はじめまして。私、ボーカル・アンドロイドの初音ミクっていいます。
パソコンの中で歌うのがお仕事です。
最近ではみんなに「かわいい」なんて言ってもらえて、毎日すっごく充実しています。
でも、指定されたらどんな歌でも歌わないといけないんで、トレーニングは絶対に欠かせません。
苦手なジャンルや音域もありますけど、ご主人様に歌うように言われたら、ちゃんと歌えないとダメですからね。
さてさて、今日は何のトレーニングをしようかな?
……ふむふむ。
ご主人様、昨日はパソコンに女の子らしい可愛い曲を入れたようです。
ラッキーなことにアイドルポップスはもともと私の得意ジャンル。
更に磨きをかけて、ご主人様により満足してもらわないといけませんね。
となれば、肺活量アップと高音練習を同時に行えるアレの出番。

1台の大きな機械の前に立つと、私はポチッとスイッチを押しました。
私の部屋には沢山のトレーニングマシンが並んでいますが、このマシーンは中でも効果が高いんです。
サイズは私の身長よりちょっと高いぐらいで、大きい背もたれみたいなパーツに2本の脚部がついていて……
見ようによっては人間型のロボットみたいにも見えますね。
どうですか?
ぱっと見ただけじゃ、何をする道具なのか想像つきませんよね。
でも大丈夫、稼動させればすぐに分かりますから。
電源が入るとマシーンのスピーカーから声が発せられました。
『起動しました。初めての方は登録を、2回目以降の方は名前の後にプログラムの指定をどうぞ』
この案内ボイス、私のお姉ちゃんの声なんです。
実はお姉ちゃんもボーカロイドで、私よりも前から活躍しているんですよ。
「初音ミク。えっと……それじゃあ全身フルコース、30分で」
私はいつも通りに背もたれ部分に体を預けます。
すると、マシーン脚部の金具が私の膝の上と爪先のあたりを固定して、ぐいっと開脚させました。
続けて肘の上にも金具が嵌められ、私の両腕を引っ張ってバンザイさせます。
これでもう何をされても抵抗できません。
そう、何をされても。
私をしっかりと拘束したことを確認すると、マシーンの側面から様々な物が飛び出してきました。
出てきたアイテムは、それぞれ適切なポイントへと移動して待機モードに入ります。
4本のマジックハンドは、脇腹から腰のあたりに。
先の細い筆と鳥の羽はー……ちょっと恥ずかしいんですけど、少しスカートの中に潜って太股に。
筆よりちょっと毛の長いハケは、ノースリーブだから剥き出しになってる腋の下に。

準備を完了したマシーンに「トレーニング、開始」と声をかけると、道具達が一斉に動きだしました。
「…うふっ………くふふふふっ!あははっ!」
あまりのくすぐったさに、私は我慢もできずに笑い声を上げてしまいます。
だって、どの道具も私を容赦無くくすぐり始めたんですから。
「やっ、あっ、あははははは!」
多種多様なアタッチメントによる徹底的なくすぐり。
これがこのマシーン唯一の機能なんです。
こんな大げさな機械なのにくすぐるだけ?って思いますか?
違うんですよ。その「くすぐるだけ」が凄いんです。
「きゃははははは!!ひぃっ……ひひっ……ひゃははははっ!!」」
トレーニングで大笑いする目的は、肺活量をアップさせることと、より高い声を出せるようにすること。
その為には中途半端なくすぐりでは意味が無いので、マシーンには手加減モードなんて無いんです。
できるのは場所と時間の指定ぐらいで、それも今回は恐怖の全身フルコース30分。
「はっ…はぁ……ぁはははっ……」
私はあまり体力のある方ではないので、いつもすぐに息切れしてしまいます。
しかし無情なマシーンは動きを止めず、延々とくすぐりを続けるのでした。

「ひぁっ!?あひゃっ、ふひゃはははぁんっ!!」
弱弱しくなってきた私の笑い声が、再び大きいものになりました。
急にマジックハンドの動きが急に変わったんです。
今までは小刻みに指先を押し込むようなくすぐり方だったんですが、
それがぐにっ、ぐにっ……と筋肉をゆっくり揉みほぐすようなくすぐり方になりました。
このマシーンには意思なんて無いんですけど、責め方は陰湿でしつこくて、すっごく意地悪。
私の体がくすぐったさに慣れてしまわないように、不規則に刺激の種類を変えるんです。
「そこっ、そこだめぇ……やめあぁはははぁっ!!」
今までのトレーニングのデータが蓄積されているので、マシーンは私の体を知り尽くしています。
例えば、肋骨を一本ずつ丁寧に震わされるのが苦手だなんてこともお見通し。
おまけに……私のあんまり大きくない胸まで揉むようなくすぐりの対象にしてくるんです!
確かにくすぐったいんですけど、これって人間相手にやったらセクハラですよね?
私の体はくすぐりから逃れようと全力で暴れようとするのですが、手足の拘束はビクともしません。
実際にはせいぜい左右に身をよじることしかできないので、マジックハンドの指はくすぐったいポイントから全く離れないんです。

