篭の華
>611氏
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彼を抱きしめたまま、ごろりと布団の上になる。
火照った肌に、同じように火照った彼の肌が心地良い。
こんなに充実感のある情交は久しぶりだ。
思えば、彼が此処に通うようになってから、あの男は一度も私を訪ねて来ない。
男と肌を重ね、体内に迎え入れるのも、実に一年ぶりになる。
だが、この充実感は、それだけではないだろう。
未熟だが、真摯な愛撫は文字通り、身も心も私をとろけさせた。
あの男に抱かれているときは、不快感と嫌悪感しかなかったのに。
だが、たとえ恋愛感情がなくとも、きちんと手順を踏んでいけば気持ちよくなるように、女の身体は出来ているのだ。
まさか、ひと回り以上も年下の少年からこんなことを学ぶなんて、思いもしなかった。
彼を抱えたままくすくすと笑っていると、彼が不審そうな声を上げた。
「何、笑ってんだよ?」
「あぁ、いや、君にはずいぶんと愉しませてもらったな、と思ってな」
「愉しい?」
「あぁ、初めてとは思えないほど良かったよ。君には、女を悦ばせる才能がある」
「・・・マジで?」
「こんなことで嘘をついてどうする?」
そう言うと、彼は表情を和らげた。
「良かった。何もわかんねぇから、痛いこととか辛いこととかしちまったんじゃねぇかって、ホントはビビッてたんだ」
「まぁ、初めてならそう思うのも無理はないな。それに、たとえ今は相手に痛い思いをさせても、経験を重ねていけば相手を悦ばせられるようになってくる。その鍛練のために、私がいるのだからな」
そう言って、彼の額にかかる前髪を掻き上げて、そっと口付ける。
「おめでとう。最初の試験は合格だよ、鋼の」
私が額に口付けるのを恥ずかしそうに見上げていた彼が、不意に身を起こした。
「あっ、そうだ!やべえ!」
「ど、どうしたんだ、鋼の?」
突然大声を張り上げる彼に驚いて、私も身を起こす。
「・・・オレ・・・さっき、姐さんの中に・・・」
「あぁ、そのことか。大丈夫、今日は安全日だから妊娠はしないよ」
私の体内で射精したことで、妊娠するのではないかと心配したのだろう。
やはり、初めてだということで緊張していたらしい。女郎が妊娠の危険がある日に男に抱かれるはずもないのに、そこまで気が回らなかったのだろう。
「そうだな、君にも私の『月のもの』の周期を教えておいたほうがいいだろうな。でないと、せっかく来てくれたのに何もしないで帰らせてしまう日があるかも知れないからな」
「・・・ただ、逢いたいから逢いに来る、じゃ駄目なのかよ・・・」
彼が小声で何か呟いたが、よく聞き取れなかった。
「何か、言ったかね?」
「・・・なんでもねえよ・・・」
そう答えて、彼はうつむいてしまう。
何か、彼の機嫌を損ねるようなことを言っただろうかと、彼の顔を覗き込もうとすると、いきなり彼は顔を上げた。
「姐さん、もう1回、いいか?」
「え?あぁ、もちろん。一回などと言わず、君がしたいだけ、何度でも」
そう答えると彼は私を抱き寄せて、額に接吻する。
さっきと同じように、最初から愛撫をやり直すのだろう。額に、頬に、首筋に接吻の雨を降らせ、丹念に胸を揉みしだく。
舐められて、吸われて、甘噛みされて。そのたびに嬌声が口を突いて出る。
一度火のついた身体なだけに、燃え上がるのもあっという間だった。
先の情事が終わった後に、彼に気づかれないよう女陰を綺麗に拭いておいたのだが、また濡れてきているのがわかる。
「・・・さっより、柔らかくなってるな・・・ここ・・・指だけでも・・・すげー気持ちいい・・・」
彼が、私の女陰に浅く指を抜き差ししながら呟いた。どうやら女陰を観察出来るだけの余裕が出来たらしい。
大陰唇、小陰唇と部位ごとに撫でたり摘んだりして、私の反応を見ている。
もちろんその間にも、冷たい機械鎧の手や柔らかな唇で、胸や脇腹を攻めるのを怠らない。
まだ、一度も挿入されていないのに、彼の愛撫に堪えきれず、前戯だけで私は何度も気をやった。
いくら、下地が十分整っていたからといって、前戯だけで気をやるなんて。
私の身体は、こんなにも敏感だっただろうか。
入り口を撫で回していただけの彼の指が、ゆっくりと中に入ってきた。
内部を探るように、優しく掻き回す。
「・・・あ・・・さっきより熱い・・・・・・絡み付いて・・・」
「・・・君に・・・欲情している・・・証拠だよ・・・」
「欲情・・・?」
「そう・・・君に・・・もっともっと・・・気持ちの良い事をして欲しくて・・・・・・君が欲しくて・・・こんなふうに誘っているんだ・・・」
「・・・姐さん・・・オレが欲しい?」
いきなり直球が来た。本当に順応能力の早い子だ。もう女にこんなことを訊けるほど、余裕が持てるなんて。
さて、これはどう答えるべきだろう。
いつまでも、こんなふうに弱火で焦らされていないで、思い切り燃え上がりたいというのが本心だが、彼がどういう態度に出るのかも興味がある。
「・・・君が・・・欲しい・・・ここに・・・君が・・・」
そう言って腰を突き出すように、さらに脚を開いて彼を誘う。
さあ、彼はどう答えるだろう。そう思って彼の返事を待つと、
「まだ、駄目だよ。もうちょっと姐さんの身体、研究させてよ」
そう言って、いたずらっぽく笑う。
ああ、もう、本当に、なんて生意気な!
