「晶……兄さん……」
「どうした?」
「これ、無理だよ……。僕、今は動けないし……。この体位、きつい……」
兄さんの部屋のベッドの上、僕達は騎乗位の体位をとっている。僕は仰向けで寝ている兄さんに跨り、屹立した肉棒でお尻を貫かれている。
僕はもう、深すぎるエクスタシーと発熱のせいで、体には全然力が入らない。ただだらしなく、兄さんの腰の上に座っている。僕は肩で息をしながら、寝ている兄さんを光の無い瞳で見つめる。
「別にいいよ。まだ、動く必要はないさ。うん、慧は何もしなくていい……」
兄さんは僕の太ももを撫でながら言う。汗でベトベトの足でも、兄さんの手つきは優しく、気持ちいい。
「……まだ、準備も整ってないしな」
「じゅん、び……?」
「佐奈、おいで」
兄さんはベッドの横で待機していた佐奈ちゃんを呼び寄せる。佐奈ちゃんはオズオズと僕達に近づく。
「……はい。でも、あたしは何を?」
佐奈ちゃんはもうエプロンを外し、上もはだけている。ただ、ノーパンながらもスカートだけはつけっぱなしで、なんだかもの凄く卑猥な格好だ。まだ、ナースキャップとネコ耳も、まだ頭の上にのっている。
「準備だよ、舐めてあげるから俺の顔にまたがりな♪」
「……は、はいッ!」
兄さんのセリフの意味を理解したのか、佐奈ちゃんは快活な返事をしてベッドに上がる。一方、頭の働かない僕は、兄さんの言葉の意味がよく分からない。
「なに……? なにを、するの……」
「慧と佐奈に、たっぷり愛し合ってもらうのさ」
そんな兄さんの顔に、佐奈ちゃんが跨る。空気を孕んだスカートがフワリと落ちる。
そして、
「……慧兄ちゃん」
佐奈ちゃんの、お日様のような笑顔が、
「ふふ……」
僕に近づいて、
「……だい……すき」
キス、されちゃう……。
クチュ……ッ。
柔らかい表面が接し、小さな粘着音が弾ける。
「お兄ちゃん、手ぇ出して。……両手ぇ」
僕は言われるがままに手をあげる。佐奈ちゃんの動作を真似して、掌をあちらに向ける。佐奈ちゃんの手も、僕の方を向いている。
距離が縮まる。二人の指が絡みつく。熱い掌と掌が重なり、僕達はさらに体温を上げる。
「はぁ……、はぁ……」
少し開いた口に、再び佐奈ちゃんの唇が重なる。舌がスッと差し込まれ、上唇の裏を舐められる。少し前に引き出された顔に、さらにキス。歯で舌を挟まれたまま口の中を軽く吸われる。
突然、握られた掌にグッと力が入る。
「は……はう……ッ! う、うぅ……」
プチュッ……チュッ……チュウゥッ、チュッチュッチュッ……、チュウゥッ、チュチュウゥ……ッ!
