5.
「清水巡査部長を…どうしたんだ…」
「交合って,真気を吸ったらぽっくり逝きおってな.屍を残す訳にはいかぬので喰った」
喰った?衒いの無い返事に,ぞっと寒気がした.日本人を.人間を食ったというのか.
「お前…は何なんだ…どんな生き物なんだ…」
「わしか?ごく何処にでも居る妖魔よ.人の精を喰らって生きるな」
裏返ったボーイ・ソプラノに続き,複肢の棘の一つが,桜色の乳首に突き刺さるのが見えた.鋭いキチン質の槍が,弱々しく震える肢体を持ち上げ,上下を入れ替えてゆっくりとまた引き降ろす.化け物の波打つ蛇腹状の下半身からは,産卵管に似た円筒形の器官が迫りあがっていた.態勢が整うと,更に何本かの棘が伸びて,少年の柔らかな尻朶を広げ,桜色の腸内を露にすると,不気味な円筒をずりずりと押し込んでいく.
壊れた玩具のように,少年は首を痙攣させ,手足を力無く広げたまま虚な瞳で宙を仰いだ.
「阿明,初めてでもあるまいに,いつになれば慣れるのだぁ?」
産卵管は波打つように蠕動しながら,抽送を始める.捕えた芋虫に子を植え付ける地蜂そっくりだ.阿明は,太さが大人の二の腕程もある凶器を受け入れて腹を妊婦のように膨らませ,息を浅く切らしつつ,だが次第に妖しく腰をくねらせ始める.激しい突き上げに応えて蓬髪が広がり,細かい汗の珠が飛び散った.淫らな動きに合わせて乳頭を貫く複肢が捻れ,真紅の滴を搾り出しながら,あえかな喘ぎを導き出す.
「下賎な三国人でも,姿は美しかろう?阿明の母は踊り子だった.幇会の連中を喜ばすために麻薬を打ち,地下の劇場で舞った…わしはあれが欲しかった…だが殺されては仕方ない」
涕の跡も乾かぬ内から頬は紅葉を散らし,ふっくらした唇は悲鳴の代りに嬌声を上げた.未成熟な四肢は,引っ掻き傷から血を滴らせながら,狂ったように喜悦の舞を舞う.
半ばむかつき,半ば魅せられて,警官は淫らな見世物を鑑賞し続けた.同僚の死に対する喪失感は曇った思考の隅へ消え,ただ少年の尻軽ぶりに苛立ちと欲情が湧き起る.気付くと開いた口から涎を垂らしてさえいた.
「羨ましいかぇ?いずれお前も同じ快楽の虜にしてやろう…さ阿明,逝け」
蟻の門渡りの辺りに,一本の棘が突き刺さると,阿明の腰が仔鹿のように跳ね,精を放とうとした.素早く繊毛の生えた複肢が鈴口から差し込まれ,射精を封じ,限界まで膨らんだ昂ぶりを無理に持続させる.少年は苦痛と快楽に泣き叫んで,許しを求めるように首を振った.
「よしよし…たっぷりわしの子を孕め」