父親が一億一千五百万円の借金を残して自殺したのは僕が七歳の時だった。
どのような約定が交わされていたのか、今でも僕には分からないのだが、僕の身柄は某広域暴力団の預かりということになった。
初めてお客さんをとったのは十一歳の時。
今日、十三才と一ヶ月の僕は、やはりお客さんに抱かれている。
「はぁ……、あっ……あぁ……、あうぅッ!!」
ローションをたっぷり入れられたオナホールで、僕は陰茎を強制的にしごき上げられる。両手をベッドの端に赤い紐で縛られているから、抵抗することもままならない。天井の白熱灯がやけにまぶしい。
柔らかすぎるくらいのグニャグニャなシリコンが僕の幼い勃起肉に絡みつく。ネチョネチョとイヤらしい粘着音が非貫通型の玩具から響く。僕はたまらず嬌声を上げる。
「ひああぁッ……! い、いやぁ……、こんなのぉ、こんなのでイきたくない……。やあぁ、ひやあぁッ!!」
女の子みたいな喘ぎ声がホテルの壁に反響する。内藤さんは面白がって、さらに手の動きを速めていく。
「こんなのは非道いなぁ、せっかく君の為に買ってきたのにさぁ。結構高いんだよ、コレ。さぁ、もっともっと感じてよ」
内藤さんはお客様の中では優しい方なのだけれど、それでもかなりの変態さんだ。怪しげな玩具を買ってきては、すぐ僕に試したがる。そのたびに僕は新たな性感を開発されてしまう。
「ほーら、グチュグチュになっちゃうねー。真咲くん、気持ちいい? ねえ、気持ちいいー?」
「はひいぃッ! き、きもひいいれすうぅ。……と、溶けちゃうぅ、僕、ぼく、溶けちゃうよおぉっ!」
厚手のシリコン生地で作られたオナホールはどんなに強く握っても圧力をあまり感じさせない。ただ、複雑に施された中の加工が、もの凄い変化をしながら僕のペニスを刺激しまくる。それはテコキとも女性の膣内とも違う、圧倒的な甘美だ。
「ひッ! ひいぃッ! あひいぃッ!」
僕はどんどん登り詰めていく。たまらず手首に縛られたロープを握りしめる。
しかし、オナホールの使用では、どんなに気持ち良くても強烈な一撃が生じない。射精寸前のビクビク感が延々と引き延ばされる。女性が感じるオルガスムスに近い感覚なのだろうか、普段では感じることの出来ない悦楽に僕はガクガクと震える。
「はは、いい感じみたいだねー。さー、まずは射精しちゃおうか。その後は、お兄さんも楽しませてよ」
クライマックスの際を感じ取り、内藤さんの手つきはより一層乱暴なものになっていく。僕は熱いとろみがどんどんペニスの先からあふれ出すのを感じる。全身が硬直し、腰がガクガクと震えはじめる。
千々に乱れた呼吸の先、絶頂の光が目の前に広がる。
「ひっ! ひぐうっ! い、イっちゃうぅッ! イくぅ、イくぅ、イくうぅッ! イぐううぅッ!!」
ドビュウウゥッ! ビュルルウゥッ! ビュルウゥッ! ビュウゥッ! ビュッ! ドビュウウゥッ!
