第四章「すれ違う心」

それから俺達は夢のような毎日を過ごした。毎日、学校への行きかえりはもちろんのこと、学校でも逢引するようになった。
もうすぐ6年生になるその頃、同様に思春期を迎えつつあった同級生はいろいろといたずらを仕掛けてきた。
愛美ちゃんは、下駄箱に俺の苗字を書かれたし、俺達が歩いてると「ヒュー、ラブラブ」といってからかわれた。
誰かが嘘のラブレターをでっち上げて、いやらしい文章を大声で読み上げたりした。でお俺達は全然気にもしなかった。
俺達は二人の世界に入り込んでいて、外部の雑音は全然気にならなかった。逆にまるで、家の中から、
外を吹き荒れる嵐を眺めているように、ひそかに楽しんでさえいた。
今考えてみると、美紀ちゃん事件を機に俺は精神的に随分と成長した。その時を境に愛美ちゃんは俺の恋人になった。
俺はそのとき, 紛れもなく思春期の恋をしていた。言葉では良く表せないが、授業中でも愛美ちゃんのことを思うと、
切なく胸がキューンとなった。彼女が愛しくて愛しくて仕方が無かった。
それは以前みたいにただエッチな遊びをしたいという、好奇心と性欲だけに基づいた感情とはまったく別物だった。
その頃は一緒にいるだけで幸せ気分いっぱいだった。親達も、二人が仲直りしたあと、
以前にもましてべったりしているのであきれ返っていたが、放っておいてくれた。
俺達の相変わらず二人になるとエッチな遊びを続けたが、エッチの質が少しずつ代わっていったような気がする。
以前みたいにただ入れれば良いというのではなく、もっと濃厚になってきた。
例えば一番大きな違いは、キスをするようになったということだろうか。親達の目の届かないところにいくと、
俺達はキスをした。知らないうちにフレンチキスをするようになっていた。
愛美ちゃんの舌は俺の口の中にニュルニュルっと入ってきてまるで、軟体動物ように動き回った。
俺の舌とその軟体動物は絡み合って遊んだ。そうすると、当然下半身が黙っていなかった。しばらくそうやっていて、
我慢の限界に達すると、とっちからとも無くパンツを下げて、下でも結合した。
そして向かい合って入れたまま俺達はさらにキスをした。
そして、舌や口の周りの筋肉が疲れて痛くなるまでお互いの口をむさぼった。それがあまりにも刺激的なので、
俺達はすぐいってしまった。変な話だが、それまでオチンチンをオマンコに入れるということは散々やってきせいか、
キスの方が新鮮で刺激があった。でもやはり快感が欲しくてオチンチンを入れずにいられなかった。
やはりエッチあってのキスだった。エッチの方が主食でキスがおかずといったような感じだろうか。

でも、そんな幸せな日々もそう長くは続かなかった。2月が終わろうという頃だったと思うが、
俺の父親がひとこと、「オマエには気の毒だけどな、愛美ちゃんところは東京に引っ越すことになったよ」といった。
新学期は向こうの学校に行くということだった。俺にはその言葉が信じられなかった。
まさに晴天の霹靂とはこのことだ。俺は、せっかく一緒になれた俺達を引き離そうとする運命の女神を憎んだ。

俺達はそれから、無い知恵を絞って、なんとか離れ離れにならないですむ方法を考えようとした。
俺は、愛美ちゃんのうちにいって、愛美ちゃんのお父さんに頭を下げた。
愛美ちゃんのお父さんは、優しそうなおじさんだったが、その彼が、申し訳なさそうに俺に向かって、
「君の気持ちはよーくわかるけど、おじさんにもどうしようもないんだよ。会社の決定だからね」といった。
愛美ちゃんだけこっちに残ってうちで暮らすという案は、俺の両親に却下された。
残るは駆け落ちしかなかった。もちろん「駆け落ち」なんて言葉は知らなかったけど、「二人でどっかに行こうか」と考えた。
でもどこに?お金は?そうやって考えていったら、結局、子供の俺達にはとても無理だった。
俺は、毎日恨めしそうにカレンダーをみてはため息をついた。俺達にとって、死刑宣告をされたのと同じだった。
後残されたのは、刻々と迫る離別の日までの時間をいかに有効に活用するかということだけだった。
俺達は、寸暇を惜しんで逢引を続けた。
愛美ちゃんの家は、引越しの準備で忙しかったから、春休みに入ってから、愛美ちゃんはうちに泊まりに来た。
俺達は毎日、将来の事を話し合った。夏休みにはどっちかの家に遊びに行こうと約束した。
愛美ちゃんは、毎日手紙を書いて、一週間に一回は電話するといった。俺は作文は苦手だったけど、
愛美ちゃんが相手だったら返事が書けそうなきがした。そして、もっと大きくなって高校を卒業したら結婚しようと約束した。

