さわさわと、木の葉が揺れる音。

さらさらと、水が流れる音。

そんな音を聞きながら、ミコトは広場でぼんやりとしていた。

森に囲まれた彼らの住むこの土地の近くには、静かで小さな小川がある。

その流れは絶え間なく、清き恵みを人々にもたらしていた。

その小川の流れを引いて作られた清き泉が、集落の中心にある。

その回りが広場で、祭祀などの多くはそこで執り行われるが……普段は集落の人々の良き憩いの場の一つであった。

……だが、そこにも今は人影は少ない。

「…少ない」

「そうだな……」

ぴと、とミコトにくっついて離れないまま、ウエナが呟いた。

幼い割に機知に長けているこの少女は、何故人々が少ないのかを知っている。

だが彼女はそれでも不満げに眉を寄せた。

「これでは、ミコトに遊んでもらうしかないな」

「………」

……機知に長けている割にはきちんと幼いところも残っているウエナは、この状況にも関わらず遊び相手を求めにこの広場へとやってきていたのだった。

それを見とがめたミコトも自然と付き添いでやってきたのだが……彼女の遊び相手となるようなちょうど良い子どもは、さすがにいなかった。

「……何をして遊ぼうか?」

「もう少し待ってみる。ミコトと遊ぶのは最後の手段だ」

「……そうか」

軽く妹にあしらわれ、ミコトは苦笑した。



暖かな日差しが身体に心地よい。

広場に設けられた腰掛けに身体を預け、二人はその日差しに身を浸した。

見ると回りの人々も、同じようにのんびりと、穏やかに過ごしているらしい。

……例え恐怖が身近にあろうとも、輪の人は変わらずに日々を暮らそうと努力していた。

食料を求め、人との関わりをつなぎ、常と同じような暮らしを。

……しかし、その暮らしも恐怖が続くにつれ変化せざるを得なくなっていたが。

それでも懸命に生きようとする人々に、ミコトは深い想いを抱かざるを得ない。

何よりもこの人々がこのままであり続けること…それこそミコトにとっての誇りでありしあわせであった。

ぼんやりと想いを馳せながらも、うつらうつらし始めたウエナを支えてやる。

すると、集落の中から小さな童たちが駆けてきた。

「……ウエナ」

軽く妹の肩を揺さぶると、ウエナはぱちりと目を開く。

駆け寄ってくるそれらの子どもたちの姿を認めると、彼女は顔を輝かせた。

「……では、行って来るぞミコト」

「ああ、気をつけて」

ぱたぱたと焦りながら彼らに駆け寄り迎え入れられる姿を眺めて、ミコトは微笑んだ。





そうしてしばらく彼女らが戯れる様子を眺めていたミコトだったが、目の端に止まった光に引かれ、ふと泉へと足を向けた。

常に清き流れを育むその泉は、誰が作ったのか分からないほど昔からこの地にあるもので、輪人にとっては欠くことの出来ないものであった。

暖かな日の光を反射して輝くその水面をミコトは眩しげにのぞき込む。

そして、流れてきた一筋の赤い流れを目にした。











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