3.
Oogieはぐいと野次馬を押しのけると,騎士の正面に立った.不名誉を覚悟していた二人は感謝するように剣を立てたが,雲行きが妖しいと見て取った黒妖精達は,柄の悪い態度で獲物の横取りに抗議した.
"Ah,,,Mr Macho? they are OUR game. So, you would get out of here, and return to your fan to be cheered them. "
"Before you get trouble."
"Yeh."
古豪の名声をものともせぬ不遜な態度が受けたのか,死体漁りを専らにするちんぴらの間にしばし,金狼の如きせせら笑いが広がる.
だがハンドボール程もある瞳が辺りをじろりとねめつけ,血塗れの棍棒がゆっくり振り回されると,忽ち場は,きまずい沈黙に包まれた.旗色が良くないと悟った雑魚共は,挑発の素振りを引っ込め,すごすごと退散せざるを得なかった.
人喰い鬼の三日月型に裂けた口元から,いつでも相手になるぞという低い台詞が零れ出る.
"I've not fought enough today...Do you satisfy me?"
勿論挑戦を受けて立つ者など居ない.Oogieは頷くと,騎士達に向き直り,問い掛けた.
"You can choose two ways, One is to combat me and try to beat me. On this way, you'll be released, when you win."
手合せして勝てば解放してやる.簡単な取引だ.
"By Another way, you can log-out now, lose all, and, receive a penalty."
"I'll beat you! fatty! that's the way I choose!"
"OK, come on boys. But both of you should fight at once, or will be dead soon."
雑な英語で売り言葉に買い言葉を済ませるや,騎士二人は同時に左右から斬り掛かって来た.神速の太刀捌きに,場にいた全員が目を奪われる.黒妖精達はとんでもない強者をからかっていたらしい.Oogieの到着が後少し遅ければ死んでいたのは彼等の方だった.
決闘相手も,並々ならぬ戦士と知れ,瞬時に注意が集まる.すぐ観客の誰かが,白騎士二人の素性を調べ出した.肩当についた紋章から"White Unicorn Knights"という善の強豪部隊の所属と知れ,更に彼等が,売り出し中の新鋭"Thunder Bros"だと解った.Oogie程ではないにしろ,各地で名が知られている.
いずれも近接戦闘の専門家だ.一方Oogieは確かに優秀な野戦指揮官だが,果たして一対一(正確には二対一)の決闘でどこまでやれるかは未知数である.俄然見守る人数も増えてくる.開始15秒以内に200人.25秒以内に1600人.1分後には口コミで4000人が,果し合いの成行きに固唾を飲んでいた.こうなっては黒妖精達にも迂闊な真似ができない.