俺達は、発情期の犬や猿のように、エッチをした。母親が午前中パートにでかけると、家には誰もいなくなって、
(弟は保育園か?)思う存分エッチができた。それに飽きると、外に遊びに行った。
その頃、近くにチリ紙交換の会社があって、古雑誌が、倉庫からはみだして、裏の敷地にまではみ出して散らばっていた。
時々、かなりエロい漫画や雑誌の類が混ざってることがあった。裏は、空き地になっていて、
建材の様なものが積んであったりしてあって、周りからすぐ見える場所じゃなかったので、俺達はそこにいって、
そういう雑誌をみつけると、そこにしゃがんで、一緒に興奮して息を飲んで見た。
今考えると、かなりソフトなもので、もろの写真とか無かったし、絵も、肝心な部分は、省略されていて、
かなりの想像力を要求されるようなものだったと思うが、それでも子供だった俺達にはすごく新鮮で、
興奮材料としては申し分なかった。俺達は、興奮すると、その場ではめた。エロ漫画の登場人物を真似て、
新しい体位を研究したりした。俺がピストン運動という概念を覚えたのもその頃だろう。
壁に手をついた愛美ちゃんのお尻を抱えて、バックで突きまくった記憶がある。

こうやって、楽しかった最後の一週間はあっという間に過ぎ去った。

愛美ちゃんの家族が引っ越す前の晩、一緒にお風呂にもはいって、
パジャマも着て両親に「おやすみなさい」をいってから部屋にいくと、俺達は抱き合った。
これが最後だった。泣いても笑っても、明日から俺達は離れ離れになるんだ。
俺達は何もいわずにしばらく抱き合っていた。
それから俺達は見つめ合った。愛美ちゃんは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
俺たちは、いつもよりもゆっくりキスをして、そのあとエッチをした。でも、それは快感を得るためというよりも、
そうしていないと、そのまま、二人が一生離れ離れになってしまう様で不安で仕方なかったからだった。
お互いがいったあと、つながったまま、いろんな話をした。今までの、いろんな楽しかった事。
別れてからどうするか。学校を卒業したらどうするかなど、その頃毎日話していたことの総ざらいだった。
布団に入っては見たものの、俺達は眠れなかった。あれは、たぶん夜中2時か3時を回った頃だろうか、
彼女が、もう一回俺との最後の思い出を作りたいといった。俺達はごぞごぞ起きだして、服をきて、ジャケットに身をつつむと、
物音を立てないようにそうっと真っ暗な外に飛び出した。3月下旬なのに、真夜中の空気は思ったほど冷たくなかった。
俺達はいつも遊んでいた場所を歩いて一回りした。前の社宅まで行ってみた。普段は交通の激しいバイパス道路も、
今は車が一台もなく、不思議だった。俺達はそれから学校まで歩いていった。