次に私の中に入るときには、覚悟しておけよ!
私の持てる技術をすべて使って、一滴残らず搾り取るまで抜かせてなどやらないからな!
そんな私の思いなど露知らず、彼は丹念に私の体内を探っている。
「・・・ん?あれ?ここ、なんか感触が違う・・・?ざらざらした感じが・・・・・・」
そう言って彼の指が、私の体内の一点を集中的に擦る。
「ひゃあんっ!?」
突然、とんでもない声が口から飛び出した。彼が驚いて、私の顔を覗き込む。
「わ、悪い、痛かったか?」
「あ、いや、そうじゃない・・・ちょっと、びっくりしただけ・・・」
本当に、驚いた。今の感覚は、何だ?こんなのは、初めてだ。
「・・・続けても、大丈夫か・・・?」
一瞬、返答に困る。今言ったとおり、痛いわけじゃない。むしろ快感なのだが、感じ方が全然違う。
快楽神経をすべてまとめたスイッチを探り当てられたような、桁違いの快楽だ。
もっと味わってみたいような、怖いような、複雑な気分に、つい返事を渋ってしまう。
はっきりしない私の態度に業を煮やしたのか、再び彼の指が、例の一点を擦り始める。
「あっ、あっ、やあっ、だめっ!」
「だって、痛くないんだろ?つーか、気持ちいいんじゃない?ここ、すっげー締まるんだけど」
そう言って彼は、からかうような笑顔で私を見下ろしている。
何を偉そうに、と言い返してやりたかったが、それどころではない。
「あっ、あっ、だめだめっ!ああっ、やめてっ、やめてえ!」
あとからあとから嬌声が口を突いて出て、とても彼に受け答えする余裕などない。
「ああ・・・ここ、すげー熱くなってきた・・・ちょっと膨らんできたかな・・・」
「ああっ、ああっ、もぉ、やあっ!おねがいっ、やめてえ!」
「いいじゃん、イっちゃえよ」
駄目だ。頭の中が真っ白になる。彼の指が当たる、その一点だけに感覚が、意識が、すべて集中する。
「んんんっ!」
身体がはじけそうになる感覚に、思わず息を詰める。
すると彼は、さらに激しくそこを擦り始めた。
もう駄目だ!爆発する!
「あはああぁっ・・・!」
身体がバネのように反り返り、頭の中で閃光弾が炸裂する。
私は、一体どうなってしまったのだろう。何も分からない。
暫くすると、光の向こうから私を呼ぶ声がかすかに聞こえてきた。
「・・・姐さん、姐さん!大丈夫かよ!?」
光が薄れてきたので目を開けると、彼が心配そうな顔で、私を見下ろしていた。
「・・・あ・・・はがねの・・・」
「大丈夫が、姐さん!?」
「・・・大丈夫・・・だけど・・・一体、何が起こったのか・・・」
「悲鳴上げてイったと思ったら、急にぐったりしちまったから・・・失神してたのか・・・?」
「・・・かな?・・・よく覚えてないんだ・・・」
「失神した上に漏らしちまうなんて、よっぽどイイんだな、ココ」
そう言って楽しそうに、彼が笑う。が、聞き捨てならない言葉を聴いて、私は彼を問い詰めた。
「ちょっと、待ちなさい!漏らすって、何の事だ!?」
「何だ、自覚なかったんだ。これ、見てみなよ」
そう言って彼は、先刻まで私の女陰を弄んでいた左手を見せつけた。
どういうことか、肘のあたりまでびっしょりと濡れている。
何だ?何が起きたんだ?驚いて身を起こすと、脚の間に小さな水溜りがあり、次第に敷布に吸い込まれて染みになる。
ああ、これは、まさか、そんな!
