9.
ぴちゃぴちゃと音を立てて,人の姿をした子犬が,男の股間に頭を埋めている.
桜色の乳首を,針金が貫き,名前と生年を刻んだタグと,所有権を刻んだタグが一つづつ吊るしてあった.Robbin,A.D.1546,Weibchen,von Aesir…
左の尻朶には名門貴族アース家の紋章「尾を噛む蛇」がくっきりと烙印されていた.他にも両耳には二個づつピアスが,けなげに勃った幼茎の根元には輪止めが嵌り,「種付け禁止」と彫られたプレートが下がっている.
全て純金製で,飼い主が如何にこの愛玩動物を大切にしているかを,良く表していた.だが今,奉仕を受けている男は,全く心此処に在らずといった表情で,幾つも指輪を嵌めた手で時折思い出したようにふくよかな尻を撫でたり叩いたりしているが,あまり真剣味がない.
「くそ,品評会の連中….私のヴォーダンが薄のろだと…片目を喪ったとはいえ,あの地上の稲妻が…猟犬の王が…何故だ!軍人上がりの単細胞にあんな侮辱を受けるとは」
誰に向けるとも無く罵っていた青年は,不意のむず痒さに独白を途切れさせ,逸物を包み込む温かい口腔へ,したたかに精を放った.子犬は滴も零すまいと一生懸命に喉を鳴らして飲み干し,目を瞑って嚥下すると,おずおずと頭を上げた.
「キュゥン…」
「ん?ああ,偶には喋ってもいいぞ.人間の言葉を忘れてしまっていなければな」
「ワゥッ…ヴィル…ヘルム様…」
「ほう,まだ舌は回るようだな.何だ」
「僕,そろそろ犬小屋に戻らないと…」
「私の相手をしているんだぞ.人間の主より犬の主の方を優先する気か?」
「クゥンッ…ヴィルヘルム様…考え事が…その…お忙しいみたいだし…僕,昨夜ずっとヴォーダン様の相手をしてて,今日はトール様やヘイムダル様が待てないって…」
ヴィルヘルムと名指された男の目付きが険しくなり,少年の身体を抱き寄せると,尻の穴を乱暴に割り広げ,強く問い詰めた.
「ロビン,お前のここのせいか!ヴォーダンの調子が出なかったのは!」
じわっとロビンの目に涙が浮んだ.直腸の内側が冷たい夜気にびくびくと震える.
「ごめんなさい.でもヴィルヘルム様,このまえ僕の足の健を切ってしまったし,あの夜もご飯とお尻の薬…動けなくて」
「当たり前だ.お前が逃げたりしては困るからな」
「僕逃げたりしません!ヴォーダン様達のお世話があるのに…」
「ほう,初めて会った時はそうは言っていなかったぞ…」