お仕置き
酒 | ゚Д゚)ノ 氏

ふと目が覚めて、今まで自分が眠っていたことに気付く。
ここのところ寝不足が続いていたから、そのせいだ。目を擦ろうとするが、手が動かない。
どうしたことかと見れば、腕を枕に眠っている人物がいる。おかげですっかり感覚がない。
押し退けようとすれば、痺れた腕を下手に刺激して、地獄の苦しみを味わうことになるだろう。
被害を最小限に食い止めるには、向こうから離れるように仕向ければいい。

とはいうものの、どうすれば離れてくれるのか。くすぐるか?
いや、下手に抵抗されたら逆効果だ。おとなしくあっちへ転がってもらう方法はないか。
考えている間も、腕は感覚がないを通り越して、はっきりと痛み始める。
もういい、くすぐる。

さて、どこをくすぐったものか。一撃で確実に嫌がらせるには。
脇腹、胸、背中……いや、やっぱりここだろう。
彼女の髪の毛をひと束摘んで、あっち側の耳の穴に入れて動かすと、唸って手で払い除けられた。
それだけでも腕はじんじんと痛み、全身から嫌な汗が湧いてくる。
もういい、どうせ痛いなら一度で終わらせてやる。
ぐっと彼女の体を押し退けて、あっちへ転がした。最初からこうすれば良かった。

当然、彼女は目を覚ましたようで、驚いたように目をぱちぱちさせている。
体を起こして、不思議そうにこっちを覗き込んでくるが、それどころじゃない。
腕からは、痛いのか熱いのか冷たいのか、よくわからない苦痛が伝わってくる。
どうしてくれよう。なにか仕返しをしてやる。
ふと、彼女の首から胸元にかけてが数カ所、赤くなっているのに気が付く。
虫刺されかと思ったが、よくよく見れば、以前に見たことがある跡だった。
見たというか、付けたというか。最近はご無沙汰しているが。
さっきまでは確かになく、誰に付けられたか、考えるまでもない。
この家には今、3人しかいない。やれやれ、あの子も困ったものだ。
姉への思慕と、単純な性的欲求が混ざってしまっただけで、一時的なものとは思うが。
これからずっとあの調子では、こちらも対応に悩む。まあ、男ができれば変わるだろう。
もっとも、あの顔あの声あの体ならば、男が放っておくはずがない。
姉とは違って、男の方から寄ってくるようになる。そうなれば変わってくるはずだ。
…………たぶん。

しかし、妹には許して、彼氏たる本来なら堂々吸い付いていいはずの自分は不可とは。
いや、彼女が妹に異常なほど甘いのは、よく知っている。
妹が付けたいと言えば嫌とは言うまい。それはよくわかっている。
彼女が嫌がるのは、付ける時に痛いからということもわかっている。
拒まれる理由は納得がいくし、彼女が許したのは相手が妹だからだというのも納得だ。
だが面白くないものは面白くない。妹にさせたのなら、自分にもさせてくれ。
むしろ自分の正当な権利として主張したい。解禁とはいわない、今日だけでいい。

だが吸わせてくれと頼むと、おそらく拒否される。
だから頼まない、無理やりする。無理に、というのはあまり趣味ではない。
嫌がる女を口八丁手八丁でその気にさせ、女自らに脚を開かせるのが好きだ。
それに彼女は、例えそこに愛があっても、黙って男の無理やりを許すような女ではない。
しかし今日はこれまで、いろいろ辛抱して望まれる通りに相手をしてきた。
ちゃんとした動機と理由を最初に突き付ければ、聡い彼女のこと、抵抗はすまい。
腕を痺れさせてくれた仕返しと、自分以外の者に跡を付けさせたお仕置きを兼ねて。
今日の残りの時間、主導権は私が握ろう。
「大丈夫? ごめん、腕、痺れた?」
「痺れたも何も、動かないよ」
「つい気持ち良くって、枕にして寝ちゃった」
「それについては怒ってないから、おいで」

怒ってないという言葉に安心したのか、また寄り添うように横に転がる。
それについては、という部分には珍しく反応しない。
いつもなら、むしろそっちに過敏に反応するのに。甘い。
油断大敵。今一度、この言葉を胸に刻んでもらいたい。
胸の赤い跡を指で擦ってやると、やっとギクリと表情を変える。

「や、これは別に、何でもないんだ」
「何でもないことはないだろう、こんなに跡になっているのに」
「なんか、あれで、湿疹、湿疹がでて」
「湿疹なら痒いだろう? 見せてごらん」

彼女の腕を捕らえて、ゆっくりと追い被さるように押さえ込む。
戸惑っているのか抵抗がない隙に、跡に口付けて、更に吸い上げる。
歯を立てては吸って、少し腫れたようになる頃には舐めてなだめる。
すでに付いていた跡は5つ、それ全部に上書きしてやった。

「いたっ 痛い! 痛いって、やだっ!」
「どうして? 湿疹なんだろう? ちょうどいいじゃないか」
「良くない! 痛い! やめろよ!」
「まだ痒いかい?」
「……湿疹じゃないことくらい、見りゃわかるだろ」
「おや、じゃあ、これは何だ?」
「意地の悪い……アルが、付けていいかって」
「それで? 許したのか」
「だって別に、アルだから、何でもないだろ?」
「妹は良くて、なぜ私がだめなんだ?」
「あんたとアルは違う! だからだ」

所詮他人の自分と唯一の肉親である妹との、越えられない差のことを言っているのか。
若い頃なら差を埋めにかかったかもしれないが、齢30を過ぎるとさすがにそれはない。
間違いなく差はあるだろうが、それはどっちが勝るとか劣るとかいうことではないからだ。
だが、こうもあからさまに妹を特別視されると、大人気なく拗ねてみたい気はする。

「そうか、君はやはり私より妹が大切なんだな?」
「……そんなことは言ってないだろ?! なんでそうなるんだよ!」
「いいさ、構いはしないよ」
「だから、そんなこと言ってないんだって」
「君が誰を想おうと、君は誰のものなのか、改めて思い知ってもらえばいい」
「俺は物じゃない! そんな言い方すんな!」
「わかってないな、これは所有印だよ、妹だってそのつもりで付けたんだろうに」
「……え?」

