Doggy Life

鬱蒼と繁る森の中、猟犬の群を連れた若い貴族が一騎、獲物を見下ろしていた。

鉄蹄が踏み躙った枯葉の上に、粗末な麻服をまとった童児が独り、挑むような眼をして立っている。年の頃はまだ、十度の冬を越したかどうかと言った所。馬上の狩人は口元に好色な笑みを浮かべると、短い裾から剥き出しになった白い太腿へ、ねっとりとした視線を這わせた。

「小僧よ、命乞いはせぬのか」

「何故聞くっ、面白半分に領民を狩りの獲物にするような悪党が!」

「腰を振って誘えば、情を掛けたくなるような身体をしている故な」

「貴族に媚びる位なら犬の相手の方がましだ!」

既に着衣のあちらこちらを牙と爪に破られた子供は、しかし果敢な叫びと共に、隠し持っていた短刀を抜いて、腰を低く落とす。あくまで闘うつもりらしい。貴族はやれやれと溜息を吐き、不意に鋭く乗馬鞭を振り上げた。

「良く解った…ヴォーダン!片付けろ」

潅木の茂みがさっと揺れ、大きさが仔馬程もあろうかという灰色の猟犬が飛び出す。少年は一瞬意表を突かれたが、すぐにそちらへ向き直ると、反身の刃を逆手に構えて迎え撃った。

旋風のような勢いで人と獣とが組み打つ。暫くして急に、四足の捕食者の方が、絶叫を放って離れる。片目に深い切傷が走って、鮮血が噴出していた。痛恨の一撃を受けたらしい。薄笑いを浮かべていた貴族の顔が、怒りに強張る。

「よくも私のヴォーダンを!」

「はっ、こいつが人肉で育てたという自慢の種か!?大した駄犬だな…次はどんなのが相手だ…どいつが来たって、お前達に殺された姉や兄の分は血を流させてやる…」

幼い容貌が、追い詰められた狼のように歯を剥き出し、周囲をねめつけた。

だがどの狗も、小さな獲物の意外な獰猛さを目の当たりにして気勢を削がれたのか、威嚇の唸りを上げこそすれ、挑戦に応じようとはしない。すっかり面目の潰れた主人は、ギラギラと両目を光らせると、鞭を槍のように真直ぐ突きつけた。

「獲物の分際を弁えなかったことを悔いるがいい。猟犬共、一斉に掛かれ!さぁ!」

いくら嗾けられても、猟獣は揃って頭を低く伏せたままで、狼狽の色を隠さない。その隙に少年は、じりじりと騎馬の方へ間合いを詰める。刹那、小さな反逆者にも、勝利の希望が訪れたかと思われた。

後一歩で鞍上の敵へ飛びかかれるという所で、背後に蹲っていた手負いの灰色犬が、恐ろしい咆哮を放つ。戦意を失ったかに思われた群の長の、突然の雄叫びを聞いて、脅えを見せていた他の仲間はたちどころに勇しさを取り戻し、獲物を目掛け怒涛の如く押寄せた。

少年は歯噛みして逃げ道を探ったが、時既遅く、生きた毛皮の群はあっという間に痩躯を飲み込むと、素早く地面へ引き摺り倒し、尖った爪で剥き出しの皮膚を掻き毟って、幾つもの赤い筋をつけた。ほっそりした四肢は尚もあがき続け、鋼鉄の煌きと共に、血飛沫と犬の悲鳴が上がり、数頭が鼻面をぬらつかせて、争闘の場から飛び離れる。

隻眼となった猟犬の王は、数で優りながら依然劣勢な味方の有様を見るや、怪我も構わず再び激しい揉み合いに加ると、頑丈な顎で短刀の刃を挟み、猛然と頭を振ってもぎとった。

武器を失った少年は、抗う術のないまま、とうとう両手両足を牙にかけられ、身動きを封じられる。一部始終を見守っていた貴族は漸く安堵の吐息を漏らし、笑みを取り戻すと、押し殺した声音で命じた。

「ヴォーダン、たっぷり食え。かたわになったお前が口にする最後の狩の獲物だ」

灰色の大狗は、短刀を投げ捨てて吼える。他の猟犬共は其々の口に衣の切れ端を咥えると、頭を垂れて退き、彼に道を空けた。残された少年は、露にされた肌をべっとりと紅に濡らし、辛うじて致命傷だけを免れた態で、荒い息をついている。