スカートの舌から聞こえる淫猥な水音。兄さんが、佐奈ちゃんのお尻の穴を舐めている。敏感な粘膜をチロチロとなぶられ、佐奈ちゃんはキスを続けながらも、喉奥から小さな呻きをあげる。
口づけは終わらない。僕達は両手を硬く握り合い、舌を突き出しながらキスを続ける。
佐奈ちゃんのアナルは、兄さんによる口唇での愛撫が続く。それは、これから僕を受け入れるための準備なのだろう。兄さんは丁寧かつ念入りに佐奈ちゃんを責めているはずだ。
佐奈ちゃんの体がこわばっていく。上と下との同時キスに、体を震わせながら、腰をよじる。
その官能は、僕にも舌を介して伝達する。佐奈ちゃんが今、とてつもなく興奮しているのが伝わってくる。
でも、それは僕も同じだ。僕はお尻に兄さんのおちんちんを入れながら、佐奈ちゃんの唇を舐めているのだから……。
柔らかなベッドの上、僕達は奇妙な正三角形をつくりながら、お互いの粘膜を愛撫している。
佐奈ちゃんの熱い息が、僕の中に流れ込む。僕も甘い唾液を佐奈ちゃんに流す。
晶兄さんが、お尻を舐める倒錯的な悦楽に感じ始めたのか、腰が動き始める。合わせて僕の体も左右に揺れ、お尻の中で勃起肉がグイグイと暴れる。
「ううぅッ! うッ、うぐ……ッ!」
体力の枯渇した僕は、そんな兄さんを締め上げることも出来ない。だらしなく状況に流されたまま、倒錯的なセックスを受け入れる。
さっきあれほど放出した後でも、僕のペニスは硬くいきり立っている。腰の動きに合わせながら、先端が揺れる。
おそらくは、佐奈ちゃんのあのスカートの下も……。
「はうぅ……け、けいに……ぃ……」
佐奈ちゃんの、感極まったような呻きが聞こえる。
可愛い……。
僕の弟は、なんでこんなに可愛いんだろう。これが良いこと悪いことなのか僕には分からないけど、でも……。
「好きぃ……」
ドキドキする……ッ!
僕は佐奈ちゃんの顔に頬ずりする。精子や唾液でグチュグチュになった顔を、佐奈ちゃんになすりつける。佐奈ちゃんの桃の表面みたいなサラサラのほっぺたが、とても心地いい。
「……あうぅ」
佐奈ちゃんがくすぐったさに顔をそらす。荒い息が耳にかかる。
僕達はそのまま体をすりあわせ、トロトロになっていく。激しすぎる動悸が止まらない。
このまま、僕達は溶けて消えてしまうのではないかと思ったそんな時、佐奈ちゃんの体がヒョイと下から持ち上げられる。
「……佐奈」
お兄ちゃんが両手で佐奈ちゃんのお尻を押し上げている。
「そろそろいいだろ……? もう、俺……限界だよ……」
「う……ん……、あ……たし……も、欲し……いよぉ……ッ」
佐奈ちゃんの声はガクガクに震えている。お尻への集中愛撫と僕とのフレンチなキスで、理性まで追い込まれているらしい。
「ああ……。じゃあ、慧にしてもらおうな……」
「ちょっと……、あッ! あぐうッ! ふ、ふかい……。に、兄さん……ッ、こ、これダメッ、ダメえぇッ!」
「大丈夫だよ。ほら、ちゃんと持っててやるから……。動く必要ないんだし、楽だろ?」
「そ、そんなぁ……。ダメだよぉ……、これダメぇ……、ダメぇ……ッ」
僕は兄さんに背中からだっこされている。胸回りを両腕で抱かれて、体をヒョイと持ち上げられている。
ただし、お尻には兄さんの逸物が入ったまま……。
いくら体を持ち上げられていても、体重の多くはお尻の一点にかかっている。僕はそのあまりに深い挿入感に苦しむ。
それでも、筋肉には一切の力は入らない。体はだらしなく脱力し、手も足も下にプランと垂れ下がっている。ときどき背筋が勝手に痙攣し、ビクビクと体が震える。
「慧……。もう少しだけ我慢な。ほら、佐奈が準備してるから」
「……さな……ちゃん」
佐奈ちゃんはついにスカートを外してベッドに横たわる。そして、頭の下からモゾモゾと枕を抜き、それを自分の腰の下に添える。佐奈ちゃんのお尻が少し持ち上がり、全裸のネコ耳ナースはそのまま股を開く。
お腹に張り付きそうなほど、硬く張りつめたおちんちんが見える。その下には、フワフワと膨らんだかわいいお尻。そして……さらに奥には、兄さんの唾液でベトベトになった、小さなすぼまりがある。
佐奈ちゃんはそのまま自分のお尻の肉を掴み、グイと広げる。割れ目が開かれ、お尻の穴も少しだけ横向きの楕円形に形を変える。
僕はその光景を、兄さんに抱かれたままジッと魅入っている。もう、眼が離せない。
(ああ……、佐奈ちゃんのお尻……、ピクピクって……動いてる……)
佐奈ちゃんの扇情的な体のラインは、とても男の子なんて思えない。触ればそのまま吸い込まれてしまいそうな綺麗な肌が、薄紅色に上気してる。……たまらないッ!