まずは額に軽く口付ける。眉間が弱いと知っているから、時間をかけてたっぷり舐めた。
力が抜けた体を難なく舐めては吸っていく。抵抗がないのは、快感のせいだけではないだろう。
その証拠に、くったりとした体とは反対に、目はらんらんとこちらを凝視している。
睨まれている感じはしない、これはむしろ、なにかを期待している目だ。
のってやるのも悪くない。
「君は私のものなのに、他の人間に所有印を付けさせるなど言語道断だ」
「そんなこと誰が決めたんだよ、俺は物じゃねえって、さっきから言ってるだろ」
「誰が決めた? わからないのかね」
「あんたが勝手に決めたんだろ」
「いいや、決めたのは君だよ、君が望んだんだ」
「違う、俺はそんなこと望んでない、俺は誰のものでもない」
「心はそうかもしれないな、ならば体だけでいい、君の体は私のものだ」

歯が浮きそうだ。できれば今すぐ、笑いながらのたうちまわりたい。
確かに若い頃は、こんな台詞を好んで吐いたが、あれは若さあっての物種だ。
若い彼女は、ちょうどこんな言葉を欲する時期か。だが、彼女の肩も少し震えている。
笑いを堪えているところをみると、まだこの芝居を続けたいようだ。
この際、持てるすべての形容詞を総動員して、くさい台詞を吐いてみるか。
お互い錬金術師、つまり理系で詩人とは対極にある。これはある意味、羞恥プレイだ。
目新しい。どちらかが吹き出すまで、あるいは性欲に呑まれるまで、続けてみよう。
「今日の服は可愛かった、よく似合っている、髪を解けばもっと似合うのに」
「解くと鬱陶しいからさ、季節もちょうどいいし、いっそ切ろうかと」
「何を言うんだ、こんなにきれいな髪を」
「そんな大層なもんかよ、放っときゃいつの間にか伸びるんだから」
「いや、この白い肌と相まって揺れる金の髪、男はそれだけで誘われるよ」
「だったら尚のこと切った方がいいな」

そうだった、彼女は容姿を誉められるのが好きでない。
曰く、容姿は、自分が起こした行動の結果で得られたものではないから、らしい。
街の看板を彩る女優達は、生まれながらに美女だったわけではない、と諭すが聞かない。
服を着こなすのも才能の内だと言ってはみるが、耳を貸さない。
錬金術などの知識について誉めると、殊更嬉しそうに、ない胸を張るのに。
普段はそれでも構わないが、ベッドの中のこの雰囲気で、容姿以外の何を誉めろと。
……ああ、そういえばあるな、誉めどころが。

「いつも感じやすくはあるが、今日はそれ以上に感度がいいね」
「そっ そんなことないだろ」
「久しぶりだからかい? 嬉しいよ」
「ないって、そんなことないんだって」
「そうか? ここはこんなになっているのに」
「あっ! やめ、やめろよ……あん!」

彼女の脚の間に手を差し入れる。良かった、濡れていた。
彼女の表情や仕種から、濡れているだろうと思いつつ、実ははったりをかけてみた。
濡れるどころか、まだ手を差し入れただけで指すら動かしていないのに、この声は何だ?
本当に感度が上がっているのか? それとも誘っているのか?
ああ、「感度の上昇」と「誘惑」は同じものと思っていいのか。
「ほら、ここはもう真っ赤に熟れている」
「! 言うなよバカっ!」
「蜜もたっぷりだ、どれ、味見してみよう」
「ああぁっ やだ、や……はっ あはぁ、あうっ!」

性器を舐めるのは、我々の間では別に珍しいことではないのに、この反応の良さはどうだ。
確かに抱き合うのは久々で、彼女が今まで欲求不満だったとしても一応頷ける。
だが、あれだけの自慰を披露してみせた彼女のこと、そんな処理くらい雑作もないはず。
自分でするのと人にされるのとでは、これほど感度に差があるのか?
彼女の様子を見ようと顔を上げ、腕で口元を拭って気が付いた。
……これか。痛いと抗議されていないということは、いい刺激になっているらしい。
彼女は目を潤ませて、息を乱しながらこちらを見ている。
止めろと言う気はないようだが、言われたところで止める気はもちろんない。
そのまま、また性器に吸い付く。心持ち、口元を擦り付けるようにした。

「うあっ やっ だめ……だめ、ああっ、あっ」
「本当に、今日は感じやすいね、いい声だ」
「あっ ああぁっ、うっ うぅ」
「こら、いい声だと言ってるんだから、我慢してないで聞かせなさい」
「やだ! やだ、恥ずかし……っ」
「何が恥ずかしい? 自分が快感を得ていると私に伝えることが?」

喋るため少し口は離すが、顎が触れるようにして、刺激を途切れさせない。
彼女は側にあった枕に噛み付いて、快感をやり過ごしている。
もう尻の方までしとどに濡らし、下のシーツまでじっとりと染みが広がっていた。
割れ目を指で広げると、さらに液体が溢れて指を濡らしていく。
脚の間から顔を上げ、濡れた指を彼女の目の前に差し出して見せた。
「ほら、もうこんなになっているよ」
「バカ! 見せるなそんなもん!」
「いつ入れても良さそうだが、そうだな、今日はお願いしてもらおうか」
「はぁ? お願い?」
「そう、入れてくださいと私におねだりしてごらん」
「バッ ……言えるか!」
「いいじゃないか、たまには私の頼みを聞いてくれても」
「言えねえ! そんな恥ずかしいこと!」
「おや、君の妹は素直に言ってくれたよ、入れてくださいとね」

妹を口にすると、途端に目が釣り上がる。負けず嫌いの彼女のこと、どう反応するだろう。
女性としての一般的な魅力を競うならば、妹に勝る日が来るとは到底思えない。
乳なし尻なし可愛気なし、我ながらよくこんな女を恋人と呼ぶ気になったものだ。

