della Tempesta
煎れたてのコーヒーと焼けたパンのいい匂いが寝室にまで漂ってくる。
朝だ…
温かい布団の中でウトウトしながら、ツナは思う。
もうすぐ起こしにくるだろう、だからもうちょっとだけ…
静かに扉の開く気配。起こすのだから、乱暴に音を立てて開けてもいいだろうに、
そういう気遣いをしてくれることを嬉しく思う。
「おはようございます、沢田さん。朝ですよ、起きてください」
優しい声が降ってきて、控えめに体を揺らされる。
「ん…も、ちょっと」
「ダメですよ、起きて」
両腕を手前に引いて上体を起こされる。布団がすべり落ちてツナの白い胸からへそまでが露になった。
「あ…」
慌ててツナは布団を引き寄せて肌を隠した。獄寺はくすりと笑う。
「まだ恥ずかしいんですか?昨夜もあんなに大胆だったのに」
「だ、だって、朝だもん」
ツナは耳まで真っ赤になりながら、口の中でごにょごにょと、
ごくでらくんのいじわる、と言った。
「さ、朝ごはん召し上がってくださいね」
獄寺は聞こえないふりでサイドテーブルに置いたトレーを持ち上げる。
ホットケーキが美味しそうに湯気を立てていた。
「わあ!ホットケーキ!」
ツナは子供のような歓声をあげた。
という事は、あのパンとコーヒーは獄寺の分の朝食で、
わざわざ別に用意してくれたのか。
「スゴい!獄寺君が焼いたの!?」
「いっつもパンじゃ飽きると思いまして」
得意そうに笑う獄寺の顔は年齢よりもずっと幼く見えた。
「焦がしてない?大丈夫、獄寺君?」
「も、もうそんな失敗しませんよ!」
ツナはクスクスと笑った。
「沢田さんも意地悪です……。失敗してるかどうか、確かめてください」
ナイフで一口サイズに切ったホットケーキをフォークに刺して差し出す。
「自分で食べれるよー」
そう言いながらも、ツナは素直に口を開けた。小さな白い歯と赤い舌がのぞく中に、フォークを入る。
「んー、んぐ。おいしーよ、獄寺君」
口紅をひかなくても薄いピンク色の唇がもごもごと動く様子に、獄寺は幸せを感じた。
可愛い人、可愛い人、愛してる。
愛情が高ぶるまま、その唇に口付ける。
ホットケーキには、たっぷりシロップがかかっていたのでツナの口の端にはシロップがついてしまっていた、
ので舐めてキレイにする。
「んっ、んっ」
ツナの漏らす吐息はシロップよりもずっと甘くて、獄寺はそれも舐めとってしまう。
「あふぅ…」
銀糸を引きながら唇が離れて、獄寺は今度は指で摘んでそのまま、ツナの口に柔らかな供物を捧げた。
「沢田さん…はい」
「ん…獄寺く、ん」
ちゅぱと音を立てて指が離れる。
「はあ…」
「もっと、召し上がってください、ね」
そう言いながら、ツナを再びシーツの海に沈めていく。
「うーん…毎日ベッドの上じゃ、俺、太っちゃうよ…?」
「ちゃんと運動もさせてさしあげてますよ?」
「でも…」
「解りました。もっと激しいのを御希望ですね?」
「え……あんっ!」
「沢田さん…」
「あっあっ!やあん!ごくでらくぅんっ!ああっ!いいっ!もっとぉ……!」
深い森の古い屋敷の中、二人は、いつまでも快楽を貪りあっていた。
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