「うん……。あき兄ちゃん、もう……いいよぉ……」
「よし」
晶兄さんが僕を担いで佐奈ちゃんに近づく。広げられた足の向こうに見える佐奈ちゃんの顔はもう真っ赤で、涙までポロポロとこぼれている。羞恥心と肉欲の狭間でもがき苦しむ心が、手に取るように分かる表情だ。
「は、早くしてぇ……、もうあたしも……ダメぇ……。欲しい……欲しい……よぉ……」
いくら僕達がこういう行為に慣れていても、まじまじと性器を見られるのはどうしたって恥ずかしい。だけど頭の中は淫欲で染まりきっていて、絶頂までの一分一秒までもが惜しい。佐奈ちゃんは必死の思いでおねだりをするしかない。
兄さんはそれを分かっていて、僕に言う。
「ほら、やっぱ……すごいよ……。佐奈、可愛くって……。もっと……このまま見てようか?」
「あ……ッ! あう……あうぅ……、おにいちゃ……うぅ……ッ!」
「にい……ひゃん……。もう……ほんとにぃ……」
「冗談だよ……」
兄さんはベッドの上に僕を下ろす。そのまま僕の勃起してペニスの先を佐奈ちゃんのアヌスへと導いていく。
「俺だって……もう堪えきれないよ。さあ……」
「……あぁ」
ついに、僕と佐奈ちゃんの敏感な粘膜で触れ合い、佐奈ちゃんは安堵の溜め息を漏らす。大きく波打つ胸に、玉のような汗が光る。
「佐奈、そのまま広げてろよ」
兄さんは僕のおちんちんを持ちながら、自分の腰を前に進めていく。僕は重心をグイと前に押し出され、力の抜けた体を少し前に倒す。
ツプ……。
二人分の慣性をもって、亀頭が佐奈ちゃんに埋め込まれる。そして、
グッ……、ズウウッ、ズズズズズウウウゥゥ……ッ!
「ぐうぅッ! うッ! うあ……あ……ッ! 来る……、慧兄ちゃんが…………来るうッ!」
「ひゃ……うぅ……」
柔らかい佐奈ちゃんのお尻に、僕のペニスはあっさりと飲み込まれた。
ギュッと握られているかのような圧迫感。なのになんか動いていて、もっともっと奥まで吸い込まれそう……。
「すごい……、佐奈ちゃんの中……溶けてる……ッ!」
熱を持っているはずの僕より、もっともっと熱い腸壁が絡みつく。僕のペニスも、このままドロドロになってしまいそうだ。
「慧……、手を離すぞ」
「え……?」
兄さんは僕が言葉の意味を理解するより早く、抱いていた胸から腕を外した。僕の前のめりになっていた体はそのまま傾いていく。
「う、うわ……ッ?!」
反射的に僕は腕を前に出す。もっとも、全然力の入らない腕だから、その動きは遅く、体を支えるには至らない。
ガクンと頭が下がり、僕の落下は止まる。前後から挟まれた腰がストッパーになったようだ。僕は目の前に十センチに佐奈ちゃんの顔が所まで接近している。
「…………あ」
「……お兄ちゃん」
佐奈ちゃんの顔が、ゼロ距離で広がる。
佐奈ちゃんはお尻を掴んでいた両手を外し、僕の顔に改めて触れる。耳の後ろを撫でながら、目を伏せ、唇を近づけてくる。
僕も目を閉じる。口を開き、佐奈ちゃんを受け入れる。
濡れた佐奈ちゃんの舌が歯列を割って中に入り、僕の舌と重なる。
今日何回目のキスなのか、よく分からない。でも、飽きない。ずっと、ずっとこうしていたい。
舌を絡ませながら、佐奈ちゃんは僕の顔を撫でる。僕もシーツについていた手を佐奈ちゃんの首筋に伸ばし、うなじをくすぐる。