「わかった、言ってやる」
「そうか、いつになく素直だね」
「その代わり、あんたも俺に言え」
「何を?」
「俺への愛を! あんたアルを選ばないとは言ってないだろ!」
「あ」
「俺はあんたのしか入れさせない、だからあんたも俺にしか入れんな! 等価交換だ!」

気付いていたか。実のところ可能なら、なし崩し的に妹もいただくつもりだった。
だが無理だった。向こうも少しその気になっていた様子だったのに。
……立たなかった。いや、妹ひとりが相手ならば、充分戦闘体勢に入れたはずだ。
あれほどの、いい顔いい声いい体のしかも処女、には滅多にお目にかかれない。
処女の相手は存外面倒だが、その気になってる濡れ濡れの処女は別だ。
それなのに、こんな女の裸体ひとつで立たないとは。我ながら、どうかしている。
もったいない、返す返すももったいない、もう二度とチャンスはないのに。
……二度目があったとして、同じ条件下なら、やっぱり立たないんだろうと思う。
「そういえば、言ってなかったか」
「ああ、どうなんだよ、やっぱりアルの方がいいのかよ」
「そうだな、普通の男なら、断然妹の方を選ぶだろうな」
「……」
「あいにく私は普通じゃなくてね、そうさせたのは君だ」
「自分の変態性癖を人のせいにすんなよ」
「いいや、君さえ私の前に現れなかったら、私はごく普通の男として生きていたはずだ」
「あんたの方から俺たちの前に現れたんだ、それに、ごく普通の男が14のガキに手を出すか!」
「おや、あの時君は14だったのか、どうりで胸も尻もなかった」
「今でもねえよ! 悪かったな!」
「おかげで豊満な体に反応しなくなったじゃないか、どうしてくれる」
「知らねー、あんた元から幼女趣味なんだろ」
「幼女趣味だから君を好きになった訳じゃない、むしろ逆だよ」
「え……」
「君が豊満な体に育ってくれていれば、私だって普通の男の嗜好でいられたのに」
「え、あんた幼女趣味なのか!? だめだぞ子供に悪さしたら!」

反応すべきはそこじゃない。好きだと言ってみたのに無視されてしまった。
これはもう、どうあってもお仕置きが必要だ。恥ずかしいことをいっぱいさせてやる。
「入れて」とねだるのと愛を告白するのでは、告白の方が恥ずかしいような気がするし。
等価交換なら、彼女だって私に愛を告げてもいいはずだ。いや、必ず告げてもらう、体で。
「ところで、帯状の布はないかい?」
「布? 包帯のことか?」
「それで構わないよ、あれば欲しいんだが」
「何に使うんだ? ……また、どこか怪我してんのか?」
「さっき一緒に風呂に入っただろう、怪我なんてしてないよ」
「なら、いいけど……」

包帯がないからと、彼女はシーツを練成して細長い帯状にしてくれた。
それを私に渡してしまった後で、用途を考え付いたのか、取り返そうと暴れ始める。
縄を使った罠作りなら彼女も上手いが、縛りなら私の方が上だ。

「返せよバカ! それ何に使う気だよ!」
「君が思っていること、そのままだ」
「! 返せ! 絶対返せ!」
「そんなに真っ赤にならなくても、何を想像してるんだい?」

彼女の両肩を掴んで、くるりと後ろを向かせる。
前からやってみたいと思ってはいたが、これは多少、彼女の尊厳にも関わる。
本当に嫌なことを我慢させる気はないし、そんな彼女を抱いても面白くない。
嫌だ嫌だと言いながら、自らの抵抗さえ情事のスパイスにする、そんな彼女でなければ。
とりあえず試しに、ことの始めだけを施してみることにする。

「やっ やめろ……やだ、何すんだよ!」
「目隠しだが」
「変なことあっさり言ってんじゃねえ! やめろ変態!」
「視力を封じられることで、私への愛を再確認してもらえればと思ってね」
「こんなことで再確認する愛って、どんなんだ!」
「こんなのだよ」
布で目隠しした彼女の体を、今度はこちらに向き直させる。
すぐさま解こうとするので、落とさないように慎重に、彼女の体をベッドの外へと押し出す。
思わず縋り付いてくる小さな体を抱きしめて、ベッドの中央へと運び直してやる。
縋り付いた体勢を直そうと彼女がもがくのを、抱きしめる腕に力を込めて離さない。

「離せ変態!」
「こんなにしがみついて、やっぱり君は私のことが大好きなんだな」
「落ちそうになったら誰でもしがみつくだろうが!」
「君が素直になれるよう、協力してあげたんだ」
「どこの変態の理屈だ!」

罵られるとわかってやっていても、こう変態変態と連呼されると面白くない。
とりあえず、喚く元気があるなら嬌声を、暴言が吐けるなら睦言を、聞かせてもらいたいが。
視界を閉ざされて不安なのか、一向に大人しくなる気配がない。
不安にさせて私を求めさせるのが当初の目的だが、彼女は不安を感じると暴れる質らしい。
安心させてやれば落ち着くだろう、だが目隠しは外させたくない。
再び彼女の眉間に口付けて、ゆっくりと舐めてやると、次第に大人しくなった。
腕の力を緩めても、逃れようと抵抗したり、目隠しを外そうとしない。
続行の許可が出たようだ。わざと体に一切触れず、耳元で息を吹きかけてやる。

「ひっ……」
「今日はこれから、お互い素直になってみよう、そのためには私が見えない方がいいだろう?」
「素直 ……って」
「君は意地っ張りだから、なかなか本当のことを言ってくれない」
「それは、あんただってそうだろ」
「そう、だから今日は時間の許す限り、お互い素直でいようじゃないか」
「……やっぱ帰るんだ……」
「ん?」
「なんで泊まらないんだよ、泊まっていけば、もっと時間だって」
「……だめだ、何度も話してあるだろう? まだ早い」
「だって、あんたが忙しいってのはよくわかってるけど……」
「そうだな、だから少しでも時間が惜しいよ」

