謎の発掘物がゼロインダストリィに持ち込まれて来てからおよそ半年
持ち込まれてきた発掘物のひとつ、人間に酷似している化石の調査をしている村上冴子は少々焦っていた
ある程度の解析は進んでいるものの、結果は常に同じだった
化石から伸びているコードの先にはコンピューターが備え付けられている
画面に映っているのは解析結果だ
いくつものメーターが上下し、グラフが伸びている
だがそれらは全てにして同じ結果を出していた

「…未知の物質…こっちは未知の物体、あっちは未知の細菌…
未知未知未知未知、何ひとつ解ったものじゃないわね」

冴子は持っていた書類を机の上に乱雑に置いた
そして給湯室に向かいコーヒーを淹れる
既に深夜の2時を回っている
故に今現在この研究室にいるのは冴子だけだ
いくら頑張っても残業手当がつくわけでもなく、何か新たな発見がされたとしてもそれは会社の功績となる
そんな事を思っていたのかいないのか、冴子以外の研究員達は定時きっかりに仕事を終え帰宅していた
だが冴子だけは何かに取り憑かれたように研究に没頭していた

「この細菌くらいは活動してくれれば良かったんだけどね…ま、何千年前のものじゃ無理、か…」

化石から採取した細菌を顕微鏡で見ながら呟く
青く色付けられた細菌に活動は見られなかった
既に活動を停止しているのか、それとも休止しているのか
これが一体どんな影響をもたらすのか
骨に付着していた事と何か関連があるのか
考えてみても何も解らなかった
どんな実験を試みても何も反応を示さないからだ

「何だまだ残っていたのか」

パソコンに向かいながら唸っていた冴子の後ろから声がした
冴子はキーボードを叩く手を止め、椅子に深く腰を掛けながら体ごとその人物に振り返る
そこには冴子と同じ白衣を着た男が立っていた
男は近くにあった椅子を引き寄せるとそこに座り、冴子の作成した書類を手に取り眺めた

「ふーん、お前はこの…何だ…ゼロバクテリア…か? これに熱心なようだけど…
バクテリアって何だ、もっといいネーミングは無かったものですかい? センス無いな」

「ほっといてよね、健二さん…
あなたの研究してる…えーっと…し、しち…」

「七星書か?」

「そう、それよりかは有益な研究だと思いますがね?」

そう言って冴子は飲みかけのコーヒーに口をつけた
健二と呼ばれた男は冴子の言葉に軽く口の端を綻ばせた

健二は冴子が研究している化石と一緒に発見された本――通称・七星書を研究している
だが七星書も冴子の化石と同様に、何ひとつ詳しい事は解っていない
その本は表紙に宝石が七個散りばめられていた事から七星書と呼ばれている
その宝石すら地球上のどの場所にも存在しない物であった
七星書に使われている素材自体もそうだ
『未知の物質』、『未だ』に『知られて』いない物質であった
『知られていない』よりも『存在しない』というのが当てはまるのかもしれない
しかし地球という星で発見された発掘品だ
過去に存在していたという事は明白であった
何千年も昔に宇宙から飛来したという事がなければだが…

「単純な探究心、それだけだよ
人の為に何かしようとか、何かに貢献しようとか思ってないさ
まぁ新たな物を発見した、解析した、歴史を知る上での重要な発見…
それらにくっ付いてくる報奨金くらいは欲しいかもな」

シベリアで発見された遺跡の中で眠っていた物だ
解析出来れば何かが解るはず
健二の目的はただひとつだけであった
彼の言ったように『単純な探究心』それだけだった
行き着いた先が『宇宙からの飛来説』だろうが『古代人の英知』だろうが彼は驚きもしないだろう
新しいものの発見、ただその欲求だけを満たせればそれだけで良かった
勿論貰えるものは貰うという性格ではあったが…

「結構な事で…
それで、何か解ったの?」

「俗っぽい俺には無理な事だよ、こんな研究」

そう言って健二はお手上げのポーズを取る
双方ともお互いの顔を見つめ溜息をついた

「天才科学者で考古学者
多分この日本にはあなた以上の研究者はいないじゃないの?
特に考古学に置いては」

「買い被り過ぎさ…
ただの知りたがりな男ってだけだ」

健二は書類を机に置くと立ち上がる
椅子を元の位置に戻し、白衣の裾を叩く

「ま、もうこんな時間だ、体にだけは気をつけて無茶はするなよ」

それだけを言い残し部屋を出て行った
冴子も去っていく健二に対して振り向かずに手を軽く振る
既に体はパソコンのモニターへと向かっていた

「さって、もう少しだけ頑張るかな」

〜to be next page〜

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