学校の校舎は、真っ暗闇にたたずんでいた。俺達は、校舎の端の入り口を試しに引っ張ってみると、意外な事にすっと開いた。
俺達は中に入ると、真っ暗の階段を上って、俺の教室に行った。夜の校舎の中は、いくら鉄筋の新しい校舎だとはいえ、
不気味だった。俺達は暗い教室に入った。同じ教室が昼間見るのとは、全然違う場所にみえた。
俺達が仲直りをして以来、愛美ちゃんはしょっちゅう俺の教室に来てたからもうおなじみだった。
愛美ちゃんは、俺の席までいくと、机と椅子を、まるで大切なもののように、撫でた。そして机にちょこんと腰掛けると、
俺のほうに向かって両手を差しのべた。俺は立ったまま彼女をぎゅうっと抱きしめた。
彼女は俺の腰に両足を回して、俺の下半身を引き寄せた。いつもだったら、
興奮するこういう何気ない動作の一つ一つもこのときだけは、悲壮感を伴って俺達を余計暗い気持ちにした。
俺達はそのままお互いの唇を求めた。いつもよりも激しくお互いの舌を絡めあった。
俺は、さっきから愛美ちゃんのあそこに押し付けられて堅くなった俺のオチンチンをズボンから引っ張り出した。
愛美ちゃんは、パンツの股を横にずらして、入り口を露出させると、
もう一度「キスして」といわんばかりに俺の方に向かって口を突き出した。
俺は、一人であせっているオチンチンをとりあえず彼女の入り口にあてがってあげて、愛美ちゃんの唇に自分の唇を重ねた。
そして、俺の舌を彼女の口の中に押し込むのと同時に、オチンチンをゆっくりと彼女の中にうずめた。
その瞬間「ウーン」と俺の口でふさがれた愛美ちゃんの口からうめき声ともため息ともいえない声が思わず漏れた。
こうやって、俺達は真夜中の教室で、二人のいつもの儀式を始めた。二人が一回いった後、俺は自分の椅子に座った。
そして愛美ちゃんは俺の上にまたがった。俺は愛美ちゃんを抱きしめた。
彼女は、俺の既に準備の整ったオチンチンを中に自分で導くと俺の体にしがみついた。
俺はまた彼女の口を自分の口でふさいだ。

二人が学校を出た時はもう既に東の空が少し薄明くなっていた。
俺達は、冷たい空気の中をてをつないで無言のままゆっくり歩いて家の方へ向かった。
「私は絶対泣かないよ」と愛美ちゃんはポツリと言った。そして「だって、また、夏休みになったら会えるじゃん」と付け加えた。
俺は、「うん、そうだね夏休みなんてあっという間に来ちゃうよね」といった。
彼女は、「それに私たち、そのうち結婚するんでしょ?」といった。 俺が「うん、もちろん」というと、
彼女は「絶対だよ。忘れないように指切しよう」といって、立ち止まって小指を突き出した。俺達は、指切りをした。
俺はこの時の彼女の細い小指の感触が今でも自分の小指に残っている。
俺達が家につく頃までにはすっかり明るくなっていたが、親はまだ寝ていた。俺達は体が冷えたのか急にさむくなって、
布団に服を着たままもぐった。二人とも知らないうちに眠ってしまった。

騒々しい物音で、目が覚めた。母親が雨戸を開けていた。「ほら、もう起きなさい」といった。
おれは、引越しの日だと気がついて、もう愛美ちゃんがいなくなってしまったのではと、あわてて振り返ったら、
みたら彼女は俺のすぐ横でまだスヤスヤと寝息を立てて寝ていた。母親は、俺が服のまま寝ていたのに気がついて、
「あれ、パジャマはどうしたの?」といったが、俺が答えを考えているのをみて、それ以上詮索せずに、
「愛美ちゃん起こしてあげてね。」といい残して部屋から出て行った。
俺は、愛美ちゃんの寝顔があまりにもかわいかったので、思わずキスをした。
そうしたら、彼女は、薄目を開けて、俺の口に吸い付いてきた。俺達はまたしばらくそのままお互いの口を求め合った。

