『ひでぼんの書』

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第1部第13話

『なるほど……良い生贄になるだろうな』

 生贄? 僕が生贄?
 “つぁとぅぐあ”さんが、この僕を生贄にしようとしている!?
 なぜ僕が生贄にならなければいけないんだ? いや、それ以前に……生贄とは、どんな意味なんだ?
 もしかして、“つぁとぅぐあ”さんが僕を気に入っているとは、あくまで生贄としてで――
「――ああああああ!!??」
 その瞬間、全身に凄まじい激痛が走って、僕は我に帰った。いや、痛いなんて生易しいレベルの苦痛じゃない。脳の苦痛を感じる部位を直接刺激しているような凄まじさなんだ。鎖で吊るされた僕は、全身の骨が砕けるほど身をよじった。
「考え事をしているなんて、ずいぶん余裕ね」
 見れば、例の巫女さん退魔師が、僕の足先に小さな短刀を突き立てていた。もちろん、これだけであの地獄すら生ぬるい激痛が走るわけがない。よくわからないけど、これも魔法とか呪術とかの類なんだろう。あの苦痛で発狂しないのも、そういう術での処理を施してあるに違いない。
 ようやく、僕の足から短刀が離れた。
「この程度で満足しないでよね。ここにいる全員が、貴方への面白い責め苦のアイデアを沢山用意しているんだから」

「……な…なぜ……こんな……こと…を……」
 息も絶え絶えの僕は、ようやくその疑問を搾り出す事しかできなかった。
「貴方は『邪神』と交流している。それだけで決して許される事のない人類に対する罪業なのよ。凡俗には理解できないでしょうけど」
 凡俗で悪かったね……とにかく、今の僕が極めてピーンチな状況にあるのは間違いないだろう。あああ、ゲルダさんの忠告をもっと真剣に注意していればよかった。あの話、現実感が無かったからなぁ……今更だけど。
「さあ、責め苦を再開するわよ……遠慮しないで思う存分泣き叫んで頂戴。ここは遺棄された飛行機整備工場跡地。半径数キロには誰も住んでいないから迷惑はかからないわ。無論、助けの声も聞こえないでしょうけど」
 そう言って、周囲を取り囲む数百人もの退魔師さん達は、一斉にわけのわからない――しかし凶悪そうな道具を取り出した。その1つ1つが、僕に先程のような無限の苦痛を与えるアイテムなんだろう。
「…………」
 僕は無言でそれらを見つめていた。もちろん、恐怖のあまり声も出せなかっただけだ。嘘偽り無い恐怖が、僕の心臓を氷の手で鷲掴みにしていた。
 だ、誰か……助けて!! “つぁとぅぐあ”さん!!!

 その刹那――視界を斜めに銀光が走った。
 ワンテンポ遅れて――あの巫女さんの右上腕が、左下腿が、左前腕が、右大腿が……全ての四肢が吹き飛び、胴体も背骨を軸に肩口からX状に切断されて、最後に頭部が――ふっと消えた。
 まるで爆発するかのように、肉片と内臓と鮮血が四方に撒き散らされる。その中心に降り立ったのは――
「……“てぃんだろす”……?」
 そう、あの子は紛れもない僕の大切な子――“てぃんだろす”だ。しかし、今のそれは普段の愛らしく甘えん坊で可愛らしい“てぃんだろす”ではなかった。
『ガルルルル……』
 四つん這いになって周囲を威嚇する“てぃんだろす”の、その愛らしい顔は狂貌に歪み、逆立った髪はゆらゆらと揺れている。口からは緑色の粘液を唾液のようにぼたぼた垂らし、下半身は虹色の水蒸気と化していた。そして、その牙を覗かせる口元は、絶望と恐怖と苦痛の表情をありありと浮かべた、あの巫女さんの生首を咥えているんだ!!
「こ、これは!?……まさか……まさか!!」
 返り血と飛び散った肉片で全身を真っ赤に染めた周囲の退魔師達が、対照的に青ざめた顔で、その『邪神』を震えながら指差した。
「――ティンダロスの猟犬!?」

 “てぃんだろす”の全身が蒸気と化して、一瞬で消滅した――次の瞬間、銀色の牙が視界を横切って、その軌道上にいた全ての者達の四肢がばらばらに引き千切られた。真っ赤な鮮血と切断された肉塊、そして恐怖の悲鳴が周囲を乱れ舞う。
 初めは何がどうなっているのかさっぱりわからなかったけど、よく見れば倉庫内に点在する廃材や倉庫の『角』から、虹色の蒸気が涌き出て、そこから“てぃんだろす”が出現しては、一瞬で退魔師達をバラバラに引き裂いて、また蒸気と化して消滅するという行為を、超高速で繰り返しているんだ。反撃しようにも、次の瞬間には“てぃんだろす”の姿は蒸気の中に消滅して、驚愕する当人の五体が引き裂かれるのだからたまらない。倉庫内の四方八方に存在する『角度』から襲いかかり、神速で獲物を引き裂く“てぃんだろす”の牙に、退魔師達は完全に翻弄されていた。
「あ、赤松を殺せ! 本体を殺せば使い魔は消滅する!!」
「……は?」
 動揺する退魔師の1人からとんでもない一言が飛び出した。しかも、それ間違ってるし。
 たちまち凶悪そうな武具や印を結んだ手が、僕に向かって何十本も突き出された。そこから漫画やアニメでしか見た事が無い、非現実的な魔法やら超兵器やらが、僕に向かって発射された!!
 ……と思う。いや、恐怖のあまり僕は咄嗟に目を閉じちゃったし。
 でも、いつまでたっても僕の身体には何の変化もダメージも無かった。
『遅くなって申し訳ありませン、御主人様』