彼女の体を静かに横たえてやり、指と口との愛撫を再開する。
どこに刺激がくるのか見えないからか、肌の上を指が軽く滑るだけで悲鳴のような声をあげる。
そのわりに、緊張の方が強いせいか体は強張ってしまった。
いくら感度が上がっていても、これを解きほぐすのには時間がかかりそうだ。
どうしたものかと思案しつつ彼女の乳首を一舐めしたところで、鉄拳を喰らう。
慌てて謝るところをみると、反射的に手が出たようだ。
無意識に私を攻撃しないように注意しているせいで、体が強張っているのかもしれない。
いっそ動けなければ、そんな心配は無用だろう。

「痛いじゃないか、いきなり殴るなんて」
「ごめん、ちょっとびっくりして、……と言うか目隠し外せ!」
「おや、こんなところに帯状の布が」
「は?」
「ああ、君が包帯のつもりで作ってくれたから、長くて余っている部分だね」
「……何する気だ! とてつもなく悪い予感がするぞ!」
「嘘はいけない、本当は期待で胸がどきどきするだろう?」
「なっ 何が!?」
「君は縛られるんだよ、もう動けない」

吐息混じりに耳元で囁いてやる。しきりに手足をバタバタさせるが空回りだ。
なんなく彼女の両手を頭の上で一まとめにして、目隠しの残りの部分で縛った。
跡が残るといけないので、緩めにしておいた。外す気になれば、外れるだろう。
もっとも、外そうとはしないはず。暴れる直前、ごくりと生唾を嚥下したのを知っている。
手の自由を奪ってから、おもむろに小さな乳房を弄び始めた。
やはり思惑通り、悲鳴のようだった声に色艶が増してくる。この瞬間がたまらない。
「ああ、あっ ん、お、終わり……?」
「何が?」
「縛るの、もう終わり?」
「あ、ああ、終わったが」
「なーんだ、ふーん、そうか」
「……君の手の自由を奪うのが目的だったし、布の長さ的にもこれくらいが妥当で」
「縛るっていうからさ、ハムみたいにぐるぐる巻きにされんのかと思ってた」
「いや、君が巻かれたいというなら巻くが、紐を作らないと」
「そっか、長さが足りないか……じゃあ今回はいいや」
「それにあれは、交わす紐の間で盛り上がる乳房や肉を楽しむという目的もあって、君の体では」
「あ〜、盛り上がるものがないよな、って悪かったな!」

……思えば、何とまずい本を彼女に渡してしまったのか。
確かあれに、縛りプレイも載っていたはず。あれだけ変な体位を散々味合わせたのに、懲りない。
最近では妹が読み込んでいるとかで、久々に見た本は、ずいぶんとくたびれていた。
まったく、この姉妹は。変なところで危なっかしい。
今も本は姉妹の手元にあるが、奪い返した方が賢明だろうか。
ただの姉妹ならばともかく、彼女らは、興味のあることは実際にやりかねない。
事実、絶頂とは如何なるものかの体験実習を、失敗に終わったとはいえ、やったらしい。
普通、いくら興味があるとはいえ、姉妹でやるだろうか。
本を取り上げるまではしなくても、妙なことに興味を持ち過ぎるなと警鐘を鳴らしておこう。

「さらに言えば、本来の縛りは荒縄で施す、つまり痛いんだ」
「荒縄? 想像しただけで痛そうだな」
「革という手もあるが、荒縄が一般的だな、縄自体がチクチクと体を刺す」
「へー、縛られた体勢が苦しいとか体の自由がきかない、だけじゃないのか」
「そう、だからそんなに縛られたそうにするんじゃない」
「してねえ! そっか、痛いのか……って、あれ?」
「どうした?」
「あんたは縛られたことある? どれくらい痛い?」
「プレイとしてはないが……とりあえず、血がにじむくらいには痛い」
「そっか、じゃあ本気で痛いな」
「?」
「チクチクなら今もしてるし、それなら悪くないんじゃないかなって」
「!!」
「でも、血が出るくらい痛いんなら、やめとく」

縛って欲しいんじゃないか。素直になろうと言っているのに、聞き分けのない。
要は痛くないように、かつ自由を奪うように縛ればいいんだろう。
ハム状態にするだけが縛りじゃない。本に載っていないものなど、いくらでもある。
望み通り、縛ってやろうじゃないか。いい、お仕置きらしくなってきた。
「縛っていいかい? 痛くないようにするから」
「いやだ、遠慮する、って言うか目隠しと手、外せよ!」
「手は外してあげるよ、縛り直さないといけないから」
「外す意味ないだろ!」
「それに、また帯を作ってもらわないといけないしね」
「……」
「どうしても嫌なら作らなければいい、物がないんじゃ縛りようがないよ」
「自分で作ればいいだろ」
「さあ、そんな物を作る練成陣など、思い付かないな」

帯を作ることが即ち合意を表すことは、彼女も察しが付いているだろう。
少し逡巡していたが、意外にあっさりと、替えのシーツの収納先を教えてくれた。
取り出してきて、彼女の手の拘束を解いてから渡した。
練成に見える見えないは関係ないのか、彼女は目隠しをしたままシーツから帯を作り出す。
……ずいぶん長く作ったものだ。これはハム巻にしろということなのか?

