Doggy Life Addition

 ぴちゃぴちゃと音を立てて、人の姿をした子犬が、男の股間に頭を埋めている。

 桜色の乳首を、針金が貫き、名前と生年を刻んだタグと、所有権を刻んだタグが一つづつ吊るしてあった。Robbin、A.D.1546、Weibchen、von Aesir…

 左の尻朶には名門貴族アース家の紋章「尾を噛む蛇」がくっきりと烙印されていた。他にも両耳には二個づつピアスが、けなげに勃った幼茎の根元には輪止めが嵌り、「種付け禁止」と彫られたプレートが下がっている。

 全て純金製で、飼い主が如何にこの愛玩動物を大切にしているかを、良く表していた。だが今、奉仕を受けている男は、全く心此処に在らずといった表情で、幾つも指輪を嵌めた手で時折思い出したようにふくよかな尻を撫でたり叩いたりしているが、あまり真剣味がない。

「くそ、品評会の連中…。私のヴォーダンが薄のろだと…片目を喪ったとはいえ、あの地上の稲妻が…猟犬の王が…何故だ!軍人上がりの単細胞にあんな侮辱を受けるとは」

 誰に向けるとも無く罵っていた青年は、不意のむず痒さに独白を途切れさせ、逸物を包み込む温かい口腔へ、したたかに精を放った。子犬は滴も零すまいと一生懸命に喉を鳴らして飲み干し、目を瞑って嚥下すると、おずおずと頭を上げた。

「キュゥン…」

「ん?ああ、偶には喋ってもいいぞ。人間の言葉を忘れてしまっていなければな」

「ワゥッ…ヴィル…ヘルム様…」

「ほう、まだ舌は回るようだな。何だ」

「僕、そろそろ犬小屋に戻らないと…」

「私の相手をしているんだぞ。人間の主より犬の主の方を優先する気か?」

「クゥンッ…ヴィルヘルム様…考え事が…その…お忙しいみたいだし…僕、昨夜ずっとヴォーダン様の相手をしてて、今日はトール様やヘイムダル様が待てないって…」

 ヴィルヘルムと名指された男の目付きが険しくなり、少年の身体を抱き寄せると、尻の穴を乱暴に割り広げ、強く問い詰めた。

「ロビン、お前のここのせいか!ヴォーダンの調子が出なかったのは!」

 じわっとロビンの目に涙が浮んだ。直腸の内側が冷たい夜気にびくびくと震える。

「ごめんなさい。でもヴィルヘルム様、このまえ僕の足の健を切ってしまったし、あの夜もご飯とお尻の薬…動けなくて」

「当たり前だ。お前が逃げたりしては困るからな」

「僕逃げたりしません!ヴォーダン様達のお世話があるのに…」

「ほう、初めて会った時はそうは言っていなかったぞ…」

「あの時は野良だったから…」

 おかしな理屈だ。だが自由を奪われ、薬に曇らされた脳は犬と会話ができると信じ込み、自分を犬と同一視している。しかもちゃんと、それで意志の疎通が成り立っているのだ。

「それで?結局お前は私に告げ口したかっただけか?」

「キュゥンッ…あの、できれば…ヴォーダン様を、本当の雌と…」

「お前に楽をさせる為に?何度説明すれば解る。交配は選び抜かれた雌としかさせん。それまでお前が代用を勤めろ。余裕がなければ休憩を削れ。そして私にも仕えろ」

「うっ…ワンッ」

 ロビンは困ったように頷くと、開いた尻を自分でさらに広げ、元気になったヴィルヘルムの分身を咥えこんだ。流石に潤滑液もなく、中を寛げる準備もなしで、苦しさに顔が歪んだが、主人の不興そうな表情に気付くと、無理に笑顔を作って腰を動かし始めた。

「ワンッ、キャウッ♪ヒャゥンッ♪アンッ」

 教え込まれた通りのよがり声をあげて、緊く男の欲望を締め上げる。だがヴィルヘルムにとっては所詮、手近な娼婦代わりだ。耳慣れた嬌声では些か物足りないので、胸元で揺れるタグを摘む。敏感な尖端を引っ張られ、少年は演技抜きの裏返った悲鳴を漏らした。それを聞いているのかいないのか、領主はタグに刻まれた文字を読んで感慨に耽るようだった。

「そうか、お前を捕えてからもう半年か。色んな弊害が出ても仕方あるまいな。どうした、腰が止まっているぞ。早く戻らぬとヴォーダンに仕置きをされるのだろう」

 言われた方は、相手がタグから手を離す気配が無いのを見て、ちょっと恨みがましげに睫を伏せ、胸に刺激を伝えないよう慎重に腰の動かす。ヴィルヘルムは小ざかしいとばかりにタグを引っ張って、あろうことか左右にねじってみせた。

