3.

 尖った乳首の先を舐られ,声変わり前の囀りが一音階高く跳ね上った.甘やかな音色に,ヴォーダンは三角形の両耳をピクッと反応させ,肋の浮いた胸の辺りを集中的に舐め始める.

「やっ,止めろ…何を…はぁっ!…」

「ほほう,すっかりヴォーダンの舌が気に入ったようだな.暫くすればもっと良くなる.ヴォーダンがこれまで孕ませた牝共と同様にな…」

「なっ…ふざけ…ふぅっ…ぐっ…」

 鳴き声を堪えようと,少年は唇を噛んだ.だが濡れた舌は蛞蝓のように跡を引いて臍へ下り,凹みの周りを執拗に弄って,沈黙を許さない.その間に飼い主は,少年の手首にロープを回し,強く縛り上げた.

「ぁ…あぅっ,ふっ,やっ…めろぉっ」

「さてと,これでいい.トール,ヘイムダル,こっちへ来てロープを咥えろ.」

 ヴォーダンに勝るとも劣らない大きさの斑犬と,動きの機敏な痩身の黒犬が走り寄って,ロープを咥え,再び左右に散る.ぐいと両足を引っ張られて,少年は痛みに歯を食い縛った.

「どうだ,何時までも寝そべったままでは気分が悪かろう」

 ロープが引き絞られ,華奢な四肢が操り人形のように起される.ヴォーダンが一寸不満そうな唸りを残して離れると,男は含み笑いをしながら青白い指で,汗に濡れた髪を鷲掴んだ.

「牝犬そっくりに鳴きおって.どちらが駄犬やらな…お前は私の財産を傷つけたのだ.平伏して謝れ」

 かぁっと血を上らせた幼い面差しを,ぐいと地面に押し付けると,口笛を吹いて犬達を呼ぶ.ロープを咥えた二頭が樫の古木を回り込むようにして戻ってくる.四つん這いのまま宙に浮いた獲物の姿勢を眺め,領主は満足そうに唇の端を歪めた.

「どうだ?犬そっくりの格好は.さっき私になんと言った.面白半分に領民を狩る悪党だと?馬鹿め,私はお前達を獲物にするだけではない,ちゃんと他の目的にも使ってやるのだ…」

 短刀を放り出すと,代りに自分の乗馬鞭を手に取り,羞恥に震える双臀に視線を投げる.見られた方はきつく下唇を噛んで,膚に脂汗を滲ませた.

「ふん…牝犬らしい尻だな.お前の姉や兄と少しも変らぬ.卑しい,繁殖しか能のない家畜共の尻だ」

「なっ貴様!許さないぞ,絶対に許さない…」

「許さないといって,お前に何が出来るのだ,ん?」

 黒革を巻いた柳の枝が,ぺたぺたと張りのある肉を叩く.少年は悔しさに毛穴から血を噴く思いで,恥辱に耐えるしかなかった.

「ふふふ,今度は黙りか.反抗的な所だけは,父親のゲオルグと同じだなロビン君.奴も手足をばらばらに食い千切られながら,謀反人仲間の隠れ処を吐かずに死んだ.罠猟師風情が」

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