「これだけは言っとく!」
「何だい?」
「別に縛って欲しい訳じゃないからな! ただ体験して知っておきたいだけだ!」
「知っておいて、どうする気だ?」
「アルに頼まれた時、教えてやれるだろ」
「なるほど、確かに彼女なら縛りがいがありそうだ、胸も尻も」

そう言ってやると、明らかにむくれたような口元になって、ばたんと乱暴に横になる。
妹なら、ぜひ縛ってみたい。道具は革より、やはり荒縄だ。
あの白い柔肌に食い込む荒縄と、痛みに立ち上がる乳首、乱れる呼吸、潤む瞳。
最高だ。その姿は、男の心の黒い部分を存分に刺激してくれることだろう。
「ほら縛れよ! 早く!」
「こら、そんなにむきになるんじゃない、楽しめないだろう」
「どうせ俺じゃ楽しくないんだろ! どうせ胸も尻もねーよ!」
「いいんだ、そっちの方が」
「変態幼女趣味……」
「確かに君の体は、普通に縛っても楽しくない、だが縛り方さえ選べば極上品だよ」
「いくらなんでも誉め過ぎだな、うさん臭い」
「案ずるより産むが易しだ、ああ、縛り終えたら目隠しは外そう」
「なんだろう、急に外して欲しくなくなったんだけど」
「遠慮はいらない、待たせたね、さあ縛ろうか」

仰向けに横たわる彼女の右脚を折り曲げ、足首と右手首を一緒に繋いで縛る。
こうすると手を動かせば脚も同時に動くので、大事なところを隠すには動かずにいるしかない。
彼女にそれができようはずもなく、抵抗のつもりが誘惑になってしまうのは屈辱だろう。
最初は片方だけにしてやる。自らが施す辱めを受けるがいい。

乳首へ舌を這わせると、彼女は小さく声を上げながら、思わず手で制そうとした。
だが、そうすることで脚が持ち上がって開いてしまうのが嫌なのか、手を止める。
制さないので舌はどんどん這い回り、唾液を肌になすり付けていく。
せめてもの抵抗として、左手で私の肩を打ってはみるが、それで止まる舌ではない。

「う、あ……外せ、外せよ、これ」
「縛れと言ったり外せと言ったり、我が侭な子だ」
「だって、これ、やだ、脚が閉じない」
「閉じるだろう? 君が動かなければ」
「そうだけど……! なんか、やだっ!」
「閉じないように縛ろうか? 上の室灯から脚を吊るすようにしてもいいが?」
「まだ、まだそっちの方がいい、これは嫌だ」
「いや、それでは君の脚が痺れてしまうな、やめよう、血行は大事だ」
「これじゃなかったら何でもいいから!」
「これの何がそんなに気に入らないんだ? 自分で脚を開いてしまうところか?」
「うん、女が自分で開くもんじゃないから」
「いやいや、構わないさ、君はこれからお願いしなければならないんだよ、入れてと」
「お願いするのと脚を開くのは別だろ」
「いいや、お願いする時は、脚を開いてするんだよ」
「バッ バカそんなこと絶対しねーからな!」
「バカと言ったから外さない」
「ごめんなさい外してください」
「だめだ、そんな棒読みじゃ」
「……ねぇ、ロイ、外して、ね?」

太股を擦り合わせるようにして、腰をくねらせてみせられ、たいへんにそそられてしまう。
いつの間に、こんなお願いの仕方ができるようになったのか。
やはり若さとはいいものだ、日々進歩が感じられる。教えがいもあるというものだ。
あとは、場の空気を読めるようになれば。
今それをやってみせると逆効果になることが、どうしてわからないのか。

「ひっ! や、やだぁっ 外せって言ってるのに!」
「君が可愛いことをしてみせるから、止まれなくなったじゃないか」
「や……いっ痛! 痛い! やめろ、跡付けるな!」
「荒縄で縛られていると思えばいい、似たような痛さだよ」
「そう? って、痛いって!」
「すまないね、本当に止まれないんだ」
「もう……仕方ねえな」
自由になる左手を、するりと私の首に巻いてくる。
引き寄せられてみると、頬にそっと口付けられた。そのまま彼女の顎を上向かせ唇を合わせる。
舌を絡ませていると、時おり彼女が嚥下する音が聞こえる。
飲んでくれと言うと吐き出してみせたりするくせに、好きにさせると漏らさず飲み込む。
彼女は天の邪鬼なところがあるだけで、実はこういうのが嫌いではないと最近気付いた。
その時から、ベッドの中で思うままに振る舞う姿を見たいと願っている。

指をそっと脚の間に忍ばせると、少し体を跳ね上がらせ、背を反らせた。
すでにじっとりと濡れているそこで、指をゆっくりと動かすと、くちくちと粘る音がする。
彼女は、思わず漏れる声を抑えようと右手を口元に移動させる。
すると右脚が一緒に動いて、指が奥へ侵入しやすくなった。滑り込ませては引き出す。
脚は閉じたいが声は堪えたい、そんなジレンマが彼女を余計に駆り立てるようだ。
左手で口を押さえればいいものを、私の首に巻いたままで動かそうとしない。

「こっちの手で押さえればいいのに」
「だって、んんっ あっ、あ、あんたがどっか、行きそうで」
「行くわけないだろう、こんな最中に」
「だって、見えないから、あっ いや、やっ 触ってないと、やだ」
「そうか、それならこうしよう、安心だろう?」

彼女の上半身を起こし、私の胸にもたれるように抱き込んでやる。
背中に回した腕は、前で彼女の乳房を揉む。もう片方の腕は膝を割り、指を間に滑らせた。
彼女はいつにない可愛い声で鳴きながら、私の胸に額を擦り付けて甘えてみせる。
その間も、彼女の右脚は閉じるべきか開くべきかと、迷うように震えていた。
やがて彼女の右手は、シーツを掴んで動きを止めた。
右脚はそれにならい大きく横に広げた形で固定され、膝だけが相変わらず揺れている。
上半身はすでに自分で支える気はないらしく、ほとんどの体重を私に預けてきた。
指が奥に進み暴れ始めると、最初は背を丸め、すぐに反らせて高い声を上げ始める。
空いた指で花芯を引っ掻くと、跳ねるように体を伸ばす。背中を支えてやるのに苦労した。

「ああぁっ! あっ、あ、も、もう……もう、だめ」
「もう? じゃあ、お願いしてごらん?」
「いや、いやだ、言えない……」
「言わないと、このままだよ」
「あぁん、んっ いい、いい、このままで」
「指だけでいく気かい?」
「ん、いく、ん……はぁ、あ、い、いきそう……いく……っ」
「だめだ、指でいくのは許さん」