 馴染み深い声に目を開けると、例によって糸目で微笑む“しょごす”さんの『上半身』と――
――どす黒いネバネバしたスライム状の粘液と化した“しょごす”さんの下半身が、おぞましく蠢きながら増殖と脈動を繰り返し、僕を守るように周囲を取り囲んでるという悪夢的な光景が広がっていた。
「しょ、ショゴスだとぉ!? それも戦闘型のショゴスロードか!!」
「ひ、ひ、怯むな!! 攻撃を続けろ!!」
 周囲の退魔師達は僕に向かって攻撃を繰り返しているんだけど、全て蠢く“しょごす”さんの黒い粘液に受け止められて、そのまま吸収されてしまうんだ。
「しょ、“しょごす”さん……」
「申し訳ありませんでしタ。揚げ物を料理していたもので手が離せなくテ」
 あの太い鎖をあっさり引き千切り、落下した僕を優しく受け止めながら“しょごす”さんは深々と頭を下げた。
「いや、そういう事じゃなくて……“しょごす”さんの方は大丈夫なの?」
「御安心ヲ。現在の人類の所有する技術でハ、魔法、科学を問わず私にダメージを与える事は不可能ですかラ」
「そ、そうですか……」
「でハ、“てぃんだろす”と共に殲滅行動を開始しまス」
 『ちょっと買い物に行ってきまス』――いつものそれと全く変わらない口調だった。
 “黒い粘液の洪水”――それが僕の周囲を蹂躙する。
「ぐわぁああああ!!!」
「ひぎゃああああ!!!」
「た、た、助けて……タスケテ…」
 この世のものとは思えない絶叫が、倉庫中に轟いた。“しょごす”さんの黒い粘液に飲み込まれた退魔師は、生きたまま身体中をぐしゃぐしゃに潰されて、そのまま消化吸収されてしまう。今の“しょごす”さんは完全に無敵だった。

「…………」
 僕は一声も無かった。
 『角度』から襲いかかる銀の閃光と、黒い死の洪水が倉庫内を荒れ狂っている。人間からの『邪神』へのあらゆる攻撃は無効化され、逆に『邪神』からの攻撃はどんな防御回避手段も通用しない。
 これは戦いと呼べるものじゃない。一方的な殺戮だ。何百人もいた退魔師達は、3分もしない間にその数を半分に減らしていた。
「ひ、ひ、引けぇ! 撤退だ!!」
 ようやく、その言葉が誰かから飛び出した。今や魔物から人類を守る退魔師のプライドをかなぐり捨てて、誰もが恐怖の悲鳴を上げながら出入り口の大扉に殺到する。
 しかし――
『……もうお前達に任せてはおけぬ……私自らが出る……!!』
 ようやく開いた大扉の向こうには――1m先も見えないだろう、凄まじい猛吹雪が待ち受けていたんだ。一体、どれほどの極低温なのか、勢い余って飛び出してしまった者の数人が、一瞬にして凍結してしまい、暴風に砕かれて吹雪の中に消えてしまう。
 そして、その猛吹雪の只中に、真紅の瞳を爛々と輝かせた漆黒の着物姿があった。
「……“いたくぁ”さん?」
 “いたくぁ”さんは、袖口から繊手を出して何かを握る仕草をした。
「――ッ!?」
 その瞬間、全ての退魔師達が一斉に体を硬直させた。指一本動かす所か、呻き声1つ漏らす事もできないようだ。まるで、巨人の手で体を握られているかのように。

「……死ぬがよい……」
 “いたくぁ”さんの手がふっと揺れた――刹那、全ての退魔師達が一瞬の内に倉庫の中から消滅してしまった。まるでフィルムのコマ送りのように、何の前兆も予備動作も無く消えたんだ……まるで全てが夢だったみたいに、僕と“てぃんだろす”と“しょごす”さん、そして“いたくぁ”さんだけが残った倉庫の中は、先程までの喧騒が嘘のような沈黙に包まれている。
「ね、ねぇ――」
 僕の台詞は突然の大音響に遮られた。
 頑丈な倉庫の天井を突き破って、『何か』が僕の目の前に落下したんだ。飛び散る破片を“しょごす”さんの黒い粘液が受け止める。どれほどの高空から落下したのか、固いコンクリートの床には巨大なクレーターが出現していた。
 そして、その中心には――恐怖と苦痛と絶望の表情を張り付かせた、魂の芯まで凍結した退魔師の死体があった。
「……アイスキューブ100連発……ですとろいざこーあ……」
 凄まじい爆音が立て続けに起こった。凍結した退魔師の死体が爆撃のように倉庫に降り注ぎ、次々と恐怖のクレーターを作っていく。数分後、僕達の周囲に点在する完全に破壊された倉庫の残骸と、大地を埋め尽くす凍結した死体のクレーターが広がっている光景を、満天の星空が見下ろしていた。
 恐らくは人類最強の戦闘力を持つのだろう退魔師数百人を、一瞬で1人残らず全滅させる――これが、本物の『神』の力か。
 僕は唖然を通り越して放心していた。

「わん、わんわん!」
 その足元では、“てぃんだろす”が愛らしく尻尾をぱたぱた振っている。
「では帰りましょう御主人様。今日の夕飯は竜田揚げですヨ」
 元のメイド姿に戻った“しょごす”さんが、糸目でにっこり微笑んで、
「……飯食わせ〜……」
 “いたくぁ”さんが無感情にお茶をすする――この地獄のような光景の中で。
 そう、僕を魂の底から恐怖させたのは……彼女達が、あまりにも普段と変わらないままでいる事だった。
 僕はあまりにも基本的な事を忘れていたんだ。
 彼女達は――人間じゃないんだ。
 もちろん、彼女達が僕を助けてくれた事はわかる。そのために己の体を張って戦ってくれたのは理解できる。
 でも、それを考慮に入れても……
 そう、彼女達は『邪神』――『化け物』だ。最初から人間の良識やモラルが通じる存在じゃないんだ。
 ちっぽけな人類という種族の持つ善悪や常識、あらゆる価値基準、そして人類それ自体の存在など、この広大な宇宙においては塵芥ほどの意味も無い……
……そんな『宇宙的恐怖』――彼女達は、その具現なんだ……

