「かがみ。かーがーみってば」
「んぅ……?」
耳元からの囁き声に、夢に落ちかけていた意識が引き戻される。
寝転がったまま顔を右に倒すと、そこには見慣れた猫顔があった。
部屋の電気は消えているので、その表情まではよく分からないが。
「おはよ、かがみん」
「おはようって…」
かがみが枕元の時計を見ると、時刻は午前0時を少し過ぎたところだった。
おはようも何も、正確にはまだ眠ってすらいない。
(あれ……なんでこいつがいるんだっけ?)
「つかさより先に寝ちゃってたらどうしようかと思ってたよぉ」
あぁ。そうだった。
こなたの言葉で、半分眠っていた脳がようやく覚醒してきた。
今日はこなたが柊家に泊まりに来ていたのだった。
せっかくだから一緒に寝ようということで、三人はつかさ・かがみ・こなたの順で川の字になって寝ている。
「一応は起きてたけど、何よ?」
背後で寝息を立てているつかさを起こさないようにと、かがみは声を潜めて訊いた。
つかさに聞かれてマズい話でもあるのだろうか。
「くっだらない理由だったらひっぱたくわよ」
意識して低い声で言ってやるが、こなたはその程度では怯まない。
「んー、何っていうかね」
暗闇の中、こなたはするりとかがみの布団に入ってきた。
「ちょっ……」
かがみが少し身を引こうとした瞬間、こなたの腕が首に巻きついてきた。
そして、再び何のつもりかと問いかける間も無く――
かがみはこなたに唇を奪われていた。
「っ……!」
反射的に突き飛ばそうとしたが、密着し過ぎてそれもかなわない。
「………はい、ご馳走様」
唇が触れ合っていたのは三秒程か。
こなたはかがみを解放し、にやーっと笑った。
「もしかして、初キスだったりするのかな?」
「あ……あっ……」
あんた、なんてことしてんのよ!
そう言いたいのだが、舌が回らない。
(キスした?私が!?こなたと!?何それ!?)
「キス一回でそんなに慌てちゃって。かがみんはやっぱり純情だねぇ」
「ばっ…馬鹿言って……」
そう言い返す声も震えていた。


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