4.
「何を驚いている?名前を当てられたのが意外か?お前の家族なら皆知って居るぞ.母のハンナは,たっぷり快楽を教えてやったのに,夫の死を聞くや自害しおった.乳房が大きく,腰は細く,三人産んだとは思えぬほどいい女だったがな.娘のゾフィアも母親似だったな.今頃は私の知人の奴隷に成り果てているが…だがお前の二つ上の兄のアレンは…あれは中々従順だった.さる異国の王に売れたぞ.差し詰め去勢され,ハーレムの酌童だろうな.薬で壊れているかもしれぬが」
「ぅ…あっ…」
「兄弟は皆死んだと思っていたのだろう.お前の家族は宝の山だった.父親が一揆の頭目だった事を差し引いてもな」
「…嘘だ…嘘だ…」
「ははは,どうでも良い.鳴け!」
しなやかな打棒が風を切って裸の尻朶へ振り下ろされ,真赤な線が一本,二本と交差して,惨たらしい幾何学模様を描く.心の砦を崩された童児は,終に涙腺を開いて,年相応の咽び泣きを零した.
「可愛いぞロビン.もっと,もっとだ.お前の尻が熱した鉄の色に染まっていく.ハンナに似て,素晴らしく柔らかい肌だ!鞭がよく食い込むぞ」
蚯蚓腫れが隙間なく二つの丘を埋め尽くし,僅かに谷間だけが無傷のまま残る.激情の限りを尽した領主は,最後の一鞭を呉れて,甲高い悲鳴を楽しむと,ようやく腕を止めた.
「…流石だ,我がアース家は代々,領民の間でお前のような愛玩に向く血統を育ててきた.醜いもの,畸形のものは子孫を残さぬよう慎重にな…」
「………気違い……」
「馬鹿め.犬も馬も,豚や牛さえ,そうして優れた種だけを残してきたのだ.私の可愛い猟犬達さえ,交配に向かぬため大半は子供を残せない…」
「…人間は…家畜じゃ…ない…」
「くくっ,父親にそう教わったのか.あの外国かぶれめ…いいか,お前達は家畜だ…だいたい,お前のような牝犬が愛玩以外の役に立つか?爪も牙も無いお前が…私の芸術品達より優れているというのか?」
「お前も…犬達も…薄汚い殺し屋だ!僕は…絶対にお前なんかの家畜にならない!必ず…復讐してやる…例え僕が死んでも,こんな無道をいつまでも人々は我慢したり,きゃぅっ!」
象牙のように滑らかな背へ,鞭の雨が降り注ぐ.柄を握る手には血管が浮き,口ごたえした相手を打つのに何の容赦もしなかった.
「ロビン,お前はそうして鳴いている方が似合う.教えてやろう.そもそも,お前の父母を密告したのは,その”人々”なのだよ.連中は薄汚く,恩知らずで,下種な性根の持主なのだ」