『ひでぼんの書』

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第1部第10話

 僕が『奥さん』に接触したのは、買い物の帰り道、ある曲がり角を曲がった時だった。
 いや、接触というより激突と言う方が正しいかな。
 まるで一昔前の少女漫画みたいに、出会い頭に衝突したその人は、濃い緑色の着物を着た女性だ――その時は、そうとしか認識できなかった。
「あ、すみませ――」
 衝撃でちょっとよろけただけの僕は、咄嗟に謝ろうとして――その女性が独楽のようにくるくる回転しながら道路の真ん中まで吹き飛んで、爆走するトラックに跳ねられて、僕の頭上を飛び越えて、とどめに自転車に乗って犬の散歩をしていた中年男性を撒き込んで、側を流れるドブ川の中に落下する彼女を目撃した。してしまった。
「わー!?」
 僕は悲鳴をあげながらコートを脱ぎ捨てて、何も考えずにドブ川に飛び込んだ。むちゃくちゃ臭くて汚くて冷たいけど、そんな事を気にしている余裕は無い。まずは手近にいた中年男性を岸に押し上げて、次にあの不幸な女性を助けようとしたのだけど……
「いない……まさか!?」
 僕は必死にドブ川をかきわけた。くしゃみをしている中年男性に応援を呼ぶように頼んで、彼が自転車で町の方に消えて行くのを見送りもせずに、ドブ川に沈んでいるだろうあの女性を探す。

「ああ、でも……あんなに派手に跳ねられちゃったら、もう……」
「もう?」
「手遅れじゃないかな……」
「それはお気の毒ですね」
「全くです……って、あれ?」
 僕は愕然と岸辺の声を仰いで――硬直した。
 あのトラックに跳ねられてドブ川に落ちたはずの女性が、頬に片手を当てながら平然と岸辺に立って僕を見下ろしていたんだ。その体には水滴1つ無い。
 でも、僕が硬直したのはそれだけが理由じゃなかった。
 なんて綺麗な人なんだろう。
 濃緑色の着物を纏った、美しい和風の熟女――細い柳眉と慈愛に満ちた黒目がちの瞳。すらりとした鼻梁に赤い紅の塗られた唇。僅かに化粧を乗せた白滋のような肌。きちんと結い上げられた青味がかった黒髪には、山羊の角を模した金色の小さな髪止めが飾ってある。垂れた前髪の一部が片目を隠しているのがとても色っぽかった。
 全体の印象は確かに相応に年齢を重ねた女性のものなんだけど、年増などとは口が避けても言えないくらい美しい。むしろ全身から醸し出す上品な色香は、10代20代の小娘には絶対に出せないだろう。どちらかと言えば成熟した大人の女性が好きな僕としては、よだれが出そうなくらい好みのタイプなんだ。熟女ハァハァ。
 また、他にも彼女には特徴があった。上品な着物姿はよく似合っているけど、ちょっとだけ着崩れている。内側から胸元を圧迫する豊かな胸と……ぷっくり膨れた妊婦のお腹の為だ。

「その方は見つかりましたか?」
「……は、はい。たった今」
 にっこりと微笑みながら差し伸ばされた妙齢の美女の手にすがって、僕はマヌケに口を半開きにしながら岸辺に這い上がった。
 それにしても綺麗な人だ。単純な美しさなら“つぁとぅぐあ”さん達に匹敵するかもしれない。でも、彼女からは邪神の皆さん特有の『神の威厳』とでも言うべき気配はまるで感じなかった。ああ、久しぶりにまともな人間の美女に出会えてなんとなく嬉しい。
「……では、よろしいですか?」
「は? は、はい」
 そんな事を妄想していた所為か、僕は奥さんの言葉を聞き逃していたんだ。思わず反射的に相槌を打つと、奥さんは上品に微笑んで、
「それでは行きましょう」
「え?」
「ほら、すぐ近所ですから」
「は?」
 その後のマヌケな問答によると、僕が妄想している間に、奥さんの家が近所にあるので、そこで体を拭かせてくれる事になってしまったらしい。うーん、これから白昼夢は控えよう……
 でも、寒風吹き荒ぶ中ドブ川でビショビショのまま帰るのも悲し過ぎるので、あつかましいけど御好意に甘える事にしようか。
「もし、失礼ですが……」
 と、そこで奥さんが憂鬱気な表情で僕に話しかけてきた。
「私の家は……何処でしたか?」
 ……いや、僕に言われても。