盛んに動かしていた指を、ためらうことなく引き抜く。一緒に愛液も溢れ出た。
彼女は安堵のため息をついて、少しの間は乱れた呼吸を整えるように息をしていた。
やがて、腰の辺りをもぞもぞと動かし始める。吐息も心無しか切な気だ。
乳房への刺激も止めてしまったから、いきなり物足りなくなったんだろう。
言葉にするのはためらわれるのか、私の胸に頬を寄せて、猫が甘えるような声を出す。
普段ならこれで充分、さっさと押し倒して挿入している頃だが、今日はそうはいかない。
お仕置きなのだ。入れてくれと彼女が懇願するまで、絶対に入れるわけにいかない。
それまで私自身が保てるのかどうか。今、最も注目すべき課題だ。

「……なあ、いいだろ? しろよ」
「だめだ、お願いするまではしないよ」
「ねえロイ、して?」
「だめだ、そんなのはお願いとは言わない」
「何だよ! 何言えっていうんだよ!」
「入れてください、と言ってもらわなければな」
「ぜーってー言わねー」
「それなら、今のままで続行だ」

背中を支えたまま、再び肌に唇を落とす。首から鎖骨にかけて、かなりの数の跡が付いた。
すでに妹が付けたのはどれだったのか、わからなくなるくらい。
この際、体中を覆ってやるのはどうだ。これは私のものなんだと、視覚的にわからせてやる。
鎖骨から乳房へと、舐めては吸っていく。時おり歯を立てて噛むこともした。
痛い痛いと半分泣きながら抗議してくるが、半身を拘束されているためか逃げもしない。
逃げるどころか、頬を私の胸にぴったりと張り付けて、ますます擦り寄ってくる。
こういう、一方的に責められるのは彼女は嫌いだろうと思っていたのだが、違うのか?

急に胸に違和感を感じ、慌てて見てみれば、彼女が私の乳首を舐めている。
動物のように舌を出して、ぺろぺろと。何と言うことをしてくれる。
長持ちさせようとしているのに、いきなり発射寸前にまで追い込まれてしまった。
気を散らそう、気分が非常に萎えるものを頭に思い描けばいい。
職場、机の上、書類の山、弾丸を装填する音……いかん、萎えを通り越して鬱になってきた。
だが、臨界からは逸れることができて、もうひと踏ん張りできそうだ。
と安心したのもつかの間、今度は左手で私の股間をまさぐっている。

「気持ち良くない? したくならない?」
「気持ちいいし、したいとも」
「だったら、しよう?」
「……もう少し、舐めてくれるかい?」
「うん、わかった」

また舌を出して舐め始めたのを確認してから、そっと目隠しの結び目に手を伸ばす。
見えていないから恥ずかしくないんだろうが、それくらいの心理は読ませてもらう。
舐めている最中、一気に目隠しを外した。
彼女は一瞬呆気に取られ、思わず私の顔を見上げて目を合わせてから、真っ赤になった。
必死で顔を逸らし、腕の中から逃れようともがくが、脚が広がるので存分には暴れない。

「何見てんだよ! 見るなよ!」
「さっきからずっと見ているが」
「わー! 言うな!」
「可愛くお願いしてくれたら、見ないであげるよ」
「言い方とか関係ないだろ、見るなったら見るな!」
「ふむ、そんなに見られたいのか」

もう濡れている内股を撫でさする。さすがにこの辺りは弾力に富む柔らかさがある。
太股から付け根までを揉みながら柔らかさを堪能しつつ、目は彼女の顔から逸らさない。
彼女はぎゅっと目を閉じ、時々開けては私と目が合い、慌てて逸らすことをくり返す。
手はやがて割れ目に行き着き、そこに浅く入りながら上下すると、また甘えた声を出した。
しばらくそのままにしていると、彼女の腰が明らかに意志を持って動き始める。
右手が動いて、右脚を開いてみせる。覚悟ができたようなので、ゆっくり横たえてやった。

「見ないで……ロイ、見ちゃいや……」
「ああ、よく見えるよ、大洪水だ、可愛いね」
「やだ、見ないで、見ないでぇ」
「おや、震えているじゃないか、寒いのかい?」
「え? 別に、そんなことないけど」
「ここが、こんなに膨らんでヒクヒクしてるよ、暖めてあげよう」
「や……あ、はぁうっ! あっ、あうぅっ!」

花芯を舐め上げ、口元や顎の髭で刺す。太股を掴んで寄せ、顔を挟んでさらに擦る。
彼女はもう明確な言葉を発することができず、ただただ喘いでいた。
背が反って腰が前に突き出され、これはいきそうだなと見計らい、唐突に止める。
余韻に浸らせる間も惜しいとばかりに、太股に吸い付いて跡だらけにしてやった。
痛みに彼女の熱も落ち着いてきたところで、再び花芯を舐めては刺す。
喘ぎ声は途中から涙混じりになった。痛くしすぎたかと不安になって、顔を上げ彼女の顔を見る。

見なければ良かった。
少し眉を寄せ、頬を染めて涙を流し、乱れた呼吸のため薄く開いた唇、その奥に覗く舌。
あの舌を吸わずにいられようか。すぐさま追い被さって、唇を塞ぐ。
お互いが吸い合うせいで、ちゅうちゅう音がするのが、また何ともいかがわしい。
ようやく唇を離すと、唾液がひとすじ線を描いて落ちた。
また下に吸い付くために体を離そうと思うが、動けない。どうも腰が固定されている。
見れば、彼女の両脚がガッチリと腰に巻き付いていた。これは大変まずい。

「体勢的にちょうどいいから、しよ?」
「いや、したいのは山々なんだが」
「だったらいいじゃん、しようしよう」
「まだ、やりたいことがあるんだ、私は君のように復活が容易でないからね」
「協力する、口とか手とかでやってあげるからさ」
「現実問題として、まだあれを着けていないから、入れられないんだ」
「そんなのいいって、大丈夫だって」
「馬鹿者、そういうわけにいくか」
「できたらちゃんと産むし、妊娠したら結婚……してくれるんだろ?」
「そうなればもちろん責任は取る、だがまだ早い」
「何でだよ! 歳なんか関係ないだろ!」
「そうじゃない、話してあるだろう、今はまだだめだ」
「だったら俺、軍に入る! 軍であんたの仕事を手伝う!」

