8.
「暫くこうさせて,外はとても冷えたのよ…雪になるかもしれないわ…」
「はい,春香姉さま」
うっとりとする妹の体温に,姉の緊張が和らいでいく.そっと相手の背筋を撫ぜながら,ややあって深みのある声で話し掛ける.
「留守中,二匹をしっかり調教できて?」
「冬人は素直でしたけど,夏樹お兄ちゃんは意地悪でした.先週だって浣腸の途中で粗相をして,喧しく泣きながら駄々を捏ねたんです」
「そう.大変だったわね.秋音の年では年上の奴隷を調教するのは苦労するわね」
「うんうん,最後はお兄ちゃんも協力してくれて,ちゃんとしてくれました」
「まぁ,お兄さん想いだこと…さ,行きなさい.コートを私の部屋に掛けたら居間にいて」
女奴隷は名残惜しげに主人から離れると,コートを抱えて走っていった.次に,春香は,夏樹を手招きする.告げ口された兄は多少びくつきながら,母乳を零さないよう慎重に姉に抱きついた.学校ではそんなに背の低い方ではない彼だが,姉には頭一つ分足りない.
「夏樹,怖がらなくていいのよ?貴女が恥かしがり屋さんなのは,とても可愛らしい所だから」
「うん…俺,秋音に悪かった.あいつ,姉様の代りするのに慣れてないのに…」
「馬鹿ね.あの子に代って皆の世話しようとしたのね.でも無理に役割を変えると秋音が混乱するわ.一番経験の長い貴女には,解るでしょう」
「うん…」
「もっとぎゅっと抱いて,私今,汚れるような服を着けてないわ.それにまだ寒いの」
乳房と乳房を寄せ合って,深い口付けを交わす.静かに刻は過ぎて,姉は白く濡れた胸を手で拭うと,舌先で味わって相好を崩した.
「味が良くなったわ」
「牛乳とか,姉さまに言われたもの,ちゃんと喰ってるんだ…」
「偉いわ.もう毎朝家族全員分のミルクが出せるかしら?」
「うん…頑張る」
「じゃ,秋音の処に行ってらっしゃい」
少年奴隷はたわわな胸を弾ませて去る.美しい長女は,最後に残った冬人に向ってやけに冷たい視線を投げた.
「あら,何してるの?」
たった一言が彼を惨めさでいっぱいにする.じわっと涙ぐんだ少年は,敬愛する姉に悟られまいと顔を伏せた.
「俯いて良いと言った覚えは無いわ」
慌てて表を上げる.だが涙腺はどうしようもなく,頬を熱いものが濡らしてしまう.
「愚図で泣き虫では取り得がないこと.夏樹はお前の年にはもう一人前だったのに」