 その後、散々街中をさまよったあげく、2時間後にようやく奥さんの家に辿り着いた。近所にあるんじゃなかったのかな? どうやら、この奥さんは自宅の近所で迷子になってしまっていたらしい。
「あ、この町には引っ越したばかりとか?」
「いえ、そんな事はありませんが」
「…………」
 気を取り直して――奥さんの家は、築40年くらい経過していそうな、木造の平屋一戸建てだった。特に汚れたり壊れたりしているわけじゃないけど、長い年月を過ごした建物特有のノスタルジックなわびしさは拭えない。からからと軽快な音を立てる引戸の門を潜り、柿や杏の木が植えられた薄暗い中庭を抜けて、くすんだ曇りガラスの玄関に辿り着いた。
「少々御待ち下さい」
 ねじをきゅるきゅる回すタイプの古めかしい鍵を開けて、深々と御辞儀してから、
「狭い家ですが、どうぞお入りください」
 ごん!
 玄関の扉に正面から頭をぶつけていた。いい音がしたなぁ。
「だ、大丈夫ですか?」
 奥さんはしばらく頭を押さえてうめいていたけど、
「どうぞ、お入りください」
 今度はちゃんと引戸の扉を開けて、何事も無かったように僕を家に招き入れた。
 家の中は、外観通りに古い和風な内装だった。部屋は全て畳敷きか板の間だし、ドアは曇りガラスの引戸かフスマ。“いたくぁ”さんがお茶を飲む姿がよく似合いそうな雰囲気だ。
 それにしても、妙齢の和服美女な奥さんは、この家にこれ以上無いくらい馴染んでいるように見える。似合うというより、パズルのピースみたいに奥さんの存在がこの家に必要不可欠な要素に感じられるんだ。ああ、やっぱり和風の人妻っていいなぁ……

 ごん!
「お、奥さん」
 そんな感想を抱いていた矢先、また扉に気持ち良く頭をぶつけた奥さんは、額を押さえながら、
「……ここが浴室です。ちょうど湯を張ったばかりですから、このままお入りくださいませ」
 僕に激突した扉を指し示してくれた。
「あ、はい……大丈夫ですか?」
「大丈夫です……私、しょっちゅう道に迷ったり頭をぶつけたりしますの。夫(つま)にはよく粗忽者だって言われてしまいますわ」
「つ、つま?」
「あら、失礼しました。『夫』の古い言い方ですよ」
 うーん、見た目通りの古風な人だ……そんな僕の心境を見抜いたのか、
「私ももう歳ですからねぇ、若い方にはわからない言葉をつい使っちゃうのよ。ごめんなさいね」
 瞳に憂いを込めて、苦笑しながら溜息を吐いた。
「歳だなんて、そんな事はないですよ。すごく若々しいです。はい」
 事実、お世辞抜きで奥さんは若々しい。全体の雰囲気は確かに成熟した大人の女性なんだけど、肌には皺も染みも弛みも無いし、髪は黒々白髪も無い。その意味では“つぁとぅぐあ”さんみたいに、年齢不祥な感じにも見える。
「うふふ、こんなおばちゃんをからかっちゃ駄目よ」
「いや、ホントに。御結婚されてなければナンパしたいくらいです」
「まぁ……」
 し、しまった。つい軽はずみな事を言ってしまった。
 でも、奥さんは頬に手を当てながら口元を綻ばせてくれた。ああよかった……
「うふふ、お世辞でも嬉しいわ」
「ええと、お子さんは何ヶ月ですか?」
 かなり強引に話を切り替える。奥さんは片手を当てた頬を少し赤く染めた。
「何ヶ月だったかしら……うふふ、恥ずかしいわね。この歳になって、つま…夫がはりきっちゃって」
 その旦那さんがどんなはりきり方をしたのか非常に気になるところだけど、これ以上妄想すると入浴するにはマズイ身体状態になりそうだからやめる事にしよう。
「あ、じゃあそろそろ御好意に甘えさせてもらいます」
「服はその籠に入れて下さいませ。ごゆっくり……」

