美しかれ哀しかれ
>764氏

彼女は私の言うことならなんでも聞くと思ってた。
「悪いな」
だから私は、適当に謝った。
切れ切れに落ちた床の上のハボ子の髪・・・
さほど長いわけじゃない。肩につくかどうかも無いくらいだ。
でも、ぱらぱらと伸びた長さが気に入らないから私は、はさみでぞんざいに切り落としてやった。
報告書の山を執務室で整理していたホークアイ中尉は、私のやったことに驚きの表情でいる。
上官の横暴だと叫び、抗議しだすのではないかと思ったが、ハボ子は中尉に大丈夫だから先に帰宅してくれと笑って伝えていた。
しぶしぶ、中尉は引き下がり明日からの出張に向けての書類を持って帰宅していった。
部屋に残った私とハボ子は。しばらく無言のままだった。
「それ、貸してください」
はさみを受け取り、何をするのかと思えば…
私が切った片方だけでなく残った片方もハボ子は続いて切り落とした。
ジャキジャキと無造作にはさみを入れる彼女の手は、どこか少し震えている。
「これでいいッスか…?」
「落ちてる髪の毛、片付けとけ」
「ハイ」
伸ばすだなんて、君はいつからそんな女らしくなってたんだ。
軍規にあるだろう、肩にかかるのはまとめてこいというものが。
長いと首を絞められるし、機械や装具にはさまって邪魔なんだよ。
女性の軍人の髪型を否定するわけじゃあない。
だが、不必要に見える女の要素はいらんのだ。
ほうきで片付けだしたハボ子を置いて、私は先に出て行った。
廊下を歩いていると、鋭い眼をした男にかちあう。
「やあ中尉、まだ帰ってなかったのか?」
「迂闊なことをしてすみませんでした」
なんだ、やっぱりわかってるじゃないか
朝、談話室でホークアイ中尉がハボ子の髪を触っていたのを、通りがかった私は見ていた。
中尉はただ、ハボ子の耳のあたりについた埃をはらっていただけだ。
なのに彼女ときたら、黄色の髪に指を絡められた途端、ハボ子は少々、照れたように嬉しそうな顔をしてたんだ。
私の腕の中では見せたこともない表情だったんだ。
あの顔が、酷く勘に触った。
だから、執務室に呼びつけてさっきみたいな行動をしてしまった。
本当に、うっとうしい。
ハボ子のことで頭を回すだなんて私はどうかしている。
女なんて腐るほど遊んでいるし、どんな色香も私にとっては食事や
風呂にはいるのと同じ程度だ。
私の冷たさをなじる女もいるし、かといって余計に甘えて必死に追いかけてくる女もいる。
どれも大して味のあるものじゃなかった。
大体、ムードがどうのこうの、贈り物がどうのこうのとうるさい女も多かったし、彼女らの金切り声に食傷気味でもある。
だから、男と遊んで大いに恋愛していると、派手な評判のハボ子なら、もっと後腐れなくすっきりやれると思って手をだした。
はっきり言って、あれは狗だから、体目当てと言っていい。
上司の命令ならとハボ子は笑って、苦々しげに私の家に来たものの存外、媚態はさらけださなかった。
むしろ、あまり感じまいとして泣き出す始末でたちが悪い思いをした。
最中に泣くのは何故かと、嫌味を言うと、私は健気な一面に出くわした。
この頃は、彼・・・この眼前の、私の副官と付き合いだしていたというのだから驚きつつ、納得したものだ。
「で、抗議するのか?どこかへ訴えるのかね?」
「いいえ、特に何も」
ホークアイ中尉とて、私の女性に対するだらしなさは知っている。
職務遂行上、漁色家としてのプライベートな面は公務には無関係なので
彼は黙認しているし何も咎めはしない。
だが、ハボ子のことはどう思っているのか…これに関しての彼は、得体が知れない。
私がハボ子に横槍みたいに手をだしているのは知ってるくせに、何を言うわけでもない。
どうせ、今夜だって君ら二人は隠れて落ち合い、私のした行為を種に慰めあうんではないのか?
考えるとむかむかしてきた。


私は、その晩ヒューズと久しぶりに再会し、祝杯の意味も込めて、なじみのバーで一杯ひっかけた。
「お前、噂悪いって」
「放っておいてくれ」
「火遊びもほどほどにしとけよ」
私の女遊びのばかばかしさを、久々に揶揄した親友は、冗談交じりに口を動かしている。
内容がいつもと違うなと思っているのに、向こうはそうは思っていないようだった。
こいつと語り合うことといえば、仕事の愚痴がほとんどなんだが、妙に今日は私につっかかってくる。
しかし、いつもなら自分の娘ののろけ話でうんざりして、私のほうが耳を塞ぐくらいなのに、聞いてて飽きない。
「支えてくれる人間を一人でも多く―――――――」
判っているさ。それは愛すべき女とか、甘ったるいものじゃない。
私が征服したいこの国のトップの座への盟友、仲間だ。
なんだかやけにこいつは、この頃私を心配してくれる。
妻子持ちで身を固めた親友…、
一方でお前ほど守るべき存在を持たず、独身だからこそ、より自由に戦える私はそれに誓いを強めて構える。
「ヒューズ、私は進む。だからお前は」
そこで私は言葉を制された。
家族に満たされて、幸せになれと言おうとした私の台詞をとっくに察知しているみたいだ。
「“だから”じゃなくて、お前さんも、いつか自分で手に入れろ」
「わかっているさ、国のことだろう?」
「そうじゃなくてなあ」
わかってないなと愚痴ったヒューズは、別れ際、ひらひらと手を振って帰っていった。


