| 「ここが……首都プロンテラ…」 北も南も解らなかった僕だが、道行く人に街の場所を尋ねたら案外近くに街はあった しかもラグナロク内で一番大きな街であり都市であり首都であるプロンテラだった いつも物を売り買いしてる馴染み深い街に自分の足で踏み込むのは何だか妙な気分だった 巨大な城門を抜けプロンテラの街へいざ… 「う……わ…ぁ〜」 城門の大きさにも驚いたが、プロンテラの街並みの活気にも驚かされた 所狭しと開かれた露店に驚き、街の通りを歩いている人の量に驚いた ゲームの時とは違いプロンテラの街の広さは相当なものだった ゲームの世界と現実に訪れたこの世界とのギャップは凄いものがある 「でも何処に行ったらいいんだろう」 広過ぎるあまりに目的の場所が見つからない 情報収集が出来そうな場所といえば宿屋か酒場と相場は決まっているんだけど… どこか僕のプレイしていたラグナロクとは勝手が違うようだ だけどラグナロクの世界はラグナロクの世界 あの鷹の紋章が描かれた国旗も見た事がある、そこに立っているカプラさんも見た事がある 「…本当に……ラグナロクの世界なんだよね…」 りあらぐ 第4話 プロンテラの街の広大さに戸惑いながらも街を散策する 今、ここにいる状況が真実とするならば、元の世界に戻る方法を探さねば だけど何処に行ったらいいのか… 途中途中で『日本に行くにはどうしたらいいか』と聞いても、解らないという答えばかりだった 帰る手立てはあるんだろうか… そんな事を延々と考え続けながら南十字路を抜け、プロンテラで一番活気のある噴水広場へと辿り着いた そこで何やら人だかりが出来ていた 「おい嬢ちゃん、この滅茶苦茶になった商品をどうしてくれるんだよ」 その人だかりの中心では、二人の人物が何やら揉め事を起こしていた 一人は散らばった商品と滅茶苦茶になったカートを指差しながら怒鳴っている商人だ 「えー? これアタシがやったのぅ〜?」 そして怒鳴られている少女が一人 腰に掛けてある弓と青色の服からアーチャーだと解る その少女の頭の上には終始『?』マークが浮かんでいるような表情だった 自分の何処が悪いんだろう、そんな表情だ 「テメェ…俺がどんな人間か知らないようだな」 男が指を鳴らすと数人の男達がぞろぞろと少女を取り囲んだ シーフや商人、剣士など色々な職業だ、少女を取り囲む誰もが手に武器を持っていた まさかこんな街の真ん中で始めようっていうんじゃ… 「だ、誰も助けないんですか!?」 僕は回りにいた人に少女を助けるように言ってみた しかし誰も僕の言葉には耳を貸さない、それどころか目のあった数人の人達は目を逸らしてしまうほどだ 「あいつら…ドゥエガー一家に逆らうなんて自殺行為だぞ」 誰かが言った よく解らないが、日本で言う所のヤクザとか極道の世界の人間なのか どこの世界にもそういう人はいるんだ 「少し痛い目を見なけりゃ解らないらしいな…やっちまいな」 数人の男達が各々の武器を構え、少女に飛び掛っていく それと僕が動き出したのは同時だった 自分でも何でこんな事が出来たのか解らない、けど飛び出したのは事実だ そのままの勢いに任せて走った そしてごく自然な動きで腰の鞘に収められていた剣を抜き放つ まるで毎日を共にしてきたかのように、剣は僕の手に馴染んでいた 少女に迫る剣と少女の間に割って入る ギィンという金属音を響かせ、振り下ろされた一本の剣を弾く 「あいつ…命知らずな」 「殺されちゃうよ…」 「あーあ…」 そんな声が辺り一面から聞こえてきた だけどもう引っ込みがつかない状況だ、どうしたらいいんだろう はっきり言って怖い、何でこんな事になったんだろう 何で飛び出していったんだろう だけど相手はこっちの考えてる事なんてお構いなしに襲ってくる 「うわぁ!」 横からの一閃 僕は地面に伏せるようにしてそれを避ける そこに追い討ちをかける様にして振り下ろされる剣と斧 僕はそれを横に転がって避けた そして噴水の石垣を背にして立ち上がる 「ま、待ってください、話せばわか…わぁ!」 剣士の男の攻撃を持っていた剣で防ぐ …話しても解ってくれないかもしれない しかも多勢に無勢、僕はいきなりここで殺されちゃうんだろうか… 「あぁー! アレはぁ!」 急に少女が叫び空を指差した この騒動を見ていた人達と、少女を取り囲んでいた全員が一斉に空を見上げる 勿論僕も だけど何も無かった、あるといえば青空に浮かぶ白い雲が流れているくらいだった 「キミ、逃げよう」 少女が僕の腕を掴んで走り出す 「えっ、ちょっと、え?」 何て古典的な方法なんだ… 何も無い所を指差して、注意がそっちに行ってる隙に逃げ出す 古典的が…昔っからよく使われている手だ でも何故か上手く通用してしまうから不思議だ 「あ、お前らっ!!」 僕と少女は人ごみに飛び込み、人という人を掻き分けて逃げた 時には裏路地を通り、時には大通りを走りぬけ どれくらい走ったんだろうか 路地裏から顔を出し辺りを見回した 誰も追ってきてないようだ、無事に逃げ切れたみたいだ 「はぁ〜…疲れたし、怖かった…」 もう大丈夫だと思った瞬間、僕の体からは一気に力が抜けていった 地面に座り込み、呼吸を整える こんなに走ったのなんてマラソン大会以来だよ 本当に疲れた 「あのぅ〜」 「え…?」 「助けて貰っちゃったみたいだね、ありがとう」 助けた? 途中からは僕が助けられてたような気がしたけど 少女はお礼の言葉と共に深々と頭を下げた ふわっと髪が揺れる度にいい匂いがしてきた セミロングの赤い髪と、それに相反するような青いアーチャーの服… そして少々間延びした言葉遣いが印象的だった 「いや…あの…僕も何であぁなったのか…解らなくて」 「そうなんですかぁ? でも助かりましたぁ」 「お礼はいいよ、でも…あの人達は何だったの?」 少女はしばらく考え込んでいた 腕を組んで、首を傾げていた 長い長い沈黙が流れる そして彼女の口からは僕の予想していなかった言葉が発せられた 「うーんとね、パソコンの画面が光ったと思ったら…こんな場所に来てたの」 「…っ! それって!」 〜次のページへ〜 |