「……ふぅ」
 これまた古風な檜の湯船に漬かりながら、僕は蕩けるような息を吐いた。湯気がタイル敷きの壁と天井を濡らし、時折水滴が鼻先に当たる感触も心地良い。ああ、やっぱり冬場の風呂は気持ちいい。
「それにしても……綺麗で優しくて良い人だなぁ」
 もう何度目かわからない陶酔感に、僕はだらしなく瞳を綻ばせた。あんな人が、今の日本に現存していたなんて奇跡に近いんじゃないかな。もし、“つぁとぅぐあ”さんに出会っていなかったなら、相手が人妻だろうと本気で入れ込んでしまったかもしれない……
「……って、いかんいかん。そんな邪な考えは相手にも失礼だぞ。自分」
 気を引き締める為に冷たい水でも浴びようと、浴槽から出ようとした――その時、
「お湯加減はどうですか?」
 何の前触れも無く扉が開いて、頬を片手に当てて微笑む奥さんが出現してくれた。
「うわぁああ!?」
 危うく湯船で溺れそうになった。
「な、な、なぜ奥さんが!?」
「お背中を流そうと……」
 奥さんは例の着物を襷掛けにして、裾を上げていた。柔らかそうな二の腕とふくらはぎの白さに、僕は生唾を飲み込んだ。
「い、いえ、自分で洗えますから!!」
「そう遠慮なさらずに」
 あくまで上品にやんわりと、しかし見た目によらず強い力で奥さんは僕を湯船から引っ張り出した。慌てて手ぬぐいで股間を隠す。あれよあれよという間に、僕は風呂椅子に腰を下ろされていた。
「それでは、失礼しますね」
 風呂桶に溜めたお湯を背中に流して、石鹸を泡立てた手ぬぐいが僕の背中を優しく擦る――

 がりっ
「ぐわぁああああ!?」
「あ、あら?」
 背中に走る激痛に、僕は椅子に座ったまま50cmは跳び上がった。世界記録かもしれない。
「い、今、何を――!?」
 あまりの痛みに半泣きになりながら振り返ると、柔らかい手ぬぐいではなくて、サビ落し用の金属タワシを持ったまま固まっている奥さんの姿があった。
「ごめんなさい。間違えちゃったわ」
 ど、どこをどう間違えれば手ぬぐいと金属タワシを間違えるんですか……傷に石鹸液がよく染みる。ぐあー。
「すぐに手当てを――」
 慌てた様子で奥さんが立ち上がった――次の瞬間、
 つるっ
「あら?」
「え?」
 派手な音を立てて、奥さんは転倒した。しかも、僕の上に転んでくれたんだ。きっと石鹸でも踏んだのだろう。お約束な人だ。
 「お、奥さん大丈夫ですか!?」
 奥さんは、僕の胸に顔を埋めたまま動かない。
 身重の体だし、まさか!?
 最悪の想像に背筋が凍りつき、慌てて奥さんを揺り動かそうとして、
「……ああ……男の人の匂い……」
 魂が蕩けるような甘い声に、僕は固まった。柔らかな女の香りが胸一杯に広がる。
 甘えるように頬を摺り寄せて、胸板を撫でる奥さんは陶酔し切っていた。

「ごめんなさい、もう我慢できないの」
 奥さんの白魚のような指が僕のペニスをそっと撫でる。いつのまにか、僕の肉棒は固くそそり立っていた。
「うわっ……」
 思わず呻き声が出る。それほど奥さんの手技は巧みだった。シャフトをしごき、掌で先端を撫で回し、指でカリを擦る。それだけで射精しそうになる直前、奥さんの手が止まった。
「ああ……とても立派です」
 そして、生殺し状態の僕の股間に頭を沈めて、
「美味しそう……そう、これ……これが欲しかったのぉ」
 一気に根元まで、その小さな唇からペニスを飲み込んだ。
「――ッ!?」
 脳味噌が爆発したかと思った。快楽のあまりに身体が硬直して、奥さんにされるがままになってしまう……う、上手い。上手過ぎる。まさか“つぁとぅぐあ”さんに匹敵する性技を持つ人間がいるとは思わなかった。人妻恐るべし。
「(じゅぶっ)…はぁ…(ちゅる)…美味し…(ぴちゃ)」
 口の中にたっぷり唾液を溜めて、じゅぶじゅぶとペニスを洗うように頭を動かし、繊細な舌で尿道をくすぐる奥さん。その咥内の感覚は、とても僕には表現できない。気持ちいい。とにかくひたすら気持ちいい。
「んんぅ…(じゅるっ)……もっとぉ…(ぢゅるる)…飲ませて……」
 いやらしく口をすぼめる奥さんの口元から、白い白濁液がどろりとこぼれた。いつのまにか射精していたらしい。あまりの快感に絶頂を迎えた時がわからないんだ。こういうのを『イキっぱなし』というのだろうか。