僕は今日の一番搾りの精液を、円筒状をしたシリコンの内に噴き出した。
大量の放出で、半透明のオナホールは中が一辺に白濁に染まる。僕の精子が潤滑剤と混ざり、トロトロと下から垂れる。薄い陰毛が濡れ、下腹部に張り付く。
「はは、ヒクヒクしちゃってる。やっぱ真咲くんは可愛いねぇ。お兄さんもいろいろ用意のしがいがあるってもんだ」
「……あ、あうぅ、……はうぅ」
僕は全身を痙攣させながら、遠くに内藤さんの声を聴いている。まだ意識がはっきりしない。呼吸が引きつる。
しかし、そんな僕の状態を意にも介さず、内藤さんは次のプレイの準備を進める。
僕のペニスからオナホールが外される。それを内藤さんは両手に持ち、クルリと表裏をひっくり返す。
柔らかいシリコン製の玩具はクルクルとその表皮を返し、円筒は複雑に入り組んだネトネトの面が表になる。ローションと精液の混合物が、トロロのように糸を引いている。
ベチャリ。僕の頬にオナホールの表面が当てられる。
「うぅ……」
僕は思わず顔をそらす。しかし、まだ手首が縛られているから、この状況から逃れることはできない。
「ほら、真咲くんの出したモノだよ。美味しそうだ……」
内藤さんはオナホールの穴に指を差し入れ、僕の頬を丁寧に撫で回す。粘度の高い液体が、顔にネトネトと塗りたくられる。
それはやがて、僕の口にも近づいてくる。
放心状態で半開きだった僕の唇に、濡れたオナホールが強引にねじ込まれていく。
「……ふ、ふぐうううぅぅッ!!」
突然の玩具の進入に僕はたまらず呻き声を上げる。アゴをのけぞらし、首をよじる。
「いいねぇ、いい声を出す……。そそるよ、真咲くん……。やっぱ君は最高だ」
違う、この声は演技なんかじゃない。僕は本当に苦しいんだ。
タダでさえ息苦しい所へ、強引に突っ込まれたシリコンの塊。僕の体は薄まる酸素にビクビク震える。
……ブジュウウゥッ! グジュジュウゥッ! ブジュッ! ブジュッ!
口の中がデタラメに掻き回される。
それは、どんなキスだってこんなにはならないだろう異様な感触だった。まるで、怪物の舌で強引に口内の垢ををこそぎ落とされているみたいだ。ローションと精液の味が喉の奥にまで入ってくる。
オナホールの中の指が、僕の舌を摘んでくる。舌はヌルヌルと滑り、捕まえることは出来ないが、それでも絡みつくシリコンの感触に僕はくぐもった悲鳴を上げる。
「あぐううぅ……! う、うぶうぅっ……! ふぶううぅっ……!」
ヨダレを飲み込むことが出来ない。僕の口からは大量の液体があふれ出し、アゴがベタベタに汚れていく。跳ねた雫は僕の胸やら額やら、あるいはベッドの上に落ちていく。
あまりの苦痛に僕は身をひねる。しかし、内藤さんの指はしっかり僕の口に差し込まれたままだ。僕には逃げるコトなんて出来やしない。
「自分のモノの味はどうだい……? とってもエロいだろ。お兄さんの大好きな味、やっぱり真咲くんにも味あわせて上げたくてさ……」
徹底的に口内を陵辱された僕はもう限界だった。頭の中がピンク色に霞んで、何も考えられない。勃起の収まらないおちんちんだけがとても熱く感じる。全身が上気し、瞳は涙で濡れている。
ようやくオナホールが口から抜かれた時には、僕はもう身体に少しも力が入らなかった。クテッと身体をベッドに投げ出し、虚ろな目で天井を見上げていた。
内藤さんのローションまみれの指が、僕のお尻に近づく。指の先端が、僕の窄まりにあてがわれる。
僕の体は反射的に縮こまる。
グッ! ググゥッ……、ズズッ!!