いつか言い出すだろうとは思っていた。何と言って諦めさせようかと考えたこともある。
だが、良い結論は浮かばなかった。下手な理由を付ければ意固地にさせかねない。
正直に、危険だから心配だと言うのが得策か。

「だから、危険なんだ、君が軍に就職するのは反対だ」
「平気だって、俺たちずっと旅してきたし、戦いだってあったし」
「それはやむを得ない事情があったからだ、今はわざわざ危険に身を晒すことはない」
「今でもアルと組手やってんだ、な? 錬金術だってあるんだし」
「錬金術を戦いのために使うのは、もう止めなさい」
「俺、邪魔にならないようにするから、軍に入っていいだろ?」
「だめだと言ったらだめだ!」
「なんだよケチ!!」
「言うことを聞かない子には、お仕置きが必要だな」

腰に巻き付いていた脚を、疲れたのか力が弱まった隙に振り解く。
そして左足首と左手首を一緒に括って、右と同じ状態にした。
これでもう、大事なところはきちんと隠れない。見放題触り放題、好きにできる。
ひとまず頭に萎えるものを描き、自分の熱を落ち着かせ、部屋の中をぐるりと見渡す。
何か使える物はないだろうか。いつもと違う刺激を与えられる物は。

「君は鏡台を持っていないようだが、化粧はどうしているんだ?」
「めったにしないから、するんだったら、そこの机でやってるけど」
「そうか、ちょっと引き出しを開けてみていいか?」
「……いいけど、何?」
「化粧道具でね、もし君が持っていれば、借りたい物があるんだよ」

机の引き出しを開けると、乱雑と整とんの間くらいの位置で、化粧品が転がっている。
時おり買い与えることもあったが、どれもあまり使われている様子はない。
まあ、いい。化粧など、この先いくらでもできる。今は若い素肌を堪能しよう。
化粧道具も一式買い与えてあるが、それもケースごと入っていた。
開けてみると、1本だけ空いた所があるものの、それ以外は揃っている。

太めのブラシと細い筆を抜き取って、ケースをそっと仕舞った。
引き出しの中を他にもいろいろ見てみたいが、人の机を探るのは品が良くない。
名残り惜しみつつ引き出しを閉めていると、反動で奥から筆と何かが転がり出てきた。
紅筆のようだ、そして、口紅らしき小さな筒。開けてみると、中身は鮮やかな赤い色だった。
若いというか幼い彼女が付けるべき色ではない。普通の淑女なら、こんな色はためらうだろう。
こんな赤を買い与えた記憶はない。しかし多少は使ったらしき跡がある。

「これは自分で買ったのかい?」
「あ……うん、でも、ちょっと失敗、塗ってみたら変だった」
「けばけばしい色だ、どうしてこんなのが欲しかったんだ?」
「あんたが買ってくれるのって地味な色が多いだろ、どうせ塗るんなら思いきり赤くと思って」
「君は目がはっきりしてるから、口元は控えめがつり合うんだよ」
「赤、好きだし……でも、それは変だった、似合わない」
「似合うように、してあげようか?」
「? どうするんだ?」
「こんな赤が似合う女にしてあげるから、君もその気になりなさい」

口紅はひとまず机の上に置いて引き出しを閉め、ブラシと筆を持って彼女の側へ戻る。
微妙に体の陰になるように持ったので、おそらく彼女は何をされるのか知らない。
不安そうにしてみせながら、期待に満ちた目の輝きが隠せないところが愛おしい。
正面から追い被さることはせず、横に寄り添って口付ける。
舌を絡ませながら手で濡れた内股を撫でてやれば、開けるまでもなく脚が開いた。
見つめ合った目を、彼女が逸らさないから、こちらも逸らさずに手探りでブラシを握る。

「! あ、何?」
「まずは胸からいってみよう、どうだ? いつもと比べて」
「……よくわかんない、もうちょっと強くしてみて」
「え? そうか、これでどうだい?」
「んー……弱くて何とも」
「毛が柔らかすぎるのか、使えないな」
「本来は顔に使う物だからさ、品が良いってことだろ」
「それはそうだが、残念だ……」
「そう気落ちすんなよ、上はやっぱ皮膚が厚いんだ、下いってみよう下、な?」

慰められてしまった。気を取り直して、望み通り太股にブラシを這わせてみる。
やはり柔らか過ぎるのか、くすぐったいと笑って身を捩る。
ブラシが内股に差し掛かると、笑顔のままで眉を寄せ、脚を閉じようとした。
気持ち良くなってきたらしい。時おり、ブラシを払おうとして手を動かし脚を開く。
そのたびにブラシの毛先を奥へと侵入させて、そこで小刻みに動かしてみる。
しかし、毛先はすぐに粘液に絡まってしまった。期待していたような効果は得られるだろうか。

「あんまり君が濡らしているから、毛先がまとまってしまったよ」
「…………いい、ん、今の方が……ちゃんと、感じる……」
「そうかい?」
「うん……でも、やっぱり、ちょっと弱い……」
「なら、こっちはどうだろう? これよりは固そうだが」
ブラシを置き筆に持ち替える。細いので、ポイントを絞った攻撃しかできない。
膝を掴んで、脚を押し開く。濃くはない恥毛を指で分け、割れ目を余す所なく目の前に晒し出す。
花芯を剥いて筆をあて、先を震わせるように動かすと、やっと甘い声が聞こえ始めた。
その下の小さな穴に先を移動させ、同じように震わせる。
途端に彼女は背を反らし、あそこからは愛液が少しずつ飛び散った。

「ひっ! あっ、ああぁっ」
「ああ、いい声だ」
「いや、いや、だめ、だめぇ……!」
「ふむ、やはり指ではこうはいかない、これは使える」
「あっ いや、もう、もうだめ……あ、あっ あぁん、んっ」
「ここが真っ赤になってきた、そういえば君は赤が好きだと言ったね?」
「んん、んっ! あぅっ、いや、いやだぁ……」
「赤い服でも赤い靴でも赤い口紅でも、好きなだけ買ってあげよう」
「いく、また、また、いくぅ……あ……ああぁっ!」
「その前に、君自身を赤く染めてあげようね」