ヴォーダンは、己に深傷を負わせた難敵へ近付くと、長い舌を伸ばして、こびりついた血を舐め取り始めた。唾液が怪我に沁みたのか、あどけない唇から堪えきれず声が漏れる。

「くっ…ぁっ…」

「ふ…ふははっは…そうか、そうだなヴォーダン。ただ食うのではお前の失った片目の仕返しにはならんな。よしよし」

貴族はひらりと馬から下りると、鞍袋からロープを取り出して、ヴォーダンの側へ歩み寄った。少年の瞳が剣呑に光ったが、細い喉首を牙に抑えられてはみじろぎひとつ出来ない。

腥い息をかけられた気色の悪さに粟を吹いた素肌を、濡れた舌が丹念に舐っていく。その傍らで、貴族はロープに輪を作り、少年の踝に巻きつけた。

「な、何をする!」

「おっと、喋るな…ヴォーダンは耳元で怒鳴られるのを嫌う。今、お前の命は奴の気分次第だ。あるいは自殺が好きなのか?なんなら舌を噛んで死んでもいいぞ」

「自殺だと…お前はそうやって、捕えた人間を脅し、神の教えに反する行いを強制してきたのか?汚らわしい奴…あぅっ」

男は舌足らずな罵りを意に介した様子もなく、ロープの一方を太い木の幹に結び付け、地面に落ちた少年の短刀を拾って端を切り落す。

「自殺は神の教えに反するか…それは重畳。てこずらせた分は、私の猟犬をたっぷり楽しませてくれるという訳だ」

「生きながら食わせるつもりか…勿体ぶらずに…ひっ…」

尖った乳首の先を舐られ、声変わり前の囀りが一音階高く跳ね上った。甘やかな音色に、ヴォーダンは三角形の両耳をピクッと反応させ、肋の浮いた胸の辺りを集中的に舐め始める。

「やっ、止めろ…何を…はぁっ!…」

「ほほう、すっかりヴォーダンの舌が気に入ったようだな。暫くすればもっと良くなる。ヴォーダンがこれまで孕ませた牝共と同様にな…」

「なっ…ふざけ…ふぅっ…ぐっ…」

鳴き声を堪えようと、少年は唇を噛んだ。だが濡れた舌は蛞蝓のように跡を引いて臍へ下り、凹みの周りを執拗に弄って、沈黙を許さない。その間に飼い主は、少年の手首にロープを回し、強く縛り上げた。

「ぁ…あぅっ、ふっ、やっ…めろぉっ」

「さてと、これでいい。トール、ヘイムダル、こっちへ来てロープを咥えろ。」

ヴォーダンに勝るとも劣らない大きさの斑犬と、動きの機敏な痩身の黒犬が走り寄って、ロープを咥え、再び左右に散る。ぐいと両足を引っ張られて、少年は痛みに歯を食い縛った。

「どうだ、何時までも寝そべったままでは気分が悪かろう」

ロープが引き絞られ、華奢な四肢が操り人形のように起される。ヴォーダンが一寸不満そうな唸りを残して離れると、男は含み笑いをしながら青白い指で、汗に濡れた髪を鷲掴んだ。

「牝犬そっくりに鳴きおって。どちらが駄犬やらな…お前は私の財産を傷つけたのだ。平伏して謝れ」

かぁっと血を上らせた幼い面差しを、ぐいと地面に押し付けると、口笛を吹いて犬達を呼ぶ。ロープを咥えた二頭が樫の古木を回り込むようにして戻ってくる。四つん這いのまま宙に浮いた獲物の姿勢を眺め、領主は満足そうに唇の端を歪めた。

「どうだ?犬そっくりの格好は。さっき私になんと言った。面白半分に領民を狩る悪党だと?馬鹿め、私はお前達を獲物にするだけではない、ちゃんと他の目的にも使ってやるのだ…」

短刀を放り出すと、代りに自分の乗馬鞭を手に取り、羞恥に震える双臀に視線を投げる。見られた方はきつく下唇を噛んで、膚に脂汗を滲ませた。

「ふん…牝犬らしい尻だな。お前の姉や兄と少しも変らぬ。卑しい、繁殖しか能のない家畜共の尻だ」

「なっ貴様!許さないぞ、絶対に許さない…」

「許さないといって、お前に何が出来るのだ、ん?」

黒革を巻いた柳の枝が、ぺたぺたと張りのある肉を叩く。少年は悔しさに毛穴から血を噴く思いで、恥辱に耐えるしかなかった。

「ふふふ、今度は黙りか。反抗的な所だけは、父親のゲオルグと同じだなロビン君。奴も手足をばらばらに食い千切られながら、謀反人仲間の隠れ処を吐かずに死んだ。罠猟師風情が」

