柳の木に隠れて代官は店頭で忙しそうに働く越後屋を見ていた
腹の出た体を重そうに動かしながら、お得意様らしいお客にヘコヘコと頭を下げる越後屋
たいして、暑い日でも無いのに額にはうっすらと汗をかいている
その汗を手ぬぐいで拭き取りながら、今度は越後屋は使用人を怒鳴りつけていた
そんな、中年の太った男を見て代官は目を細めていた
声をかけるわけでも無く、ただ越後屋を見つめた
そうやって見つめる男がいるとも知らずに、越後屋はいつもと変わりなく商売を続けている
しばらく見つめた後、見届けるように代官は背中を向けてその場を去った
あれから・・・・
二人が関係してから・・・・3ヶ月の月日がたっていた
関係したのは、あの夜1度っきり
初めて経験する男の体に戸惑いながらもすっかり代官の虜になった越後屋は
その後も代官から声をかけられる事を待った
しかし、2度と代官は振り向く事は無かった
越後屋は再度、代官と関係を結びたくて自分なりに努力した
偶然を装った顔をして、代官に声をかけたり
「美味い酒が手に入りましたのでご一緒に飲みませんか?」と、誘いの文を渡したり
越後屋なりに、さりげなく代官を誘ってはみたものの・・・
どれも越後屋の心に答えてもらえなかった
越後屋は代官には脈が無いと感じ、その寂しさや、刹那さから、少し痩せてしまった
まぁ、越後屋の場合少々痩せた所で、いったいどこが痩せたのかわからない程の
中年太りな体型であるので、痩せた事は誰も気づいてくれなかった
3ヶ月の間、色々努力した越後屋だったが
さすがに、振り向いてもらえない事に虚しさを感じ、代官に付きまとうのは止めにした
毎日の商売に汗水流して、綺麗に忘れてしまおう!
あの夜の事は忘れてしまおう!
越後屋はそう決めて、より商売に貪欲になった
しかし、どんなに商売が上手くいって儲けが出たとしても
心の奥は全然満たされてない事に自分でわかるようになってしまった
以前の越後屋なら、そんな感情はまったく気づかなかった
自分は本当は寂しがっているという。という感情
金さえ儲ければ幸せなんだと信じていた昔
代官に出会って、愛しい言葉をかけられて、越後屋は変わっていった
金だけでは、決して満たされない心の幸せを、代官によって教えられた
そんな風に越後屋は変わっていた
3ヶ月の間、毎日のように越後屋は代官を感じていた
あの時の代官の言葉が何度もリフレインし
あの時の代官の手や舌の感触が蘇り
あの時の代官の男棒を受けいれた快感が全身に電流のように走る
夜な夜な布団に入り込むと同時に、代官を思い出す越後屋
左手で、自分の胸をまさぐり
右手で、自分の肉棒を握り上下に動かした
荒い息と共に、1人で絶頂を迎え、1人で果てる
そんな毎夜を繰り返していた
おかげで、金だけが目当てで結婚した気の強い妻からは
「あんた!臭いよ!手洗ってから店出なさいよ!」
と、朝の挨拶もせずになじられる毎日だった
それでも、越後屋は毎夜の自慰を止めれなかった
代官を思い出し、時には涙しながら、白い液体を1人発射した
もう振り向いてもらえない事を身にしみてわかっているのに・・・・
まだ、越後屋は心の奥で代官を待っていた
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