「・・・あの・・・これは、お小水じゃなくって・・・その・・・・・・」
「恥ずかしがることないって。尿道が近いから刺激されて、出ちまったんだろ」
彼は、これを単純な生理現象として捉えているらしいが、私には他に思い当たることがある。
いや、生理現象と言えばその通りなのだが、しかし、それを彼に話してしまっていいものか。
初めて女の肌に触れる子供に、潮を吹くほど気をやった、なんて。
当然、女の身体には個人差がある。他の女郎達の話を聞いてみても、感じ方はさまざまだ。
だから私は、どちらかというと中よりも花弁や花心のほうが感じる体質だと思っていたのだ。
あの男に貫かれている時に、気をやったことなど殆どない。もしかしたら、私は不感症なのかもとさえ、思っていたのに。
なのに、こんなことになるなんて。
こんな子供相手に気をやって小水を漏らすことより、潮を吹いたことの方が、私には恥ずかしい。
だが、私は彼の教育係なのだ。彼には女の身体のことを、包み隠さず教えてやらなねばならない。
「・・・これは、その・・・お小水じゃなくて・・・『潮吹き』と言うんだ・・・・・・」
「潮吹き?」
「そう、その・・・膣の中には、さっき君が探り当てた・・・すごく感じるところがあって・・・そこを刺激すると、その・・・愛液がお小水を漏らしたみたいに・・・・・・」
どうしても恥ずかしさが先に立って、説明がしどろもどろになってしまう。
一方彼はと言えば、女体の神秘を目の当たりにして、好奇心に目を輝かせていた。
「へー、面白ぇ。女の人の身体って、そう言う仕組みになってんだ」
「ただ、これも諸説あって・・・そのツボも、有る女と無い女もいると言うし・・・愛液じゃなくて小水だと言う説もあるし・・・まだ、仕組みや成分と言うのは、よく分かっていないらしいんだ・・・」
そもそも、潮吹きした当の本人でさえ、何がどうなったのか分からないのだ。詳しく説明のしようがない。
「じゃあさ、もう一回してみせてよ」
「え?」
「もう一回、潮吹いてみせて。採取して成分を調べてみるからさ」
「ええ!?」
「これでも国家錬金術師だぜ?そこいらの医者より、人体の構成物質にゃ詳しいんだ」
「そんなこと、しなくていい!」
「だって、成分が解りゃ、どういう仕組みで潮を吹くのか、分かるようになるだろ?」
「分からなくてもいい!」
ああ、私は何を言っているのだろう。
女郎が、客の要求を拒むなんて、あってはならないことだ。
だが、また彼の前で潮を吹いて、その成分を調べられるなんて、そんな恥ずかしいことは死んでも御免だ。
それ以前に、また、あの快楽を味わわされるのが、怖い。
理性も自我も、何もかも真っ白に溶けていってしまう、あの感覚が怖い。
あの光の中へ飛び込んだら、二度と戻って来られないような。それが、怖い。
本当に、私はどうしてしまったのだろう。女郎が、快楽に臆病になるなんて。
初めて女の悦びを知る、生娘でもあるまいに。
「じゃあ、採取はしないから、もういっぺん潮吹いて見せて」
「嫌だ!大体、何度もそんなことしたら、布団が汚れるだろう!?」
「汚れくらい、オレが錬金術で・・・って、成分が分からなきゃ駄目か」
「とにかく!嫌だといったら嫌だ!」
「ふーん・・・」
彼はそう呟いて、不満そうに唇を突き出した。何か、不穏なことを考えているに違いない。
突然彼は、左手の人差し指を突き出して、それを私の鼻先へと突きつける。
なんだろうと警戒していると、突然ぐるりと視界が反転した。
「わあ!?」
人差し指は、陽動だったのだ。私がそちらに意識を集中している間に彼は右手で私の膝小僧を掴んで上へ押し上げたのだ。
当然、私は仰向けにひっくり返ることになる。彼の前に、無防備な姿を晒してしまった。
「駄目っ・・・!」
逃げようとして身を捩ると、今度はうつ伏せの状態で組み伏せられる。
私のほうが身体が大きいのに、こうもやすやすと押さえ込まれるなんて。きっと、何か武術の心得があるのだろう。
感心してばかりはいられない。何とか彼に思いとどまってもらわなくては。
「往生際悪いよ、姐さん」
笑いを含んだ声で囁きながら、彼の指が女陰の割れ目を撫でている。