「ひううぅっ!」
僕のアナルには、一気に二本の指が差し込まれた。下半身から伝わる強烈な圧迫感に僕は呻く。
内藤さんの指が肉環を激しく出入りする。ローションが塗られていても、そこには猛烈な熱が生じてくる。
熱い。僕の身体からはイヤな汗が滲み始める。
お尻から広がる悦楽のパルス。僕の開発された性感帯はこんな乱暴な愛撫も快感として受け止めてしまう。
中に入った指がねじられながら、広げられる。僕の菊座は楕円形に広がりながらゆっくりと回っていく。
「うぐぅ……、うっ、ううぅッ! ふぐうぅ……」
「真咲くんはいいねー。まるで女の子みたいな反応だ……。ほら、こんなところがいいのかい?」
内藤さんの指が奥まで押し込まれていく。そして、少し伸びた爪が僕の敏感な前立腺に当たる。
カリッ、カリ、カリカリ……。
「ひやあああぁッ!! や、それやあッ! いやあぁッ!」
強烈な刺激に僕は発作的にのけぞる。しかし両腕を縛られた僕の体はただベッドの上でのたうち、シーツにシワをよらせるだけだ。
内藤さんの指先の動きは緩急をつけた絶妙なものになっていく。鋭敏な場所を掻き、少し立ったら優しく撫で、快感が散った直後にまた強く押す。
身体の奥から熱い液体があふれ出すのが分かる。凶悪な愛撫に導かれ、腸液がS字結腸を越えて来たのだ。
「あはははは、大変だ真咲くん。こんなにエロエロになっちゃって……。発情真咲きゅん、可愛いなぁ……」
内藤さんは残った手を僕のお腹に這わす。体液で濡れたおへそを撫で、中指の先を柔らかい肉に突き立てる。
指先が、僕の体を這い上がってくる。
ツウゥと中指は僕のみぞおちを通過し、胸元にまで寄ってくる。何かを転がされているかのような感触に、僕の背筋は反り返っていく。
まっすぐに上がってきた内藤さんの指は、そこで大きく右にカーブする。
狙いは僕の乳首だ。内藤さんの指は僕の乳輪の周囲をクルクル回り、先端の勃起を誘っていく。
「はあっ……、はうあぁ……、あぁ……、あはぁ……」
イヤらしい指使いに、僕の官能は高まっていく。血液が僕のオッパイの先に集まり始め、乳首はまるでアポロチョコのような形に変形していく。
イヤらしい三角錐の乳頭が、僕の胸に屹立する。
オッパイの勃起を確認すると、内藤さんはその逆方向にも狙いを定めてくる。指先が再び滑り、こんどは左の乳首を回り始める。
しかも、この刺激の合間も、僕のお尻に入った指は動きを休めない。いよいよ高く粘着音を響かせながら、僕のお尻をとろけさせていく。
「あっ……、ひやあぁッ! あっ、あっ、あっ……、あぐうぅッ!」
ついに僕の胸は小高いピンクの山が二つも立つことになった。先端が心臓の鼓動にあわせてビクビクと揺れる。
「ほーら、真咲くん完全形態だ……。じゃあ、そろそろ頂こうかな……?」
内藤さんはそう言うと、僕のお尻から指を引き抜いた。
「ひゃぐッ!」
開いた穴から、腸液と混ざったローションが垂れ落ちるのを感じる。僕は消失した圧迫感に安堵し、少し深く息を吸い込む。
でも、すぐにそんな状態も終わる。内藤さんはベッドに膝をつき、僕の太ももを掴む。
腰が持ち上げられていく。痛いくらい勃起したペニスが縦に揺れ、先から雫が落ちる。
そして、お尻がガッチリと内藤さんの両手で固定される。彼の柔らかい亀頭の先が僕のお尻にあてがわれる。
「いくよ……、いいね?」
「は、はい……」
僕の同意を確認すると、内藤さんは再び僕の腰を持ち直し、ペニスを中に突き立て始める。
「ひうッ!」
ズウゥッ! ……ズッ、ズッ! ……ズウウウッ!
