強くなった雨音に目が覚める。 ミコトが静かに目を開けて横を見ると、腕にしがみつくようにして眠っているソラが見えた。 本当にずっと傍にいてくれたのか…とミコトは思う。 ぼんやりとした状態で言ったとはいえ何だか気恥ずかしかったが、それでも傍に居てくれたことは確かに嬉しかった。 視界が、白に染まる。 びく、と身体を波打たせて外を見ると、一瞬後に空気を引き裂く音が聞こえてきた。 「………空鳴り、か………」 ぽつりと呟いた自分の声が意外と擦れていることに少し驚く。 こんな風に熱が出るのは、本当に久しぶりだとミコトは思う。 考えてみると原因はたくさんあって…どれが直接の原因なのか分からないほどだった。 食事をする気も起きず、昨夜もほとんど眠れず……ずっと、考えていた。 どれだけ考えても導きだされる答えなど、一つしか無かったが。 そしてその答えを認めることが出来ずに、ずっと悩んでいる。 「………ソラ」 彼の寝顔を横目で見る。 ミコトの腕を枕にし、気持ち良さげに寝息を立てていた。 起こさないように静かに身を起こし、もう片方の手で彼の額にかかる髪を梳き上げる。 そうして彼の額を見た。 「……白い……な…」 薄暗い洞穴の中だったが、その色を見間違えることは出来そうになかった。 雨は弱まることなく、地を打ち付けて降り注いでいた。 ぽたり、と頬に何かが触れる感覚でソラは目が覚めた。 「……?」 不思議に思いながら目を開けてミコトを見る。 何時の間にか起きていたミコトが、ソラを黙って見下ろしていた。 「……ミコト……?」 「あ……すまない」 起こしてしまった、と呟くミコトの頬に、ソラは身を起こして手を滑らす。 「どうした?」 「……水」 水、流れてる。 そう言ってソラはミコトの眦を手で拭った。 「……え」 「雨が漏れてきたのか…?」 おかしいな、と首を傾げつつソラは天井を見上げるが、水が漏れている様子は無い。 釣られてミコトが上を見上げると、視界が滲んだ。 「あ……」 「ミコト?」 また流れてきてる。 不思議そうにまた手を延ばして頬を拭うソラ。 ぺろ、とその手についた水滴を舐めると彼は顔をしかめた。 「…水じゃない」 何だ?と首を傾げるソラを見ながら、ミコトは腕を持ち上げて眼を拭う。 止まらぬ涙に、手が濡れた。 「は……」 「ミコト……?」 「……ソラ……」 ごめん、と囁くように言い、ミコトは俯き肩を震わせる。 はたはたと雫が握り締められた手のひらに落ちるのを、ソラは呆然と見つめた。 next→ novels top |