 翌日――
「ん〜……あぁ、ひでぼんさんですかぁ」
 眠そうな垂れ目を擦りながら、いつもと変わらない態度で“つぁとぅぐあ”さんは僕を迎えてくれた。
「…………」
 僕は無言で“つぁとぅぐあ”さんの目の前に立った。彼女は何も変わらない。相変わらず魔王のように美しく、慈母のように穏やかだ。普段と変わっているのは、僕自身だった。
「――今日の供物はありません」
 独り言のように呟くと、“つぁとぅぐあ”さんは落胆の声を漏らした。いつものようにのんびりと。
「え〜……ホントですかぁ」
「ホントです」
「供物が無いのならぁ……ボクがキミを食べちゃいますよぉ」
 『にへら〜』と微笑む彼女の美しい髪を、僕はそっと手に取った。
「……好きにすればいいでしょう」
「ふぇ?」
 そう、彼女も人間じゃないんだ。
 『邪神』――化け物なんだ。
 僕は彼女の10mを軽く超える髪の毛を幾本もの束にして、即席のロープを作った。指で梳くとそのまま溶けそうなくらい柔らかな髪なのに、どんな刃物でもその一本すら切れないくらい“つぁとぅぐあ”さんの髪は強靭だ。
 僕はそのロープを使って――“つぁとぅぐあ”さんの肢体を乱暴に拘束した。
「あのぉ……何をするのですかぁ」
「…………」
 彼女の抵抗は全く無かった。亀甲縛りの要領で胴体を縛り、その爆乳を強調するように搾り出す。両手は後ろ手に拘束して、両足は膝が閉じないように広げたまま固定する。余ったロープは……

「ああぅ……」
 淫乱な爆乳を根元からぐるぐる巻きに拘束した。あまりにきつく縛ったために、柔らかな爆乳に真っ赤に充血するくらいロープが食い込み、極端な釣鐘型に変形している。
「んんぅ……ちょっと痛いですねぇ」
 こうして、“つぁとぅぐあ”さんへのSM拘束は完成した。それもただの縛りじゃない。どんな真性のマゾヒストでも泣き叫ぶくらいきつく締め付けているんだ。現にロープは彼女の柔肌にほとんど埋まって、骨を軋ませている。このまま放置すれば、数十分で全身が壊死してしまうだろう……彼女が人間なら。
 “つぁとぅぐあ”さんは、ほんの少しだけ困ったような顔をしていた。でも、それだけだ。
「……ほら、しゃぶって」
 僕はいきり立ったペニスを彼女の顔に押し付けた。この扇情的な姿に、僕はサディスティックな快感を覚えていた。
「あむぅ……んんぅ」
 何の躊躇いもなく、彼女は一気に根元まで僕のペニスを咥え込んだ。脳天に突き刺さるような快感が肉棒に炸裂する。このまま精を放ちたいのをぐっとこらえて……僕は違う物を放った。
「んんん〜?」
 “つぁとぅぐあ”さんは垂れ目をほんの少し丸くした。熱い咥内に出した小便を、しかし彼女はゴクゴクと飲み干していく。さすがに飲み切れなかった分が唇の端からあふれて、足元に小さな水溜りを作った。
「ぷはぁ……けほけほっ」
 この時の為に丸1日溜めていた大量の小便を、なんとか飲み干した“つぁとぅぐあ”さんは、咳き込みながらほんの少し困ったような瞳で僕を見た。非難でも怒りでも悲しみでもない、ちょっとだけ困った表情を浮かべるだけだ。
「ほら、こぼした分もちゃんと飲んで下さいよ」
 汚物の水溜りの中に、“つぁとぅぐあ”さんの美しい顔を押し付けようとする。彼女は長い舌を伸ばして、切なげにそれを舐め取った。後ろ手に縛られた絶世の美女が、地面に這いつくばって小便をすすっている……地獄の魔王のような威厳を放ち、まさに『神』の名に相応しい風格を持つ美貌の女王が、こんな屈辱的な事をするなんて……ぞくぞくするような黒い欲望が僕の背筋を走る。

「はぁ……全部飲みまし――きゃぁん」
 僕は“つぁとぅぐあ”さんの脇腹に足を引っ掛けて、転がすように仰向けにした。髪のロープでぐるぐる巻きに拘束された爆乳が、重力を無視して真上にそびえ立っている。
「ふわぁ……」
 勃起した濃厚な乳首を握り締めて、乳絞りのように乱暴にしごく。このまま母乳が出ても不思議ではなかった。乳房全体を充血するぐらいきつく絞られている為、かなり敏感になっているらしく、乳頭を指先でピンと弾くだけで、“つぁとぅぐあ”さんは爆乳全体を震わせた。
「髪だけではすこし寂しいですね」
「はぁ……っ!」
 “つぁとぅぐあ”さんは一瞬、全身をビクンと痙攣させた。無理もない。鋭い千枚通しが彼女の両乳首を貫いたのだから。乳房を流れ落ちる二筋の鮮血はとても美しかった。
「痛ぁ……ああぅ!」
 千枚通しを抜き取った僕は、続けて銀色のリングピアスを取り出した。微細な乳首の穴にかなり大きめのリングピアスをぐりぐり押し込むと、さすがの“つぁとぅぐあ”さんも少しだけ苦痛の声を漏らした。でも、僕は少しも遠慮はしない。
 彼女は化け物なんだから。
「はぁ……はぁ……」
 最後に、赤い雫のたれるリングピアス同士を短いチェーンで繋ぎ、残酷で卑猥な爆乳のデコレーションは完成した。
「次、行きますよ」
 でも、これで“つぁとぅぐあ”さんへの爆乳責めを終わらせるつもりはない。こんな見事な淫乳はもっと徹底的に蹂躙するべきだ。