内藤さんの長く熱い逸物が、僕の直腸を進み始める。指とは比べモノにならない野太い肉塊が、肛門を押し広げていく。
僕は少し息み、菊門を自分で広げる。ジュブジュブとイヤな音をたてながら、挿入は続く。
ついに、内藤さんのペニスが根本まで埋め込まれる。ガツンと身体の奥を押す圧力に、僕の背筋がゾワゾワと震える。
「顔、凄く赤いよ。……そんなに今日は感じちゃってるの? そんなにいい?」
「はい……、気持ちいいです。おちんちん、入れられるのって……好きなんです。繋がってるって……カンジぃ」
ハァハァと口で息をしながら、僕はお客様の問いに正直に答える。気持ちいい……。やっぱセックスって、気持ちいい……。
心とは関係なく、気持ちいい……。
頬に涙が一筋伝う。僕はそれを拭こうと反射的に手を伸ばそうとする。しかし、腕は縛られている。そこまで伸ばすコトなんて出来やしない。身体はガクンと後ろに引っぱられ、僕は体勢を崩す。
「おっと、危ない」
内藤さんが僕の背中に手を回し、身体を支える。
彼の顔が近づいてくる。そして、舌が伸ばされる。
涙を、舐められる。
「うぅ……ッ」
赤い粘膜が頬を這う。そこはローションと精液と涙でコテコテのハズだ。いったいどんな味がするんだろう。
そして、内藤さんの腰が動き始める。
深く埋め込んだペニスの包容感を楽しむように、内藤さんはゆったりとしたリズムで腰を揺らす。
「はあっ…………、はぁ……、あぁ……ッ、あ……ぁ……、はぁ……」
僕の呼吸も合わせて大きいモノになっていく。内藤さんはさらにそのリズムに合わせて、ピストンを繰り返す。
前立腺への大きなな圧力が僕のカウパーを押し出していく。ピュルピュルと溢れる透明な液体が、水滴となって僕のお腹を濡らしていく。
内藤さんの舌が、頬から首筋に降りてくる。彼は唇で動脈の感触を楽しむ。
さらに舌は僕の鎖骨にまでやってくる。窪みを舌で舐め回され、骨に歯が立てられる。僕は顔を歪ませる。思わず首がつってしまいそうなくらいの力が入ってしまう。
「あうぅ……、そこ……やぁ、きもひいいの……やらぁ」
「はは、真咲くんはとっても敏感だ。そんなんじゃ、ここなんて舐めたらどうなっちゃうの?」
「ふあ……?」
内藤さんの舌は僕の胸元に這ってくる。そこには、僕の勃起した乳首がある。
プチュウゥッ……。
「ひゃう……ッ! きゅ、きゅうぅッん!」
充血して敏感になった乳首を口に含まれ、僕は絞り出すような悲鳴を上げる。全身が固まり、縛られたロープがピンと伸びきる。お尻にも力が入り、キュンと内藤さんのペニスを締め上げる。
「うわ……、すごいよ。今、お尻で吸われた。真咲くんのお尻に……。こんなの女の子にもあり得ない、名器ってヤツだ……」
「ひうぅ……、う、うぅぅ……」
内藤さんの大きな口の中に、僕のオッパイが含まれていく。反対の乳首も、指がプルプルと震えている。腰の揺れだって止まっていない。僕は鋭敏な三点を同時に刺激される衝撃に眩暈を起こす。
チロチロと内藤さんの舌が僕の乳首のさらに先端を弾く。甘い快感が電気になって全身を走る。体中の細胞が歓喜に震える。
僕は何も考えられない。ただだらしなく、様々なテクニックを駆使されたプレイに酔いしれる。絶妙な舌使い、丁寧な指使い、そして心得た腰使いに、僕は息を荒げることしかできない。
「あうぅ……うぅ……、うあッ! ひうぅ……ッ! うぐぅッ!」
緩急をつけて続けられる愛撫に、僕の官能が押し上がられていく。ついには奥歯までカタカタと鳴りだし、ときどき発作的に身がよじれる。
お尻には勝手に力が入る。波打つように伸縮する括約筋が、ピストンするペニスの動きを更に複雑なモノにする。内臓を掻き回される異様な感触……、僕は腰を8の字にくねらせ、発生する快感の波を享受する。
しかし、この心地よさを絶頂にまで押し上げる一撃はまだ発生していない。……僕のおちんちんに、まだ直接の刺激がない。
