今日はミコトが来ない日。 ソラは四肢を伸ばして草地に寝転がり、上空を見上げていた。 彼ら二人が会うようになってしばらくが経つが、ミコトは来ない日を前以て教えてくれていた。 そうしないとソラが不安になるのをミコトは知っていたからだ。 今日はマナイという人に会いにいくと、ミコトが言っていたことをソラは思い出す。 もちろんマナイには会ったこともないソラだが、ミコトの話を聞いているうちに彼についていくらかは知っていた。 輪人についての話をミコトから聞くのは、ソラにとって楽しいことだった。 今まで知らなかったことを知ることができるのはもちろんだけれど。 ソラは、その話をしているときのミコトの表情が好きだった。 特にマナイと、彼の妹だというウエナの話をしているときの表情が好きだった。 さわさわといい風が彼のやわらかな黒髪を撫でていく。 大きく一つあくびをして、彼は目を擦りながら空を見上げた。 鮮やかな緑の隙間から、眩しい青が見えた。 暖かな微睡みから、彼は目が覚めた。 不機嫌そうに眉を寄せる。 「あ、起きた」 すぐ隣から嬉しそうな声が聞こえてきて、ソラは眉を寄せたまま顔を横に向けた。 白い服が見え……視線を上げると、そこには久しぶりに会う彼の弟がいた。 「ねー、遊ぼう?」 「……眠い」 本当のことを言って黙って反対方向に寝返りをうつと、彼はひょこ、とその方向に移動した。 「ねえ、遊ぼうよ」 「……」 このまま黙っていても去りそうにない気配を感じて、ソラはしぶしぶ身を起こした。 「……何をして遊ぶんだ」 「んーとね、いつもの」 そう言って無邪気に笑う弟を見ながら、ソラはため息をついた。 しばらくいつものように弟と拳を交える。 自分とよく似た無表情の姿…輪人が異形と呼ぶ…を見ながら、ソラは常とは違う感覚を感じていた。 弟との遊びは嫌いではない。 ただ、やはり空を見ている方が好きだと…ソラは思った。 数回地面に叩き伏せると、弟は姿を少年のそれに戻した。 白い装束が土に汚れるのにも構わずに、彼はそのままソラを見上げて微笑む。 「……楽しかったか?」 姿を戻してソラが問うと、彼は嬉しそうに笑みを深くした。 「うん、楽しかった……」 あは、と無邪気に笑って彼は言う。 「やっぱり、輪人と遊ぶのよりも面白いよ」 「……そうか」 ソラは黙って彼を見下ろしていた。 何故だか、ミコトの顔を早く見たいと思いながら。 next→ novels top |