 ぽっ
 暗黒の洞窟に新たな光源が灯った。特大サイズの真紅ロウソクに火をつけたんだ。無論、SM用の低温ロウソクじゃなくて、まともに浴びれば火傷間違いなしの本物だ。ゆらゆら揺れる不吉な炎が、“つぁとぅぐあ”さんの爆乳を妖しく照らしている。
 そして――
「んはぁ……!!」
 真紅のロウが、ぼたぼたと大量に“つぁとぅぐあ”さんの乳房に降り注いだ。身悶える彼女の爆乳が、瞬く間に真紅に染まっていく。数分後、彼女の美しかった爆乳は、いびつな赤いオブジェと化していた。
「ふわぁ……熱いですよぉ……」
「じゃあ、落としてあげますね」
「はぁうっ!!」
 今度は、ロウソクの炎で直接乳房を炙ってみた。灼熱の炎が容赦無く乳房を舐めると、溶解した真紅のロウが乳首の先端からドロドロと流れ落ちる。じっくり念入りに炎を当てて、全てのロウを流れ落とした僕は――また爆乳にロウを垂らし始めた。
「きゃふぅぅぅ……熱ぅ、熱いぃ……」
 己自身を拘束する髪のロープを引き千切りそうな勢いで悶え、苦悶の悲鳴を漏らす“つぁとぅぐあ”さん。でも、その悲鳴に嬌声が混じっている事を知った僕は、舌打ちしながらロウで爆乳を覆い尽くし、続けて炎で溶かし落とす行為を何度も何度も繰り返した。数十分後、巨大なロウソクがついに燃え尽きて、ちょうど最後のロウを溶かし終えた頃には、彼女の爆乳は今も真紅のロウを浴びせられているように、真っ赤に腫れ上がっていた。
「はぁ……はぁ……ああぅ……」
 荒い息を吐いてぐったりしている“つぁとぅぐあ”さんは、しかしこの拷問紛いの責め苦にも全く抵抗しなかった。
 そう、彼女はどんなに乱暴されても決して抵抗はしない。ただ、ほんの少しだけ困ったような顔で相手を見つめるだけだ。今も彼女は僕をその視線で見つめている。非難の情など欠片も無い、ただ美しい瞳で……
……ひたすらに美しい魔性の瞳で僕を――

「うわぁ!!」
 その瞳のあまりの美しさに、とてつもない恐怖を覚えた僕は、身動きできない彼女を強引にうつ伏せにした。後ろ手に縛られている“つぁとぅぐあ”さんの美貌と、変形した爆乳が岩肌に押し付けられる。120度の角度で開脚したままお尻を突き出した体位になった彼女の秘所は、ピンク色のアヌスから愛液を垂らす膣口、濃い茂みに隠されたクリトリスまで丸見えだ。
 そのむちむちしたボリューム満点のお尻に手を這わせた僕は――
 ぱぁん!!
「んはぁ……!!」
 羽子板のような形をしたスパンキングロッドで、激しく彼女のお尻を殴打した。黒い皮製のスパンキングロッドは、表面にびっしりと金属製のリベットを埋め込んである。下手な所に当たれば冗談じゃなくて肉が裂け骨を砕く代物だ。
 ぱぁん!! ぱぁん!! ぱぁん!! ぱぁん!!……
「んんっ!……はあぁ……うんっ! きゃふぅ!」
 僕は全力で“つぁとぅぐあ”さんのお尻をスパンキングした。あっというまに、彼女のお尻は真っ赤に腫れ上がり、所々からはうっすらと血まで滲んでいた。
「はぁう!……痛い…ですねぇ……」
 痛々しく真っ赤に染まったお尻は、針を刺せばそのまま破裂しそうなくらい腫れ上がっていた。そこに遠慮無く手を這わせて、指を食い込ませると、彼女は苦痛に悶えて艶かしくお尻をくねらせてくれる。サディスティックな欲情をそそらせた僕は、乱暴に爪を立て、尻肉を引っ掻いた。
「んくぅ……はぁ!…あぁん!!」
「楽しそうですね、“つぁとぅぐあ”さん」
「ううぅ……そうですねぇ……」
 “つぁとぅぐあ”さんは、また少し困ったような笑顔を浮かべている。僕はそれから目をそらし、意識的に話も反らした。

