5.
「軍曹…こいつら…捕食が目的じゃない…」
「何だと?」
最悪の事態を回避できるかもしれない.僅かな希望が軍曹の脳裏を過った.少年兵は打ち消すように震える吐息をつく.
「…繁殖するつもりです…以前見た軍の資料では,実験動物の雌羊を捕獲して…その腹を使って…産卵を…あっ…」
触手がブリーフを引きずり降ろし,滑らかな股間を蠢く.あどけない面差しが生理的嫌悪に強張り,からんとサングラスが床へ落ちた.潤んだ双眸は,恐懼に見開かれたまま,年嵩の戦友を向く.してやれる事が無い.彼女は不甲斐なさで吐きそうになりながら,無理に冷静さを保った口調で質問を続けた.
「蜂みたいに卵を産み付けて,俺達の肉をガキの餌にしようってのか?」
「…いえ…孵卵器に改造するんです.幼生の好物になる分泌物を出す,生きた餌袋に…」
レイラの尻の谷間に,太目の触手が押し付けられた.下着の上からびちゃびちゃと濡れたものを押し付け,不規則なリズムで擦り上げて来る.脚の自由が利くなら蹴り飛ばしてやりたいが,理性はどちらにしろ無駄だと告げていた.もう筋肉に力が入らない.それでも舌だけで,状況を楽観的に取れるような言葉を捻り出そうとした.
「じゃぁ死にゃしないん…だな?このまま…耐えてりゃ…助けが…」
「…ええ,羊は実験室で何年も生き延びたそうです…しかも衰弱するどころか…老化もさえせず…」
だからこそ大統領府(ホワイトハウス)は,この奇妙な生物の輸送をレイラ達宇宙軍に命じたのだ.人類の夢,不老不死を解く鍵を持つ生き物を,特殊部隊の厳重な警護の元,秘密裡に地球まで運ぶように.
だがJ・Jは話の最後を省略した.実験動物の雌羊はホルモン異常を起こし,母乳と腺液,腸液等を垂れ流しながら,触手からの絶えざる栄養補給抜きで生きられなくなっていた.外見は元のままでも,代謝機能は触手生物の付属器官に成り果てていたという.レイラは持ち前の勘の鋭さで,連れの表情から大体の所を掴んだが,尚も空元気の笑顔を作って鼻を鳴らした.
「大丈夫だって,俺は死の女神(カーリー)だぜ?こんなスパゲッティ野郎に何されようが負けねぇ…」
痩せ我慢もそこまでだった.触手が下着を咀嚼し尽くし,奥の黒い茂みに到達したのだ.秘部を覆う和毛を障害物と判断したのか,次々に根元から引き抜いていく.後孔の周りも同じ処遇を受けていた.ぶちぶちと遠慮の無い暴行の音に,苦痛の絶叫が入り混じる.
「ギィィィッ!!ガハァッ!くそが!くそがァァッ!!ウギィッ」
「軍曹ッ…ヒッ!?」