勢い良く愛液が散っていく。私の手も、筆も、彼女の内股も濡らしていった。
軽く達して、切な気な呼吸をくり返す彼女の胸や腹を、唇と舌で舐め回しては吸う。
赤い跡が付いていくのを見ていると、遊びたくなってきた。
彼女は論説に伴う説明図を描かせると上手いのだが、単なる落書きとなると妙な物を描く。
エリシアの絵でさえ、彼女の絵と比べるなら写実主義と言えるだろう。
花だと言って譲らなかった絵は、何やら丸がいくつか連なった奇妙な図形だった。
あの程度の絵なら、跡で充分描ける。

「できた……花」
「え? はな?」
「もうひとつ花を作ろう」
「え? 何? ……いて、いてて、だから吸うなって」
「そうだ、ここを花畑にしよう」
「は? あんた頭大丈夫 ……っひ! あっ、ま、待って!」
「もっと咲かせなければな、どんな花が咲くだろう」
「あぁん! あ、あぅっ! やだ、いや、それ、いやだ……っ」
「いいぞ、ここも、あそこも真っ赤だ、花盛りだよ」
「訳わかんねぇって……や、やだ、だめ、筆、やめて」
「どうして? 気持ちいいだろう?」
「だめ、変、変になる、良すぎて……あぁん!」
「ああ、花には水をやらなければ、枯れてしまう」
「! やっ、やめろ、やだぁっ!」

膝裏に腕を通して抱え上げ、彼女の体を仰向けに前屈させながら膝を割る。
彼女自身にも、己の秘所が丸見えになったはず。慌てて目を逸らしていたから間違いない。
そうしておいて更に筆先でちろちろと、感じやすい部分を弄んだ。
もう普通に喘ぐ余裕もないのか、彼女の声は呼吸の合間に漏れ聞こえ、悲鳴に近い。
ガクガクと震えていた脚の動きが止まり、背が反らされていく。
どうやら今度のは絶頂のようだ。筆を置いて指を2本、奥へと挿入させていった。
それだけで達してしまうかというような強いうねりが、指から感じ取れる。
やむを得ないと思ったが、彼女は手に触ったシーツを握りしめることで、どうにか耐えてくれた。
快感の波がやや引いたところで、入れた指を前後、状況的には上下させる。
入れても出しても、愛液がその都度溢れて彼女の毛を通り過ぎ、腹へと伝っていく。
そしてまた、彼女の中は指を締め付け始めた。ぐるりと巡らせて、良い所を探りあてる。
ひたすら指を強めに動かしていると、透明な液体が吹き出して手に跳ね返り、腹に落ちた。

「水やり完了」
「…………バカ、大バカ、すげえバカ」
「ふむ、まだ元気なようだ、それではこのままの状態で、君に質問がある」
「待て、せめて普通に横にならせろ」
「断る」
「いやらしいこと言わせる気だろ! お見通しなんだよ!」

ご名答。だが答えがわかったところでこの状態、抵抗できようはずもない。
さっそく筆を取り出して、固くしこった花芯へ筆先をあてる。
興奮覚めやらぬ彼女は、それだけで鼻にかかる甘い声を発し腰を揺らす。
こちらが動かすまでもなく、自ら擦り付けるように腰を振り、喘ぐ姿は壮観だ。

「気持ちいいかい? こんなに真っ赤に熟れて、蜜だってほら、こんなに」
「バカ! あっ やだ、み、見せるな! あぅっ、いや……」
「質問だ、ここと、ここでは、どっちが気持ちいい?」
「ああぁっ、あ、あっ あうっ! や、やだ、やめろ」
「もう一度、ここと、ここだ」
「あっ! ああっ ……あ、どっちって、どっちも……」
「どっちも?」
「どっちも、……いい……気持ちいい」
「では次の質問、ここを、私以外の誰かに触らせたことは?」
「あぁ、ん、ない、それはない」
「嘘を付くな」
「ひいっ! いやっ、あっ、う、嘘、嘘! アル、アルが触った!」
「妹に? だめじゃないか、跡に加えて、こんなところまで触らせるなんて」
「だって、だってアルだし、別に……」
「妹が特別なのはわかるさ、だが、私だって君の特別が欲しいよ」
「……てめえこんなことしといて誰が特別じゃないってんだー!!」

あの体勢からよくぞ、というか流石だ、という蹴りを胸にくらう。
少し苦しかったが、伊達に軍人はやっていない。体勢を立て直し、彼女の腰を抱え直す。
縛っておいて良かった、大暴れされるところだった。
怒りが収まらないのか、さっきまでの情欲に濡れた顔はどこへやら、思いきり睨み付けてくる。

「まあ聞きなさい、妹と私は違うと言ったのは君だろう」
「そりゃ違うだろ! 生別から年令から違うだろ!」
「そういう意味じゃなくてだな、私にしかできないこと、させないこと、それが欲しいんだ」
「はあ? そんなのいっぱいあるだろ」
「跡だって、私しか付けることはないと思っていたのに、妹にまで付けさせて」
「いや、だからアルだし」
「結局、君にとっては妹が最上級に特別なんだ、そう思うとたまらないよ」
「あー……アルのは、別に深い意味はないと思うけど」
「わからないじゃないか、本気で所有印のつもりかもしれないだろう?」
「ああ、というか、俺のもそんなに深い意味はなかったんだよな」
「ん?」
「アルは単に跡が付くかどうかに興味があっただけなんだ、あんたは違うだろ?」
「う、ん、まあ、な」
「跡付けただけで済むか? 済まないだろ? だから違うって言っただけ」
「そう、なのか?」
「あんたとアルと、どっちが特別かなんて言うなよ、どっちも特別に決まってるだろ」
「……」
「仕事と私とどっちが大事なの!? って言われたら困るだろ? それと同じ」









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