「あのさ……、慧、佐奈……」
兄さんが僕達を後ろから呼ぶ。良く聞けば、その息も震えている。
「俺、動くよ……。もう、もう本当に限界……。慧の中、すごくよくって……耐えられない……ッ!」
僕の腰を掴む兄さんの手も、滑りそうなほど汗ばんでいる。
「うん、いいよ……兄さん。動いて……、僕達を、メチャクチャにして……」
僕は首を後ろに傾け、兄さんに答える。
「あき兄ちゃん……、あたしも……壊してぇ。このまま、一緒に犯してぇ……」
佐奈ちゃんの声も切なげだ。
(ああ、欲しいよ……兄さん。そして、イきたい……。みんなでイきたい……ッ!)
「慧……ッ!」
兄さんの腰が大きく引かれ、揺り戻る。体重のった一撃が、最奥の秘芯を押す。
ガツンッ!
「あぁッ!」
同時に僕の体も跳ね上がる。根本まで埋め込まれた僕のペニスは更にへと打ち込まれる。
「ひッ!」
佐奈ちゃんの鋭い悲鳴が部屋に響く。二人分の重量がかかった慣性力が鋭敏な一点を穿ったのだ。
しかし、セックスはまだ始まったばかりだ。ずっと性衝動を理性で抑えつけてきていた兄さんは、ここぞとばかりに腰を振る。
グッ! グッ! ……ズズウゥッ! がツンッ! ジュボッ! ジュボッ! グボボオオォッ!
「あうッ! う……うあ……ッ! はあぁッ!」
「ひううぅッ! うッ! うぐッ! ふあぁッ!」
僕と佐奈ちゃんの喘ぎが、ソプラノのハーモニーになる。不規則な嬌声が一定のリズムで重なり合い、僕達はさらに官能をつのらせていく。
お尻が熱い……。もうずっと入れっぱなしで、兄さんの形まで覚えていた僕の直腸は、強引な挿入の繰り返しでグチャグチャに崩されていく。このままでは恥骨まで壊されそうだ。
そして、佐奈ちゃんの中もやはり熱い。激しいピストン運動で体は硬直し、佐奈ちゃんは僕のペニスをギリギリと締めつけてくる。腰は前後左右に揺れだし、中のペニスもデタラメに暴れる。
「ああぁッ! け、け、慧兄ちゃ……ッ! あッ! あッ! あうッ!」
目の前で、佐奈ちゃんは可愛い顔を歪ませながら僕の名を叫ぶ。もう息も絶え絶えで、酸素も回っていないのだろう。朦朧とする意識の中、佐奈ちゃんは無意識に僕を求めている。
「さ、佐奈ちゃ……ぁッ! あッ! ……はあッ! はあッ! い、いぃッ! 佐奈ちゃ……ああぁッ! あああぁッ!」
僕ももう、言葉が言葉にならない。ただただ気持ち良くて、頭の中は真っ白だ。
すごい……、すごい気持ちいい……。三人が繋がって、一つになって、同じ快感を共有している……。
(あ……、でも……)
僕はあることに気づく。僕は、佐奈ちゃんをもっと気持ち良くさせることができる。
「佐奈ちゃん……ッ! ここ、こすってあげる……ッ! 僕、もっと……気持ち……よく……」
ベッドについていた右手を、佐奈ちゃんの股間に伸ばす。先には、激しい揺さぶりに雫を飛ばす佐奈ちゃんの可愛いおちんちんがある。
「あッ?!」
少し顔を出した亀頭に指先が触れると、佐奈ちゃんは鋭い悲鳴を上げる。僕はそのまま勃起に指を絡めていく。
「ひゃッ! あッあッあ……ッ! け、けいに……いちゃッ! や、そこ……感じすぎ……いぃッ!」
