「ある昼下がりの選択」


 桓たいの姿を見付け、打ち合いをしようと思ったが、何故かのらりくらりとかわされ逃げられた。仕方ないので今度は鈴と祥瓊の所へと向かったが、忙しいのかとても遊んでいられない。下界に降りて遊ぼうかと思ったが、兵達に泣きながら止められた。

「主上、私には妻も子もいるんです、台輔のお怒りを買いたくはないのです」
「私にも生まれたばかりの子供が……あの子を残しては死ねません!」
「主上が今抜け出したら、これからおやつの饅頭を食べられなくなります!」
「また職務を遂行出来なかったら減給なのです」

 口々に訴える兵達に、仕方なく陽子は引き返した。
 一部おかしな訴えがあったような気がしたが、きっと気のせいだろう。


「という訳で、何か面白い話をしてくれ」

 何日もくすぶるように雨が振り続け退屈しきった陽子は、長椅子に寝そべりながら注文する。足をぷらぷらさせながら、いかにも退屈そうにこちらを見遣る主を見ながら、景麒は考えた。

 午前の政務も終わり丁度時間も少し空いている事だし、たまにはいいだろう。そう思い律儀に断ってから主の隣に座る。

 主上に何をお話して差し上げよう?

 景麒は……


A:今年度の補正予算案について説明して差し上げよう。

B:金波宮にまつわる面白い怪談をお話して差し上げよう。

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