「な…」

「何を驚いている?名前を当てられたのが意外か?お前の家族なら皆知って居るぞ。母のハンナは、たっぷり快楽を教えてやったのに、夫の死を聞くや自害しおった。乳房が大きく、腰は細く、三人産んだとは思えぬほどいい女だったがな。娘のゾフィアも母親似だったな。今頃は私の知人の奴隷に成り果てているが…だがお前の二つ上の兄のアレンは…あれは中々従順だった。さる異国の王に売れたぞ。差し詰め去勢され、ハーレムの酌童だろうな。薬で壊れているかもしれぬが」

「ぅ…あっ…」

「兄弟は皆死んだと思っていたのだろう。お前の家族は宝の山だった。父親が一揆の頭目だった事を差し引いてもな」

「…嘘だ…嘘だ…」

「ははは、どうでも良い。鳴け!」

しなやかな打棒が風を切って裸の尻朶へ振り下ろされ、真赤な線が一本、二本と交差して、惨たらしい幾何学模様を描く。心の砦を崩された童児は、終に涙腺を開いて、年相応の咽び泣きを零した。

「可愛いぞロビン。もっと、もっとだ。お前の尻が熱した鉄の色に染まっていく。ハンナに似て、素晴らしく柔らかい肌だ!鞭がよく食い込むぞ」

蚯蚓腫れが隙間なく二つの丘を埋め尽くし、僅かに谷間だけが無傷のまま残る。激情の限りを尽した領主は、最後の一鞭を呉れて、甲高い悲鳴を楽しむと、ようやく腕を止めた。

「…流石だ、我がアース家は代々、領民の間でお前のような愛玩に向く血統を育ててきた。醜いもの、畸形のものは子孫を残さぬよう慎重にな…」

「………気違い……」

「馬鹿め。犬も馬も、豚や牛さえ、そうして優れた種だけを残してきたのだ。私の可愛い猟犬達さえ、交配に向かぬため大半は子供を残せない…」

「…人間は…家畜じゃ…ない…」

「くくっ、父親にそう教わったのか。あの外国かぶれめ…いいか、お前達は家畜だ…だいたい、お前のような牝犬が愛玩以外の役に立つか?爪も牙も無いお前が…私の芸術品達より優れているというのか?」

「お前も…犬達も…薄汚い殺し屋だ!僕は…絶対にお前なんかの家畜にならない!必ず…復讐してやる…例え僕が死んでも、こんな無道をいつまでも人々は我慢したり、きゃぅっ!」

象牙のように滑らかな背へ、鞭の雨が降り注ぐ。柄を握る手には血管が浮き、口ごたえした相手を打つのに何の容赦もしなかった。

「ロビン、お前はそうして鳴いている方が似合う。教えてやろう。そもそも、お前の父母を密告したのは、その”人々”なのだよ。連中は薄汚く、恩知らずで、下種な性根の持主なのだ」

アース家の当主は紅く汚れた得物を脇に挟むと、猟犬に餌をやる時の合図をした。顔半分に乾いた血をこびりつかせたヴォーダンが、赤く腫れた美肉へとむしゃぶり付く。疼いて堪らない箇所を冷されて、ロビンと呼ばれた子は弱々しく呻いた。

「はぅ…ぁ…」

「奇麗事を述べた所でお前も同じ下種。体はすっかり悦んでいる。どうしようもない牝犬だ」

「違ぁ…違ぁああ!!嫌、嫌だぁっ…」

なまあたたかい舌が中心の窄まりに当り、解すように蕾の周りを動く。涎と汗に濡れた身体はロープを軋ませながらもがくが、もう力が入らない様子だった。

「違わんよ。さぁトール、ヘイムダル、フレイ、テュール、ローゲ、お前達もヴォーダンを手伝ってやれ。この牝犬を味わうがいい」

命令に従って、斑、黒、尨毛、赤毛、鹿毛の犬が次々に鼻面を押し付け、足の裏や指の間、胸や背筋、うなじを徹底的に嬲っていく。やがてヴォーダンの舌が、緩んだ菊門の奥に入って内部を穿ると、哀れな”牝犬”は肢体を狂ったように痙攣させた。