僕は、僕を締めつける感覚を佐奈ちゃんにお返しするように、おちんちんをしごく。全体のリズムに合わせて、大きく、そして優しく、包皮を上下に動かす。
小さな穴から先走りが、スポイトの様に噴き出す。同時に、お尻の穴がギチギチと締まり始める。
「は……ひッ!」
これも佐奈ちゃんが感じた快感を僕に返しているということなのだろう。猛烈な腸壁の締めつけに、僕も脳が灼かれるような快感を得る。
それはまた晶兄さんにも伝わる。僕は兄さんのペニスを無意識に絞り上げてしまう。背後から、兄さんの溺れるような呻きが聞こえる。
「ふうぅッ! はあッ……はあッ……、け、慧……、そんな、そんなに気持ちいいのか……?」
「う……うんッ! すごいぃ……、ぼく……動けないのに……こんなに……こんなになってる……ッ! ダメッ! お尻……お尻熱いいぃッ!」
「ああ……、お前の中ぁ、すごく熱いよぉ……ッ!」
兄さんの腰がさらに速くなる。腰は小刻みにガクガクと揺れ、佐奈ちゃんのものを掴む僕の手も、合わせて速度を上げていく。
「ひッ! ひゃうぅッ! うッ! うぐッ!」
佐奈ちゃんはたまらず、両手でベッドのシーツを掴む。力を入れすぎた指は悪い病気の様に痙攣し、爪の中が鬱血する。
僕も、限界だ。目は薄く開きながら佐奈ちゃんの苦悶の表情を見ているけど、視界も意識も定まらず、ただ体の芯からわき上がる快感に震える。
三人がそれぞれの快感に押し上げられ、同時に達しようとしている。
「慧……ッ! 慧いぃッ!」
兄さんがラストスパートをかける。歯を食いしばりながら限界まで射精を堪え、無呼吸連打を繰り出してくる。
ガッ! グウゥッ! グッ! グウゥッ! ガツンッ! ガッ! ガッ! ズボボオォッ!
奥からあふれ出した腸液が掻き出される。激しすぎる猛攻に、僕の理性も打ち崩される。
「ひゃあんッ! ひゃッ! あああぁぁッ! にいひゃ……ッ! ああぁッ! ああぁッ! ああぁッ!」
動物のような雄叫びを上げながら、僕は我を失っていく。本能の赴くままに腰を振り、体をくねらせ、よがる。
「ぐッ! ぐうぅッ! あうッ! けいに……い……ッ! けいに……ッ!」
佐奈ちゃんはアゴを上に突き上げながら、背筋を反らしていく。口の端からは飲み込めないヨダレが溢れ、シーツにボタボタと染みをつくっていく。
僕達は、大きな一つの波になっていく。三人分のエネルギーが一緒になり、感じてる快感は、一気に三倍にふくれあがる。
ブワッと、下半身からとんでもなく大きなモノがこみ上げてくる。悦楽や、幸福や、愛情が、全て混じり合った、強大なパルス……。
目の前が光で溢れる。目頭が熱くなり、涙が流れる。背筋がゾワッと波打ち、心が跳ね上がる。
「い、イく……ッ! イくうぅ……ッ! 俺、出ちゃうッ! で、出るッ!!」
「あ……ッ! ああッ! ああぁッ! あ……ッ! ああああぁッ!!」
「けいに……ッ! ひゃあぁッ! きゃうぅッ! うッ! うああああぁッ!!」
エクスタシーに飲み込まれる寸前、兄さんは大きく腰を引き、最後の一撃を打ち込む。強烈な衝撃で意識は飛び、あり得ないくらいの快感が、僕達を襲う。
「あッ! あああッ! あああああぁぁぁッ!!」
ドビュウウウウウウゥゥッ! ビュリュウウウゥッ! ビュルウウゥッ! ビュウゥッ! ビュクンッ! ビュクンッ!