トクトクと壊れた蛇口のように先走りが漏れている。しかし、まだそこには指一本も触れていない。失神しそうなくらいの愉悦なのに、射精にまではどうしても至らない。この手が自由なら、僕は自分でガシガシと陰茎をこすり上げているだろう。
そんな僕の心を察したのか、内藤さんは口をオッパイから外した。
「あ……、あぁ……」
少しだけ快感の水位が下がっていく。
「真咲くん……、もうトロトロだね……。うん、お兄さんも気持ちいいよぉ……。凄く、気持ちいい」
内藤さんはそう言うと、ベッドの端に手を伸ばした。
彼の掴んだモノ、それはさっきまで僕を苦しめていたあの大人のオモチャだった。
僕は戦慄する。
「ちょっと……、ウソですよね……? またそれ……使うなんて、しませんよね……」
僕は思わずベッドを背中であとざする。しかし、そんなことをしたって距離を取ることなんてできない。内藤さんも一緒に腰を前に動かす。
「お兄さんは、可愛い君をもっともっと可愛くしたいと思うんだ……。使うよ……。そして、真咲くんをドロドロに溶かして上げる」
真咲さんがシリコンの穴を僕のペニスにあてがう。
「ひッ!」
僕の鋭い悲鳴が響く。
しかし、内藤さんの手は止まらない。器用な手つきで僕のおちんちんはオナホールの内に飲み込まれてしまう。
「ひあぁ……、いやだよぉ……。それ、気持ち良すぎる……、僕、変になっちゃうよぉ……。変になるぅ……ッ!!」
シリコンのヒダが硬くなった肉茎に絡みつく。
「うん、変にしてあげる……。イヤらしい真咲くんを、もっとエロくしてあげる……」
ブジュウウゥッ!!
「ひぎぃッ!!」
オナホールが一気にきつく握られる。中からは空気が抜けて、強烈な吸引と、締めつけが発生する。
柔らかい繊毛が生き物のように絡みつく。そのままゆっくりと動かされると、身体の芯が抜けてしまいそうな錯覚まで起こる。
やだ……、これ、やっぱヤダぁ……ッ!
「ひあぁ……、あッ、あッ、あッ……! あぐぅッ! ふ、ふわあぁ……ッ!」
「お鼻、ヒクヒクさせちゃって……。あー、すごい汗だ……。ベトベトだねぇ……」
内藤さんの腰が動く。
手でも僕のペニスをこすりながらの形になるが、その速度はさっきまでのピストンなんかよりずっと速く、一撃一撃がとても重い。僕は身体を引きつらせながら、その圧力に耐える。
夢見心地な快感を与え続ける陰茎部に対し、目が覚めるような鈍痛を与え続ける前立腺。二つの異なる快感が混ざり合い、僕の理性は壊れていく。
絶え間ない快感の嵐に全身が暴れる。しかし、腕と腰を固定されたこの状態では、僕の体は床に落ちた金魚のように、虚しくベッドの上で跳ねるだけだ。
僕は眉根に深いシワを寄せながら、だらしなく口を開いている。唾液が口の端からダラダラと垂れ、シーツを汚す。
クッションに頭が押しつけられ、髪が乱れる。
「あああぁッ、やらぁ……、わ、分からなくなるぅ……、分からなくなるぅ……」
もう自分が何を言ってるのかさえ理解できない。僕の口からはデタラメな譫言が発せられている。
そんな声を聴いて、内藤さんはさらに興奮しだしたのか、腰の衝撃はさらに強くなってくる。
お尻の穴ではブジュブジュと泡沫が弾ける。潤滑剤がいくら効いていても、そこは燃えるような熱を発することになる。
「あぁ……、お兄さんも溶けるよ……。一緒に、ドロドロになろう……?」
「はあぁ……、あぁ、あはあぁ…………」
その時バチンと、頭の中で何かが切れる。僕は大きくアゴをのけぞらせる。
限界だ。僕はもう射精してしまう。あと一秒も耐えられない。
「ひぃッ! ひぐッ! ひぐうぅッ! で、出ひゃいますうぅ……ッ!」
「うん、いいよ……。真咲くん、出しちゃいな」
「は、はひぃ……、い、……イぐうぅッ! イぎますうぅッ!」
ドビュウウウゥゥッ! ドビュルウゥッ! ビュルウゥッ! ビュクン! ビュルッ! ビュッ! ビュウウゥッ!
