけたたたずまいだけは変わらない。

娘等はあわてて姿勢を正すと、童形の中に齢知れぬ魂を隠した貴顕は頷き、そばかすの浮いたあどけない面差しを上げて尋ねた。

「さて、ベルンの調子はどうかな」

やや緊張したようすで侍女の片方が報告する。

「はい。母乳の分泌量、スライム出産の頻度とも順調に増えてます。臀部や胸部の脂肪も厚みを増しましたし、肛門や直腸への刺激だけで官能を得るようになりました。伯爵様の仰られた通りかと」

もう片方がすぐ後を引き取る。

「それから食欲。食欲がすごいです。伯爵様の命令で餌に、例の“雄”の子種を混ぜるようにしたらばくばくがっつくんですよ。皿まできれいになめて、ずっと匂いを嗅いでるんです。本人にも理由分かってないみたいですけど、コボルドの嗅覚って誰が出したものか本能で察するんでしょうか」

気に入った演奏にでも聴き入るように、尖り耳をひくつかせてから、エルフの少年は満足げに返事をした。

「ふうん。まあ僕もコボルドの子種は嗅ぎ分けられるから。個体の能力じゃない?とにかくよくやったね二人とも。じゃあ今晩にも仕上げをしようか」

元気よく承知する妖精の娘等をかたえに、伯爵は膝をついて、獣人の仔を覗き込む。指を伸ばし、銀の毛並みをそっと撫でる仕草は限りなく愛しげだった。

「ベルン。覚えてる?最後に会った時、きらきら光る毛を逆立てて、お母さんには指一本触らせないって怒ったね。もっとおとなしいと思ってたのに、本当に勇ましくて、美しかったよ。どきどきしたんだ」

コボルドの少年は悪夢にうなされるように弱々しく呻くと、エルフの少年は唇をほころばせた。

「今晩、ガラウをベルンに還してあげる。そうしたら、ずっと一緒に暮らそうね」


「おいで、ガラウ」

「わんっ♪」

飼い主が名前を呼んでくれたので、雄奴隷のガラウは嬉しさに尻尾を千切れんばかりに振りながら、前へ進み出した。硬く反り返った性器が腹を鼓ち、たわわな乳房がぶつかり合って揺れる。胸の先端にはミスリルの鈴がはまって、誇らしげに歩くつどりんりんと鳴る。

まだ四つ足での歩行に習熟していないので、つい遅れがちになり、きちんと行儀良く振舞えない心細さを感じる。だが銀に輝く鎖が急かすように首輪を引く都度、優しい飼い主との絆がつながっているのを感じてほっとする。

湿った地下の回廊を進むに連れ、夜光茸の彩りさまざまな灯が、黄金の毛並みを青に、赤に、緑に、紫、橙にと変えていった。ガラウは、前を進むエルフの少年、絶対の伴侶の双臀が誘うようにくねるのを眺めて、つい涎を垂らし、秘具をいっそういきり立たせてしまう。

「伯爵様」

「何?ガラウ」

「特別なご褒美って何だい」

「ふふ。何度聞くの。昨日間違えずに“誓いの言葉”を暗誦できたから、とってもいいものをあげる」

コボルドはぞくりと背筋を震わせた。昨日は飼い主の脚の親指と人差し指のあいだを舐め、雄奴隷として一生側に仕えると上代エルフ語の詩で述べたのだ。珍しく詰まったり、節を飛ばしたり、舌を噛みもしなかった。

一言一句でも間違えると、少年の痩せた膝に載せられ、尻を叩かれる。叩かれるのも好きだが、求めに応えられないのは恥ずかしかった。最近は側仕えとしてふさわしいよう読み書きも教わっているが、そちらはいっそう難しい。

あの仔は何でも上達が早かったけど、と不意に脈絡のない思いが頭を掠める。あの仔とは誰なのかよく分からなかった。妙な寒けを覚えて、ガラウは先を急ぎ、飼い主の裸の太腿に頸をこすり付ける。

「こら、甘えん坊」

「えへへ」

エルフの少年は、愛情をこめて耳のあいだを叩きながら、しかし押しのけようとはしない。飼い主の体温を感じているうち、雄奴隷の不安はゆっくりと引いていった。

「ついたよ」

言われる前から分かっていた。開け放された牢の前からは、発情した異性の強い匂いが漂ってくる。言葉より雄弁なコボルドの意思表示。種付け希望。ガラウは嬉しさに遠吠えをすると、先に立って檻の戸をくぐった。