朝食を食べたあと、彼女の出かける仕度も終えて、子供部屋で最後のひと時を、
名残惜しんでいたら、ついにお迎えがやってきた。
愛美ちゃんのお父さんの車が玄関の前に外に見えた。玄関で俺の両親と愛美ちゃんの両親の話し声が聞こえた。
俺達は、子供部屋で息をひそめて、互いの両手をとってしっかり握り締めていた。そのうち、俺達を呼ぶ声が聞こえた。
俺達はお互いをぎゅうっと抱きしめた。俺達に覚悟はできていた。
愛美ちゃんはひと言「絶対泣かないよ」といった。
でも、「ニコニコ笑ってバイバイしようね」という彼女の顔は、今にも泣き出しそうだった。

皆で玄関の外にで、彼女のバッグを車に入れたら、愛美ちゃんは、もう向こう側の人だった。
両親にはさまれて愛美ちゃんは寂しそうに立っていた。
何もわからない愛美ちゃんの妹はお母さんの足にまとわりついて嬉しそうだ。
親達が大人同士の挨拶をしている間、彼女は今にも泣き出しそうな顔をして、俺の方を見ていた。
そして、いよいよ、挨拶が終わると、俺の父親は、よせばいいのに、わざわざ俺達に向かってこう言った。
「おまえたちも、お互いにいい友達にめぐり合えて本当によかったな」
そして、「本当に、楽しかったなあ」とまるで自分の事の様に付け加えた。
その言葉を聞いて、それまで必死にこらえていたのに、顔の筋肉が自分の意思に反して引きつっていった。
もう遅かった。目頭から熱いものがジワーと湧き出し目の前の情景が急に歪んだ。
俺の顔をじーっと見つめていた愛美ちゃんの顔も、急にくしゃくしゃに歪んだと思ったら、
俺達は、ほぼ同時にわぁっと大声を上げて泣き出した。いったんたが緩んでしまうと、止め処もなく後から後から涙が溢れ出した。
愛美ちゃんは思わず、俺の方に走りよって、俺に抱きついた。俺はしっかり彼女を抱きしめた。
「リョウ君、好きだよ、大好きだよ、わあああーん」といいながら愛美ちゃんは体をガタガタと小刻みに震わせて泣きじゃくった。
俺もなにかいいたかったけど、言葉にならならず、「うん、うん」と頷くのが精一杯だった。
母親たちもそれをみてもらい泣きをして目頭を交互にぬぐっていた。ひとしきり泣いて少し落ち着くと、
おれはまだ、ヒクヒクしている愛美ちゃんに、一言「絶対泣かないって言ったじゃん。笑ってバイバイなんだろ」といった。
彼女は、「だって、リョウ君が泣いたんだもん、つられちゃったじゃん、バカ」といって笑い泣きした。
彼女は家族と一緒に車に乗り込んだ。俺達はもう泣かなかった。俺は角まで車を追いかけていった。
そして、そのあと、ずっと向こうの角を曲がって見えなくなるまでそこに佇んでいた。
そうして、「ああ、行ってしまった」と思うと、どういうわけか少し、すがすがしい気分になった。

愛美ちゃんから最初の手紙が来たのはそれから数日後だった。
「好きだよ」「あいたいよ」「寂しいよ」という言葉の合間に、今度移り住んだ場所のことがちょこちょこと書いてあった。
その日の夜、俺は愛美ちゃんに電話を掛けた。
電話の向こうの彼女の声は、頼りなく、まるで宇宙の果てと交信しているようだった。
子供である自分達の間にどうもできない障壁として立ちはだかって2百キロという距離を実感させられた。
俺たちはたわいも無い会話を何時間も続けた。終いに俺達は喋ることがなくなっても、電話を切りたくなかった。
ただただ微かに伝わってくる相手の息遣いを受話器を握ったままずうっと聞いていたかった。
通話料も馬鹿にならかっただろうに、俺達の恵まれない小さな恋を哀れんでか、親たちは何も言わなかった。
愛美ちゃんの手紙は殆ど毎日のように来た。一度に2通来るときもあった。
俺も一生懸命返事を書いたがとても書ききれるものではなかった。その分電話で補った。
俺たちは夏休みが待ち遠しかった。5月の連休も終わった頃だろうか、彼女から来る手紙の中に悪天候の兆候が現れていた。
でもまだ子供の俺にはその重要性に気がつかなかった。
「和也君」という名前がポツリ、ポツリと顔を出すようになった。近所に住んでる子で、すごく親切な子だということだ。
でもその頃の俺は、あまり気にもとめていなかった。俺には、愛美ちゃんしか見えていなかった。
俺の回りは、愛美ちゃんがいなくなった事をのぞいては前と何の変わりも無かった。
俺も一生懸命、日記のようにして手紙を書いた。