煮溶けた精液が僕の精輸管を灼きながら登りつめ、一気に鈴口から噴き出した。
欲望の樹液がダクダクとシリコンに注ぎ込まれる。圧倒的快感に導かれた射精は延々と続き、僕の意識は遠くなる。
「あ…………、あ…………」
しかし、
「よし、次はお兄さんの番だね、一気にいくよ……ッ!」
ズンッ! グジュッ、グジュッ、グジュウゥッ!! ブジュウウゥッ!
「……ひ、ひいいぃッ! ひぎッ! ぎいいぃッ!!」
射精直後、まだ全身がビクビクと痙攣を続けているそんな時、内藤さんは再び腰を振り始めた。
バチバチと内藤さんの腰に、僕のお尻の肉があたる。拷問のような悦楽に、僕は死さえ覚悟する。
僕はとてつもない衝撃に目は大きく見開き、口は窒息寸前の魚みたいにパクパクと虚しく開閉する。
内藤さんは腰と同時にまだオナホールも動かしている。ローションの泡が卑猥な音をたてて破裂し、粘度の高い液体がお互いの恥毛まで濡らす。
気持ちいいなんてモノを飛び越えた、苦痛しか伴わない快感。焼きごてで脳を直接灼かれているような感覚が俺をさいなむ。
「あ……、真咲くん……。いい……、君の中……さいこぉ…………ッ!!」
「……あ、あひ………………ひ…………、ひぎ…………ッ!」
全身の筋肉が硬直し、ブルブルと小刻みに震える。お尻の中も収縮し、僕は内藤さんの逸物を強く締め上げる。
「おぉッ! う……、うあぁ……ま、真咲くん…………、い、いぃ……」
内藤さんが歓喜の呻きをあげる。しかし、その声は僕の耳に届いても、意味のある言葉に思えない。
僕は強すぎる快感に我を失っている。ただただ、この法悦の地獄が早く終わることを一心に天へ祈る。
(終わって……、もうダメだから…………死んじゃうから…………、もう僕死んじゃうからあぁッ!)
内藤さんの腰がターボがかかったかのように猛烈に動く。ラストスパートだ。もう、お互い理性の紐が切れる限界だ。
イく……、僕はまたイく…………ッ。イきながらイっちゃううぅッ!!
「……ッ! う、うおおぉッ! イくぞぉッ!!」
「…………うッ……うぐうッッ!!」
心臓が縮む。背骨に電撃が走る。そして、大量の白濁液が登ってくる。
ドビュウウウウウゥゥッ!!
ビュルウゥッ! ビュルウゥッ! ビュクンッ! ビュルルウゥッ! ビュルウゥッ! ビュッ! ビュウゥッ!
ビュウゥッ! ビュクン! ビュクンッ! ブビュウウウゥッ! ブビュッ! ビュウウゥッ! ビュルンッ!