狭い部屋の中央に、褒美が置いてあった。大きな丸太のようなものを抱く格好で、うつ伏せになっている白銀の毛並みのコボルド。ひどく小さいのに成熟した雌の匂いを放っている。甘い乳の香りも。

華奢な作りの矮躯に似合わぬむっちりした臀肉のあいだには、蕩けるような肉孔が交尾を待ってひくついている。位置が少しおかしく、数も足りない。股間には雄の性器に似せたような小さな棒があるが、とうていまともな機能は果たせそうもない。奇形なのだろうか。だが興奮の極にある雄奴隷には気にならなかった。

「伯爵様!あたし、孕ませてもいい?いい?」

飼い主以外と番うのが、正しいのかどうか分からぬ戸惑いから、辛うじて襲い掛かるのをこらえて、ガラウはほとんど必死の形相で問いかける。

「うん。それにしても」

「?」

領主がおかしそうに口元に拳をあてて呟くのを、獣人はいきり立つ陽根を跳ねさせながら、じれったげに待つ。

「コボルドは本当に、視覚より嗅覚で相手を認識するんだね」

「伯爵…さまぁ…」

「どうぞ」

「きゃふっ♪」

雄にふさわしからぬ可愛らしさで鳴くと、黄金の毛並みは白銀の毛並みにのしかかった。逸物を突き込んだ瞬間に、すさまじい喜悦が全身を走り抜け、咆哮とともに射精する。無論、手始めだ。様々な開発と訓練の所為で、ガラウは子種を注ぎながら新たな命の素を作り、断続して出し続けられるようになっている。

「ぉおおお!!おおお!!きゃぅうううう♥」

またしてもみっともない雌じみた嬌声を上げてから、鉤爪を立てて同続の背をかきむしり、肩口に噛みつく。飼い主との閨事では決してできない行為を存分に貪る。

「どう?」

エルフの少年が問いかけるのへ、コボルドは舌足らずに叫んだ。

「しゅごぃい!!これしゅごぃ!!これぇええ!!」

「よっぽど気に入ったんだ。僕とどっちがいい?」

意地悪い質問に、ガラウはめちゃくちゃに腰を使いながら、泣きじゃくって答える。

「そんにゃのぉお、はくしゃくしゃまにきまってぇ…ぁああだめわかんにゃぃ!!ごめんにゃしゃぃ!!ごめんにゃさぃだってこのめしゅしゅごぃいい!!」

「いいんだよ。その仔、ベルンはね。ガラウのためだけに作った雌奴隷だから。ガラウがどんなに犯しても壊しても殺しても食べちゃってもいいよ。ガラウを気持ち良くするための玩具だから」

ベルン。という名前を耳にした途端、コボルドの心臓が跳ね、早鐘を打つ。陰茎はいよいよ膨れ、注ぎ込んだ白濁がこぼれないようきっちり牝孔を塞ぐと、縁を泡立てながらさらに苛烈な抽送に入る。

「ベルンっ!ベルンっ!あたしのぉお!!あたしだけのめしゅぅうう!!!」

「そうだよ。でもいつまでもベルンを眠らせたままじゃつまらないよね。目覚めよ」

飼い主が指を鳴らすと、小柄な銀毛の牝奴隷が、不意に首をもたげた。鋼の双眸が一瞬だけ虚ろに宙をさ迷ったが、意識を失っていたあいだに脳に蓄積した快楽を一気に認識したのか、甲高く啼いて痙攣する。ちっぽけな体格に似合わない西瓜じみた乳房から、母乳が勢いよく噴出し、牝孔と化した肛門からは腸液があふれ、剛直の滑りをいっそうよくする。

「きひぃいいいい!!?」

「ぁああベルンにょぉ♥にゃきごぇええ♪あなもしまりゅぅうう!」

可愛らしい牝の悲鳴と、締め付けを強めた肛孔に陶然として、ガラウは洟と涙と涎をあふれさせる。一方のベルンは白眼を剥きかけながらも、何かにしがみつくように理性を保っているようだった。

「ぉ…かぁ…さん…」

凍りついたように日の毛並みをした大きな獣人が打ち込みを止める。月の毛並みをした小さな獣人は、渦巻き押し寄せる官能の濁流に抗いながら、言葉を紡ぐ。

「おかぁさん…なに…されたの…ぼく…いま…たすけ…」

不壊なるミスリルの枷を腕ごと千切って逃れようとでも言うように、ベルンは激しくもがいてから、急に力を使い果たしたようにうなだれる。ガラウは番う相手を見下ろしながら、震える喉で呟く。