待望の夏休みがやってきた。学校が終わって二日後、愛美ちゃんがやってきた。
その日、母親が働いていたのか、俺は、一人で電車を乗り継いで新幹線の駅まで行った。
愛美ちゃんはお母さんと来る事になってた。予定の時刻にプラットフォームで待っていたけど、
ぞろぞろと降りてくる人のなかに愛美ちゃんはいなかった。俺は半分泣きたい気持ちをおさえて、
フォームを行ったり来たりした。そのうち、人影もまばらになって、別の列車が入ってきた。
それにも愛美ちゃんたちは乗っていなかった。おれは、がっかりしながら、階段をとぼとぼ下りて、改札を抜けると、
「リョウくーん」という、あの可愛い愛美ちゃんの声が後ろから聞こえた。
俺が振りむくと、嬉しそうな顔をした愛美ちゃんが、俺の方に向かって走っていた。
俺はそのとたんに嬉しくて、涙が出てきた。愛美ちゃんはぎゅうっと俺に抱きついて「会いたかったよう」といって、泣いた。
愛美ちゃんのお母さんがすぐ追いついてきて、「まあまあ、二人ともこんなところで泣いてないで、
早くリョウ君のお家に行こう」といった。俺は、最高に幸せだった。そして、それから一ヶ月、
夢のような毎日を過ごした。お互いに内容は違うけど、一緒に宿題をやった。二人で、理科研究もやった。
ところで、その頃、11歳になった愛美ちゃんの体は明らかに変化し始めていた。

俺がそれに気がついたのは、来たその日に一緒にお風呂に入ったときだった。最初、以前から肉付きが良かった彼女の、
お尻のあたりが太ったように見えた。でもすぐ、それよりも、もっと顕著な変化に気がついた。
彼女の胸には、それまで無かった膨らみが二つできていた。それは紛れもなく膨らみ始めたおっぱいだった。
これには、6年生だった俺も興奮した。おれは、「ああ、おっぱい」と思わず言った。
二人で湯船に入ってるときに俺が気になってまじまじと見ていると、
彼女は、「触ってもいいよ」といった。それまで、愛美ちゃんの胸を触ったことは一度も無かった。
おれはそおっと腫れ物にでも触るように触ってみた。おもったよりも堅かった。愛美ちゃんは、「うーん」と気持ちよさそうな声を上げながら笑った。
「気持ちいいの?」というと、「うん」というので、もっと触ってあげた。彼女が、気持ちよさそうにうっとりした顔をすると、
俺はすごく興奮した。あと、彼女の股間のふくらみの周りにも、産毛よりも濃い毛が生えつつあった。
俺の方はというと、まだ以前と変わらぬ、つるつるだった。でもそんなことはぜんぜん気にしなかった。
俺たちは以前と同じようにオチンチンをオマンコにはめて遊んだ。
でも、その時から、はめながら、愛美ちゃんの胸を触ったりするようになった。

夏休みも終わる頃、今度は、俺と母親が、愛美ちゃんを東京の家まで送り届ける事になった。
俺たちは新幹線にのって東京にいった。新幹線の中を二人で探険した。乗車口のところで二人で外を見ながら、
軽くキスをしたりして、いつものようにいちゃついていたら、可愛いと思ったのだろうか、カメラマン風のおじさんが、
写真を取らせてくれと頼んできたりした。その頃、俺たちの親が、どこまで俺たちの関係を知っていたか定かじゃないが、
キスしたりしてるのは知っていたかも知れない。なにしろ、本当に、いつもベタベタ引っ付いていたのだから。
彼女の家は、自分が3年生まで住んでいた社宅だった。ただ家自体は、建て替えられていた。
でも自分に取っては、懐かしい故郷に戻ったような気持ちだった。
母親は、叔母の家に一泊、俺は、愛美ちゃんの家に一泊した。彼女が、同級生の写真などを見せてくれた。
俺の知っている子も沢山いた。今回は、どういう訳か、前回の別れの時ほど感傷的にならなかった。どういうのか、
また冬休みになれば会えるという確信があったからかもしれない。
俺たちは、次の日、俺たちは、近くの駅で「笑って」バイバイをした。
ホームの上で、冬休みに絶対あおうねといって指きりげんまんをした。その約束は結局、果たされることは無かったのだが。