「あっ・・・な、なんで・・・そんなに、あぁっ・・・潮吹きなんか・・・あぁ・・・見たいんだ・・・」
「だって、面白ぇじゃん」
「お・・・面白いとは・・・あぁっ・・・失礼なっ・・・」
「あぁ、悪ぃ。『面白い』っつーのは、語弊があるな・・・『嬉しい』ってのが、近いかな?」
「うれし・・・って・・・ああん・・・」
「オレがあれこれすることで、姐さんが気持ちよくなってくれるのって、嬉しいじゃん。
それに、ここをこうすれば姐さんを喜ばせられるっていうツボを探し出すのも楽しいし・・・ココとかさ」
「ああっ!」
とうとう、彼の指が押し入ってきた。何の迷いも無く、あのツボを探り当てる。
「いや、いや、だめえっ!」
「姐さんこそ、なんでココ駄目なんだよ?気持ちいいんじゃねえの?」
「ああっ、いや、いや、やめてえ!」
彼はツボを刺激するだけでなく、お尻や背中までも撫で回す。
冷たく硬い機械鎧の感触もあいまってか、ただ撫でられているだけなのに信じられないほどの快楽だった。
「おっ、おねがいっ、やめてっ・・・へんに・・・なっちゃうっ・・・」
「変になるって・・・気持ちよすぎて、変になりそうってこと?」
「あっ・・・あっ・・・そう・・・だから、もう・・・やめてっ!」
「そんなに気持ちいいんだ、ココ・・・」
今、私は、一体どんな表情で、彼に哀願しているのだろう。彼の前では、努めて冷静に振舞ってきたのに。
正気を失くした私など、彼に見られたくない。
「・・・姐さん・・・可愛い・・・」
ふいに飛び込んできた言葉に、一瞬、我に引き戻された。
今彼は、なんと言った?
「・・・かわ・・・い・・・?」
「姐さん、いつもお高く澄ましててさぁ、正直、最初の頃はヤな女だなって思ってたんだけど・・・」
これは、もしかして、口説かれているのだろうか。
「一緒に寝るようになったころから、だんだん態度が柔らかくなってきてさ・・・」
そう優しい声で囁きながら、しかし彼は愛撫の手を止めない。
「こんなふうに、『気持ちよすぎるから、やめて』って泣き喚くなんて、会ったばかりの頃には想像もしてなかったよ。
このギャップが、すげー可愛い・・・」
私は、もう、駄目だ。
こんな子供に口説かれて。
こんな子供にいいように弄ばれて。
こんなにも感じているなんて。
壊れている。
「ああぁっ、もぉ、だめえぇっ!」
また、頭の中で閃光が弾ける。上も下も、右も左も、前も後ろも判らない、あの世界。
だが、誰かが優しく頭を撫でる感触が、私を現実世界へと引き戻した。
「目ぇ覚めたか、姐さん?」
目を開けると、彼が優しい笑顔で私を見下ろしている。
いつの間に、こんな大人びた表情をするようになったのだろう。
「・・・あ・・・わたし・・・また・・・?」
「あぁ、ほら、この通り」
そう言って彼は、わたしの目の前に左手を翳した。細く白い指先から、ぽたぽたと水滴が滴り落ちている。
頬どころか、耳まで熱くなるのを感じた。
あまりの恥ずかしさに敷布に顔を埋めていると、彼が濡れた手でそろりとお尻を撫でる。
「目ぇ覚ましたばかりで悪いんだけどさ、姐さん、オレの方もいいかな?」
何を、と、訊き返すまでもない。この状況で彼が望むことと言えば、ただ一つだ。
「やあっ、頼むから、少し休ませて・・・続けてなんて・・・無理・・・」
指だけで、失神するほどの快感を立て続けに味わったのだ。これで彼の男根を迎え入れたら、一体どんなことになるのか。
「ホント、悪いけど、こんなに可愛い姐さん見てたら、我慢できなくなっちまって・・・」
彼の両手が、私の腰を掴んだ。熱く硬い先端が、入り口にあてがわれる。
「ま、待って。だったら、口でしてあげるから・・・ああぁっ!」
最後まで言い終わる前に、一気に奥まで貫かれる。それだけで、目の前に火花が散った。
「あ・・・なんか・・・先っぽに当たる・・・」
そう呟くと彼は、確認するように何度も奥へ打ちつける。
「あぁっ、あぁっ、やだっ、なんでっ・・・?」
彼が打ちつけるたびに、先端が子宮に当たる。
元々彼は、その年齢と体格に似合わず、立派な男根を持っている。
しかも、より深く相手を受け入れやすい後背位だ。子宮に届くこと自体は不思議ではない。