「ところで、“つぁとぅぐあ”さんは、普段トイレはどうしているのですか?」
「んんぅ……ボクは排泄しませんよぉ……食べ物は全部完全吸収しますからぁ」
「じゃあ、“つぁとぅぐあ”さんにも排泄の気持ちよさを教えてあげますよ」
 何かを排泄するという行為は、すべからく気持ちいいものだと某カードキャプチャーも言っていたし。
 僕が懐から取り出したもの、それは巨大な浣腸器と細長いカテーテル、そして1.5リットルサイズのペットボトルに入った真っ赤な炭酸水だ。でも、この浣腸セットは彼女のアナルに使う気はない。“つぁとぅぐあ”さんの小陰口を指で広げて、丸見えとなった愛液を垂れ流す淫乱な膣口を仰ぎ――
「んくあぁ!!」
 何の警告もなく、僕は彼女の尿道口にカテーテルを挿入した。本来は滑りをよくするため潤滑液を塗るんだけど、今回はそんな無粋なものは使わない。カテーテルの固く鋭い先端がごりごりと尿道の内壁を削っていく感覚が指先に伝わってくる。普通の人間なら気絶しても不思議じゃない激痛が彼女を襲っているはずだ。
「きゃああぁん!! くふぅ!! かはぁ!! あぁん!!」
 でも“つぁとぅぐあ”さんは、悶絶しながら嬌声混じりの悲鳴を上げるだけ……やっぱり彼女は化け物だ。人間じゃないんだ。
「くふぅ……!!」
 急にカテーテルの抵抗が無くなった。どうやら先端が膀胱に届いたらしい。僕は浣腸器に赤い炭酸水を注ぎ入れ、先端をカテーテルの末端に繋いだ。
 そして――
「やぁあああん!! 熱いぃ! 熱いですぅぅ!!」
 僕は一気に浣腸器を押した。直接膀胱に注がれた炭酸水が、彼女の膀胱内で弾ける。それもただの炭酸水じゃない。たっぷりタバスコを混ぜた特別製なんだ。今の“つぁとぅぐあ”さんは自分の膀胱が燃焼している感覚だろう。

「炭酸水はまだまだありますよ。1.5リットル全部入れましょうね」
「んはぁあああ!! あそこがぁ……爆発しちゃいますよぉ……!!」
 腰を浮かせて痙攣する“つぁとぅぐあ”さんの尿道に、僕は本当にペットボトル全ての炭酸水を注ぎ込もうとした。さすがに全部は入らなかったけど、かなりの量を注いだ頃、急に浣腸器がこれ以上押し込めなくなった。どうやら本当に膀胱が満杯になったらしい。彼女の下腹部は、一部分がぷっくりと膨らんでいた。
「はぁ…はぁ……変ですよぉ……お腹がぁ……熱くて…辛くて…切なくてぇ……!!」
 “つぁとぅぐあ”さんの話が本当なら、彼女は生まれて初めて『オシッコを限界まで我慢する』という体験をしている状態にあるはずだ。歯を食いしばり、ぷるぷる震える柔肌に脂汗を浮かべている“つぁとぅぐあ”さんに、演技している様子は欠片も見当たらない。そう、ただ瞳に少し困ったような光を宿して――
「じ、じゃあ出してみましょうか」
 僕は慌てて浣腸器を引き戻した。膀胱内のタバスコ炭酸水がカテーテルを通って逆流し、浣腸器の中にみるみる溜まっていく。
「ひゃぁん!! なにぃ…なにこれぇ…!? ふわぁぁああああん!! 出ちゃう! 出ちゃいますぅぅぅ!!!」
 カテーテルと浣腸器による強制排尿――初めてのオシッコという未知なる体験に、“つぁとぅぐあ”さんは嘘偽り無い困惑と快感に恍惚となっていた。彼女の身体は断続的に痙攣して、それに合わせて膣口から愛液をピュッピュと吹き出している。待ちに待った排尿の快感に、どうやら本気でイってしまったらしい。
 浣腸器の中身が満杯になるまで吸い上げて、ようやく“つぁとぅぐあ”さんの強制排尿は終わった。

「はぁ……ああぁ……」
「じゃあ、もう一度」
「ふわあぁ……!?」
 再び僕は浣腸器を押し込み、炭酸水の注入を開始した。時間をかけてゆっくり最後まで彼女の膀胱に注ぎ込んだら、また間髪入れずに強制排尿を再開する。
「はうぅぅ……ダメですよぉ!! ひゃぁあぁん!!」
 何度も何度もそれを繰り返し……数十分後、タバスコ炭酸水の気が完全に抜けたのを確認した僕は、勢いよくカテーテルを抜き取った。
「ひぐぅ!」
 連続強制排尿プレイに、もう限界を超えてしまったのか、“つぁとぅぐあ”さんは力無くうなだれて、ちょろちょろと赤いオシッコを垂れ流すだけだった。
 でも、この程度で終わってはまだ困る。メインディッシュはこれからだ。
「じゃあ、次はこっちの方を体験してみますか」
 僕は人差し指でピンク色のアヌスを突ついた。
「ふわぁ……またお浣腸…ですかぁ……」
「いえ、浣腸液を出すだけでは排泄とは言えませんからね」
 医療用の極薄ゴム手袋を僕は右手に装着した。そのまま右手全体に、止めど無く流れ落ちてる“つぁとぅぐあ”さんの愛液を塗り付ける。
「行きますよ」
 口だけ気遣って、僕は右手の指4本を一気に彼女のアナルに突き立てた。
「くはぁ!!」
 さすがの“つぁとぅぐあ”さんも本当の悲鳴を上げた。ドリルのように右手をぐりぐり捻りながら直腸にねじ入れて、親指から右手の甲全体まで挿入する。こうもあっさりアナルフィストを受け入れるとは、やっぱり“つぁとぅぐあ”さんは凄い……いや違う。これも彼女が化け物である証なんだ。