ドビュッ! ドビュッ! ビュルウゥッ! ビュクンッ! ビュウウウウゥッ! ビュクンッ! ビュウッ!
ビュルルルウウゥッ! ビュウッ! ドビュウッ! ビュウゥッ! ビュルウゥッ! ビュクンッ! ビュクビュクッ!
僕は、お腹の中、全てが精液で埋め尽くされてしまったかのようだった。兄さんの射精は一斉、かつ大量で、僕の直腸は爛れてしまいそうなくらの熱を持った。
同時に、僕も同じくらいの量の精液を、佐奈ちゃんに注ぎ込んでいた。ビクッ、ビクッと体が跳ねるごとに、ペニスは白濁液を柔らかいお尻に吐き出し続けた。
佐奈ちゃんも、イっていた。僕の握るおちんちんからはもの凄い勢いで精液が噴き上がり、佐奈ちゃんの体に降り注いだ。
(……止まらない。射精……が止まらない)
膨らみすぎた法悦が、連鎖爆発でもしたかのように僕達はイきまくる。筋が引きちぎれそうなほど体を痙攣させながら、精子を延々と垂れ流す。
「あ……あぁ…………」
僕は全身を硬直させながら体勢を崩す。ガクンと腰が落ち、同時に兄さんのペニスが抜ける。
「うぅ……ッ!」
兄さんもそれを契機に脱力し、床にひざまずく。そしてベッドのスプリングに頭を落とし、余韻に震える。
佐奈ちゃんはまだベッドの上でブリッジしているみたいに体をひくつかせている。足がシーツを掻き、腰がくねる。
射精はまだ収まらない。断続的にくる悦楽の波長に、会陰部を収縮させながら白い樹液を噴き出す。お腹の上はもう真っ白で、ヌルヌルになっている。
僕はそのまま、理性の光を失った佐奈ちゃんの隣に倒れる。
「あ……あぁ……、イってるぅ……あたし……イってるぅ……」
譫言のようにつぶやく佐奈ちゃん。だらしなく惚けたその顔は、とても可愛く、美しい。
綺麗な瞳の上で震える、長い睫毛……。半開きの口からのぞく、桃色の舌……。
「さな……ちゃ……ん」
自分の愛する人とは信じられないくらい、神々しいまでのその姿。これが、僕の弟……。
ああ、僕は本当に、この子のコトが好きなんだ。
ウチの母さん、木佐佐由理は子供服のデザイナーで、仕事部屋のクローゼットには可愛い洋服がゴロゴロしている。中には資料用のマニアックなものまであり、このナース服もその一部だ。
「でも、やっぱ佐奈ってすごいよな……」
兄さんが感嘆の溜め息を漏らす。
「ナース服のサイズが合わないから、せめてこの中から最善の組み合わせをって考えたワケだ。その結果があのコーディネート、ゴスロリメイドネコ耳ナースか……」
「ネコ耳は兄さんがつけたんじゃないか」
「そうとも言う」
歯を見せて晶兄さんが笑う。
「まったくもう……。あの時、兄さんちょっと意地悪だったしさぁ。なんか、最近変だよ」
「そうかー?」
「そうだよ……」
兄さんは僕の言葉を笑顔で誤魔化そうとする。でも、僕はまっすぐ兄さんを見つめる。だから、兄さんはバツが悪そうに目をそらす。
「……悔しかったからな」
兄さんがボソッとつぶやく。
「あの時もそう言ってたよね。……なにが?」
「佐奈が好きなのはお前だけってことがさ」
そのセリフは、針になって僕の胸に刺さる。心臓が疼き、心が揺れる。
「そ、そんなことないよ……。佐奈ちゃんは、僕のことも……、兄さんのことも……」
「いいや。佐奈はお前しか見ていないよ」