俺たちはまた手紙と電話にたよる毎日が始まった。ところが、そのうち、彼女の手紙の回数が減ってきた。
手紙が3日4日来ないことがあった。そして、もう冬も近づいたある日、俺は一通の手紙を受け取った。
それは愛美ちゃんからじゃなかった。封筒の差出人の欄に「●●和也」と書いてあった。
何が書いてあったか詳しくは覚えていないが、とにかく、もう愛美ちゃんと付き合うなという内容だった。
「愛美をこれ以上きずつけるな」というようなことが書いてあった。
これもまた晴天の霹靂だった。俺が愛美ちゃんをいつ傷つけた?なんでそんな事を、
このわけのわからん赤の他人に言われなきゃいけないんだと思った。俺は、早速愛美ちゃんに電話をした。
彼女にその手紙の事を話した。そして、「ねえ、いったいこの和也って子は何?」と聞くと、
「お友達。私がさびしいからいろいろ私の話を聞いてくれる」といった。俺が、「ぼく、愛美ちゃんを傷つけたの?」ときくと、
「ううん、私はリョウ君好きだもん。」といった。
「じゃあなんで、その人はこんなこといってんの」ときくと、「知らない」というだけだった。
俺は、和也という人と付き合わないでくれという事を言ったけど、彼女は、
「なんで?和也君は、すごくいい友達だもん」というだけだった。そして、いろいろ問い詰めているうちに、彼女は黙ってしまった。
俺たちは、多分一時間以上も無言で電話口に立ったままだった。

次の日曜日に俺は愛美ちゃんに会いに行くことにした。
親に、愛美ちゃんとどうしても話したいことがあるからと頼み込んで許しをもらった。
俺はその頃よく一人で電車に乗っていたので問題なかった。俺は愛美ちゃんには何も連絡しなかった。
彼女の家に着くと、お母さんが玄関口にでて、おれを見てびっくりして「あらぁ、リョウ君どうしたの?」といった。
愛美ちゃんは遊びに行ってていなかった。
お母さんは「寒いし、上がってまったら」と言ったが俺は、玄関の外でまった。俺は何時間も待った。
愛美ちゃんのお母さんが途中で心配して何回か出てきて中に入るように奨めたが、俺は外で待ち続けた。
日も沈みかけて、薄暗くなり始めた頃、愛美ちゃんが戻ってきた。彼女は一人じゃなかった。
結構背の高い中学生らしき男の子の腕に自分の腕を絡めて嬉しそうになんか話しながら歩いてきた。
俺の姿を見るなり、彼女の顔色が変わるのがわかった。彼女はあわてて、彼から離れた。
彼女は「リョウ君、どうしたの」と一言いった。その中学生は俺を見て、「ああ、お前がリョウか」と吐き捨てるようにいった。
愛美ちゃんは、「和也君」と一言いった。
愛美ちゃんは、夏に会ったときよりも、一段と大きくなって、体もさらに丸みを帯びていた。俺は相変わらずチビだったから、
彼女の方が10センチくらい背が高かったかもしれない。その和也という男の子は、一見不良っぽいが、
なんとなく格好よかった。彼は愛美ちゃんよりも優に頭一つ以上背が高かった。俺は、その二人の前に立って、
自分がちっぽけで惨めな存在に思えた。そして、彼は、それに追い討ちをかけるように、
「お前、愛美をこれ以上傷つけるなっていっただろう」といった。上から降りてくる既に声変わりした低い声は威圧感があった。
愛美ちゃんに何か言いたかったが、何も言えずその場で立ちすくんでいた。愛美ちゃんが「リョウ君・・・」と何か言いかけたら、
そいつは、遮るように「お前は何も言わなくていい」といって、
それから、毎日悩んでる愛美ちゃんを自分がいかにして慰めているかという話をした。
俺は怒りと悔しさでカーッと頭に血が上るのがわかったが、あまりにも相手に圧倒されて、何も言うことができず、
ただ唇をかんでいた。最後にやっとのことで、震える唇から搾り出した言葉は「愛美ちゃんは僕が好きなんだ・・」だった。
彼は、「アホかお前は」といって一笑に付した。俺は悔しくて涙がボロボロこぼれてきた。とても自分にかなう相手ではなかった。
愛美ちゃんはそれを見てか「リョウ君」といって泣き出した。
彼は、「見ろ、お前のせいだ、もうこいつを苦しめるな」といって彼女の肩を抱き寄せた。
俺は心臓を引き裂かれるような気がした。俺はもうその場にいたたまれなくなって、そのまま彼らに背を向けると、
何も言わずに走りだした。その場から一刻も早く逃げたかった。