だが、ここが。こんな奥が、これほど感じるなんて。
あの男に貫かれている時は、子宮に当たるたびに口から内臓が飛び出しそうな衝撃と、不快感しかなかったのに。
「あぁ、そうか・・・これ、子宮なんだ・・・ココも、気持ちいい?」
そう言いながら彼は先端でつついたり、ぐりぐりかき回したりと、熱心に私の中を研究している。
「あっあっ・・・やだっ、だめっ・・・だめだめっ・・・!」
「姐さん、潮吹きのツボと同じリアクションだね・・・気持ちいいんだ・・・すっげー・・・締まる・・・」
次第に彼の腰の動きが激しくなり、息が荒くなってくる。
「あっ、あっ、だめっ・・・そんな・・・はげしく・・・しないでっ・・・!」
「・・・っ、姐さんこそっ・・・そんなに・・・締め付けないで・・・!」
そう言いながらも、彼の腰の動きは一向に衰えない。彼の男根が奥を叩くたびに、頭の中で爆竹が爆ぜる。
「・・・姐さんっ・・・!」
「うあっ・・・ああぁっ・・・!」
ひときわ深く貫かれた瞬間、子宮に、焼けるように熱い彼の迸りを浴びせられて、私はまた白い光の中に落ちていった。
目を覚ますと彼が横に寝ていて、あの大人びた優しい笑顔で私の髪や頬を撫でていた。
この一晩で、一体私は何度夢と現を行き来したのだろう。しかも、まだ夜は明けていない。
「落ち着いた?今夜は、もうこれで止めとこうか?」
それは、本来ならば私が言う台詞だ。まさか彼の方に、主導権を握られるなんて。
正直、心身共に、もうくたくただった。このまま、眠ってしまいたい。
だが、客の要求を満たさせるのが女郎の務めだ。
今の口ぶりから、彼の方はまだまだ満足していないことが判る。
彼の方が体力で上回っているのなら、私は技術で彼を満足させてやればいい。
「・・・構わない・・・君がしたいのなら・・・いくらでもお相手しよう・・・」
そう言って、彼の首に腕を絡める。
「・・・ホントに大丈夫かよ・・・?」
「私は女郎で、君は客だ。だから・・・」
耳元に口を寄せて、誘うように、甘く、囁く。
「もっと私のからだで、愉しんで・・・」
もう、どうなってもいい。
彼と交わって、あの、気が狂うかと思うほどの快楽の中で、死んでしまってもいい。
彼以外に、私にこの快楽を与えてくれる男はいないのだから。
私の方から誘うことで安心したのか、彼は起き上がって私の上に覆いかぶさった。
そして、柔らかな唇が、額に触れる。
そう、もっと私で愉しんで。そして・・・
もっと、私を、愉しませて。
ふと目を覚ますと、なんだか肌寒い。
どうやらお互い裸のまま、抱き合って眠っていたらしい。
いけない、機械鎧装備者は、ただでさえ身体を冷やしやすいのに。このままでは彼が風邪を引いてしまう。
彼を起こさないように、足下に固まっていた掛け布団を行儀悪く足先で引っ掛けて、彼と共に中へ潜り込む。
窓の外を見ると、空が白み始めていた。
一体私は、この一晩で何回気をやらされたのだろう。
こんなことは、初めてだ。
あの男相手では、まったくと言っていいほど快楽を感じず、いつも嫌な思いばかりしていた。
快楽を感じていれば、 その間だけは囲われ者と言う惨めな立場を忘れていられるだろうに、それすら出来ない自分の身体の鈍さを、何度も呪った。
だが、違ったのだ。
私は不感症だったわけではない。
あの男の愛人として、何年も身体を弄ばれていながら、私は女としてまったく未開発の身体だったのだ。
その証拠として、私はこの夜、前戯だけて何度も気をやった。
自分の知らない快楽のツボを、幾つも知らされた。
意識が飛ぶほどの絶頂を、味わった。
まさか、初めて女の肌に触れる、一回り以上も年下の少年に、女の悦びを教えてもらうなんて。
だが私も、まだ女として目覚めたばかりだ。これから彼との経験を重ねることによって、さらに開発されるかもしれない。いや、して欲しい。
私が彼を一人前の男に育てあげ、私もまた、彼によって一人前の女に磨かれる。
彼ら、錬金術師の言うところの「等価交換」ではないか。
共に成長していく姿を見られるのは、どれほどの楽しみだろう。
あの男の斡旋だとしても、私は彼と知り合えた幸福を、天に感謝した。
続