ヒューズと別れてから1時間、私は何を思ったのか…
昼間のこともあって、なかなか酔いが醒めなかった。
そしてそのまま、とんでもない深夜の時間帯にハボ子の家におしかけてしまった。
「た、大佐…」
「意外かね?私が来るのが」
中尉がいるのかと問うと、ハボ子は強く否定した。
眠そうな顔で、寝巻き姿ででてきたハボ子は、酔っ払いの私に帰れとは願わなかった。
玄関先で私は強引にキスをした。
どんな女もこれで落ちるし、愛されてると錯覚する。
君もうまく騙されたまえ
「っ……」
「寂しいだろう、明日から中尉が出張でいないもんだから」
「あっ…ぃ、や…」
綺麗な形をした彼女の胸をつまんで、弄った。
服を剥いて、寝室のベッドに押し進んで強くハボ子を倒してやる。
「…っ…あん」
「本当に、体だけは淫乱だな」
「ん、ぅ…!」
舌で乳首を噛んで、彼女の下半身を露わにしてやった。
「アァッ…ヒッ…」
愛撫とも言えない、早く突っ込んでやりたいだけの欲望のみで私はさっさと彼女の中を開かせてやる。
「面倒だな、中でだしたい」
最低なことを呟いてしまった私は、ハボ子の後ろに指を進ませた。
「あっ。やだって…大佐、そっちは…ヤメッ…テ…くれって」
嫌がるハボ子が縮れた声をだしていたので、私は彼女の体を押さえつけた。
そして、それほど使い込まれていないであろう後ろの秘孔を、ローションで緩ませて愛撫した。
「嫌…それ、だけは…」
煽るね、君は…男の虐ぶりたいという心情を…
彼女の腰を持ち上げて、私は彼女に獣のような格好をさせた。
そして、悲痛な喘ぎと共に、恥ずかしがって嫌がる彼女を抱いていった。
このベッドに連れ込んで、幾度か中尉とやってたんだろう、そう問うと彼女はびくびくと肩を揺らす。
ゆるゆると彼女の中を私は無遠慮に犯していく。
「あっ、や…あ、痛、いって…大、佐…っ――――」
「雌狗…――きちんと腰を振りたまえ」
「ヒャァ、あん…」
中で火でも秘めたかのようにハボ子は呻き、つぶさに訪れる快楽をこらえては啼いていた。
蠢きの繰り返しで君は泣いて、私は肉欲を貪り、彼女の中で全て吐き出す。
「うぁ、あっ…!」
やがて、屈辱的な姿勢で気を失った彼女を、私はそれでも…
もてあそぶかのようにいつまでも抱いていた。
泣いてるし、痛いからやめて欲しいとハボ子は懇願していたが、波のように降りる快感であえいでいたのを私は逆手にとって蹂躙した。
涙とか、痛々しい姿とか…すでに見慣れたと思ったのに、
月夜に反射して横たわる彼女の泣きはらした頬は酷く私を責め立てた。
「ハボ子…」
呼んでも返事がなかった。当たり前のことなのだ。
私のやった行為で、彼女は既に失神している。
「…言えるものか、この私が」
ぐだぐだと女々しい感情で眩暈がした。
自分で自分の頭を抱えて考え込んだ後、私はハボ子にキスをしてしまうこととなる。
もういい加減に認めなければ、自分がおかしくなりそうだ。
見下ろしたハボ子、ベッドに沈む温かい体…柔らかくて美しいその姿―――
好きなんだ
私は彼女が…
独りでいるよりも、君を想うほうが恐ろしい。
不安定なまま、私はこれまで前進してきたのだ。
本心では、女一人におさまって、守って行けるほどの甲斐性を持つのが煩わしい。
軍命とはいえ、殺人もしたし、危ない橋も何度も渡ったのでまっとうな男じゃない。
鷹の眼と称される彼もそうだ。
人並みに幸福を勝ち取ろうとは露ほどにも思っていないと以前、一言漏らしていた。
だからその分、親友が幸福になればどこかでバランスが取れると納得してたんだ。
不幸になりたくてそう思ってるんじゃないし、
そんな愚考で酔えるほど私は満足したいとも思ってない。
ただ、誰かにそんな自分を知られるのが嫌で、
みっともなくて汚いと感じられるのが恐いのだ。
そのとき、どんな顔をされるのかと思うと…自分がひたすら
――その10日後、私はヒューズの訃報に直面する。






美しかれ哀しかれ

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