退屈な授業を終えた、開放感溢れんばかりの放課後。 僕は借りた本を返す為に、図書室にきています。 図書室のドアをくぐると、カウンターにいるのは― 「あ、桜君。本の返却?」天使の微笑みを浮かべた静希ちゃんです。 「うん。試験も近いから、古文の資料なんかを借りてたんだ」 ちなみに僕は、毎回静希ちゃんが受付にいるときを狙って本を借りる(+返す)ようにしています。 こうすれば、静希ちゃんは近い内に僕の知性派な一面に気付くのに違いありません。 「あ、そうそう」 静希ちゃんが僕から本を受け取りながら言いました。 「ちえりちゃんと宮本君。今、一緒にここで勉強してるよ」 何ですと!?ううむ…どうやらあの二人は順調にやっているようです。 そのうちきっと、彼らはラブを語り合い、その後は…その後はぁぁぁ!! 「ちょっと、桜君、桜君!そのおでこから出てる緑色の液体は何!?」 「え…?あぁ、ごめん静希ちゃん。ダイジョウブダイジョウブ」 僕としたことが、少々取り乱してしまったようです。 額から垂れた粘液をぴっぴっと払い、二人の様子を覗き見ることにします。 静希ちゃんに場所を聞き、影の如くこっそりと移動。 「いた…」 勉強関連の本棚の近くに、宮本とちえりちゃんの姿がありました。 遠目に見ても、『カップルしてる』といった雰囲気を発しています。 うんうん。それでこそ、静希ちゃんと協力して作戦を実行した甲斐があったというものです。 少し離れた所からそれを見続ける自分が大分切ない感じですが、それは考えないようにします。 あぁ、宮本のやつ…あんなに爽やか200%なスマイルしやがって。 と、その時。ちえりちゃんが机から消しゴムか何かを落としてしまいました。 二人は同時に拾おうとして、ごちん、と頭をぶつけました。 宮本もちえりちゃんも照れたように笑っています。全くもってほほえましいやりとりで…って、えぇっ!? 何と二人は、見つめあった姿勢から動こうとしません。