軽く寝ぼけていたソラも、ミコトの顔を見てすぐに目が覚めた。 子供たちを心配させないようにウエナが興味を引きつけているうちに、二人はそっと作業場を後にする。 人気の無いところへ移動し、ソラが姿を緑に変えるとすぐに異変に気づく。 「誰か遊ばれてる」 姿を元に戻してソラはミコトに伝える。 「まだ、生きてる。間に合うかもしれない」 「…頼む、ソラ!」 「ああ…ミコトは後から来てくれ」 水たまりがところどころに出来ている道をソラは駆けだす。 向かった先は森へと続く道で、それはトウヤが指し示した方向と一緒だった。 雨の中瞬く間に遠ざかる背中を追いかけながら、ミコトは奥歯を噛みしめた。 「……」 息も切らさずに森の入り口まで来たソラは、木陰で姿を青に変えた。 木の上へと跳躍し、雨に濡れた枝葉の間を飛ぶように急ぐ。 かぎ慣れた血のにおいと人のうめく声ですぐに場所は知れた。 がさがさと揺れる葉の陰で輪人の腕がぐったりと垂れているのが見える。 そして自分を見て驚く同族も。 「なんだ、何をしにきた!」 「まだ生きているな?」 ソラが声をかけると相手は不思議そうに頷く。 「…ああ、これか?そうだがこれは俺が遊んでいたんだ。横取りとはらしくないな」 幹にもたれている輪人の腕はおかしな方向に曲がっていた。 「……悪いが、遊びは終わってもらう」 「…何を言っている?」 「その輪人を殺すのをやめろと言ったんだ」 「それでお前に渡せというのか?…お前が自分で輪人を捕まえた方が早いだろうに」 同族の言うことはもっともだった。遊びたいなら自分で追いかけ捕まえた方が楽しいことも知っている。 それでもソラは首を横に振った。 「俺はもう輪人を殺さないよ。約束したんだ」 「…ますます訳が分からないな。とりあえずお前と戦えるのは嬉しいが」 「戦うか、やはり」 「当然だろう?お前の言っていることは分からないが、言うことを聞かせたいなら戦ってもらおう…まさかお前と戦えるとは思ってもいなかった」 掴んでいた輪人の腕を放し、同族は嬉しそうに戦いの構えをとる。 「…分かった」 ソラは近くの枝を手折り、鈍く輝く杖へと変えた。 雨雲と木々の枝に覆われた暗い森の奥からまばゆい光が刺してくる。 一瞬のことだったが、それを見てミコトは足を止め天を仰いだ。 next→ novels top |