「あああああぁぁぁ……もうダメです…よぉ」
 激痛と異様な挿入感に“つぁとぅぐあ”さんの美しい顔は真っ青だった。その瞳が切なく潤んでいるのもわかる。でも僕は構わず、更に右手を挿入した。指先が直腸を貫通して、S字結腸の更に奥まで潜り込む。もう僕の右手は肘の近くまで彼女のアナルに吸い込まれていた。アヌスの皺は完全に伸びきって、血管がうっすらと透けて見える。
「じゃあ、出しましょうね」
「えぇ……? きゃぅううううぅん!!!」
 僕は一気に右手をアナルから引きずり出した。ズルズルと腸液を漏らしながらアナルがめくれて、内側まであらわとなる。さっきまでぐったりとしていた“つぁとぅぐあ”さんは、今は全身の骨が砕けそうな勢いで身をよじり、悶絶している。
 ずるり……
 ついに僕の右手を排泄した“つぁとぅぐあ”さんのアヌスは、肛門とは思えないくらい大きく口を開けて、ひくひく蠢く赤い肉壁を直腸の奥まで覗かせていた。
 トレードマークの垂れ目を大きく見開いて、ガクガクと痙攣している“つぁとぅぐあ”さんの艶やかな髪を、左手でそっと梳く。
「どうです? 気持ちよかったでしょう」
「はぁ……はぁ……ああぁ……」
「声も出せないくらい気持ちよかったんですね。じゃあもう一度」
「ええぇ……あはぁああああ!!!」
 また僕は右手を彼女のだらしなく口を開けたアナルに突き立てた。今度は奥までねじ込んだ後、ぐるぐると右手全体を回転させて、指で腸の内側を引っ掻く。“つぁとぅぐあ”さんの悶え方は、もはや正気とは言えなかった。

「くはぁ!! あうぅぅ!! きゃぁぅ!!」
「まだまだぁ!!」
 そうだ、まだ終わらない。次の責めには耐えられますか?
 右手をアナルフィストしたまま、僕はタバスコ入り炭酸水を入れていた1.5リットルペットボトルを手に取り、それを彼女のもう1つの淫穴――膣口に叩き込んだ。
「ひぐぅ!!」
 さすがにペットボトルが大き過ぎて、今度は中々入らない。それでもペットボトルの低部に拳をガンガン叩きつけると、完全に広がりきった膣口に少しずつ挿入していった。さすがは“つぁとぅぐあ”さんのアソコ。もうどんなものでも受け入れられるんだ。
 中で淫肉が裂けたらしく、愛液に赤いものが混じっているのを見た僕は、どこか愉快な気分になって――
「うくぅぅ……ひでぼんさぁん…もうダメですぅ……壊れちゃいますよぉ……」
 ……また、あの瞳が僕を見つめていた。
 “つぁとぅぐあ”さんは、自分にはどんなに乱暴をされても、決して怒らない。決して抵抗しない。決して逆らわない。
 ただ、ほんの少しだけ困ったような表情を浮かべて、その人をじっと見つめるだけだ。
 それだけなんだ。
「……壊れればいいじゃないですか」
 そうだ。僕は彼女を壊すためにやっているんだ。そうだ。壊れてしまえ!! そして、僕自身も――!!!
「そこまでにしなさいな」

 絶対零度の冷たい声と、喉元に押し当てられた物理的な冷たい感触に、僕は全身を硬直させた。
「自意識を失ったまま交わっても、肉と魂の交わりとは言えませんわよ」
 僕の喉元に突き立っているもの――それは長く鋭く、そして美しい爪だった。この爪がほんの少しでもきらめくだけで、あらゆる存在がばらばらに引き裂かれることを、僕は本能的に察した。
 僕の背後に立つ、漆黒の麗人。彼女の名は――
「あぁ、“あとらっく=なちゃ”さんですねぇ……お元気ですかぁ」
 さっきまでのハードSMプレイは何だったのか、思わずずっこけたくなるくらい元気で平和な声が、“つぁとぅぐあ”さんから発せられた。
「事情は大方察しますけど……火遊びも度が過ぎれば大火傷しますわよ」
 黒いセーラー服を着た魔性の美女“あとらっく=なちゃ”さんは、喉元から爪を離して、今度は僕の額にあの長い爪を突き立てた。ほんの一瞬だけ鋭い痛みが走る――次の瞬間、僕の頭の中で何かがぱちんと弾けるのを感じた。
「この程度の精神操作も見抜けないとは、あの子達もまだまだね……
……まぁ、“いたくぁ”神は知っていて放置していたようですけど」
「精神……操作?」
 ふらつく頭を支えながら、僕は彼女に尋ねた。
「貴方は人間どもに捕らえられた際、万が一逃げられた時に備えて心に術を施されていたのよ。我々に対して理由無き恐怖と憎悪を募らせて、その怒りを買う行為を繰り返し、自ら破滅の道を突き進むように……」
 その瞬間、僕は自分がしでかした事の意味に気付いた。
「“つぁとぅぐあ”さん!!」
 僕は慌てて“つぁとぅぐあ”さんを介抱しようとした。ああ、彼女が無抵抗なのをいい事に、なんて酷い事をしてしまったんだろう。
 ところが――