「はぁ……あ…」
 どれほどの時間が過ぎたのか、ようやく奥さんは僕のペニスを貪るのを止めてくれた。射精したザーメンを最後の1滴まで飲み干してから、名残惜しそうにゆっくりと口を離す。
「ごめんなさい……はしたない女だと思わないで」
 でも、台詞とは裏腹に、まだ固くそそり立つ僕のペニスに、愛おしそうに頬擦りする。
「お、奥さん!!」
 僕はもう限界だった。ほとんど押し倒すように奥さんを床に寝かせて、押さえつける。もし身重じゃなかったら、本気で押し倒していただろう。
「きゃあ」
 短い悲鳴を上げながら、奥さんの抵抗はほとんど無かった。
「いけません、私には夫がいるのよ……」
「誘ったのは奥さんじゃないですか!……いや、気のせいじゃなくてどう考えても」
「一度言ってみたかったの。この台詞」
「はぁ」
 奥さんは妖艶に微笑むと、僕の頭をそっと両手に挟んだ。その瞳の妖しい輝きは、僕の魂を吸い込んでしまいそうだ。
「こんな年増のおばさんで良ければ……身体だけでも愛してくださいませ」
 それはこちらからお願いしたいぐらいです。でも……
「旦那さんの事はいいのですか?」
 ちょっと意地悪く尋ねてみると、奥さんは軽く唇を尖らせた。
「あの人は最近、港に女を囲ってばかり……最近も白化症の米国人と子供を作ったとか」
 こんなイイ女性をほっとくなんて、とんでもない旦那さんだなぁ。
「もう、私の女は疼きが止まらないのです。はしたない女でごめんなさいね」
「いえ、そんな……でも、奥さんが身重だから旦那さんは――」
 そっと僕の唇に、細い指が押し当てられた。
「今は、あの人の事は言わないで……御安心を、あなたに責任を取れとは言いませんから。
これは一夜の夢。夢幻境の恋なのよ」
 その言葉で充分だ。奥さんの方に問題が無いのなら、僕は自分と奥さんの肉欲を満たす事だけに専念するとしよう。

「あ、でも身体の方は大丈夫ですか?」
 膨らんだお腹を奥さんは愛しそうに撫でた。
「もう安定期に入ってますから……ですが、優しく愛してくださいませ」
 僕は奥さんの首筋に唇を当てた。さすがに唇は奪えないと思ったからだ。奥さんがほんの微かに身体を震わせる。そのまま唇を下に這わせて、鎖骨を舐めてから――
「はあっ……」
 勢い良く着物の胸元を肌蹴た。まるでびっくり箱を開けたように、豊満な乳房がぶるんと飛び出す。汗でしっとりと濡れた巨乳はたまらなく美味しそうだ。僕は夢中でしゃぶりついた。
「あぁん……」
 やや強めに揉み解すと、大きくて柔らかい乳房は面白いくらい形を変えた。指の間からあふれた乳肉が、ほんのりとピンク色に震えている。色が濃く大き目の乳首を舌で転がして、思う存分味わっていると――
「あふぅ!」
「えっ?」
 思いがけない味が咥内に広がり、僕は驚いてちゅぽんと乳首を出した。
 なんと、濃厚な乳首から白い筋が乳輪に流れて、乳房を伝わり落ちている。
「もう、母乳が出るんですね」
「ああ……恥ずかしいわ」
 子供みたいに顔を赤く染める奥さんの美貌に満足した後、僕は再び乳首を貪った。
「あふぅ! も、もう……それは赤ちゃんの分ですよ……あっ…はぁ……」
 構わず僕は乳房を絞り、溢れ出る母乳を吸う。本来、人間の母乳はとても飲めたものじゃない酷い味なんだそうだけど、奥さんの母乳はとても甘くて濃厚だ。どんなに飲んでも飲み飽きない。
「うふふ、甘えん坊さんですね……あんっ」
 奥さんは母性にあふれた眼差しを向けて、赤子をあやすように僕を抱きしめた。生まれると同時に母親を失った僕は、母の胸に抱かれた経験は無いのだけど……
……なにか、暖かくて懐かしい気持ちかする……
「んんっ…はぁああ……ああっ、あっ!」
 でも、こんな風に乳首と乳房を嬲る赤ん坊はいないだろうし、それに反応して喘ぎ声を出す母親もいないだろう。