お互いが、一気に、精巣に溜まった欲望の証左を全て噴き出した。
「あ…………あぁ…………、凄いよ…………」
内藤さんの感極まったセリフ。しかし、僕には言葉もない。失神寸前の快感に、ただ、わななくことしかできない。
そのまま、僕達は時間が止まったように固まる。もう、動くことなんて出来やしない。
内藤さんが、僕の隣に崩れ落ちる。ベッドのスプリングが大きく揺れる。
同時にアナルの圧迫感も消え、僕はようやく解放される。
開ききった穴から、トロリと精液が漏れる。
西池袋のラブホテルを出て、内藤さんと別れた。時間はもう二十三時、普通の店のシャッターは全部降り、普通じゃない店のドアの鍵が開く。ピンクや紫の照明が、アスファルトを行き交う人々の髪に反射する。
「ふう……」
疲れた。
内藤さんは常連さんの中でも少し変な人で、僕を気持ち良くさせることに執心する。まあ、痛くされるよりはいいんだけど、やりすぎは困る。
でも、追加料金はしっかり出してくれるしなぁ……。
まあいいや。今日はこのまま直帰の予定なので、僕はそのまま駅前へ移動する。
アパートは椎名町だし歩いていってもいいんだけど、激しいプレイで腰がガクガクしてしまってる。おまけにもの凄くだるい。今日はもうダメだ。電車で帰ろ。
しかし、池袋駅西口の前で 携帯が鳴る。メロディーは「どぉなっちゃってんだよ(岡村靖幸)」。……お店からだ。僕は嫌々ながらも携帯を開くしかない。
「もしもし〜、もう終わってるよね、おつかれさま〜」
店長のオブラートのように軽薄ペラペラな声が電話から聞こえてくる。
「お疲れ様です……」
僕の声は本当に疲れてる。
「えっと、僕は今日、このまま直帰ですから。それじゃ、お疲れ様でした」
「あ〜ッと! ちょっと待って真咲くん。まだ切らないで、切らないで〜ッ!」
僕は押しかけていた通話切りボタンから指を離す。
「なんですか、まったく……。今日はもう無理ですってば」
「いや、今回はちょっと特殊。真咲くんをご指名なんだけど……断ってもいいよ」
「は?」
珍しい。というより、そんな言葉初めて聞いた。
「なんですか、それ。なんなら、そっちで断ってくれても……」
「でも、真咲くんの方から断った方がいいと思ってさ」
僕はストラップを人差し指で回す。
「誰ですか、それ」
「『雪広』って名乗ってる。まえに真咲くんが話してくれた例の彼でしょ。……はは、やるね〜」
「雪広ぉッ?!」
同級生だ。1年C組出席番号2番、井上雪広。
よりによって、二ヶ月前に俺に告白したヤツ。
「うん、そういうわけなんだよ〜。まあ、素性をバラした真咲くんの責任もあるでしょ。お金は用意したみたいだし、仕事をしてもいいけどね。……まあまかすよ。なにせ未成年だし」
「僕だってそうですよ……」
「ウチの子たちはみんなそうだってば。そういうわけで、お願いね〜、場所は……」
西池袋公園。
歓楽街を少し離れたところにあるそこは明かりも少なく、植え込みの影がとても濃く見えた。バラ園があったりするんだけど、花はもう全部落ちてしまっている。
夜中には止められている噴水の脇に、雪広は座っていた。
シンプルなジーパン、薄手のTシャツ、安物のデジタル腕時計。背丈も顔も、今時の平均的中学生男子といったカンジだった。ただ、名が体を表すのか、肌の色だけがとても白い。それだけで、どこか華奢な印象を与えるヤツだった。
「雪広……」
「尾道。本当に来たんだ。なんか、信じられないよ……」
「まあ、金払ってくれるなら来るよ、僕は」
仕事だし。僕はなんか気恥ずかしくなって痒くもない頭をポリポリ掻く。
「……払うよ。用意してきた。二ヶ月、家を手伝って、稼いだ」
「ふーん……」
雪広は僕の顔をまっすぐ見つめてくる。一方、僕は雪広の目なんて見られない。