その間に主人は鞍から火酒の皮袋を降ろし、軽く呷ると、つかつかと犬たちの間に割り込んで、料理の味を引き立てるシェフのように、滑らかな肌へ中身を注いでやった。

「ひ゛ぃぁ゛ぁぁぁっ!!!!」

「どうだ、火照って来るだろう。犬には勿体無いほど上等な酒だ。ヴォーダン、また少し退いていろ。お前がこれから使う孔を少し広げてやる」

乗馬鞭を持ち直すと、いきなり少年の尻穴に捻じ入れ、抗う暇を与えず奥まで届かせる。痛みに固まった口を抉じ開け、皮袋から火酒を垂らすと、鞭に沿ってゆっくりと流しいれた。ロビンはもう、べそを掻きながらうわごとを呟くばかりで、括約筋を閉じることさえできない。

「冷たいよぅっ、お腹、お腹がっ」

「大丈夫だ。これはお前の苦痛を和らげ、淫乱な牝犬としての本性を目覚めさせる儀式だ。ほう、全部飲んだな。慣れない者は一口で腰が立たなくなるが。大した酒豪だ、お前のここは。」

ぐいと意地悪く中を掻き混ぜてから、鞭を引き抜くと、折角入れた液体が溢れそうになったので、尻朶をぴしゃっと平手打ちして栓を締めさせる。吸収の早い直腸に大量のアルコール分を受けてか、双眸は忽ち譫妄と官能に濁り、口からは涎の滴が止め処なく滴り落ちている。両腕はだらんとロープにぶら下がったままで、何処にも覇気は残っていない。

「だらしの無い奴」

「あ゛ぇ…っ、お腹…ぐるぐるして、お姉ちゃ、お兄ちゃ…助けて…」

ヴォーダンが、酒を零す菊座に近付き、中味を啜る。慎ましやかだった秘部は、開発され尽くした男娼のように寛いで、何の抵抗も無く長い舌を受け入れてしまった。

「ひきぃっ!あぉぉっ…ふゃんっ!!おなかぁっ、おなかがぁっ、助け…」

「お前を救ってくれるのはヴォーダンだけだ。彼に頼め、お前の主人のヴォーダン様にな」

少年は一瞬蕩けた表情で領主の方を見て、むずがるように首を振った。

「やだぁっ。僕家畜じゃない、家畜じゃないも…ぁああっ!」

「お前は家畜だ。お前達下民は、生まれついての家畜だ」

「やだよぉ…っ!」

「認めなければ、番わせてはやらんぞ。ずっとそのままだ」

「ずっと…ぁっ、やっ…」

領主は屈みこんで、少年の虚ろな瞳を真直ぐに捉えた。蛇のような、死霊のような、白皙の顔が、最後の壁を溶かすように口説く。

「家畜になるか。そうしたらアレンやゾフィアにも会わせてやろう」

「お…兄ち…ゃん達に…?」

「家畜としてだ」

「家畜…」

「なるか?強情を張るのを止めて」

躊躇、逡巡。湿った音だけが木々の間に吸われて行く。やがて、恥かしそうな頷き。領主はにっこりして、よしよしと頭を撫でてやると、諭すように先を続けた。

「では、言え。『僕はヴォーダン様の牝犬になります』と」

「…あ…」

「言え。アレンやゾフィアに会いたくないのか」

「んっ…僕は、ヴォーダン様の…めすいぬにぃっ、めすいぬになります…」

「くっ…はははは、痴れ者め!矢張りお前も他の連中と同じか!いとも簡単に誇りを手放すのだな。よし、ヴォーダン、いいぞ、犯してやれ」

全くおかしくも無さそうに、領主は馬の元へと踵を返した。その若々しい面持ちには、凍りついた笑いと共に、涙が流れていた。

後ろでは、ヴォーダンがロビンに圧し掛かり、背を掻き毟りながら、いきりたった肉刀を、緩んだ排泄口に押し込む。生まれて始めて挿入を、しかも犬によって味合わされ、少年はあられもない嬌声を上げた。

「精々楽しめロビン。それも最初だけだ。犬の性交は長い。喉まで精液に満たされても、終わりは来ないかもしれん。私は館へ戻る。お前達、後は好きにしろ」

マントを翻し、騎影は樹陰に駆け去っていった。

だが、ロビンにとってはまだ快楽地獄の序の口に過ぎなかった。大型犬のごつい性器が、肛腔内を攪拌し、先走りを送り込んでくる。ロープに吊られた不安定な姿勢では、衝撃の全てを受け止められようはずもなく、ぶらんこのように揺すぶられ、穿られる。