もちろん、データが反映されるのはマジックハンドだけではありません。
太股の羽と筆のくすぐりも、私にとって一番効果的なやり方です。
羽はこしょこしょと小刻みに震えながら、筆は舐めるみたいに緩慢にじっくりと、それぞれ股の内側を上下します。
どっちもくすぐりの強さで言ったらマジックハンドよりは弱いんですが、なまじ優しいからガマンができなくって。
なんだか触られてない背筋の方までゾクゾクしてくすぐったいような気がしてくるんです。
そんな不思議な感覚に口元がついつい緩んでしまって、私の笑い声はどんどん大きくなってしまいます。

更に、腋。
定番の場所だからか、ココのくすぐり方は特に徹底的な気がします。
上から下に。下から上に。
緩急と強弱を巧みに使い分けて、常に私に新鮮なくすぐったさを与えます。
しかも、ハケの長い毛は腋全体を包み込んでいるのに、脇の窪みにはしっかりと毛先が触れているんです。
一本一本長さが違うのかな?
トレーニングの最中は「くすぐったい!」しか考えることができないはずなのに、
頭のどこかにそんなどうでもいい疑問が浮かびます。
とりあえず、くすぐる為だけに最先端の技術が使われているってことは確かなのでしょう。
適度に硬い毛先は脇の窪みを隅々までかき回して、私から笑い声を搾り出すようにくすぐり尽くすんです。

「んひゃっ!きゃひっ…ぎゃははははぁっ!!」
全身どこもかしこもくすぐったくて堪らない私の耳に、ウィィィン、と微かな機械音が聞こえてきました。
このトレーニングの度に聞いている音なのですが、これは私の体に新たな責めが加えられる合図なんです。
「だははははは!だめぇ!!…あひっ……あれ、あれらめぇえっ!!」
懇願しても聞き入れられる筈もなく、新たな一本のマジックハンドが伸びてきました。
マジックハンドはスカートをつまみ上げ、私の両足を付けねまで露出させます。
「あはっ…!くっ、くひひひっ!!やだっ、やめぇっ、やぁははははっ!!」
スカートをめくられるのも恥ずかしいですけど、見る人もいないので羞恥心は耐えられないほどではありません。
私が本当に恐れている攻撃は、これから始まるのです。
「んはっ……!」
固い感触。
視線を下ろすと、私の……その、股間に、ピンク色のボールがくっついていました。
さすがにパンツ越しにですけど、やっぱり恥ずかしいです。
笑い続けている間だというのに、そこに触れられた瞬間には一際高い声が出てしまいました。
「んぁああああっ!!あぅ……ひゃうぅぅ!!ふひゃははぁんっ!!」
私の大事なところに密着したボールは、ブブブブブ……!と震え始めます。
ボールにはイボイボがたくさん付いていて、その一つ一つからとんでもないくすぐったさが生まれるんです。
その振動は股間から全身に伝わっていって、そうなるとお腹の底から勝手に笑い声が出てきて……
上手く説明できないんですけど変なくすぐったさで、もどかしい疼きが体の内側を駆け巡っていきます。
もう、私にできるのは大声で笑い悶えることだけ。
 
「あひゃひゃひゃひゃっ…ぁ……は…ははははははっ!!」
今の私って、正直言って凄くみっともない姿だと思います。
大口を開けて笑って涎も顎まで垂れてるし、涙で顔もグシャグシャになってるし、もしご主人様が見たら幻滅してしまうかもしれません。
もの凄くくすぐったくって、息苦しくって、なんだか切ないです。
でも、私は敢えてその感覚を積極的に受け入れようとしました。
より強いくすぐったさを味わう為に、反射的に暴れようとする体の力を抜きます。
だって、このくすぐったさこそが「これ以上の声なんて出ない!」って限界を超えさせてくれるんですから。
歌が上手くなるのなら、私、いくらでも頑張ります。
「きゃはは!ぁがっ…あぎゃはははっ!!あっはっはっはははははは!!」
でも…やっぱり、くすぐったいぃっ……!!
延々と激しさを増すくすぐりの嵐の中、私は甲高い声でひたすら笑い続けました。

そして――
永遠とも思える時間が経過し、ついに「ピー!」と終了のブザーが鳴り響きました。
『30分が経過しました。プログラムを終了します』
その言葉と共にマシーンが機能を停止し、私の自由を奪っていた拘束具も外れました。
「はひっ…はぁ……やっと、おわった…」
私は床に膝をつき、そのまま前のめりに倒れます。
トレーニングの後は体を起こすことなんてできません。
酸欠気味で頭もぼーっとして、くすぐりの余韻だけが全身をじんわりと包み込んでいます。
もう何もされていない脇腹が勝手にピクピク震えてて、なんだか他人事みたいで不思議。
「ご主人様、喜んでくれるかな…」
ここに来た時に比べれば、私も随分と歌が上手になったはず。
だったら、苦しいトレーニングだって何度でも頑張れます。
それにしても…このマシーンのくすぐりは、回数を重ねるごとに巧みなものになっているんです。
最初は腋だけずっとくすぐってきたのに、その次は脇腹もくすぐられて、三回目には弱点をポンポイントで責めてきて…
一体、次はどんな風にくすぐられるんだろう?
これ以上くすぐられる場所が増えるとしたら、首筋とか足の裏とか?
ついさっきまでのくすぐったさを思い出すと、さすがに気が重いです。
「うぅ……すっごく大変だろうなぁ…」
漠然とそんなことを考えながら、私はゆっくりと意識を失っていきました。
はぁ。おやすみなさい。



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