KIDS play2
>709氏



「なー、アル、今日寝るとき上と下どっちがいい?」
 姉さんが嬉々としてこんなこと聞いてきた。一応断っておくが、ボクの家には二段ベッドなどない。ついでに言うと、今日は休みで、今は真昼間。外はこんな話など吹き飛ぶくらいいい天気だ。が、これくらいでくじけていては、姉さんの弟なんかやっていられない。
「普通でいいよ」
 姉さんの期待に満ちた眼差しを華麗に笑顔でスルーだ。
 もくろみは当たって、姉さんがちょっとふくれた。そうやって、ころころ表情が変わるのが楽しくてついいじわるしてしまうときもある。
「なんだよ、人がせっかく訊いてんのにー」
 頼んでないけどね。
「せっかくって、そんなこと今から決めてどうするの?」
 なんだかんだいいつつも、ボクもつきあいいいよなあ。もしかして、こういうのが甘いってことなのかな。
「今から夜までにそのシチュエーションのための傾向と対策を練る!」
 握りこぶしを作って、きつめの目の光を更にらんらんとさせている。こういう情熱がもっと他に振り向けられれば、っていうのは、言っても無駄なことなんだよね。うん、わかってるよ。
「傾向と対策って、そういう体位だって別に初めてするわけじゃないじゃない」
 大きな声ではいえないが、ボクら姉弟はそういう関係だ。いけないことだとされてるのは知っているけど、お互いに合意の上のことなので、ボクらにとっては問題ではなくなってる。
 姉さんがあけっぴろげな性格だもんだから、こういうことを話題にするのにためらいがない。っていうか、むしろ好きなんだろうなー、シモネタエロ話。
「バカ、だからこそだろ。毎日同じことするのに、同じシチュエーションばっかりだったら、飽きがきちまうだろ。飽きが来る前に日々研鑚。これ最強」
 ・・・ボクはこれくらいで萎えたりしない。大丈夫だ。多分。一瞬気が遠くなった気がするのは気のせいだ。
本当いうと、飽きが来る心配をする前に、毎日3回のハイペースをなんとかしてほしいんだけど。体力的にきついということはないけど、毎日それだけしてると、少々時間的余裕がないと感じるときもあるのだ。
 だったら断ればいいだろうと思われるだろうけど、姉さんのやる気は出物腫れ物ところ構わずの勢いで、一度その気になるととても止められたものじゃないのだ。ボクが何かしていても平気でのしかかってくるから、夜の読書はいつも中断だ。
 結局姉さんが満足するまでつきあうから、なんだかボクまでセックスが強くなっている気がするのは気のせいだと思いたい。いや、まだやりたい盛りなんていわれる年頃なんだから、そんなに心配することない・・・よね。
 しかし、毎日同じことするのにシチュエーションも同じになってくるというのは、ある程度しかたのないことで、それを打破していこうとするのは結構大変な努力ではないだろうか。まだ飽きがくるとかなんとかいうことを心配する方が早すぎる気がするけど。またどっかで変な話を読んだり聞いてきたりしたんだろうか。ありえる。ありすぎるくらいありえる。
「夜のこと、こんな明るいうちから考えてばっかりいたら、夜になったらお腹いっぱいになっちゃってるんじゃない?」
「何いってんだって。今からシュミレーションしてたら、どれをどうやって試そうかとかいろいろあって、ますますやる気でるだろ。アルにリクエストがないなら、今夜のシチュエーションオレが決めていい?」
 ボクの牽制球も姉さんにかかるとなんてことないらしい。
 いつもは有無をいわせずなのだから、シチュエーションの決定権を伺ってもらえるだけいいと思ったほうがいいんだろうか。そもそも今日するってことはすでに決定事項なんだね。
わかったよ、姉さん。それとも、シュミレーション(妄想って言った方がいいだろうか・・・)に盛り上がりすぎた姉さんに夜を待たずに押し倒される可能性の心配でもした方がいいだろうか。
「何?やっぱり考えてみる気になった?」
 返事のないボクを見て、いいように誤解してきた。まあ、それはいつものことなんだけど。姉さんは究極のポジティブシンキングだ。
 セントラルから取り寄せた本、あとは一気に読んでしまいたいから、昼いっぱいかかってしまうかもしれない。姉さんのやる気によっては、昼いっぱいの時間も本だけ読めるかわからないわけで。もたもたしてはいられない。
「じゃあ、今日のシチュエーションは姉さんにおまかせしちゃおうかな」
 姉専用の必殺とっておきの笑顔だ。
「ホントか!?」
 ホントも何も、何においても姉弟という立場上の関係のせいか、何事に置いても主導権は姉さんが握っていることが多いのだ。夜に置いては、立場上と言うより、よりやる気のあるほうに主導権があるだけの話。
 なんだか「姉さんにおまかせ」の部分が無駄に姉さんのやる気を煽ってしまった気がしないでもないが、ひとときの平穏な時間を得るためにはいたしかたない。すでに鼻息が荒くなってる姉さんが気になるが、ボクはとりあえず読書にいかせてもらおう。
 席を立って居間を出る前にちらっと姉さんの様子をうかがうと、うっすらと頬まで赤くしているようだ。これは作戦失敗したかな、と思いつつも、そんな風に体いっぱいに喜んでる姉さんは可愛いと思う。頭の中をめくるめく妄想が駆け巡っているのはとりあえず置いといて。

おわり




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