偶然出会った彼女の名前は梶原砂果
同じ境遇の人に会えたのは何とも心強い、だけど状況がよくなったわけじゃなかった
僕は梶原さん……じゃなくて、梶原と一緒に聞き込みを続けるだけだ
しかし何で呼び捨てにしないと怒るんだろう

「だってアタシもキミの事をマモルって呼ぶからさ」

それは良いとして、プロンテラで聞き込みをしてる時に面白い、興味深い話を聞いた
何でもモロクに現れた一人の男が神の力、奇跡にも似た事を起こしているとの事だった
モロクの枯渇したオアシスを復活させたり、蔓延っていた疫病を全て排除したらしい

「…うーん、ラグナロクにこんなイベントあったかなぁ…」

もしかしたら何かしらの情報や手掛かりが得られるかもしれない
そんな保証はないけど行ってみる価値はあると思う
目的地は…モロクだ


りあらぐ 第5話


「スラムと比べると全然違うもんだな」

俺達はさっき知り合った男――アディックに連れられてモロクの街を歩いていた
スラムとは比べ物にならないくらい良い環境だ
まぁそれは当たり前といえば当たり前なのだが、どうしてこうも格差が現れたのだろうか
砂漠に住む人々の生活を支える水も沢山流れている、食料も沢山あるし…
この世界の物価がどれ程のものかは解らないから何とも言えないけど

「スラムにいるのは犯罪者の方達ばかりですよ」

「犯罪者? 何をやったんだ?」

俺は聞き返してみたがアディックは答えようとしない
それどころか俺の頭の天辺から爪先までじっくりと眺めていた
俺にその気はないぞ

「あなたは…えーと…」

「備前だ、備前克哉」

「ビゼンさんはオーディンを信仰する聖職者でしょう?
これは何と言うか…宗教的な問題でして…」

ふむ、長谷崎も言ってたプリーストという職業について少しは解ってきたぞ
どうやらオーディンを信仰する教会とか宗教団体がこの世界では一番の力を持っているらしいな
そしてこのモロクという街はオーディン以外の神を信仰している、というところか

「ってーと、スラムにいるのはお前達が信仰している神とは違う神を崇めている、と」

アディックは俺の顔を見てゆっくりと頷いた
どこか罰の悪そうな感じの表情だ、この世界の事を何も知らない俺に対してってのが何て言うか切ないな

「あんまり気にする事無いだろ、こいつは無信仰だしよ」

「余計な事は言うな」

一応俺は牧師の免許を持っているが、何と言うか神っていうのを信じている訳ではない
別に神を信じてる奴等をどうこう言うつもりは無いが

「面白い人ですね」

「まぁこいつの言った事は間違ってないんだけどな
しかしまぁ、犯罪者ね…どうりでいきなり襲って来るわけだ」

「どうにかしたいと思ってはいますが…何とも」




街を出て数時間、街を出る前に地図とコンパスを買っておいて本当に良かったと思っている
この広大な砂漠では北も南も西も東も解らないからだ
太陽の位置で少しは解るけどずっと同じ景色が続いていて途中で方向感覚が狂う
ただただ歩き続けているだけ、これだけなのに苦痛だった
いや、これだけだから苦痛に感じたのかもしれない

「ねぇマモル…暑い」

「僕も暑いよ…」

「水頂戴」

「もうない…」

そんな会話がずっと続いていた
正直体力的に限界だ。むしろここまで体力が保ったというのが凄い事だけど
モロクまでは後どれくらいなんだろう
ゲームのキャラクターなら息も切らさずにモロクまで歩いていけるのに…
カプラさんのワープを使って一気にモロクまで飛べるのに…

「…も、もう…駄目…僕…もう…歩けない…」

このまま倒れてペコペコの餌になっちゃうんだろうか
それともアンドレの餌に…
どうしても砂漠に生息するモンスターの餌になるという発想しか出てこない
人は死に直面すると冷静になれるっていうけど、本当の事なんだなぁ
何かを考えるのがさっきまでは面倒だったのに、今じゃ色々と死んだ後の事を考えていた
死んだ後の事を考えるなんてのも変な話かな
あぁ、もぅ何を考えてるのか解らなくなって…

「…――っ! っっ!!」

梶原が何か言ってるけど全然聞こえないや
目の前が真っ白だし、吐き気もする、いよいよ最期の時なのかな
真っ白だった視界が一気に真っ黒になる




「どうなってんだよ! おい守! 起きろ! 守!」

守の肩を掴んで勢いよく前後に揺らす
ディスプレイが光り出し、その直後から守は気を失っていた
さっきまでは呼吸をしていたのだが、今は呼吸をしていない
それどころか心臓の鼓動さえ弱まっていた

「守! 何があったんだ! 起きろ! 答えてくれ!」

答えが返ってこない事くらい解っていた
どうすればいい…
さっきの光と…今画面に映し出されてる守のキャラと何か関係があるのか
考えろ、ありえない事も考えろ、絶対にこんなの起こり得ない事も考えろ
俺は直感的にパソコンの画面を見た
画面にはなぜか守の…ラグナロクでの守のキャラが映っていた
それと見知らぬアーチャーが一人、倒れている剣士――マモルのすぐ側に立っていた
さっきの美香の時もそうだったが、一体誰が動かしているんだ…
動かしている…? もしかして動かしてはいないんじゃないか…?
動いているのじゃないのか?

「どうやってだよ…そんなのありえねぇ…」

だがそれ以外の考えが浮かんでも、どうにもしっくりこなかった
魂とか意識だけがラグナロクの中に入ってしまったとしたら?
だがそれを調べようにもアテなんてものはなかった
…いやあった
『選ばれし者の楽園』
もしかしたら関係ない事かもしれないが調べるだけなら…
だがここにあるパソコンは使えない
使おうとしてもマウスが反応しないから駄目だ

「…っ! 待ってろ! ちょっと待ってろ!」


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