『 さくらんぼ 』      8p



ター君は私の事をいつも誉めてくれたけど
決して「好きだ」とか「愛してる」とかは言ってくれなかった

でも、今よおやく聞けたわ

確かに聞いた。「愛してる」って聞いた
嬉しい。すごく嬉しい。これでよおやく2人はひとつになれたのね・・・・


“ 笑顔咲ク 君と抱き合ってたい
  もし遠い未来を 予想するのなら ”



ステレオから流れる曲がそう歌ってる


遠い未来を予想するなら、私はずっとター君と一緒なのよ
それ以外考えられないの
もう、後戻りは出来ないもの

私は、自分の手にベッタリとついた赤い血を見てそう呟いた
そして、用意しておいた荷造り用の紐を手にとった
それを持ってター君の元へ近づいて、彼の頭の上にある窓を開けた

窓を開けると、その両端に物干し竿を掛けれるような金具がついていて
その金具を利用して物干し竿が1本かかっていた

私は、紐を適当な長さに切ると、その紐を持ってター君を跨いで立った

ター君の顔は青白い
しかし、顔色に反比例するように体は血で赤い

私はしゃがんで彼に言った

「さくらんぼみたいに、ずっとあなたとつながっていたいの。ター君愛してるわ」

そして、持っていた紐を彼の首に回した

「何するんだ?やめろ!お願いだ!止めてくれ!!」

ター君は私の手を振り払おうと、精一杯抵抗した
けど、出血がひどくって段々と力が入らなくなってきてるのか・・・
数分前に私を突き飛ばしたみたいな、彼の力はもう無い

紐は彼の首に一回りして巻き付けた

その紐を物干し竿に跨がせると
物干し竿は、井戸の水をくみ上げる滑車の役目みたいになった

私が、紐をひけばター君の首に巻きついた紐が引っ張られ、ター君の首が絞まる

「幸子・・・・な、やり直そう。俺とやり直そう。な、死ぬ事ねェヨ・・・・お願いだ・・・幸子・・・」

ター君は泣きながら訴えた

「すぐだからね。苦しくないからね。ねぇ、ター君お願いがあるの」

「幸子・・・・お願いだ・・・止めてくれ・・・・俺・・俺が悪かった・・よ・・・」

「お願い。もう一度愛してるって言って」

「あぁ、言うよ。言うから許してくれ・・・・・幸子・・・愛してるから・・・・」



ぐえっ・・・えっ・・・・ええっ!!!



私はおもいきり紐を引っ張った
紐は、ター君の首に食い込み、彼の体が少しだけ持ち上がった



本当はわかってる
あなたは私の事なんか愛してないって
私だけが幻想を見てるんだって
でも、それでもいいの
何もなかった毎日。寂しかった毎日
それを埋めてくれたター君が愛しくって・・・ずっとあなたと一緒にいたいの
あなたと私はずっと繋がっていたいの



私は全身の力を込めて紐を引っ張りつづけた




そして





彼は死んだ







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