今、僕は宇宙の中心にいる。
確証なんてどこにも無い。でも、なぜかそれがわかるんだ。
周囲に僕が理解できるものは何も無かった。いや、世界の全てがあると言う方が正しいかもしれない。何を言っているのかさっぱりわからないかもしれないけど、それは仕方ないんだ。僕みたいな矮小な人間という種族には、それを表現する言葉は存在しないんだから。
『そこ』をあても無く漂う僕は、やがて『それ』に出会った。
“白い少女”――先程と同じ理由で、僕は彼女をそうとしか表現できない。
奇妙な事に――そう考える事自体が奇妙な事なのかもしれないけど――その“白い少女”には、“つぁとぅぐあ”さんや“いたくぁ”さんみたいな『神』としての神々しい迫力や威圧感の類は少しも感じられなかった。
彼女は世界で最も美しく、尊い存在なのに。なぜかそれが分かるのに。
“白い少女”の側には、黒いドジそうなメイドさんがいたけど、あまり気にしない事にしよう。何か語尾が変だったし。
どれくらいの時間が流れたのか、それとも少しも時間が流れなかったのか……
……たぶん、数兆年しか経過していないと思うけど……
“白い少女”は、ふと顔を上げて透明な眼差しで僕を見た。
いや、僕を見たという表現は間違っているかもしれない。彼女の瞳には何の光も宿っていない。それに、彼女の仕草には何の精神も込められていなかった。
そう、彼女は“盲目にして白痴”なんだ。
あまりに純粋過ぎる“白い少女”は、そっと僕に手を伸ばした。
側の黒いメイドさんは、タニシを摘みながら嘲笑を浮かべている。
その瞬間、僕は全てを理解した。
彼女に対して、何も感じられなかった理由――それは、この世界自体が“白い少女”そのものだからなんだ。普段、僕達が踏み締める大地や周りを包む空気の存在を意識しないで活動するように、彼女の存在が大き過ぎて、ちっぽけな人間に過ぎない僕には、それを認識できないんだ。
そして、僕は理解してしまった。
この宇宙は、眠れる“白い少女”の白痴の思考に一瞬浮かんだ泡沫に過ぎないという事を――
“白い少女”の果てしなき指先が、ゆっくりと僕に触れる……
「――と、そこで目が覚めたんですよ」
“つぁとぅぐあ”さんと向かい合って御雑煮を食べながら、僕は昨夜見た初夢の話をした。
「まぁ……それはラッキーな夢ですねぇ」
トン単位はありそうなお餅を美味しそうに頬張る“つぁとぅぐあ”さんの笑顔を見ると、僕の謎な夢の事なんてどうでもいいように思える。実際、夢だけど。
しかし、わけのわからない夢だった。あの子は一体何だったのだろう?
「……本当にぃ、戻って来れてよかったですねぇ」
突然、“つぁとぅぐあ”さんが僕をぎゅっと抱き締めた。豊満な爆乳に埋まりながら、甘い柔肌の香りにくらくらしている僕は、だから彼女の言葉の意味を深く考えられなかった。
そして、それに気づいた時には……全てが手遅れになっていたんだ……