Love Letter 10
現実と言うものは、容赦ない。
受験生の私達は、所謂『恋人達のイベント』と称されるクリスマスを、完全に無視。
大晦日にも、15分くらい電話をしただけ。
そう言えば、期末試験が終わって自由登校になってから、1度も会っていないような気がする。
『とうとう、明日はセンターだね』
電話の向こうからも、多少ピリリとした雰囲気を感じる。
電話をするのも、1週間ぶりだ。
『里佳ちゃん、緊張してる?』
「・・・よくわかるね。確かに緊張してる。すごく」
高校受験の時よりも緊張している。
今夜は眠れそうにない。
『落ち着いて、いつものようにやれば大丈夫。2ヶ月近く、あんなに数学特訓したじゃない』
「うん・・・頑張る・・・」
『随分弱気だなぁ・・・』
夕真くんが電話の向こうで苦笑しているのがわかる。
『大丈夫。絶対、大丈夫だから』
「うん」
でも、やっぱり私はほとんど寝付けなかったのだった・・・。
センター試験会場には、もうウチの学校の生徒が沢山集まっていた。
勿論、他校の生徒達も。
向こうの方に、チラリと、夕真くんの姿が見えた。
夕真くんも私に気づいたようだったので、私は彼に微笑みかけた。
話しかけることは、しない。
結局、付き合うことになってすぐ自由登校になってしまったので、私達が付き合っていることを知る人は数少ない。
菜々だけ、だ。
菜々も、私の隣で緊張していた。
「なーな。大丈夫?」
顔を覗き込んでみれば真っ青、私の方がビックリするくらいだった。
「菜々。緊張しすぎ」
「だって・・・」
声も消え入りそうなくらい小さい。
「お互い、頑張ろう」
センター試験の出来は、まあまあだった。
私立大のいくつかの学科の合格通知が、私の手元に来ていた。
第一志望にしていた大学の入試が、もうすぐある。
夕真くんとは、センターの帰りに少し話した。
彼は国立大学が第一志望だ。
2月末の入試まで、まだまだ猛勉強の日々が続くのだろう。
2月4日。
菜々は第一志望の大学に、合格することが出来なかった。
2月8日。
私は第一志望の大学に、合格した。
菜々は大きな目標を持っていて、その大学に行きたいと切に願っていて、一生懸命勉強してきたと言うことを、私は知っている。
私は、菜々とは全く逆だ。
何になりたいかわからない。
結局、大学だって就職の時につぶしがきくからと言うだけで、文学部を選んだ。
なのにどうして私だけが合格して、菜々は不合格なんだろう。
「里佳ちゃん、おめでとう」
菜々は、何でもないことのように言った。
「菜々・・・」
「やだ、そんな顔しないでよ、里佳ちゃん。折角おめでたい話なのに」
「だって・・・」
「私なら、大丈夫。まだ2次募集あるしね。こんなところでへこたれるわけにはいかないの」
菜々はキッパリ言った。
「だから、里佳ちゃんも自分の合格、喜んで?」
「・・・うん。ありがとう、菜々」
私に残されたのは、菜々と夕真くんを応援すること、だけだ。
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