「お母さ…え、あたし…あたしは違う…ちが…」

山吹の眼差しが救いを求めるように飼い主を見やった。

するとコボルドの地を統べるエルフの辺境伯はにこやかに告げる。

「雄のガラウがお母さんな訳ないじゃない?」

雄奴隷は、いや牙の村の女戦士は、黄金の双眸を瞬かせ、鋭い歯のあいだから怯えた呟きを紡ぐ。

「でも…ベルンは」

「もしかしたら、正しいかもしれないね。本当はガラウはベルンのお母さんなのに、雄になって卑しい欲望に任せて息子を犯してしまった最低の親なのかもしれない」

「う…嘘…嘘だ…」

小刻みに震える獣人を、妖精は静かに見つめる。

「でもそうだとしたら。ガラウは、世界一可愛い牝奴隷のベルンを好きなだけ種付けられなくなるし、僕とも交尾できない。一生、重くて暗い罪を抱いて暮らすんだね」

「い、っしょう…?」

恐怖がガラウの顔を覆い尽くし、歪めていく。伯爵は穏やかに助け舟を出した。

「でもベルンはただの嘘吐きな雌奴隷で、ガラウは本当に逞しい雄奴隷なのかもしれない。そうしたら、ベルンの世界一気持ちのいい穴はずっとガラウのものだよ。僕もね」

「あたし、あたしは…あたしは…」

再びベルンが首をもたげ、肩越しに振り返る。

「おか…さ…だいじょ…ぼく…たすけ…」

「違う」

否定しながら、長躯の雄奴隷は、ちっぽけな雌奴隷を突き上げた。

「ぎゃぅっ!!!?」

「あたしは、お母さんじゃない」

金毛のコボルドが刷き捨てると、銀毛の仔のいとけない相貌が、絶望に強張る。

「おか…なんで?」

「あたしに息子はいない。あたしは雄奴隷で、あんたはあたしの番(つがい)で、雌奴隷で、だからずっと犯して抱いて、好きなようにしていい。そうやってずっと一緒に伯爵様に仕えるんだ」

「ちが…ちが…おか…」

「おねがい…ベルン…」

啜り泣きながら、母は息子のうなじを噛んで所有の印を刻む。

雌と化した少年は、わななきながらうつむき、魂さえ抜け落ちるような深い息を吐くと、消え入るようにかそけく鳴いた。

「はい…僕…は雌…奴隷…です」

「ベルン、ベルン!!!」

喜びに尾を立てた雄奴隷は、しがみつきながら何度も雌奴隷のうなじに齧りつき、繰り返し繰り返し婚姻の証を刻みながら、手に余るほどの乳房を鷲掴み、母乳をいっそう激しく搾り出した。

「おか…ガラウぅ!!ガラウさまぁ!キャウウウウ!!」

重なり合う金と銀の獣人よりやや離れたころで、妖精の貴顕は頬を紅潮させ、痩せた拳を固めて薄い胸に押し付けつつ、静かに見守っていた。幼げな容姿に隠れ、遥かに齢を重ねた魂は、難しい実験を成就した至福に浸りつつ、新たな構想を心に遊ばせ、艶やかな唇から一端をこぼす。

「そのうち、ちゃんとベルンにガラウの赤ちゃんを孕ませてあげるからね」


「ふぎぃ!!!壊れりゅぅ!!もぉお腹壊れるぅ!!」

砦の片隅。遊戯室を寝所に作り変えた広々とした部屋に、エルフの娘が嬌声を響き渡らせる。

領主の近くに従う二人の侍女。一方が、形の良い両足を折り曲げて左右に開き、嬰児が用を足すような格好になって、両の瞳をいっぱいに見開き、舌を突き出している。背後には逞しい双成(ふたなり)の獣人が立ち、獲物の両腕を掴んで吊るし上げるようにして、秘裂に野太い陰茎をねじこみ、逃げ場のない宙に捉えて、でたらめな打ち込みを続けている。

「もぉ!死んじゃうぅ!死んじゃうかりゃあ!!」

悲鳴まじりの懇願に、黄金の毛並みのコボルドは、嗜虐に牙を剥いて、さらに大きく腰を引いて、肉杭を子宮の入り口にまで届かせるよう一撃すると、したたかに精を放った。妖精の娘は青玉の眼を裏返して失禁し、散々使い込まれた菊座からスライムを排泄する。