 数十分後、乳房全体が母乳と僕の唾液でべちゃべちゃになってから、ようやく僕は彼女の巨乳を開放した。
「あふぅ……うふふ」
 甘えるように奥さんが僕の腕の中で丸くなる。その瞳は乳責めの快楽で甘く蕩けて、そしてこれからの快楽に期待しているように見えた。
「じゃあ、今度は僕が奥さんを洗ってあげますね」
 僕は石鹸を手に取り、たっぷりと泡立てた。そのまま奥さんの着物を脱がしながら、身体中に手を這わせて、石鹸を塗りつける。
「はあぅうう…ああん! お、お上手ぅ…です! あ、あああああ……!!」
 はしたない声を漏らさないように着物の袖を咥えて、ぎゅっと瞳を閉じて我慢する奥さんだけど――ぬるぬるの手がうなじをから鎖骨を撫でて、巨乳をなぞるように伝い、勃起した乳首を超えて、膨らんだ腹部をやさしくさすり、おへそをくすぐって、けっこう毛深い陰毛も泡立てて、背筋を指先で引っ掻き、ボリュームのある尻肉を揉み解して、お尻の割れ目を何度も指で往復して、もう顔を出してる大きなクリトリスを摘み、むわっと女の香りを放つ秘所を念入りにかき混ぜて、むっちりした太ももを渡り、足の指先を弄ぶ――念入りにじっくり全身を泡立つ石鹸のローションで愛撫すると、その嬌声も押さえきれないらしかった。
「わぁ、けっこう陰毛が濃いですね」
「は、恥ずかしいわ……あふっ! 最近、お手入れしてなくてぇ……ああっ!」
「へえ、腋毛も生えているんだ」
「いやぁ……い、言わないでぇ!」
「でも、アナルの周りにも少し生えてますよ」
「っっっ!! いやぁああ……あ、ああん!!」
 いや、実はいちいち指摘するほど生えてはいないんだけど、せっかくだからこれをネタにちょっと苛めてみた。
「じゃあ、抜いてあげますね」
「そ、そんな……はうっ!!」
 ぷっくりと顔を覗かせた紅茶色のアヌスを摘み、産毛を引き抜くと、奥さんは身体を仰け反らせて面白いくらい反応してくれた。
 ……って、妊婦にそれはヤバイよね。もっと大人しいプレイにしよう。
 でも――

「も、もう……我慢できないのぉ! 後生です、情けを下さいませぇ……」
 奥さんは自分から足を開き、指で膣口を広げて見せた。その淫猥な表情に上品な婦人の面影は無く、色欲に支配された雌のように――美しかった。
 誘いを受けるまでもない。僕も今すぐはちきれそうな肉棒をブチ込みたい――
――でも、安定期とはいえ妊婦に知識無しでの挿入は危険だよなぁ。どうすればいいのだろう?
 その事を奥さんに伝えると、
「安定期ならば、お腹を圧迫しない体位で、少し浅めに、できれば早く終わらせれば大丈夫ですよ」
「なるほど」
 人が変わったように落ちついた態度で、丁寧に教えてくれた。個人差も大きいけど、妊娠初期と末期を避けて、体位と動きに気をつければ大抵は大丈夫らしい。中には中出しはダメとか乳首を刺激するのは避けた方が良いという説もあるとか。げ、思いっきり乳首を刺激してしまった。
「大丈夫ですよ。私もこの子も頑丈ですから。よく不死身だって言われるのですよ」
「いや、でも気をつけないと」
「うふふ、優しいのですね」
 奥さんは頬に片手を当てながら微笑みかけてくれた。いや、これは人として当然ですから。
 僕は奥さんを横に寝かせて、覆い被さらないように腰だけ突き出す体勢に身体を置いた。この体位なら条件はクリアーする筈だ。
「じゃあ、行きますよ」
「お願いします……早くぅ」
 いやらしくくねらせるお尻を押さえて、
「あああ……」
 僕は膣口にペニスを当て、
「あああああ……」
 ゆっくり、ゆっくり、亀のような歩みで挿入した。

「あああああああ……!!」
 ビクビクっと奥さんの身体が震える。待ちかねていたペニスの感触に、軽くイってしまったらしい。僕は膣壁の感触を味わうようにゆっくりとペニスの中程まで挿入し、今度はゆっくりと戻した。そしてペニスが抜ける寸前で停止し、またゆっくり挿入する。
「ふわぁあ…あ……ああ…あ……もどか…しい…です……でも…あふぅ……それが…イイの…ぉ」
 スピードや激しさとは縁遠いセックスだけど、奥さんは恍惚の表情で悶えて、満足しているみたいだった。むしろ品の良い人妻には、こののんびりとした、しかし濃厚な交わりが似合っている気がする。
 で、僕の方は――
「うううっ……!!」
 ……どうやら、早めに終わらせなければならないという条件は、この動きにもかかわらず、容易くクリアーできそうだ。それくらい奥さんの中は具合が良かった。締め付けがいいのにキツ過ぎず、まるで自分から咥え込むように淫肉が蠢いて、僕のペニスを貪ろうとする。僕は早くも限界を迎えようとしていた。
「お、奥さん……僕、もう……」
「わ、私も……あん! もう少し…です…からぁ……んんっ!」
 頭の中で必死に素数を数える。素数は勇気を与えてくれる数らしい。しかし、569まで数えるのが精一杯だった。
「うううっ!!」
 僕は限界を迎えた。でも、それと同時に、
「あぁあああああああ――!!!」
 奥さんも身体をよじって絶頂を迎えてくれたんだ。僕は慌ててペニスを抜き取った。間一髪、それと同時に射精する事ができた。
「ああ……あ…あああ……」
 痺れるような射精感と共に放出されたザーメンが、震える奥さんの膨れたお腹から濡れた乳房を汚す。
 奥さんは、それを指ですくい取って、
「ああん……うふふ、美味し……」
 ぺちゃぺちゃと、淫猥な表情で舐め啜った――

