双子月 キラ編 弐

 
     
 




階段を下りるとダイニングから粧裕とライトの笑い声が聞こえた。
心配することもなかったかと、キラは部屋に戻ろうと階段を引き返しかけた。
「キラ、」
背後から声を掛けられ、逃げ出したい衝動に駆られる。
「・・・来てたんだ?いらっしゃい」
嘘臭い笑顔で振り返り、階段の下にいる相手を見下ろした。
よりにもよって、一番会いたくない男に一番最初に見つかってしまうとは。
キラは自分の不運を恨んだ。
「あなたは、一緒に混ざらないのですか?」
ダイニングへ続くドアを指差して、竜崎はキラを引き止める。
「必要ないだろ?」
そのドアの向こうには、ライトも粧裕も母もいるはずだ。
自分一人が居ない事など、『気まぐれなキラのいつものこと』で済むだろう。「どうしてですか?」
竜崎の何もかも見透かすような、漆黒の瞳がキラは特に嫌いだった。
何もわかっていないくせに全てをわかっているとでも言いたげな視線が、
鬱陶しくてたまらない。
「わかっていることをわざわざ聞かなくてもいいのに。物好きだね」
足元からじわじわと絡みつくような、竜崎の視線を振り払い、キラは自室へと戻った。
えもいわれぬ激しい吐き気と眩暈に襲われ、キラはベッドに倒れ込む。
(気持ちが悪い・・・)
原因はわかっている。
竜崎だ。
それを隠そうとしない竜崎の視線に、気が付かないほど鈍くはない。
二人きりになると、当然のように呼び捨てる。
その事さえ、キラにとっては苦痛でしかないのだ。
(どうして、あんなヤツが・・・)
両目を腕で覆い、目を閉じた。
全身に拒絶反応が起こるほど、竜崎が嫌いなのだと身をもって知る。
悪寒に震える身体が元に戻らないうちに、部屋のドアの開く気配がした。
(ライト・・・?)
重い身体を無理矢理起こして、目を開けた。
「・・・っ?!」
両肩を掴まれ、勢いよく身体はベッドの上に戻された。
誰、であるかは、すでに認識済みだ。
「何を・・・」
触れられているだけで、おさまったはずの嘔吐感が蘇る。
「どうして、私から逃げようとする」
全体重を掛けているのか、押さえつける竜崎から逃れようとしてもびくともしない。
頭の先から爪先まで支配されるような不快感に襲われ、
キラは竜崎の顔さえまともに見ることができなかった。
「知っているくせに」
それでも口の端を歪め、キラは竜崎を挑発するように肩を震わせて笑う。
「あなたの声で教えてください」
耳元で囁かれ、キラは血の気が引くのを感じた。
「お前のことが大嫌いだからだよ」
その言葉を合図に、竜崎はキラの口唇を塞いだ。
容赦なく絡みついてくる竜崎の舌から逃れようと、首を振ったキラの視線の先に、ライトの姿があった。





 
 

2005/04/04

 
     
   
     
   
     
 

 

 
     
 

 

 
 
     
     
     
     
     
     
     

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