「なんですかぁ?」
 “つぁとぅぐあ”さん自身を拘束していた髪がしゅるしゅると独りでに解かれて、美しく宙を舞う髪の束が翻ると、次の瞬間には傷1つ無い、いつもの美しく威厳のある優美な“つぁとぅぐあ”さんの姿があった。爆乳にこびり付いていた赤いロウやスパンキングの痕、乳首のリングピアスも、痕跡すら残っていない。
 あの残酷な責め苦も、彼女にとってはやっぱりお遊び程度のプレイだったんだ。
「ええと……何と言ったらいいのか……とにかくごめんなさい!!」
 それでも僕は全身全霊を込めて平身低頭した。あの宣誓通り、本当に彼女に食べられても仕方ない気分だ。精神操作されていた(らしい)とはいえ、よりによって“つぁとぅぐあ”さんにあんな事をするなんて……とほほ、自分が情けない。
「気にしないでくださいねぇ……それにボクはぁ、少し乱暴にされた方が感じるのですよぉ。またやりましょうねぇ」
 どんな慈母よりも優しく『にへら〜』と笑ってくれる“つぁとぅぐあ”さん……その笑顔を見て、その優しさを感じて、僕はさっきとは別の意味で、彼女はやっぱり人間じゃないと強く思った。
 こんなに美しく優しい御方が、矮小な人間の筈が無い。
 彼女は『女神』だ。
「ふぅ……とにかく、あまり手間をかけさせないで下さいな」
 そんな僕達の姿を見ながら、“あとらっく=なちゃ”さんは優雅に肩をすくめて見せた。
「“あとらっく=なちゃ”さんも、ありがとうございました。お手数かけてすいません」
「結構よ。その内借りは返してもらうから……ふふふ」
 ど、どんな風に返せば良いんだろう……思わず冷や汗が垂れるくらい、彼女の声は妖しかった。
「あ、そういえば……“つぁとぅぐあ”さん、お聞きしたい事があるのですが」
 気を取り直して、僕は先刻からの疑問を“つぁとぅぐあ”さんにぶつけてみた。優しい彼女を信用しているから……というのとはちょっと違うかもしれない。彼女にならどんなに残酷な答えが帰ってきても、それを受け入れようと思ったからだ。あるいはこういう思いを『信仰』と言うのかもしれない。
「……“ふじうるくぉいぐむんずはー”さんが言ってました。僕がいい生贄になるだろうって……それはどういう意味なんですか?」

 一瞬、暗黒の世界に静寂が降りた。思わずごくりと生唾を飲み込む。“つぁとぅぐあ”さんの瞳に、何か光が宿ったような気がした。
「ええとぉ……それはですねぇ」
「貴方のとろい説明では、時間がかかって仕方が無いわ。私が説明してあげる」
「とろいなんてぇ……酷いですよぉ」
「いいから私に譲ってくださいな。久々の出番なのだから」
 何だか微妙な会話の後、“あとらっく=なちゃ”さんは詩を語るように優美に話してくれた。
「人間は、よく私達『旧支配者』に生贄を捧げようとするけれど、大抵の生贄は私達にとっては塵芥に過ぎない、どうでもいいものなのよ。私達と人間の価値基準は全く異なるものなのだから、それも当然ね。分かるかしら?」
「は、はぁ」
「でも、中には私達にとっても、とても『美味しい』生贄が出現する事もある……貴方のように」
「ぼ、僕がですか!? な、なぜです!?」
 僕はマヌケに自分を指差しながら愕然とした。当然だろう。ただでさえ同じ人間にも狙われて酷い目に会っているのに、更にまた何か厄介事があるのですか!?
「貴方は人間が言う所の『異界の力』に数多く接触しているわ。そうした人間は私達にとっても美味しく見えるの。具体的にどんな意味で『美味しい』のかは個体によって変わるのだけど……そんな貴方に惹かれた『旧支配者』を、貴方も知っているのではなくて?」
 “あとらっく=なちゃ”さんの言葉に、僕は愕然とした。“いごーろなく”さんや“つぁーる”&“ろいがー”ちゃん達との接触には、そんな意味があったのか……ひょっとすると、“いたくぁ”さんや“てぃんだろす”との遭遇も、同じ理由なのかもしれない。
「で、でもそんな『旧支配者』さん達に狙われてるのなら、僕みたいな普通の人間はあっというまに――」
「あらあら……ずいぶん恩知らずな発言よね」
 くすくす小鳥のように笑う“あとらっく=なちゃ”さんの視線の先を見て、僕ははっとした。そして全てを理解した。

 “つぁとぅぐあ”さん――魔王のように美しく、聖母のように優しい僕の女神様。あの御方が今までずっと僕を守ってくれていたんだ。いや、“つぁとぅぐあ”さんだけじゃない。“てぃんだろす”や“しょごす”さん。贔屓目に見て“いたくぁ”さんも、彼女達なりの方法で僕を守ってくれていたんだ。それがどんな意味を持つのか、僕にはわからない。矮小な人間に過ぎない僕に『神』の意思が理解できるわけがない。
 でも、僕はただ純粋に、その事がうれしかった。それで十分だ。
「……ありがとうございます」
 もう一度、心を込めて礼を述べると、“つぁとぅぐあ”さんはいつもの『にへら〜』とした微笑みを浮かべてくれた。
「これからは、人間だけじゃなくて、『旧支配者』とその眷属も貴方を狙ってくる……注意しなさいな。さもなくば、こんな目に会うわよ」
 突然――黒い麗人の吐息が耳元にかかった。その妖しい声の響きにぞくぞくと背筋が震えた瞬間、急に下半身がスースーと冷たくなって……
「な、何をしてるんですかー!?」
 なんと、いつのまにかズボンとパンツを剥ぎ取られた丸出しの下半身の前に、黒いセーラー服の美女“あとらっく=なちゃ”さんが顔を寄せて、股間に吐息をかけているじゃないか。
「さっきの借りを御返し下さいな」
 とても冷たいのにたまらなく熱い吐息――それが吹きつけられただけで、僕のペニスは魔法のようにそそり立ってしまった。
「まぁ、たくましい……清童でも生娘でもないのが残念だけど、たまには殿方を味わうのも趣がありますわね」
 漆黒のロングストレートヘアの中で、戦慄を覚えるほどの冷たい美貌が優雅に嘲笑い、血の薄い唇を割って腐肉のような舌が伸び――

