6.

 ごぼんと産卵管が膨らんで,絶頂を迎え続ける幼い身体に何かを植え付けていく.臍の上当りが歪に盛り上る.ずるりと管が抜けるや,裏返った肛腔は,ピンポン玉位の蛋子を零した.

 尿道を塞いでいた複肢が引き抜かれ,ぐいとそれを中に押し戻し,少し直腸内を掻き混ぜて配置を整えるや,別の複肢が,尾底骨の近くを刺して神経を刺激し,括約筋を強制的に閉じさせた.阿明は薄い精を放って崩れ落ち,身重になった腹を床につけて声も無く苦悶する.

「さてと…次はお前の番だなぁ坊や」

「ぐ…来るな,来るなぁ!」

「すぐに心地よくなる…」

 妖魔は関節を鳴らして近付いてくる.酸鼻極まりない光景を目の当りにした飯綱には,最早神州日本の治安を守る青年の気概は残っていなかった.暗闇に怯えた幼児のように歯を鳴らし,粟の立った肌膚には脂汗が噴出して,青い制服をじっとりと濡らしている.

「待っ…て…ぼく…まだ…」

 後ろから聞こえたか細い訴えに,甲虫そっくりに黒光りする背が,ぴたりと止まった.大顎が人間の笑いを誇張したような形に広がり,複眼がぎろりとそちらへ動く.

「阿明,まだ遊び足りないのか」

「…は…い…」

「淫乱な子だわぇ…この坊やを庇うためではあるまいな?」

「……不…是」

 毛羽立った後肢が上がり,ぐいと盛り上がった腹を踏みつける.泡を吹いてもがく少年に,妖魔の不気味な口は猫撫で声で話し掛けた.

「不是假?」

「あぐぁっ…は…ひっ…」

 ぎちぎちと笑い声を上げて,複肢が少年を抱き起こすと,扉へと歩き出した.

「いきの良すぎる餌にも苦労する…坊や…遊ぶのはもう少し後になったなぁ」

 飯綱は返す言葉を失い,ただ化け物が少年を連れて去ってくれるのを願った.暫く肉を叩く音や,湿った咀嚼音がしてから,やがて,棘つきの後肢がコンクリートを固い叩きながら遠ざかっていく.ようやく緊張が解けた巡査は,震えながら,えずき,床に吐瀉物の溜りを作る.もう何も考えたくなかった.男としての矜持も,勇気も,気概も残っていない.性的搾取の対象にされる苦痛は精神の耐久力を完全に磨耗させていた.彼は,頭を振り,瞼を閉じ,ただ現実から逃れようと仮初の睡みに沈んでいった.

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