1時間後……
 僕は奥さんが用意してくれた着物――洒落た波模様の浴衣――に着替えた僕は、畳敷きの居間で卓袱台に並んだ手料理に舌鼓を打っていた。鯵の刺身に山菜の天麩羅、麦飯に茄子の御御御付、煎茶に柴漬。どれも文句のつけようがない美味しさだ。
 ……と、簡単に言うけど、こうなるまでにはまた様々な一悶着があったんだ。例によって奥さんの『ドジ』がこれでもかと炸裂して、情事の後片付けをしようとして浴槽に落ちるわ、着替えになぜか女物の振袖が出るわ、汚れた服を洗っていた洗濯機は爆発するわ……この料理を作っていた台所からも、金槌や鋸の金属音や爆発音、謎の魔獣の断末魔がひっきりなしに響いてきて、僕は、奥さんが何を料理しているのか戦々恐々していたんだ。こうしてごく真っ当な家庭料理が出てきた時は、正直、我が目を疑った。
「一献いかがですか?」
 まぁ、でも今はお銚子を手にした奥さんが、僕の側で慎ましく控えてくれている。ああ、いいなぁこの雰囲気。
 今の奥さんは深緑色の着物から純白の長襦袢に着替えている。青味がかった黒髪も解いて、簡単な三つ編みに束ねていた。けっこう髪が長いんだなぁ。うなじの後れ毛が色っぽい……
 僕は手料理をありがたく平らげた後、奥さんと熱燗を酌み交わした。1本、2本と空のお銚子が増えていく。奥さんはけっこう飲む性質のようだ。
「うふふ……少し酔ったみたいです」
 うっとりとした表情で、奥さんは僕の肩にしなだれてきた。その潤んだ瞳には明らかに期待の光がある。
 よし、第2ラウンドといこうか……と、そこで僕はある思い付きをした。その内容を奥さんに耳打ちする。
「まぁ」
「いや、以前から一度やってみたくて」
「うふふ、いいですよ」

 頬に片手を当てるポーズのまま、奥さんは1秒で了承してくれた。正座したまま長襦袢の裾をめくり、素足とお腹、そして陰毛の覗く秘所が露わになる。奥さんはお銚子を1本手に取り、合わさった太ももと股間の間に中身を注ぎ入れた。デルタ状に溜まった清酒の中に、黒い陰毛が揺れている。
 そう、いわゆるワカメ酒という奴だ。あまりに馬鹿馬鹿しくて、逆に一度やってみたいと思っていたんだけど、“つぁとぅぐあ”さんはお酒を全部飲んで寝てしまうし、“しょごす”さんはお酒に弱くて酔って暴れてしまう――いや、酔って暴れたふりをする。他の2人は論外だ。
「じゃあ、いただきます」
「めしあがれ」
 僕は奥さんの股間に顔を押し付けて、酒の泉をすすり飲んだ。物凄く飲み辛いけど、なるほど、この微妙な退廃感は妙に心を高揚させてくれる。そして、もちろんそのまま終わるわけがなかった。
「やぁん……あはぁ…あ……」
 白く滑らかな太ももの感触を楽しみながら左右に開き、わずかに酒の味がする秘所を舐め回す。しっとりと熟れた奥さんの大人の性器をねっとりと舐める度に、酒とは違う液体がどんどん涌き出てきた。これはどんな美酒よりも美味しい甘露だ。うん。
「ああん…もう、お酒は……ひゃうっ」
 奥さんの喘ぎ声と共に、僕の首筋に生暖かいものが垂れてきた。顔を上げると、なんと奥さんが恍惚の表情で自分の巨乳を揉みしごいていた。白い長襦袢は母乳で濡れて、赤い乳首の先端がうっすらと透けている。そこからあふれた母乳が僕の首筋に落ちていたんだ。
「自分で慰めるなんて……本当に奥さんはいやらしいですね」
「ああ……言わないで……」