「キャヒィッ!!!!」

「ロビン、私を愛しているか?」

「ア…ハ、はひぃっ」

「どの位だ」

「すごく、すごーくですっ!ワンッ♪」

「父親よりもか?」

「父さんより、母さんより…お姉ちゃんより、お兄ちゃんより愛していますっ」

「家族の敵を討つと意気込んでいたお前がか」

「あひぃっ、言わないでぇっ…」

「今でも人々の為に狂った貴族を倒すべきだと思っているか?」

「いいえぇっ…下民が殿様に逆らうなど…」

「お前の飼い主は誰だ」

「うぁあっ、ヴォーダン様です!僕が目を傷つけた!猟犬の王…」

「償いとして私は、お前の脚を奪ってやった。不服か」

「いいえ、こうして貰って、幸せです」

「良かろう。だがヴォーダンの調子を悪くしたこと、私を蔑ろにしたことは許せぬ。射精禁止をもう五日間延長する。それと、今日から食事と浣腸に使う媚薬の容量は倍だ。お前にまだ理性があったこと自体が驚きだった。とっとと狂え」

「ありがとうございます!僕頑張ります」

「もう人語を喋るな。不快だ」

 懲罰代わりに焼印のある尻を撲つと、繋がったまま軽い体重を抱え上げ、そのままベッドを降りる。窓辺に向って歩き出すと、一足毎に衝撃が伝わるのか、断続的な喘ぎが漏れる。桟まで辿り付く頃には、ロビンは気絶寸前のようだった。

「頑張るといった矢先がこれか…さてと…」

 青白い手が鎧戸の鍵を外し、大きく開け放つ。寒風が少年の背を撫ぜて、飛びかけた意識を僅かに引き戻した。ヴィルヘルムはくすりと笑って、紅葉を散らした頬に接吻を与える。

「見えるか、この連山の果ての更に向こうまでが我がアース家の領土だ。あの尾根は…一緒に馬で行った事があるな。鞍上に居る間ずっと私のものを尻に咥えたままで、景色を眺める余裕など無かったうようだが…」

 肩にかかる手を外し、しがみつく身体を無理矢理反転させる。異様な角度で内側を抉られ、仔犬はまた鳴いた。長い指が細首を掴み、彼方の光景へ捻じ向ける。

「覚えているか、尾根の物見岩から眺めた小麦の海を。あれは皆、百姓共が汗水流して作ったものだ。お前が素裸で山の蝶を追いかけていた間も、お前と左程年の違わぬ子が鋤を引き、種を撒いていた」

 意地の悪い口調で耳元に囁きながら、軽く耳朶を噛んでやる。少年は蕩けたような瞳で外の景色を見ちつつ、擽ったそうに笑った。

「何も感じないようだな。上出来だ。それでこそ私の牝犬だ、ロビン」

 二度目の精を放つと、絶頂を封じられた小さな秘具を爪で弾いて、自らのものを抜き取る。

「舐めて綺麗にしたら行け。それとその間、この前のように尻から零すなよ。零したらそちらも舌で掃除して貰うぞ」

 再び涙目になって頷く相手を床に降ろすと、幼い舌が雁首から裏筋までを丁寧に舐め取っていくのを眺める。貴族は疲れたように肩を落すと、いきなり痩せた脾腹の辺りを蹴り飛ばした。仔犬は床をのたうちながら、菊座から白濁液を溢れさせる。

「零すなといったろうが…愚図が。くそ、何故私が貴様のような下種の奉仕を受けねばならん!犬と同じ孔を使わねばならんのだ」

 部屋の隅に立てかけた革鞭を取り、追い立てるように打ち付ける。ロビンは転げ回りながら、必死で床の汚れを舐めるが、向きを変えるたび、自らのものでない精を垂れ流してしまう。

 ヴィルヘルムはやがて滑稽な姿に笑い出し、眉間を抑えて身をくの字に折った。

「もういい、もういいぞロビン、行け。後の掃除は奴婢共にやらせる。だがこの時間では犬共が怒り狂っているのは確実だな。死ぬなよ。そうしたら明日もお前を抱いてやる」

 ぐすぐすと鼻水を啜って、少年は嬉しそうに笑った。そのまま四つん這いでドアを潜って部屋を出て行く。去り際に、乳首から下がるタグ同士がぶつかって、鈴に似た音色を立てていた。

 残された主人は欠伸をすると、再びベッドに潜り込む。明日は朝から狩に行く予定だった。そろそろロビンに宛がう為の本物の雌を捕えるとしよう。あれの血を一代で終らせる手は無い。ゆくゆくは美しい子供を作らせるのだから。


<<戻る [小説目次へ]  
[トップへ]

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!