なんというか、あんな熱い目されちゃったら、誰だって照れてしまうと思う。僕は少し下に視線を外し、爪先を立てて足首を回す。
「……あのさ、雪広。一応確認するけど、本気? クラスメイトを金で買うの?」
雪広がゆっくりと噴水から立ち上がる。
「うん……。でも、尾道が言ったんだよ。僕のことが好きなら、お金を払えって……。それが、一番助かるって……」
「そ、そうだけど……」
まさかあの時は本当に用意してくるとは思っていなかった。自分の正体をバラせば、もう近づいてこないと考えただけだった。
でも、雪広は告白から二ヶ月経った今、こうして大金を持って僕の前に立っている。おそらく、あの日とまったく同じ気持ちのままで。
バカだ……。こいつ、大バカだ。
「あ、でも別に俺は……ヤる必要もないとは……思うんだ。金で買うなんて、やっぱ変だし」
雪広は自分の言った「ヤる」という言葉一つで顔を赤くする。やっぱこいつ、全然経験なんて無いらしい。
「だからさ、……このお金は尾道にあげる」
「……え?」
「それでいいと思うんだ。俺は尾道が好きだから、お金を稼いできた。ヤるとかヤらないとかじゃなくて、気持ちを伝えたいだけだったんだ……」
「………………」
俺は雪広の言ってることが理解できなかった。
お金をあげる。それは自分の短い人生でも、まず考えられない言葉だった。
雪広の勝手な言葉は続く。
「だから、それでいいんだ……。受け取ってくれればいい……。別に、俺のことを好きになってくれなくったって……」
「…………ふ」
「……え?」
「ふッざけるなあぁッ!!」
僕は怒鳴っていた。つんざくような叫びは静かな夜を裂き、少し離れた雑居ビルまで響いた。
雪広はビクンと全身をすくませ、驚愕の表情で僕を見ていた。
僕は一歩前に出て、雪広の正面に向かい合った。背の低い僕が雪広を見上げる形になるが、僕の怒りはおさまらない。
「なにが、金はいらないだッ! 自分で稼いだ金に、どれほどの価値があるのか本当に分かってんのかッ! そんなことしたって僕は喜ばないぞッ! そうさ、絶対に、絶対にだッ!」
「尾道……」
「名字で呼ぶなッ! 今は真咲だッ! 男娼としての僕に名字はいらないッ! 僕は真咲だッ!」
僕は雪広の襟首を掴み、顔を引き寄せる。
「金はもらう。でも、それは『気持ち』を売るからじゃない。『体』を売るからだ。ああ、ヤろうぜ。すっげー気持ち良くしてやるよ。今まで感じたこと無いくらい、気持ちいいことしてやるよッ!」
僕は一気に言葉を吐き出す。いま感じている感情の全てを、雪広にぶつける。
「尾……い、いや、真咲……」
「なんだよ……、イヤなら帰れよッ!」
「違う、そうじゃない……。そうじゃなくてさ……」
「?」
「泣くほど……悔しかったの……?」
そう言われて、僕はようやく気づいた。
僕の頬には、一滴の涙が伝っていた。
「……え?」
泣いていることを実感すると、まるで傷口を見た子供が改めて泣き喚くように、僕の目からは涙がボロボロとこぼれ落ちてきた。目頭がもの凄く熱くて、胸の奥からどんどんせつない感情がこみ上げてきた。
僕は慌てて目を手でこすった。でも、涙は手の甲をどんどん濡らすだけで、止まることはなかった。
「ひ……、や……。 な、なんで……? なんでこんな……」
いくら拭いても涙は止まらない。僕の背中は丸まっていき、嗚咽で胸がヒクヒク震える。
ふと、暖かい腕が、僕を包む。
雪広が、俺を抱いている。
「あ…………、ちょっと……、や、やだ……」
僕はその優しさを拒否する。でも、体はただ震えるばかりで抵抗できない。善意のぬくもりを、ふりほどけない。
「いいよ、行こう……」
雪広は言う。
「ホテル行こう……。ヤろうよ……。セックス、しよう……」
(後編に続きます)
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