30.
薬の効果か,テロリストの勃起は収まらず,少女の一打ちごとに射精を続ける.それを受け止めるのは冬人の体.奇妙な連鎖,夏樹の高笑いが響く.
「冬人,いっぱい入った?」
悪戯っぽく尋ねる兄に,どう答えていい解らず首を振る少年.夏樹は目を細めると,弟の脇腹へ両手を差し入れ,残忍に微笑みかけた.
「後ろ,こいつのが零れないように,ちゃんと締めてろよ」
「あ,えっ?やっ…」
抱え上げられ,接合が解ける.だらだらとだらしなく白濁液を滴らせる肛腔に,秋音は仕方ないわねといった風情で眦を下げ,後ろから臀肉を平手打ちしてやる.
「きゃんっ!」
仔犬のような悲鳴を鳴き声と共に菊蕾を締める冬人.兄は妹の機転にウィンクすると,顎の外れたインシュマーの口から肉刀を引き抜き,弟をその上に導いた.
「こいつに,自分の精液飲ませてやれよ,ほら」
有無を言わさず腰を落させる.べちゃっと下の口と上の口がぶつかった.冬人は恍惚としながら再び括約筋を開き,腸液と精液が混ざったカクテルを排泄した.黒褐色の唇は,何の意志も持たず,ただ半透明の粘液を満たして,端から零すだけだ.
「まるっきりトイレじゃない?さっきまであんな偉そうに説教してたのにね.姉様,こいつ撮影が終ったら持って帰ろうよ.トイレ代りに飼ってあげればいいよ.それなら,テロリストでもちょっとは社会の役に立つ訳だしぃ?」
秋音は上擦った声で喋りながら,ディルドゥによる掘削を続ける.インシュマーの腰が二度と使い物にならないほど徹底的にやるつもりらしい.
全てをカメラ越しに観察していた春香は,スイッチを切ると肩を竦めた.
「それは依頼人次第だわね.さぁもう充分よ.コートを着て,後始末を始めて.ぴったり一時間四十五分.引き上げの時間だわ」
夏樹が草臥れ果てた冬人を立たせ,秋音が鞄から紙布巾をとって汚れを拭い去る.忙しく働きだす妹や弟を置いて,春香は聖遺物へ拝礼するように,汚され尽くしたインシュマーの身体へと屈みこんだ.
「褐色の肌に白化粧がとても良くお似合いですわインシュマー様.これが世界に公開されたら貴方の権威は地に落ちますわね.といっても,もう何も解りはしないでしょうけど.では,お休みなさい,よい夢を」
女奴隷が羽織らせてくれたコートへ袖を通しながら,調教師は最後の一瞥を投げる.だが,聖職者は生死すら定かならぬ表情で,虚ろな目付きのまま天井を向いていた.やがて足音が遠ざかり,扉が閉じられても,もう二度と,少年は正気に戻らなかった.