凄まじい質量が、火掻き棒のように直腸粘膜を擦り上げ、酒と腸液を潤滑油にさらに奥へ奥へと押し進む。と、不意に丸い瘤のようなものが、出入り口付近を圧迫し始めた。

「なぅ…ひがぁっ!?あがあっ!!!!」

どくどくと流れ込む熱い精液。ヴォーダンはもう絶頂を迎えたらしい。人間の生理にさえ未熟なロビンには、何が起きているかなど皆目見当がつかなかった。瘤はさらに大きくなりながら排泄孔塞き、止め処なく続く射精の逆流を封じる。

火酒に加え、他の雄の体液が、少しづつ腹部を膨らせて行く。

「いっぱい、いっぱいだよぉ…も、入らないよ…あ、あ…」

しかし放出は続いた。ヴォーダンは尚も腰を振りながら、散々に撲たれ、掻き毟られた背へ改めて深々と鉤爪を食い込ませ、幾度も勝利の咆哮を放った。すっかり新しい牝が気に入ったので、射精にいつもの何倍もの時間をかけ、確実に妊娠するよう最善を尽しているのかもしれない。それは全く無駄な努力だったが。

やがて瘤が縮み始め、ヴォーダンの巨根が引きずり出される。ぽっかりと穴を開いた少年のそこからは、淫靡なカクテルが溢れ出ていた。耳元で煩く騒ぐ昂ぶった雄の声も、壊れた心には全く届いていないようだ。

ヴォーダンが一声吼えると、斑毛のトールが進み出て、ゆっくりとロビンに圧し掛かった。

「ぁっ…」

前より太い侵入に、身体だけが反応する。縛られた獲物に、休む時間など与えられはしなかった。周囲の咆哮は一層猛々しくなり、日が暮れるにつれ狂宴は益々激しさを増していく。我慢の利かなくなった赤毛のテュールが、前に回って半開きの唇に剛直を押し込んだ。これまでにも人間の輪姦経験があるのか、他の犬は小さな両手にその逸物を擦り付ける。

 明け方、行為が一巡し、ヴォーダンが二回戦を始める頃には、もうそこに鋭い目をした少年の姿はなく、ただ獣の陰茎を頬張り、手でしごき、奉仕するだけの牝犬が生まれていた。














「ロビン、手袋を取ってきてくれ」

「ワンッ♪」

尻からふさふさの尻尾を生やした男の子が口に手袋を咥え、四つんばいになって主人の下へ駆けて行く。青褪めた肌の貴族は、上目遣いに品物を差し出す彼を撫で、鷹揚に頷いた。首輪の隙間に指を入れ、軽く掻いてやる。

「犬達に餌はやったか?」

「ワンッ♪」

「お前の餌は?そうか一緒に食べたか。しばらくこの狩小屋は留守にするが、私がいなくても淋しがるなよ」

「キュゥン…」

「帰ってきたら新しい猟犬を連れてきてやる。今年は東外れの領地で気性の強いのが生まれたそうだ。嬉しいか、お前の夫が増える」

「ワンワンッ♪」

身をくねらせて喜びを表現する少年に、飼い主は目を細めた。だが犬小屋の方では苛立った唸りが聞こえる。苦笑しつつ裸の臀部に手を這わせ、人造の尻尾を引き抜いた。疣だらけの棍棒が腸液の糸を引いて落ちる。少年は心もとなさに震え、甘えるように肋の浮いた胸を摺り寄せた。

「こら、服が汚れるだろうロビン。それより早くヴォーダンの所へ行け。あれに嫉妬されるのは敵わぬ」

ロビンはひょこんと離れて頭を下げると、急いで犬小屋に走っていった。怒った唸りを宥めるように、媚びたボーイ・ソプラノの鼻声を出している。

領主はその後ろ姿に限りない満足と、一抹の寂しさを覚えながら、狩小屋を後にした。これでいいのだ。大半が子孫を残せない劣等種だとしても、彼は犬達を狩の伴侶として愛していた。偽物であっても牝犬を宛がうことで、満足を与えてやれるなら、それは欺瞞ではないだろう。

また、ロビンにとっても、あれが最善なのだ。もし野性のまま大きくなって、仲間を集められる行動力を得たら、かつてのゲオルグのような危険な敵になっていただろう。全くあの一揆は、父の後を継いだばかりだった彼を大いに困惑させたものだった。

「だが、家畜は所詮家畜か…」

貴族の高笑いを証立てるように、犬小屋からは可憐な喘ぎが溢れはじめる。小さな牝犬は沢山の雄犬に愛され、もう悩みも苦しみも無い幸福の中にいた。

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