枯れない花 花を育てている。 種を見つけて、水をやって栄養を与えた。 虫がつけば駆除して、綺麗にきれいに咲くように囲いも与えた。 花がそろそろ咲きそうなのに。 でっかい虫がついてしまった。 「じゃぁ静雄さん、これ…」 「ん」 携帯のアドレスを交換しあう帝人君とシズちゃん。 あれ、2人とももうそこまで発展しちゃったんだ? 帝人君がシズちゃんに淡い恋心を抱いているのを知っている。 だってずっと見ていたのだから。 ずっとずっと見守っていたのだから。 「なんだか不思議ですよ、ね。毎日会ってるのに今さらアドレス交換なんて」 「帝人と居るとそういう細かいことまで気がまわんなかったな」 「静雄さん?」 「…いや、なんでもねぇよ」 「…??」 不思議そうに首を傾げる帝人君、かわいいなぁ。 そして、むかつくことにあの喧嘩人形も帝人君に恋心を抱いている。 これぞ相思相愛。 気が付いてないのは本人たちばかり。 …だからこそ。 付け入るすきがまだまだあるわけなのだけれど。 「あ、すみません、時間ですよね」 「わりぃな、今度飯でもおごる」 「わ、悪いですよ!それよりお仕事頑張ってくださいね」 「あぁありがとう、気をつけてな」 「はい!」 にこにこにこ。 俺が育てた花はとても綺麗な蕾を持っている。 まさにあとちょっとでその蕾が開くというのに。 ここまで育てて、なぜ他人に奪われないといけないのだろう。 俺だけが愛でるために育てたのに。 な ぜ 奪 お う と す る 「やっほーシズちゃん」 「蚤虫こっちくんじゃねぇっていったよなぁ?」 「うるさいなー俺がどこ歩いてようと勝手でしょ?」 何を考えているかわからないシズちゃん相手に、笑みを作る。 …今日の目的はただ一つ。 それ以外はどうでもいい。 帝人君が気がつく前にその恋心を摘んでしまおう。 要らない虫は駆除しないと。 シズちゃんは恋愛なんてしたことないから知らないでしょう。 恋はあとから来たものにだって平等で。 だからこそ、先手必勝だということに。 宙を舞うありとあらゆるものからひらりひらり避けて。 そして懐に突っ込む。 狙いはただ一つ。 「死んでよね!」 「死ぬのはてめぇだ」 がつんとした衝撃とともに、ナイフが吹っ飛んでいく。 想定内。 ほしいものは手に入れたから、あとは逃げるだけだ。 今日は本当に殺したいわけじゃないからね。 「ははっ死にたくないから逃げさせてもらうよ」 「蚤虫てめぇー!!」 怒りに我を忘れたシズちゃんは気が付いていない。 携帯がなくなっていることに。 こうやって喧嘩していたのだからその時落としてそして紛失したと思うだろう。 そして帝人君は明日からテストでシズちゃんに会うことができない。 だからこその交換だったわけだけど。 あぁなんて愉快!! 「帝人君は俺だけを愛してればいいんだよ」 殴られた頬に手を這わして。 少し痛む唇を無視して楽しくて微笑む。 これからのことを考えると楽しくて楽しくてしょうがない。 さて、まず一通目のメールはなんて送ろうか。 期待させてさせてさせて。 そして、どん底に突き落とす。 シズちゃんの振りなんて死んでも嫌だけど、帝人君を手に入れるためならばシズちゃんにすらなりきろう。 泣いて泣いて泣いて そして蹲る帝人君は可愛いだろう。 その時手を伸ばしたものを帝人君は拒めない。 さて、狩りの時間だ。 猶予はない。 今すぐにでも行動を起こさないと。 「絶対に、渡すものか!」 その花散らした後も、傍に居るのは俺だけでいい。 戻 次 2010.6/27 如月修羅 |