4.

 人間離れした反射速度は,束の間敵をためらわせたようだった.レイラの喉を締め付ける一本が,僅かに弛緩し,呼吸を封じられていた肺は白い蒸気を吐き出す.と,血の気の失せた唇が共に警告の叫びを迸らせた.

「だめだ!J・J,逃げろ!お前にゃ無理だ!」

 だが特殊才能育成法で生み出された戦闘の天才(ファイトナチュラル)は,制止に耳を貸すどころか,益々勢いを増して,ねじれのたうつ無数の標的へ,斬撃を加える.余りの勢いに壁に体液が跳ね飛び,寸断された緑色のソーセージが床に転がった.

 触手は,戦局に利有らずと感じたのか,いきなりレイラの胴着を真下に引き破り,露になった乳房ごと,黒い竜巻と化したJ・Jの方へ投げ付けた.彼女を刃に懸けまいと,思わず少年の手が止まる.

 好機を逃さず,肉の紐はこの活きの良い獲物を取り囲むと,忽ちの内に,ほっそりした手首を締め上げ,危険な武器を叩き落してしまった.咄嗟の割に,人間の心理を利用した実に狡猾な作戦だった.憤怒と無力感に苛まれ,レイラは顔に捲き付く触手に噛付こうとした.

「汚ぇぞこのクソバケモンが!俺たちを楽に食えると思うな,テメェなんざ…がああっ!」

 触手は抵抗を封じる為,喚く獲物の脇腹を締め上げると,残りの布も剥ぎ取り始める.

「離せ!!その人を離せぇ!」

 武器を失った少年兵は丸腰のまま暴れ,非力な腕で,眼前で行なわれる狼藉を止めようとした.だが化け物は上官を離すどころか,今度は彼自身の纏うだぶだぶの軍服を掴んで,チャックごと抉じ開けた.漆黒の素肌と,白いタンクトップ,ブリーフが剥き出しになる.

「J・J…ちくしょう…止めろ…」

 内臓を圧迫されて泡を吹きながら,抵抗の手段を探した.幼い仲間が貪り食われるのを目の当りにするのは耐えられなかった.だが弱々しくもがく内にも,ズボンをずり降ろされ,脂汗の浮いた太腿を触手達に這い回られる.

 焦る人間達を尻目に,相手はすぐに捕食を始めようとはしなかった.むしろ丁寧と言っても良いような繊細さで大小二つの肢体を扱い,突付いたり擽ったりといった巧みな慰撫を交えながら,訓練された兵士の筋肉を隅々まで揉み解していく.丁度硬すぎる食材を柔らかくするような按配である.

 おまけに,触手は所々磯巾着のような繊毛を生やしており,白い肌と,黒い肌の其々に粘液を塗し,丹念に丹念に舐めしゃぶるのだった.毛穴一つ一つから垢や角質を穿り出し,代りに甘い匂いのする汁を刷り込む.料理の下拵えという訳か.怖気を奮いながらも,レイラは四肢から力が抜けてしまうのを感じた.J・Jも同様らしく,喘ぎながら,だらんと触手に吊り上げられる格好になっている.囚われの男女は,困惑したまま顔を見合わせた.

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