| 『お疲れ様ー』 『おつかれ^^』 『おつ〜』 僕が向かうパソコンの画面の中にいるキャラクター達が喋る 正確にはキャラクターの頭上に表示される文字だ 僕は今、ラグナロクオンラインというネットゲームに夢中になっている 丁度今は、臨公と呼ばれる狩りが終了し、僕はログアウトすることろだった 「また一緒に、どこか行きましょう…っと」 僕はパソコンのキーボードを叩き、Enterキーを押す すると僕の操っているキャラクターの剣士・マモルの上に発言が表示される そして僕は手の平を広げるエモーションを出し、ログアウトした りあらぐ 第1話 「って、もうこんな時間か…そろそろ寝ないと…」 時計を見ると針は既に深夜2時を回っていた 『もうこんな時間』とか言っているけど、こんなのは毎日の事だ 学校が夕方の4時に終わり友人とラグナロクの事について話しながら帰宅する 大体5時頃に家につき、すぐさまログイン 夕食と風呂の時間以外はほとんどパソコンの前に座る その後、雑談するなりギルドのメンバーと一緒に狩りをする等してログアウトする それで大体この時間、寝るのはいつも2時過ぎだ 学校が朝8時から始まるので7時までには起きなければならない 毎日こんな事の繰り返しなので寝不足になるのも当たり前だろう 「今日はジョブレベルが上がったし…そろそろ転職出来るかな」 僕は電気を消し布団に入る 睡魔はすぐに襲ってきた 僕は、今日ラグナロク内で起きた事を思い出しながら眠りについた ―――ピピピピッ♪ ピピピピッ♪ 「うーん……」 僕の枕元でけたたましく電子音が鳴り響く 僕は枕を目覚まし時計に被せ、頭まで布団を被った ―――ピピピピッ♪ ピピ……ジリリリリリリ♪ 今度は頭の上の方から喧しい音が響く 寝起きの悪い自分が用意したもうひとつの目覚まし時計だ 僕は布団の中から這い出ると、ベルの音が響く目覚まし時計をオフにする そして枕を少しずらし、その下にある時計の目覚まし機能もオフにした 「……眠い…」 これが僕の毎朝の状態だ 僕はベッドから落ちるようにして降りる そして階段を降り、寝惚けた頭を覚醒させる為に冷水で顔を洗った 冷たく冷えた水がボーっとしていた頭を徐々に起こしていく 「っあー…」 顔を洗い、顔についた水を横にかけてあるタオルで拭う その頃には完全に目が覚め、体の動きも寝起きの時よりも機敏になっていく 僕はタオルを洗濯カゴに放り込むとリビングに向かった 「なぁに、またギリギリまで寝てたの? ほら、遅刻する前に早くご飯食べちゃいなさい」 リビングに着いてすぐ聞こえてきたのは母親の声だ 僕の家は夫婦共働きのせいか、朝はとても慌しい 兄貴は部活の朝練があるからすでに家にはいなかった 父親もすでに出勤していた 母親がバタバタと出勤の準備をする中、僕は食卓にあるトーストに齧りついた 「今日は母さん帰るのが遅くなるからね これで夕飯を食べて頂戴」 そう言って母親は食卓のテーブルの上に5000円を置く 僕一人の夕食代にしては多いと思った 「あ、剛と一緒にだからね それで二人分だから、解ったわね? 守」 納得 でも僕と兄貴で5000円としても結構多い金額だと思った 少しは贅沢出来るかな 多分ファミレスとかぐらいにしか行かないと思うけど 「じゃあ行ってくるね」 「行ってらっしゃい」 こうして家には僕一人だけとなった 何も音がない、声がしないというのは何か寂しいものだ そう思い、僕はテレビの電源を入れる この時間と言えばニュースしかやっていない 僕はニュースの最後にやる占いを見る以外、朝からテレビを見るなんてあまり無かった 『本日までで合わせて―――』 BGM代わりにニュースを流しているだけだったが、とあるニュースだけは気になってしまった そのニュースの内容というのも、僕が住んでいる市内で多発している謎の病気についてだった ここ1ヶ月で何十人もの人が意識不明の重体になっているとの事だ 「これってすぐ近くじゃ…」 テレビに映し出された病院の外観には見覚えがあった 僕の通っている学校のすぐ近くにある病院だ いつも前を通っているから見間違うはずがない 自分のすぐ身近で大変な事が起こってると知り、僕は少なからず驚いた 〜次のページへ〜 |