 僕は奥さんの背後に回り、長襦袢の胸元を勢いよく肌蹴た。まろび出る乳房を掴み、ゆっくりと揉み解す。
「お風呂場であんなに出したのに、もう胸が張ってますよ」
「はぁん…あ、あああ……もっと……もっと揉んで下さいまし…あはぁ!」
「じゃあ、全部出しましょうか」
 巨乳の前に食事に使った深皿を置いて、柔らかい乳房を根元から先端の乳首までゆっくりと揉みしごき、母乳を搾り出す。まるで噴水のように驚くほどの勢いで白い母乳が噴出して、深皿にどんどん溜まっていった。
「はうぅ…くうっ! もっと…優しくして下さい……やぁん!」
「こんなにたくさん出るなんて、まるで乳首から射精しているみたいですよ」
「いやぁ……そんな恥ずかしい事…んくぅ……言わないでぇ」
 もう、深皿一杯まで母乳が溜まった頃、ようやく淫猥な乳絞りも終わろうとしていた。今や母乳はほとんど出ないのに、乳頭は痛々しいくらい勃起して、乳首全体がぴくぴく震えている。
「ほら、美味しいですよ」
 僕は深皿を手に取り、奥さんの口元に運ぶと、
「ああ、こんなにたくさん……ん、んちゅぅ」
 うっとりとした表情で、奥さんはネコのようにぴちゃぴちゃと舌で舐め飲んだ。上品で可憐な奥さんの卑猥な姿は、僕の獣欲をたまらなくそそらせてくれる。
「やぁん……汚れちゃうわ……」
 僕はそのまま深皿を傾けて、流れ落ちる母乳を満遍なく奥さんの身体に浴びせた。母乳が純白の長襦袢を濡らして、火照った柔肌を淡く浮かばせる。
「本当にいやらしいですね、奥さんの身体は……こんな事で感じるなんて」
「そんな……あふぅ! そうよ…私、淫乱な女なのです……あああっ!!」
 母乳ローションを塗り込めるように全身を撫でまわすと、奥さんは嬌声を上げて悶えながら、自らの巨乳と秘所を慰め始めた。再び、情欲に狂う雌の奥さんが顔を覗かせようとしていた。

「(んちゅ)…はぁ……(じゅぶっ)…んんぅ…これ、好きなのぉ…(ぴちゃ)……」
「奥さんのあそこ、自分から僕の指を咥えてきますよ。ほら」
「あふぁあああ……もっと、もっと激しくぅ……」
 十数分後、僕と奥さんは互いの性器を弄り合う、いわゆる69の体勢で絡み合っていた。ただし、どちらかが上に乗る69じゃなくて、身体を横にしながらだけど。
 貪るように僕のペニスをしゃぶる奥さんのフェラチオは、相変わらず最高だった。風呂場で何度か出していなかったら、僕はたちまち精を放っていただろう。お返しに奥さんの秘所をねぶり、クリトリスをノックしたり、膣口とアヌスに指を差し入れたりすると、まるで狂ったように身をよじり、快楽に悶えてくれる。
「……お願い、もう我慢できないのぉ……情けを下さいまし……ああ……」
 やがて、風呂場と同じように、奥さんはうつ伏せになって足を開き、ぐしょぐしょに濡れた性器を自ら開いて僕におねだりしてきた。請われるまでもなく、僕は怒張を挿入しようとして――思いとどまった。風呂場から短時間で連続してセックスするのは、身重の身体には悪いかもしれない。それに、ワカメ酒と同じく、一度やってみたい事があったからだ。
「奥さん、こんなのはどうですか?」
「え……」
 僕は奥さんの両足を掴んで、ぴったりと足を閉じさせた。そのままペニスを秘所と両足の隙間に挿入する――