母親が新幹線の駅まで向かいに来てくれた。彼女は俺の様子がおかしいのに気がついたのか、
「愛美ちゃんとなんかあったの?」と聞いてきた。俺は、我慢してたものが一気に噴出した。
「お母さーん、僕さあ、僕さあ・・」といって母親の胸で泣き崩れた。彼女はそのまま何も言わずに俺を抱いて頭を撫でてくれた。
数日後に愛美ちゃんから手紙が来た。彼女の宛名書きを見ていると、
あの憎たらしい中学生と腕を組んでいる愛美ちゃんの姿が目に浮かんだ。俺は開封せずにゴミ箱に捨てた。
さらに数日後にまたもう一通来た。それも開けずに捨てた。冬休みになってもお互いに連絡を取らなかった。
実は、愛美ちゃんは一回電話もしてきたが、俺が出るのを拒否した。
俺は、あの中学生に対する嫉妬で気が狂いそうだった。毎日、胸が苦しくて、一日中ため息をついていた。

元旦に彼女から年賀状が届いた。ぱっと見たところ何の変哲も無い型どおりの年賀状だった。
ただ、最後にひとこと「リョウ君、ゴメンね」と書いてあった。俺は、あの中学生の顔がまた眼に浮かんだ。
「ごめんね」と言われても許せなかった。それが彼女から来た最後のメッセージだった。
俺は完全に打ちひしがれ、食べ物もしばらく喉を通らず、体重も減った。両親は心配していたはずだが、何も言わなかった。
それ以降、家では愛美ちゃんの話題はいっさい出なくなった。
後日母親に聞いた話だと、あのあと、母親が愛美ちゃんのお母さんと話をしたらしい。
向こうの親も何があったのかしらなかった。ただ愛美ちゃんもその後しばらくふさぎこんでいたらしい。
あと、俺が捨てた手紙は、母親が密かに取って隠してあった。大人になってからからそれを読むと、
当時の彼女の気持ちが手に取るように伝わってくる。結局、彼女は俺と離れ離れになった寂しさから、
たまたま近所に住んでいてしりあった、中学生の彼と良く話すようになった。
彼女は、彼がいろんな悩みを聞いてくれるから、お兄さんのような感じで付き合っていたのだが、彼は独占良くが強く、
愛美ちゃんに彼氏がいるのがいやでしょうがなく、とにかく俺たちの中を妨害するようになった。
あの日は彼女も彼に威圧されて、言いたいことがいえなかったというのだ。
その後の手紙にも、彼女の悲痛な心の叫びが聞こえてきそうな内容だった。
でも、そのときの俺は、もうあまりの嫉妬心から思考回路がオーバーロードを起こしてたから、
その手紙をその時点で読んだとしても、おそらく、頭の中に入ってこなかっただろう。

 

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