「あひ…出てりゅ…孕んじゃぅ…コボルドの仔孕んじゃう…ガラウの赤ひゃん…」

絶望と恍惚に満ちた喘ぎが漏れる一方で、部屋の隅では先に種付けを済ませたらしき侍女の片割れが蹲り、股間からあふれる子種を指で掬ってはおいしそうに口へ運んで、うっとり囁いていた。

「ふふふ…ガラウの赤ちゃん…ベルンちゃんに似てるといいな…」

ガラウは牙を剥いて嗤うと、抱き上げていたエルフの娘を相棒の側に放り出す。重なり合った妖精二人はどちらともなく唇を合わせると、激しい陵辱によって負った互いの擦り傷を舐め清め始めた。

半陰陽の獣人は、群の長が若い雌を眺める眼差しで侍女等を眺めやると、やれやれと言うように鼻を鳴らし、急に戸口に向き直って、うやうやしく一礼した。

「伯爵様」

「やあガラウ。精が出るね」

開け放たれた樫の扉の前に、二人の少年が立っている。一方は細身のエルフ。燃えるような紅毛とそばかすの散った象牙の肌、煌く翡翠の双眸をしている。全身が川に跳ねる魚を思わせる瑞々しさと滑らかな光沢を帯びているのに、齢を重ねたものだけが持つ落ち着きがあった。

もう一方はやや背が低いコボルドの仔。白銀の毛並みに鋼の瞳。かつて痩せて敏捷そうだった体付きにはそこかしこに丸みを帯びた脂肪がついている。際立つのは鎖骨の下から重そうに膨らむ西瓜ほどの胸鞠で、一児の親だったガラウのものより大きい。母乳に濡れる先端にはミスリルのピアスがはまり、玩具のような幼茎の先端を貫く飾りと揃いの輝きを放っている。

どちらも艶かしい体の曲線を強調するような薄紗の下着をまとい、コボルドの鼻には濃厚な雌の匂いが嗅げた。伯爵は誇らしげに品を作って衣装を見せびらかしているが、ベルンは雌奴隷の誓いをしてから随分立つというのに、まだ恥ずかしさが抜け切れないのか、ぎこちなくそっぽを向き、かつての母だった人の凝視から、たわわな胸を隠そうとしては腕のあいだから転(まろ)ばせるという無駄な努力をしていた。

妖精の領主は、どぎまぎしている獣人の仔の頭を撫でて落ち着かせてやってから、床に倒れ伏す臣下の痴態を観察した。

「どうだったエルフの雌は」

「すぐへばる。頑丈な仔を産ませるには鍛え直さないと」

ぐったりしていた侍女二人がどちらも慌てて抱擁を解き、起き上がろうとするのを、伯爵は手振りで制し、お気に入りの雄奴隷に目配せした。

「任せるね」

「それで伯爵様、今日は…」

二匹の雌を貪ったばかりだというのに、ガラウはいささかも疲れを覚えぬ態で、植え付けられた剛直を痛々しいほど反り返らせ、かつての我が児と、飼い主とを交互に見やった。

「ふふ。どっちとしたい?」

エルフの少年が赤髪をかき上げて尋ねると、コボルドの少年はうつむいて毛深い銀の手を揉み合わせる。

心臓が数拍打つあいだ黙りこくってから、雄奴隷は牙を噛み鳴らして答えた。

「どっちも」

「うんいいよ」

伯爵はにっこりして頷くと、ベルンの手をとって指と指を絡ませ、引っ張るようにして前へ出た。そのままガラウの胸のあたりにむしゃぶりつき、緑柱石の瞳に上目遣いをさせる。

「ガラウはやっぱりそうでないと。さあ、いっぱい犯して、抱いて。戦場での働きにも期待してるよ。僕の雄」

コボルドとエルフ、二人の小さな舌が、一方はおずおずと、一方ははつらつと、山吹の剛毛に覆われた逞しい筋肉をくすぐっては伝い下り、左右から逸物にしゃぶりつく。低い唸りとともに、鉤爪の生えた腕が、奉仕者たちの頭を掴み、柔らかな唇を太幹に押し付け、濡れた感触を愉しむ。

やがて、ひときわ高らかな獣人の遠吠えが、石造りの部屋部屋に響き渡り、廊下にも谺すると、あまたの窓から闇のかなたへと広がっていった。

田園の夜更け。大川の畔に建つ旧い城館、悪名高き辺境伯の住まいは、色とりどりの夜光茸の照らすもと、未だ眠らず盛んに動き回り、まぐわい、貪り合う幾多の気配に満ち、眠りを知らぬかのようだった。

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