僕は先日の激しいセックスを思い出す。佐奈ちゃんの表情、匂い、そして僕の名を呼ぶ切なげな声……。
「あいつ天然だし、本人に自覚なんてないかもしれないけどさ。それでも、佐奈が好きなのはお前だからさ。だから俺は悔しかったんだ」
「………………」
今度は僕が兄さんから目を反らす。
僕達の間に気まずい空気が流れる。僕は仕方なく支度を進める。
「……まあ、気にするなよ。もともと三人なんてのが変だったんだしさ。……そうだな、俺もそろそろ彼女とか作ろうか。……そうすれば」
「兄さんッ!」
僕はたまらず声を張り上げる。少し驚いた兄さんの表情。
「……それ以上言ったら、僕泣くからね」
いや、すでに僕の目には少しだけ涙が溜まっている。指の先が落ち着かず、肩が震える。
それでも、兄さんは、
「ごめんな……」
謝る。
もちろんその謝罪は、自分の言葉にではなく、兄さんを慕う僕に対してだろう。
寂しげな笑顔が、そのことを悟らせる。
やはりインフルエンザに感染していた佐奈ちゃんは、あの日の夜に発熱した。病気の潜伏期間を考えれば、あの行為が原因でうつったわけではないと思うけど、僕はどうにも申し訳ない気分でいっぱいだ。
だから……。
「け、慧兄ちゃん……?」
「佐ー奈ーちゃん♪」
自室でベッドに伏せる佐奈ちゃんを、僕は看病しに来た。とっておきの衣装……、たぶん、あの日佐奈ちゃんが着たかったあの衣装で。
「どうだ佐奈。慧だってなかなか似合うだろ?」
「あははッ」
佐奈ちゃんが、とても病人とは思えない笑顔を見せる。本当に、本当に嬉しそうな笑顔だ。
僕が着ているのは、あのナース服だ。
サイズが合わずに佐奈ちゃんが着られなかったコスプレ用のナース服だったけど、僕にはジャストサイズだった。佐奈ちゃんがつけていた帽子もかぶり、完璧装備。
……兄さんに猫の耳までつけられちゃったけど。
「すごいよ慧兄ちゃんッ! かわいい、本当にかわいいッ!」
「あ、あんまり言わないでよぉ……。けっこう恥ずかしいんだからぁ……」
僕の顔は羞恥心で紅潮していく。うう、兄さんの前で着替えていた時はそれほどでもなかったけど、佐奈ちゃんに見つめられると、どうしようもなく恥ずかしい。
「なーんだよ。お前、下着までしっかり着込んじゃっるくせに」
「それだって、兄さんが履かせたんじゃないかぁッ!」
「ふみーん、お兄ちゃんさいこー♪」
……まったくぅ。でも、こんなことで佐奈ちゃんが元気になってくれるなら、それだけで僕も嬉しい。
「ねえ、看護婦お兄ちゃん」
「はいはい、なんですか?」
「お薬、ちょうだい」
「え?」
佐奈ちゃんは枕に頭を落ち着かせて、そっと目を閉じる。薄い唇が、うっすらと開いている。
「あ、えっと……」
「なにやってるんだよ、慧。かわいい弟の頼みだろ? あげなよ、お前の一番大切なもの」
大切なもの……。
僕は兄さんを見る。とても優しい笑顔が、僕を見つめている。
(うん、分かったよ。兄さん、ありがとう)
僕は佐奈ちゃんの口に顔を寄せる。そして、そっと唇を重ねる。
柔らかい……。
「はは……、ホントに可愛いよな、お前らってさ」
兄さんは、ほんの少し呆れたような声で、笑っていた。
(了)
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