「うおぉ!!」
 僕は思わず獣のような声を出した。
 “あとらっく=なちゃ”さんの舌先が、肉棒の裏筋を触れるか触れないかの感触で舐めたんだ。それだけなのに、まるで高濃度の麻薬を直接塗り込まれたような凄まじい快感が、僕のペニスを走った。
「くすくす……」
 震えるペニスの裏筋を根元からカリに向かって舌先が進む。舌の軌跡に沿って蛞蝓の這った後のようにぬらぬらと唾液が光る。やがてカリの先端に辿り着いた魔性の舌先が、割れ目をくすぐった次の瞬間――
「うぐぐっ!!」
 また獣じみた声が漏れてしまった。あの小さな口の中に、いきり立つ僕の怒張が咥え込まれたんだ。冷たい牙がカリを撫で、熱い舌がねっとりとシャフトをねぶる。ゆっくりと喉の奥までペニスを咥え、ゆっくりとカリが唇にひっかかる所までペニスを吐く。そしてまた喉の奥までディープスロート――そのあまりの気持ちよさに、僕は悦楽を通り越して恐怖を覚えた。この快感は尋常じゃない。いくらなんでも気持ち良過ぎる。ペニスから全身に走る凄まじい快感に、僕は指一本動かせないんだ。まるで、蜘蛛の巣にかかった蝶のように。
「あぁ……あああ……」
 これほどの快感ならとっくに射精している筈なのに、僕のペニスはまるで爆発する気配は無かった。このまま永遠に快楽の無限地獄が続くのでは……た、助けて……
「くすくす……ほら、出しなさい」
 口一杯にペニスを咥えてる筈なのに、“あとらっく=なちゃ”さんの命令ははっきり聞こえた――瞬間、
「うわぁぁぁ!!」
 信じられないくらい大量の精が、僕のペニスから発射された。これは射精なんてものじゃない。彼女の命令によって無理矢理ザーメンを搾り取られるような感覚なんだ。そのあまりに凄まじい快感に、僕の頭は真っ白になった。足に力が入らすに、そのまま崩れ落ちようとして――

「ごちそうさま……そう、確かに『美味しい生贄』ですわね」
 ちゅぽん、と“あとらっく=なちゃ”さんの唇が僕のペニスから離れてくれた。飲み切れなかった分の白濁液が薄い唇の端から垂れるのを、ちゅるんとすする彼女の艶かしさときたら……
「……あぁ」
 僕は無意識のうちに、彼女に手を差し伸ばしていた。それが黒いセーラー服の胸元に触れようとした刹那、魔法のように彼女の身体がすっと離れていく。
「くすくす……ごめんなさい。私の身体に触れていいのは、清童と生娘だけなの。また次の機会にして下さいな」
 そのまま呆然とする僕を尻目に、魔性の美女は闇の中に消えてしまった……
 ふにょん
「うわっ」
 その時、柔らかくてボリューム満点な物体が僕の背中から抱き付いてきた。
「うふふぅ……ボクを忘れてはダメですよぉ」
 確認するまでもない。我等が“つぁとぅぐあ”さんだ。
「今日はまだ供物を貰っていないのですからねぇ」
「す、すいません。すぐ持ってきます」
「いいえぇ……さっき言いましたよねぇ。今回はひでぼんさんを食べてしまうってぇ」
 ぞくり、と僕の心が疼いた。でも、それは決して不快な感覚ではない。“つぁとぅぐあ”さんになら、このまま食べられてしまっても構わないと、僕は本気で考えていたんだ。
 “つぁとぅぐあ”さんは僕をそっと仰向けに寝かせると、その上に圧し掛かってきた。ぶるるん、と揺れる爆乳が視界一杯に広がって、そのたまらない光景にくらくらしてきた――その時、

「――っ!!」
「あはぁ……ボク、やっぱりコレ好きですよぉ」
 痺れるような快感が股間から脳天を突き抜ける。いつのまにか勃起していた僕のペニスを、“つぁとぅぐあ”さんの膣口が騎乗位の体位で咥え込んでくれたんだ。締まりの良さは抜群で、そのくせ優しく包み込むような抱擁感。程好い滑りに淫猥な肉の蠢き。ああ、やっぱり“つぁとぅぐあ”さんとのSEXは最高だ。普段なら、このままお互いが腰を激しく叩きつけてフィニッシュを迎える所だけど、今回は特に腰を動かさず、そのまま“つぁとぅぐあ”さんは僕をそっと抱擁してくれた。
「うわぁ……」
「んん……ひでぼんさんの抱き枕は気持ちいいですねぇ……」
 あの偉大な爆乳の谷間に頭を埋めながら、僕は“つぁとぅぐあ”さんに優しく抱き締められていた。こうして抱かれると“つぁとぅぐあ”さんは本当にいい匂いがする。柔らかく艶やかな肌の心地よさと、股間を包む結合の快感を味わいながら、僕は“つぁとぅぐあ”さんの温かい体温を感じていた。
「……くー」
 幸せそうな寝顔を浮かべる“つぁとぅぐあ”さん……どうやら、僕の心は完全に“つぁとぅぐあ”さんに食べられちゃったみたいだ……

 ……で、それから1ヶ月間、僕は眠り続ける“つぁとぅぐあ”さんと交わりながら、決して離してくれない腕の中で暮らす羽目になったりする。
 ビバ、生存。

「――退魔組織のタカ派は全滅したようです」
「愚か者が……所詮毛の無いサル如きには、相手の力量を測る事もできぬか」
「それで、次の一手は?」
「“無限にして無敵なるもの”に協力を要請してあります。快く……とは行きませんでしたが、引き受けては頂けるでしょう」
「あの御方にとって我等は外様だからな、やむをえんか」
「とにかく、これで計画は第2段階に移行した」
「この星の栄華を掴み取るのは、ツァトゥグア神でもハスター神でもクトゥグア神でもない。我等が『ダゴン秘密教団・ニコニコ組』と“大いなるクトゥルフ”神なのだ」
「後は頼みましたぞ。“龍田川”殿」
「お任せあれ」

 第1部・完

 ……で、何事も無かったかのように第2部に続く


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