8.
「うわっ,まじちっちゃ」
「ばっか,お前も昔はあのサイズだって」
「そうそう可哀相だよ.ほーけいでもしょうがないジャンな」
「えーと,次は,はいシコって」
自慰をしろという意味だ.経験すらない扇が泣きながら俯くと,頬をナイフの刃が撫ぜた.手が無理矢理股間へ押し付けられる.
「言う通りにしないと殺すよ?」
「大人しくシコれ?はい,シコれ,シコれ」
「シコれ,シコれ,シコれ」
先程より大きな叫びに,少年は吐気を抑えながら,小便臭い器官を掴み,覚束ない指使いで擦り始める.周囲の笑いは益々高まった.何人かは荒い息をついている.
「こいつまじで男なんすよね…」
「あ?見りゃ解るだろ」
「っつか女みたいじゃないですか」
「この年だと男も女もそんな違わねーよ.ナニがついてるかどうかだけだろ?」
ぶつぶつと呟きながら,言い出した方は引き下がる.しばらく一同は幼い獲物の痴態を鑑賞していたが,いつまで経っても勃起の徴候すら見られないので,やがて痺れを切らしてしまった.
「つまんね.殺っちゃおーぜもう」
「まだ皆来て無いじゃん」
「じゃぁ犯っちゃうのは?」
「はぁ?お前ホモ?」
ノーマルな仲間にそう遮られ,さっきと同じ男が口を噤んだ.こいつホモなんんじゃねぇの,という冷たい視線が集まる中,一部は「惜しい」「もうちょっと主張しろよ」と胸の内で呟きつつ,涎を垂らして少年の尻を見詰めていた.ボウガンの青年はうんざりした様子で場を仕切る.
「あー,扇くん.君の粗チンみててもしょうがないんで.そろそろいいっす」
「解体プレイ行きますか」
「ちょっと痛いけど我慢してね.すぐは終らないけど」
チンピラの顔が血に飢えた悦びに染まる.酷薄極る表情に,扇はもう,助かる術が無いと知って,へたへたと座り込んだ.すりむけた膝に涙が止め処なく落ちる.地面に落ちた白い尻に砂利の粒が食い込む様や,細い肩甲骨が寒風に震える姿は,陵辱者たちの欲情を余計に煽った.
「ママァって泣いてみ?」
「そうそう.助けに来てくれるかもよ」
ミリタリーファッションの青年が,スポーツバッグから,肉厚のグルカナイフを取り出し,迷彩柄の長ズボンで刀身を拭ってから,そっと冷たい金属のおもてに舌を這わせた.幾たりかは羨ましそうに刃を見詰める.
「ひょー,切れそうですね」
「うむ,今宵の斬鉄剣は血に飢えておる」