「あふぅ!!」
 カリとシャフトが勢いよく淫肉とクリトリスを擦って、奥さんは悲鳴のような嬌声を漏らした。むちむちした太ももと濡れた秘所の絶妙な圧迫感が、無上の快楽をペニスに伝えてくれる。そう、これはいわゆる素股というやつだ。奥さんの柔らかな極上の身体を使っている事もあるのだろうけど、想像よりもずっと気持ちいい。ああ、日本文化っていいなぁ。
「ふひゃあああ!! いい! これ、イイのぉ!!」
 1番敏感なクリトリスと膣口をペニスで擦られる行為は、奥さんも気に入ってくれたようだ。自ら巨乳を揉みながら、乳首を自分で吸っている。普通にセックスするよりも激しく喘ぐ妊婦の嬌態は、あまりに背徳的で淫靡だった。
 そして――
「ふぁああああああああ!!!」
 全身を震わせながら、奥さんは一足先にイってしまった。
「ううっ」
 続けて僕も限界が来た。素早く足の間からペニスを抜いて、奥さんの頭を乱暴に押さえ、
「出しますよ、飲んでください!!」
 躊躇い無く、奥さんは僕の怒張を喉の奥まで咥えた。同時に、信じられないくらい大量のザーメンを放出する。
「んんんんん!!……んんん…ん……ちゅうぅ」
 最後の1滴まで、奥さんはザーメンを飲み干すと、
「うふふ……美味しいわ」
 ずるりと抜き出したペニスを、愛しく頬擦りした――

 もう、すっかり外は暗くなっていた。
「ええと……ご馳走様でした」
「いえいえ、お構いなく」
 頬に片手を当てながら上品に微笑む奥さんは、あの肉欲に乱れた淫乱な人妻と同一人物とはとても思えない。
 ほんの1夜の逢瀬は、今、終わりを迎えようとしていた。
 ……今気づいたけど、そういえば、僕は奥さんの名前を知らない。本当に今更だけど、僕は自己紹介をしてみた。
「そういえば、自己紹介がまだでした。僕は赤松 英と言います」
「英さんですか……私の名前は――」
 奥さんは静かに微笑んだ。
 そして、その瞬間――世界は凍結した。
 これは形容表現じゃない。
 まるで写真のネガみたいに周囲の光景全てが灰色に転じて、あらゆる動きと音が世界から消えてしまったんだ。
 僕が名前を教えた事と、奥さんの名前を知る事――
――それが恐るべき意味を持つ事を、僕は本能的に悟った。
「私の名前は――」
 目の前の奥さんは何も変わらない。変わるわけがない。それなのに、彼女が“つぁとぅぐあ”さん達すら遥かに凌駕する偉大な存在である事が、なぜかわかるんだ。
 僕は理解した。あまりに高位過ぎる存在は、僕等が普段、大地や大気の存在を意識せずに生きるように、ちっぽけな人間には逆にその威厳を実感できないという事を。
 そして、僕は理解した。僕の前に降臨している存在は、この宇宙のあらゆる種族が絶対の畏怖と無限の敬意を込めて崇める、真の窮極存在である事を――
「私の名前は――“しゅぶ=にぐらす”――」
 宇宙の何処かで、誰かが絶叫した――

 ふと気がつくと、僕はあの時飛び込んだドブ川の岸辺に佇んでいた。まるであの逢瀬が一夜の夢であったように、全てが奥さんに出合う前のままだ。しかし、全てが夢でない証拠に、僕の手の中にはあの山羊の角を模した小さな髪飾りがある。
 後日、それを“つぁとぅぐあ”さんに見せると、彼女はなぜか無言のまま僕を優しく抱き締めてくれた。それが何の意味を持つのか、その時は何もわからぬまま――
 その後、僕は何度もあの家を探したけど、今現在まで再び巡り会う事はなかった。
 果たして、あの一夜は本当に現実だったのか――今でもわからない。

 しばらくして、僕はまた仕事の打ち合わせの為に外出していた。
 打ち合わせ自体は簡単に終わり、特に誰とも合う事なく帰宅する。家では、“てぃんだろす”が1人で留守番している筈だ。実は“しょごす”さんのメンテナンスにトラブルが発生したとかで、今日まで彼女が帰る時間が延びてしまったんだ。まぁ、明日には確実に戻ってくるらしいけど。
 いつもは寂しがり屋の“てぃんだろす”は、そんな時は“つぁとぅぐあ”さんに預けたりするのだけど、何を思ったのか今日は1人で留守番にチャレンジするそうだ。先日、お前は子供っぽいなぁ、とからかったのが原因かもしれない。とにかく、“てぃんだろす”にとって今日は『はじめてのおるすばん』というやつだ。あれ、お使いだったかな?
 ところが、帰宅した僕を迎えたのは、“てぃんだろす”だけじゃなかった。
「きゃん、きゃんきゃん!!」
 玄関のドアを開けると同時に、半泣きで“てぃんだろす”が飛び付いて来る。やっぱり寂しかったんだなぁと思ったけど、それは間違いだったんだ。
「あ、お帰り〜」
「お邪魔してます」
 “てぃんだろす”に続いて玄関に出てきた2人の少女――その『卑猥なる双子』が、僕をまた新たな不可思議空間に導く事を、僕はなんとなく悟っていた――

 続く


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