8.

「そうだな.あの花瓶の代りを貰うとしよう.今度は私に好きなのを選ばせてくれ」

「承りました」

 愉快そうに喉を鳴らして,白子の剣士は目を瞑る.越後屋はそれに構わず,砕けた花瓶を拾い集めると,布で包んで手に提げた.最後に独楽を探して,視線をさ迷わせたが,件の品は漆喰の壁に一寸ばかり減り込んで,とても取り出せそうもない.

 商人は苦笑しつつ,頭を振った.

「なんともはや…竹島右近も,恐ろしい方に狙われたものだ」

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